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歴史はひとつではない!著者初の世界史入門
ウクライナ危機、イスラム国、スコットランド問題……世界はどこに向かうのか。戦争の時代は繰り返されるのか。「資本主義」「ナショナリズム」「宗教」の3つの視点から、現在の世界を読み解くうえで必須の歴史的事象を厳選、明快に解説! 激動の2015年を見通すための世界史のレッスン。
[内容]
序章 歴史は悲劇を繰り返すのか──世界史をアナロジカルに読み解く
第一章 多極化する世界を読み解く極意
1 帝国主義はいかにして生まれるのか
2 資本主義の本質を歴史に探る
3 イギリスの歴史教科書に帝国主義を学ぶ
第二章 民族問題を読み解く極意
1 民族問題はいかにして生じたのか
2 ナショナリズム論の三銃士──アンダーソン、ゲルナー、スミス
3 ハプスブルク帝国と中央アジアの民族問題
4 ウクライナ危機からスコットランド独立問題まで
第三章 宗教紛争を読み解く極意
1 イスラム国とバチカン市国──日本人に見えない世界戦略
2 キリスト教史のポイント
3 イスラム史から読み解く中東情勢
4 戦争を阻止できるか
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Posted by ブクログ
単なる世界の通史ではなく、佐藤優氏の独特の世界観を通じて、全く違う角度から世界史をとらえることのできる本。この本を読めば、スコットランド問題や、イスラム国の問題等、今、話題となっているコトの背景を理解することができる。キリスト教とイスラム教をざっくりと知ることのできる本ともなっており、非常に内容が濃い。
注目点
・世界史の通史を解説する本ではありません 。世界史を通して 、アナロジ ー的なものの見方を訓練する本
・アメリカで第二次世界大戦後 、本格的な恐慌が起きていないのはなぜか 。それはアメリカの公共事業に戦争が組み入れられているからです 。
・植民地の支配では 、少数派を優遇するのは常套手段です
・ジェノサイドが起きたルワンダでも 、宗主国のベルギ ーは少数派のツチ族を多数派のフツ族より優遇しました 。
Posted by ブクログ
■アナロジー(類比)とは似ている事物を結び付けて考えること。アナロジー的思考はなぜ重要なのか。道の出来事に遭遇した時でも,この思考法が身についていれば「この状況は過去に経験したあの状況とそっくりだ」と対象を冷静に分析できるから。
■アナロジー(類比)とメタファー(隠喩)の違い。(「キリスト教神学入門」アリスター・E・マクグラス)
①神には知恵がある。
・神の本性と人間の「知恵」の概念との間に類比の関係があることが主張されている。人間の知恵は神の知恵の類比として働く。
②神は獅子である。
・ある程度の驚きを引き起こし得る。
■アナロジーもメタファーも二つの事柄の間に類似性の要素と再生の要素がある。
・メタファーの方が再生の要素が強いので表現としての異化効果,ヒトをはっと驚かせたりする効果が強まる。
■慰安婦問題について欧米の人々は「自分の娘や妹が慰安所で性的奉仕に従事させられたとしたら…」という思いでこの問題を見ている。かつてはどんな国にも公娼制度があったと主張しても,それ自体が人権を踏みにじるものだと理解される。こうした類比的な思考を一切考慮せず「私達は間違えていない」と言い張ったところで国際社会からの理解を得ることはできない。
■なぜ1870年代から帝国主義の時代に突入したのか。このことを理解するためには重商主義以降の世界経済史を押さえておくことが必要。その理解があって初めて現在の国際環境を「新・帝国主義」と規定するアナロジーが分かるようになる。
■16世紀以降,資本主義は,重商主義→自由主義→帝国主義(独占資本主義)→国家独占資本主義→新自由主義という形で変遷してきた。
・重商主義とは16世紀に形成される絶対王政が実行した経済政策であり国家が商工業を育成し貿易を振興すること
・重商主義の代表はスペイン
・17世紀になると重商主義の中心は外国貿易になる
・国家が輸出入を規制し利益を吸い上げる(貿易差額主義)
・貿易が活発になると輸出産業を保護する必要が出るため国内産業を保護する産業保護主義が中心となる
・ポイントは国家が経済に強く介入して国富を蓄積していくこと
■レーニンはマルクス主義者であるがマルクスの「資本論」とレーニンの「帝国主義」には大きな違いがある。
・「資本論」で考察されるのは国家が市場に干渉しない純粋な資本主義の世界
・「帝国主義」では市場に介入する国家の機能が重視される
■レーニンは「帝国主義」の中で帝国主義を次のように五つの段階を挙げて定義している。
①経済生活の中で決定的役割を演じている独占を創りだしたほどに高度の発展段階に達した生産と資本の集積
②銀行資本と産業資本との融合と,この「金融資本」を土台とする金融寡頭制の成立
③商品輸出と区別される資本輸出が特に重要な意義を獲得すること
④国際的な資本家の独占団体が形成されて世界を分割していること
⑤最大の資本主義的諸強国による地球の領土的分割が完了していること
■覇権国家の弱体化が帝国主義を準備する。
・自由主義の背後には常に覇権国家の存在があり覇権国家が弱体化すると帝国主義の時代が訪れる
・イギリスの弱体化→ドイツやアメリカが台頭
・アメリカの弱体化→ロシアや中国が軍事力を背景に露骨に国益を主張
■維持コストの高い植民地を持たず全面戦争も避けようとするのが「新・帝国主義」の特徴であるが,外部からの搾取と収奪により生き残りを図るという帝国主義の本質や行動様式は変わらない。
■マルクスは資本主義社会の本質を「労働力の商品化」と考えた。
■「労働力の商品化」には二重の自由がなければならない。
・第一に身分的な制約や土地への拘束から離れて自由に移動できるということ(契約を拒否できる自由を持っている)
・第二に自分の土地と生産手段を持っていないこと(生産手段からの自由)
■賃金が決まる三要素の考え方はマルクスの最大の貢献であり未だに打ち破られていない重要な基礎理論。
①労働者が次の一か月働けるだけの体力を維持するに足ること
・食料費,住居費,被服費,レジャー代
②労働者階級を再生産すること
・家族を持ち子供を育てて労働者として働けるようにする
③自分を教育すること
・進歩し続ける資本主義社会の科学技術に合わせられるようにする
■日本の教科書が価値観をほとんど出さず必要な要素を漏らさないよう記述しているのに対しロシアの教科書はロシアの立場を正当化する価値観が強く出ている。
■金融資本主義に対する三つの処方箋
①外部から収奪する帝国主義
②共産主義
③ファシズム
■「ゲシヒテGeschichite」と「ヒストリーHistorie」
・ゲシヒテ:歴史上の出来事の連鎖には必ず意味があるというスタンスで記述
・ヒストリー:年代順に出来事を客観的に記述する編年体
■ナショナリズムの問題を考えるとき「原初主義」と「道具主義」という大きく異なる二つの考え方がある。
・「原初主義」とは,日本民族は2600年続いているとか中国民族は5000年続いているといったような民族には根拠となる源が具体的にあるという実態主義的な考え方(言語,血筋,地域,経済生活,宗教,物価的共通性など)
・「道具主義」とは,民族はエリートたちによってつくられるという考え方で国家のエリートの統治目的のために道具としてナショナリズムを利用するというもの
■標準語は自然に存在するものではない。アンダーソンによれば標準語は「出版資本主義」の力でつくられるとする。出版業が多くの読者市場をターゲットにして儲けるために「出版用の言語」がつくられ,それが標準語になっていったと考えた。
■「公定ナショナリズム」とは上から「国民」を創出しようとするもの。
■社会が流動化すると見知らぬ者同士でコミュニケーションをする必要が出てくる。そうすると普遍的な読み書き能力や計算能力といったスキルを身につけることが必須となる。そういった教育を誰が与えるかといえば,それは国家しかない。
■一定の教育を広範囲に実行するためには国家が必要。国家は社会の産業化とともに教育制度を整え領域内の言語も標準化する。こうした条件があって広範囲の人々が文化的な同質性を感じることができる。
■アンダーソンは,「民族」とは「想像された政治的共同体」と考えた。それに対しスミスは近代的なネイションを形成する「何か」があると考えた。この「何か」を表す概念がギリシャ語の「エトノス」,現代フランス語の「エトニ」である。
・エトニとは,共通の祖先・歴史・文化を持ちある特定の領域との結びつきを持ち,内部での連帯感を持つ名前を持った人間集団
・エトニという観念が歴史(※)と結びつくことにより政治的な力が生まれ,この力によりエトニは「民族」に転換する(※ここでいう「歴史」は実証性が担保されている必要はなく人々の感情に訴える詩的で道徳的で共同体の統合に役立つ物語としての歴史〔ゲシヒテ〕であり,これが民族形成に不可欠)
■中央アジアでは1920~1930年代に殆ど民族意識がないところで「上から」民族がつくられた「公定ナショナリズム」の典型である。その結果,ソ連崩壊後,中央アジア諸国では部族を中心とするエリート集団が権力を握り,他方で経済的困窮からイスラム原理主義が拡大していった。
■同質性が高いほど,その「差異」を巡ってナショナリズムは暴発しやすい。
・アイルランドとウクライナは同質性が高い地域で殺し合いが起きた
■「新・帝国主義」の時代は資本主義,ナショナリズム,宗教という三点の掛け算で動いている。
■植民地支配で少数派を優遇するのは常套手段。
・フランスは第一次大戦後のシリア委任統治において国民の少数派であるアラウィー派を重用した
・多数派の民族や宗教集団を優遇すれば独立運動につながってしまうので宗主国への依存を強化するため少数派を優遇する
■「イエス・キリスト」の「イエス」は当時のパレスチナにいたごく普通の男性の名前で,「キリスト」とは「油を注がれた者」という意味。
・ユダヤでは王様が戴冠するときに油を注ぐ習慣があり王様イコール救済主というのがユダヤ教の伝統的な考え方
・「イエス・キリスト」とは「イエスという男がキリストという救い主であると信じている」という信仰告白
■コーランに書かれるイスラムの「五行」
・信仰告白(アッラーのほかに神はいないと唱える)
・礼拝(一日五回メッカに向かって祈る)
・喜捨(収入の一部を困窮者に施す)
・断食(ラマダーン月の日の出から日没までは飲食を禁じる)
・巡礼(一生に一度メッカに巡礼する)
■「イスラム」とは「絶対帰依」という意味でありイスラムではあらゆる行為がアッラーへの絶対的服従として決められている。
■「コルプス・クリスティアヌム」とは①ユダヤ・キリスト教の一神教の伝統と②ギリシャ古典哲学,③ローマ法の三つの要素から構成された文化総合体のこと
・日本語に訳せば「キリスト教共同体」
・神学者エルンスト・トレルチの考え方で今なおヨーロッパ的な価値観の根底をなす
・EUもこの三つの価値観によって結び付けられている有機体
・EUがロシアやウクライナに伸びないのはコルプス・クリスティアヌムが正教文化圏を含みにくいから
・トルコがEU入りを希望しても入れないのはコルプス・クリスティアヌムの価値観を共有していないから
・宗教的価値観を中心とした結びつきには民族やナショナリズムを越えていくベクトルがある
■イスラム国の組織形態はネットワーク型
・アルカイダのようにウサマ・ビンラディンの命令で下部が動くという組織形態ではない
・小さなユニットが無数にありそれぞれに必ずメンター(宗教指導者)がつき,世界中のユニット同士がインターネットで結びついている
■イスラムにはムスリムが支配する「イスラムの館」と異教徒が支配している「戦争の館」という概念がある。イスラム原理主義の最終目標は世界中の「戦争の館」をジハードにより「イスラムの館」に転換していくこと。
■イスラム原理主義の五つの特徴
①儒教のように哲学的支弁を駆使せず簡単で宗教と道徳が一致しているため近代化の嵐の中でも生き残ることができた
②儒教より強いのは強力な超越的観念を持つから
③超越的な神とこの世の人間が直結する。信仰の仲介者がいないので政治的,道徳的言説の内容が曖昧で幅が広くなる。それゆえに広域で影響を発揮することができる
④超越的な唯一神を極端に強調すれば知的整合性を無視することができる
⑤近代的な学問手続や論理整合性を無視して「大きな物語」をつくることができる
■イスラム原理主義の特徴を熟知してその暴走を事前に食い止めようとしたのがレーニンとスターリン。
・イスラム原理主義が尊重する信仰対象,慣習などを尊重して摩擦を起こさないようにした
・イスラム系諸民族の中にあるエトニを刺激してイスラムへの帰属意識よりも民族意識を強化した
・現実には上からの強制的な民族アイデンティティを付与したため,ソ連崩壊後にナショナリズムの暴走が始まった
■戦争や紛争を解決する方法はたった一つ。「もうこれ以上殺し合いをしたくない」と双方が思うこと。そのための方法は二つ。
①もう一度,啓蒙に回帰すること。人権,生命の尊厳,愛,信頼といった手垢のついた概念に対し,不可能だと知りながらも語っていくこと
②プレモダンの精神,換言すれば「見えない世界」へのセンスを磨くこと
Posted by ブクログ
再読。
グローバル化の果てに覇権国家の行き詰まりが起き、各国のナショナリズムが強化され帝国主義の時代がくる。著者はこの本でそう指摘している。現在のウクライナ戦争に突き進んだロシア、覇権をめぐる中国の動き、アメリカの自国第一主義はまさにそれではないか。
世界史を表面だけなぞるのではなく、その背後にある民族、宗教、経済の動きを理解し、アナロジーとして現代を読み解く。深く広い知識がなければできないことだが、この方が仰っていることが、ようやく少しだけ理解できた気がする。
(2015/03/11)
これまで読んだ著者の本の中では最も読みやすく、勉強になりました。
なぜ著者は何でもかんでも神学の話に持っていこうとするのだろう?という素朴な疑問も持っていました。本書では、合理主義の時代が終わり、かつ新たな帝国主義の時代を迎える中で、人々がよりどころとするものの一つが宗教の世界であるという指摘が、これまでの作品よりもわかりやすく説明されています。ようやく著者の思想の一端をつかむことができた感じ。
Posted by ブクログ
世界史の概説本ではなく、現代の情勢を眺めるために過去の歴史を学ぶ必要性を訴えた本。筆者の主張は世界の歴史をアナロジカル(類似的)に見ることが重要ということ。それによればグローバル主義の行きついた現在は、アメリカの覇権が揺らぎ新たに台頭した国々が力をむき出しにする新帝国主義時代と言え、第一次世界大戦前夜と似たような空気感と評せるとのこと。確かにこの考察は面白いと思った。また、近代ナショナリズムは自然発生的なものではなく、上からの作用もありつつ、集団に共通する過去の物語が見いだされることで形成されるという論説の紹介や、原罪を持つキリスト教と違い、イスラム教は神を信じたとたんにすべてが正当化されるというのも興味深かった。
個々の現状評価には個人的には多少疑問を持つところもあるし、困難を回避するためにプレモダン(形而上学的価値と言っても良いか)を強調するところもどうかなと思わなくもないが、現状とこれからを考えていくのに刺激になる一冊だと思う。
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