【感想・ネタバレ】功利主義者の読書術のレビュー

あらすじ

功利主義的読書とは何か? それは本の大海から、本当に使える叡智を抽出する技術だ。聖書、資本論、名作古典小説からタレント告白本まで、具体的効用の薄いとされるジャンルの書物をあえて選択。紙背に隠れたメッセージを読みとり、過酷な現実を戦い抜く方法を鮮やかに提示する。世界の非情さと教養の豊穣、いずれをも知りぬく当代随一の論客による、挑発と知的興奮に満ちた読書指南。

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Posted by ブクログ

"沖縄問題を考えるときの本。
?良倉吉「琉球王国」
まず、この一冊から始めたいと思った。
日本の閉塞状況を打破する視点を持つための本。
多川俊映「はじめての唯識」
ユルゲン・ハーバーマス「公共性の構造転換」
「新約聖書 新共同訳」
佐藤さんの真似事でもよい。書物の海原から、得られる英知を吸収したいものだ。"

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2018年10月27日

Posted by ブクログ

"功利主義"と言うとどこか堅苦しく考えてしまいますが、平易に考えると、
自分自身にとって必要な知識を抽出し整理する、位のニュアンスになりますか。

- 読書には、大きな罠がある。

個人的には、読書をすること≒考えること、との認識ですが、
この辺りは基礎学問である歴史学の影響が強いと感じています。

- 経済発展の背後には、精神力があるということが再認識されている

- 自由な討論に基づく公共圏を回復することで、
  国家の横暴を規制するという気構えが残っている限り、
  大衆民主主義は、他の政治体制と比較してよりましな制度なのである

知識として吸収した上で知恵として昇華し、自己の成長につなげる。
これはまさしく、"地頭"を育てるとの観点でしょう。

そしてそのつながりが、"国家"という組織の構成員としての立ち位置も明確にしていく、
福沢諭吉の言う「国を支えて国を頼らず」との観点にいう、自立、になるんでしょう。

ん、以前はその観念的すぎる内容から挫折した"資本論"や"新約・旧約聖書"、
いい機会ですしリトライしてみようかなぁ、なんて。

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2012年05月16日

Posted by ブクログ

この人の本はどれも読み応えがあって面白いです。一度読んだ本でもまた違った読み方ができて面白かったです。特に、綿矢りさの『夢を与える』の書評には「ウーンそんな読み方があるんだ」とうなってしまいました。

この本は佐藤優氏による「実際に役立つ」という観点からピックアップされ、本人は書評を書く訓練はしていない、と謙遜しつつも、ロシア分析で培った『相手の内在的論理』をつかむという筆致で描き出された本の中身の論考についてはやはり、参考になる部分が多かったと思います。『資本主義の本質とは何か?』『大不況を生き抜く智慧』『人間の本質を見抜くテクニック』など、非常に刺激的なタイトルのあとに、一見「この本がいったいなんの役に立つの?」と首を傾げたくなるようなもの。たとえば、『論戦に勝つテクニック』というところで上げた本は酒井順子の『負け犬の遠吠え』と石原真理子の『ふぞろいな秘密』をあげております。

その理由は『ふぞろいな秘密』では事実を淡々と記すことによって相手の男性がいかに不誠実であるということを浮き彫りにするのに最も効果的である、ということ。『負け犬の遠吠え』では結婚して子供もいる『勝ち犬』と仕事に自分磨きにいそしみつつ、まだ未婚の女性は全て『負け犬』と断じることで、筆者いわく「アリストテレス論理学」を実践して論戦で徹底的に相手を打ちのめす方法を伝授しているのだそうです。僕は以前、「負け犬の遠吠え」を読んで「ふーん、あ、そう」という感想しか持ちませんでしたが、こうして読んでみるとまた違った読み方が出来て楽しかったです。ちなみに筆者は現在全面戦争状態にある外務省を相手にこの2冊に使われている方法を存分に応用しているのだそうです。

僕が一番興味を持ったのはやはり『資本主義の本質とは何か?』というところに取り上げられているマルクスの『資本論』とっこれはコミックスになりますが伊藤潤二という方の『うずまき』でした。僕はこの人の本を読んで原著のあの迷宮のような文体で書かれてあることを概要ながら理解することが出来ましたし、マルクスが以下に的確に資本主義の本質を捉えていたかということに感動すら覚えました。そして『うずまき』では直感的に捕らえられた「うずまき」の存在がそれがそのまま資本主義のシステムそのものだ、という筆者の主張にこれもまだ未読ではありますが、どうにかして手に入れて一読をしたいと思いました。

一軒役に立たないもの、これをまた違った角度から見ることによって「見えない世界」が浮かび上がってくる。僕はここに取り上げられた文献をほとんど読んではいませんが、機会があればおいおい、手にとって見たいと思います。とりわけ「テンペスト」という沖縄を扱った小説はドラマ化されておりますので、ぜひ最優先で読んで見たいと思っております。

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2012年03月04日

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佐藤優による読むべき本の紹介本。著者が神学者的考え方をすることがよくわかり、紹介されている本を読めば、より理解が深まるものと考える。小説が多いことには驚いた。
「読書には、大きな罠がある。特に、読書家と言われる人がその罠に落ちやすい。読書はいわば「他人の頭で考えること」である。従って、たくさんの本を読むうちに、自分の頭で考えなくなってしまう危険性がある」p3
「(旧ソ連)労働によろこびを感じる労働力や農民はほとんどいない。ルーブル紙幣がいくらあっても、人々が欲しい商品がない。カネの力で、労働者や農民を働かせることはできないが、暴力を剥き出しにした国家が脅しあげて、国民を働かせていた。国家全体が強制収容所と基本的に変わらなくなった。そして、「国民は国家に対して働いているふりをし、国家は国民に対して賃金を支払うふりをする」という小話をよく耳にするようになった」p8
「新自由主義を継続すると、格差の拡大にとどまらず、絶対的貧困が生まれ、労働力を供給する労働者が弱体化してしまい、結果として、資本主義体制が弱っていくという論理連関を示したい」p10
「資本主義は景気循環をともなうので、恐慌や不況を避けることができない」p11
「マルクスの「資本論」は、有名であるが、ほとんど読まれていない本の代表例である」p28
「学問の急峻な山路をよじ登るのに疲労困憊をいとわない者だけが、輝かしい絶頂をきわめる希望をもつのです」p31
「自然の本質を直観で把握できる人間だけが真理をつかむことができるのである」p43
「資本家的生産は、労働の社会的生産力の増進を利用して発展してきたのであって、資本の蓄積とともに一事業に投ぜられる資本の蓄積もますます増大し、その生産方法も科学的技術をできうる限り利用して、その生産力の増進をもたらすのである」p51
「素人がプロの世界に侵入すると大怪我をする」p84
「大きな仕事をするときはかならず敵が出てくる」p85
「カクテルパーティは、いわば情報戦争の戦場なので、そこで出会う人々は、潜在的な敵なのである」p174
「新自由主義(市場原理主義)が、社会主義的な計画経済はもとより、国家が経済に介入するケインズ政策に対しても勝利したように見られた」p202
「新自由主義モデルでは「規制緩和」ではなく「無規制」が、「小さな政府」ではなく「無政府」が理想となる。個体がすべてなので、民族、国家など「われわれの同胞」という感覚が薄れていく」p204
「経済合理性と逆行する地域共同体の助け合いの伝統が強い沖縄には、新自由主義が浸透しにくい。その結果、沖縄の人々は連帯意識を強くもつ」p205
「大衆民主主義は事実上、為政者とマスコミによって操作される愚痴政治のようになっている」p391
「ドイツ、チェコ、イギリス、ロシアの知識人は基本的にテレビを見ない。日本でもテレビのスイッチを切り、活字を読む習慣をもつ人々が増え、その人々が、喫茶店でも、居酒屋でも、井戸端会議でもよいから、自由な討論を深めることによって、日本の民主主義も少しはマシになるのだ」p392
「国家主義者である筆者としては、新自由主義政策による格差拡大とその固定化は、中長期的に日本国家を弱体化すると考えるので反対だ」p404

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2018年10月30日

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ネタバレ

タイトルの通り、本著は「役に立つ情報を引き出すための読書術」の本。紹介されているのはマンガ、小説、暴露本、哲学書、資本論に新約聖書と多岐。(シャングリラの出来が暴れすぎで、購入を迷っていた、池上永一の「テンペスト」も)。高橋和巳や五味川純平、ドストエフスキーなどすぐ読んでみようかという気になりましたね。

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2014年03月23日

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読書の危険なところは「自分の頭で考えなくなってしまうこと」と言う。確かに本を読んでいるうちにその内容があたかも自分の意見であるかのように感じてしまうことがある。特に内容に共感できるものほどそうなのかもしれない。個人的にはそれでも読まないより全然マシだと思っているし他の意見のいいところをうまく編集して自分のものにすればいいと思っているのだが、佐藤氏はさらにその内容をどのフェーズで使う事ができるのかを意識しながら読んでいると言う。それも全く想像もできない使い方も含まれていて興味深かった。具体的にあげられている本も参考になるが、その読み方自体が参考になると思う。自分も功利主義なのでそういった本の読み方ができるようになりたいと思う。

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2013年04月23日

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元外交官のキレ者 佐藤優氏の、一見役に立たなそうな本からも学びを得る思考過程を知ることができる。

この本を読んでからは、どんなモノからでも何かしら学ぼうと、頭を働かせてインプットするようになりました。

読書を実り多きものにするのに有用な本だと思います。

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2012年12月17日

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ネタバレ

功利主義、いわゆる読書の為の読書ではなく、日常で益となるという観点で本が紹介されている。普通のレビューとは違って非常に思想的かつ哲学的な要素を盛り込みながら各書を紹介している。
そして本書のまえがき・冒頭でも述べられているように、確かに読書それ自体は、特に目的意識の欠いた読書は他人の頭で考える域を出ない。
さらに言えばある特定の視座に立たない読書法はともすれば自分の思考が大きく揺さぶられ、それだけでなく揺さぶられた思考に対しての責任は誰にも追及することができないという一種の危機意識を私は感じた。
確かに読書を通して知識は着くが、限られた時間の中でいかに、そしてどのような本を読めば良いのか。そのヒントを本書から得ることができると思う。

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2012年08月14日

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ロング・グッドバイの村上春樹訳への見方を読むだけでも価値ありです。
やっぱりこの人は侮れないです。

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2012年08月13日

Posted by ブクログ

 功利主義、という表現がしっくりこない感もあるが、最後までふむふむと読めた。哲学書紹介では難しくて意味が不明な点もあったが、こういうものなのだろうと勝手に読み進めた。最後の酒井氏の解説もよかった。
 ハウツー物のカテゴリーに分類したが、いっぱんのエッセイでも良いかも。450P近くの本で、読みごたえもあった。紹介された本のうち、3冊が自宅に所有しているものだったので、是非再読し、佐藤氏の語るエッセンスを抽出してみたい。

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2012年07月10日

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本は読まれるもの、ではなくて読むものだ。本から学びとる姿勢が大切だと改めて感じた。

読書術と銘打っているからには、読書の方法論が載っているだろうと思っていたが、浅はかだった。具体的な読書法は、他の場所で求めることにしよう。

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2012年06月30日

Posted by ブクログ

読書には、大きな罠がある。特に、読書家といわれる人がその罠に落ちやすい。読書はいわば「他人の頭で考えること」である。従って、たくさんの本を読むうちに、自分の頭で考えなくなってしまう危険性がある。

この人の言葉は切れる。特に、導入部からグッと引き込んでいく言葉の勢いを感じる。自分の中の何かを鷲掴みにするような感覚がある。だから、佐藤優に惹かれるのかもしれない。

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2012年05月06日

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暫く離れていた作者さんでしたが「読書術」というタイトルの新刊で即買い。潜在意識を含む作者の意図やバックグラウンドを想定した解説、読み方の指南が面白い。この手の本を読むとまだまだ読んでいない本がありすぎる、と再認識します。

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2012年05月01日

Posted by ブクログ

短期で役に立つ本ではなく、生きて行くために、心に留めておくべき内容の本が厳選されてる
出来る著者の経験から、ロシアに関する本が多いように思うが、ロシアという国の異質的な部分を垣間見える

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2019年06月12日

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佐藤優氏の作品は、引用が多いため、その引用に手間取る事が多く、彼の考えを掴みにくくなる事がある。

思い切って引用を飛ばして読むと、比較的容易に彼の言いたい事が理解出来る様になる。

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2015年12月06日

Posted by ブクログ

 表題の「功利主義」ってなんだ?早速、wikiにて調べてみるが、字ズラの意味は分かるが、難解である。ようは、 帰結主義の1つで、 実利主義(じつりしゅぎ)とも呼ばれるものらしい。実利主義とは、現実的な利益を追求するものの考え方である。で、著者はこの現実的な利益を追求するという考え方にもとづき、読書をしているのである。さて、わたしはどうなのだろう・・・読後の感想としては全体的に表題とおなじで、こむずかしくまとまっている。

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2017年10月21日

Posted by ブクログ

読書をしていると、時々、自分の残りの人生で読み切れぬほどの書物の数を思い浮かべ、寂寞とした絶望感に駆られる事がある。そんな時、読書術のような本を手に取るのだ。

佐藤優は、常人とは異なるペースで本を読み、文を書く。その彼が、「使える」本を教えてくれるのだ。これは、前述の絶望感への救いである。効率的に、意味深い読書ができる。

しかし、佐藤優が本著で導入に触れた、恐らくショーペンハウアーの記載とも重なる、読書の危険性。つまり、自らの頭で考える事の否定を招くという事は危険視しておかねばならない。これは、盲目になるな、ということ。また、偏った立場の主張だけに耳を傾けないことで、大体回避できる。

さて、その教えてくれた、本。読み方。についてだが、佐藤優の別の著書で紹介した書物が、本著でも多く取り上げられる。宗教、沖縄、ロシア、唯識。本著は、佐藤優の感受性を通し、役に立つと思われる本、読み方の紹介である。従い、自らへの適用には、やはり、自らの頭で考える事が肝要なのである。

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2014年12月27日

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マルクスの『資本論』から石原真理子の『ふぞろいな秘密』に至るまで、さまざまな本を紹介し、著者独自の視点でその有効性を解き明かしています。

著者は本書のスタンスを「功利主義」と規定しています。これは、実用書やビジネス書など、直接役立つ本を紹介するという意味ではなく、思想書やタレント本に盛り込まれている叡智を抽出し、最大限に活かすというスタンスを意味していると言えるのではないかと思います。

おもしろいと思ったのは、副島隆彦の『恐慌前夜』(祥伝社)や小室直樹の『ソビエト帝国の最後』(光文社)など、ちょっと評価の難しい本が含まれていることです。「功利主義者」として、活用できるものは貪欲に活用していくという著者のスタンスだからこそ、こうした本の的確な意義が掴み出されたのではないでしょうか。

そのほかでは、ハーバーマスの討議倫理を著者が高く買っていると知って、外交の舞台で現実的な諸条件を勘案しつつもけっして理想を諦めることなく交渉をおこなう外交官としてのキャリアを培ってきた著者に、いかにもふさわしように感じました。

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2015年03月09日

Posted by ブクログ

う〜ん、やっぱり自分には少し難しかった。
あの「負け犬の遠吠え」も、ただ漫然と面白いと思って読むのではなく、読む人が読めば立派な交渉術に役立つのだという。
解説は酒井順子で、自分の作品が思いもよらない読み方をされて驚いたと書いているのが面白かった。

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2012年11月28日

Posted by ブクログ

読書しなれていないので、読んでみました。読み方を学ぶというより、佐藤さんとともに、本を読み解いてみるという感じです。すごく勉強になりました。

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2012年08月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

本から学ぶためにはどのような読み方をすればよいかについて書かれたもので、目的を持って読書をするにはどうしたらよいか、という内容ではない。何故なら、専門書などを除いては、その目的に沿った価値を提供する本を選ぶことは難しいからだ。
それにしても、著者はいわゆる「ネオリベ」が今日の経済閉塞の根源ととらえているらしく、「新自由主義モデルでは、規制緩和ではなく無規制が、小さな政府ではなく無政府が理想となる」と書いているが、これは誇張であると思う。「ネオリベ」に対する有効な理論として宇野弘蔵をあげているが、恐慌の原因は資本主義に内在する不可避なものだということが正しいとしても、それが労働価値説で説明できるという理論には納得できない。何故なら、労働の価値を絶対的に測定することは困難であると考えるからだ。今日の労働とは肉体的なものもあれば知的なものもあり、市場における価値も一義で定義できるような単純なものではないと思う。

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2012年05月26日

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