佐藤優のレビュー一覧
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1人の人間の能力や経験には限界がある。この限界を突破する最も効果的な方法が読書だ。
著者は、「読書によって教養をつけるためのコツがある。数学で分数が理解できていない人が、微分、積分に関する本を読んでも、絶対に内容を理解することはできない。それと同じように政治や経済、あるいは恋愛についても、本には読む順番がある」と言う。
本書では、当代随一の読書家である著者が、「意味のある読書とは何か」「詐欺師の視点に学ぶ」「格差の本質を知る」「『テロ』を起こす人々とは」「オバマ大統領の戦略」「北朝鮮をめぐる情報戦」など、57の重要テーマについて「真っ先に読むべき2冊」を厳選して紹介。この2冊をきちんと読んでおけば、自分の頭で現在起きている出来事を読み解くことができるようになる。
佐藤流の「知的野蛮人」になるための「書店活用法」「選書術」「読書法」を開陳した、巻頭・巻末の文庫版<紙上特別講義>も必読!
『野蛮人の図書室』を改題・再編集。 -
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1990年代前半、私は永田町界隈が仕事場でした。その間、多くの政治家と接する機会がありました。そうした中で、最も印象に残っている政治家が野中広務氏です。当時、彼は年齢こそ60歳を超えていましたが、当選回数は2-3回。まだ陣笠、その他大勢の1人、というポジションだったのですが、既に永田町周辺居住者の間では一目置かれる存在になっていました。
それは彼の情報収集能力の高さが大きな理由だったように思えます。下手な党幹部、派閥幹部に接触するよりも、彼と話をした方が有益な情報が得られました。彼の情報の扱い方のうまさもあったと思います。
そうやって接する機会が増えるほどに、人間的魅力も感じるようになりました。優しさとか思いやりとか、一面的なものではなく、人間的な深みを感じることがよくありました。
今回、本書を読み、様々な思いが去来しました。著者の魚住氏の分析は正確だと思います。政治家として功利的な面もあり、恫喝的な手法で政局を回していったことも確かです。
また、政策的課題をこなすことは得意でも、長期的ビジョンを構築することはできない、というとらえ方もその通りだと思います。
ただ、私にとっては、やはり非常に魅力的な人物でした。
記述に関して言えば、野中氏を軸に描かれた政界の動きの記述は、非常にわかりやすく、正確でした。(時折、政治家を取り上げた書物でも、書いた本人が正確にわかっていないのか、政策や政局の記述が非常に生硬で分かりにくいものもあります)
私が野中氏に接していたのは3年間ほどでしたが、いまだに印象深い政治家です。その野中氏の出自も含めて、政治家としての行動原理を解き明かし、さらに人としての思いにまで踏み込んで描いた本書は、ノンフィクションとして多くの人に読まれるべき傑作だと思います。 -
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鈴木宗男氏に対する国策捜査に巻き込まれ、実刑判決を喰らった元外交官であり、現在は執筆・評論業に忙しい佐藤優氏が、収監中に書き溜めていた大量のメモや手紙を1冊の本にまとめたもの。逮捕されるまでは対ソ連・対ロシアの外交官であり、モスクワ在任期間が長かったこともあり、ロシアや東欧に関する政治・文化的背景の洞察がとても鋭い。近世以降のヨーロッパの政治史・哲学史・宗教史に対する造詣が深く、このような豊かな教養に裏付けられた現代ロシア論には迫力がある。
本書が執筆されたのは2000年代前半であるが、執筆内容の多くは、現在のロシア情勢にも十分に通用する。たとえば本書を読めば、ウクライナ情勢を受けてロシアが中国に急接近する素振りを見せたとしても、99%はブラフであろうということが容易に想像できるようになる。
神学を高いレベルで究めた著者が、牢獄において自己を律し、頽廃も絶望もすることもなく、論理的かつ客観的に自己の置かれた状況を分析し、検察と正面から闘い続けた精神力には、ただただ脱帽するばかりである。 -
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イジメ。セクハラ・パワハラ。不正蓄財。日常的な賭博の開帳。機密文書の漏洩…。本書にある外務省の実態の数々には怒りを通して笑い、驚き、呆れなどのさまざまな感情が入り乱れましたが私も彼らの再生を祈ります。
佐藤優氏による外務省および日本国家に対する「処方箋」であります。僕は連載時の事情は不勉強なものでよくわからないんですけれど、「新潮45」に連載されていた物をまとめたものに加えて、対談を加えた内容になっております。
しかし…。自分が所属している組織をここまで書かれたとしたら、自分だったらどうだろうなぁ…。というくらいに厳しい筆致で外務省をこき下ろす姿は「筆誅」とも言うべきもので、陰険なイジメ。女性職員に対するセクハラ、パワハラ。公金の不正蓄財などの犯罪的行為が日常的に行われている。
ということを、ほかならぬ筆者はたたき上げの元外務官僚でしたので、すさまじいまでのリアリズムで描かれていて、こういう人たちが国民の税金を湯水のように自分の私利私欲のために使い、「社会党レート・自民党レート」などの一晩に最低でも100万。中には1000万近いお金をマージャンで日常的に賭博を開帳して動かしているという告発。
さらには自分たちの利益を守るために海千山千の政治家同士を戦わせ、一方を追い出すと手負いのもう一方をつまんで放り出すかのような狡猾な謀略戦をやってのける…。いやはや…。恐ろしかったですね。読んでいて。これからの日本の将来はどうなるかと柄にも無く思ってしまいました。
僕にとってのハイライトはやはり、盟友・鈴木宗男氏と筆者との対談で、その際に鈴木氏が持ってきた外務省内から門外不出の書類や公電の数々にあの佐藤優氏が
「何でこんなものを持っているんですか!?」
と何度も衝撃を受けていたのが印象的でした。
話をよくよく読んできくと、外務省側ではこういう持ち出し禁止の文章を政治家に流しているのだそうです。僕はその意味をよく把握しておりませんが、恐ろしい犯罪なのだそうです。本書の中に写真が掲載されておりますので、興味をお持ちになった方はぜひごらんになっていただければと思います。
あとがきで筆者は、外務省が膿を出し切って、再生することを願っているそうです。厳しいことが前編にわたって書かれていますが、今後の日本には外務省は無くてはならない「会社」ですので、ぜひ、現役の職員は彼の主張に真摯に耳を傾けて、エリートとしての矜持を取り戻していただくとともに、私たちも彼らの生態には本当に怒りを通り越して笑い、呆れるしかないのですが、彼らの行動をよくよく見ておく必要があると考えます。 -
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タイトルは交渉術でも、これは
ほとんど佐藤優の経験が詰まった実社会の
お話、もしくはハードボイルドのような
読み物です。
ロシアでは殺人以外のたいていの犯罪は、秘密警察で
もみ消すことができることや、
世間でイメージされているハニートラップなどは
現実にないことなど、情報も満載。
何より、外務省として働いている雰囲気が
ビシビシ文面から感じられてきます。
一国の総理大臣に対して説明をすること、それで
国の流れが変わるのですから、その緊張感や
正確性の必要さなどは相当なものでしょう。
自分の仕事を顧みると、こんな状況下になることなど
ありませんからね。
男の仕事とは、を考えさせられる優れた
自己啓発書と言えるのではないでしょうか。
佐藤本でおなじみの、外務省の西村課長が
どういう状況でアルマジロになったかも、
リアルにわかります。
嘘を突き通そうとしても、上司(鈴木宗男)に
見破られたときにアルマジロのように転がる。
実は、これも立派な逃げ方(!)だったのですね。
個人的には、佐藤本のベストです。 -
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一国が戦争を始めるには必ずそれなりの理由がある。軍部の独走で戦争が始まるわけではない。国民の盛り上がりがないと戦争なんて簡単に始められないのだ。
大東亜戦争は今では「軍部の独走」「政府の嘘」等々散々なことを言われているが、当時本当にそんな簡単なことで戦争を始められたのか?始められるわけがない。
当時の世界情勢、東アジアの植民地化、過去500年にわたる白人による有色人種国の植民地・奴隷化、米英蘭による経済的圧力、中国の混乱等々、我慢に我慢を重ねた日本だったが、さまざまな理由が重なり戦争に踏み切った。
この本は開戦直後、日本政府が何を考えどうして宣戦布告に踏み切ったのか、何度かに分けてラジオ放送された内容である。
放送原稿を書いたのは、東京裁判で東条英機元首相の頭をペシッと叩いた男、現在はその映像ばかり流れるため変人かと思われがちだが、当時最高の知識人だった大川周明という人物。その洞察力と分析力にはすごいものがある。
その大川の文章を詳細に分析しているのが著者の佐藤優。難しいことを書いてそうな感じはするが、しっかり読めば理解できる。
かなりおすすめだ。 -
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神様のノートみたいなものが天国にはあって、そこに書かれていれはなにしていても天国にいける。誰にも確認できないけども、自分は書かれていると信じ、逆に、「この世で(書かれていないのに)力を握っている悪魔の手先どもにどう対抗するか」と考えるカルヴァン派の佐藤優と、あくまで努力によって人は救われると考えるバプテスト派の中村うさぎ。
性格も物言いも生き方もなにもかもが違う2人。佐藤が解く(説く)キリスト教の思想を、卑近なコトバでばきばきなぎ倒すのがとにかくそうかい。
でてくる表現も、キリストを「元本保証型」とか、肩が触れただけで「死ね」といって相手を殺す悪ガキとか、おもしろぶっとびすぎ。うさぎさん、やおい的観点から聖書の登場人物ならヨハネ!とかいっちゃってます。
入りやすいが抜けやすい点でヤクザの結社原理はキリスト教と似てるとか。
全てのページを引用したい、なんて罰当たりな欲望まで掻き立てられて、この文庫本、すごい。
と、第一章の「聖書を語る」がおわり、次の章はなんと、サリンジャーと村上春樹を読んでます、おふたり。あれ聖書は?
もちろんキリスト教的な読み解きは佐藤さんにはありますが、うさぎさんの1Q84への怒りがとにかくおかしい笑
エヴァのエンディングはいい、三歩さがってスリラーもあり、でもこれは許せない!っていうのがもう、共感しまくりました。
しかも次の3章では震災をテーマにしながら日本人としてのありかたや神学とはに進むのですが、またここでもうさぎ節と、それをくーるにいなす佐藤節のゼツミョーな調べに大興奮!!!
行動経済学は底が浅い、否定神学、ずれてずれてそれにおかしいと思うことから近代文学は発達している、ドストエフスキーは永遠に納得できないから書き続ける・・
この本すごい。薄いのに濃密、えらぶってないのに森羅万象がつまってる。今年一番のすご本、ここにあり。です。 -
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佐藤優と中村うさぎ。共にキリスト教徒の二人が火花を散らす異色対談です。クロノスとカイロス、「新世紀エヴァンゲリオン」の最終結論、宗教に何が出来るのか…。などのテーマを縦横無尽に語りつくします。
中村うさぎさんと佐藤優さんは文学部と神学部で学部こそ違えど同じ同志社大学の先輩後輩の仲だということは知っていました。しかし、中村うさぎさんのほうが先輩で、佐藤優さんのほうが後輩だということを僕はこの本を読むまで知りませんでした。この本は宗派こそ違えど、同じキリスト教を信じる二人が、時間の概念であるクロノスとカイロスにはじまって、キリスト教は元本保証型ファンドであるとか、「新世紀エヴァンゲリオン」の最終結論について。『1Q84』は男のハーレクイン、日本は近代以前かポスト近代か、そして、宗教に何が出来るのか…。というさまざまなテーマに基づいて、縦横無尽に語りつくす対談本です。
佐藤優さんの古今東西の知識を駆使した語り口と、中村うさぎさんの体を張って獲得した「知恵」があいまって、ものすごく刺激に満ちた物となっております。面白いなと思ったのが「旧世紀版」の「新世紀エヴァンゲリオン」のラストの解釈。佐藤優さんは「モナド」という言葉を使って説明されていましたが、それがすごく印象に残っています。
次に、中村うさぎさんが村上春樹の名作「1Q84」について、ヒロインである青豆の行動が終始一貫していない、ということを語り倒す場面があって、僕が今まで考えたことのない読み方で、彼女ならではの読みの鋭さに舌を巻いてしまったことを思い出します。
そして、最後のほうに『「地震と原発」を読む。―日本人を繋ぐものは?』という箇所で出てくる「ニガヨモギ」と「メメント・モリ」という箇所で
「お笑い番組がはやるのは、実は死を忘れようとしていることの現われだということですね」
という佐藤優さんに、
「(中略)目の前にドーンと真っ黒い「死」が立ち塞がったのよ。それでも目をそむけて続けている人はいるけどね」
と重ねていたことが強くこころに残っています。すごく異色といえば異色の対談本なんですけれど、読んでいてすごく面白かったです。 -
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世界で一番読まれている書物の中の書物らしい。
1巻は4つの福音書と佐藤氏の解説が収められている。
聖書を読むのは初めてなのだけど、
お釈迦様との比較という罰当たりなことをしてしまうと、
お釈迦様の彼岸は現実を認めるところから始まり、
イエス様の神の国は理想に生きるところから始まっている。
お釈迦様のお説きになった事は頑張ればまだ出来るが、
イエス様のお説きになったことをやるのはとても難しい。
なるほど、お釈迦様は真に目覚めた人で、イエス様は神の子だ。
そして神の子の言うことを聞くことが出来ない我々は罪深い。
しかし、入り口は反対側だが、仏教徒もキリスト教徒も同じく、
自分の持ち物を捨てて、人のために生きろというのは共通している。
お釈迦様の彼岸もイエス様の神の国も同じ場所なのかも知れない。 -
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東京裁判の法廷内で東条英機の禿頭をペチっと叩いたことで有名な大川周明。頭がおかしくなったゆえの狂態ともっぱらの噂だが、真偽は不明で詐病説もある。
大川周明は太平洋戦争の開戦時に連続ラジオ講演で、英米の植民地主義から東亜を守るために日本は止むを得ず開戦に至ったと、その経緯を歴史的背景から講義し、国家としての正当性を広く国民に知らしめた。そしてその講演をもとにした著書はベストセラーとなった。
簡単に言うとこうだ。
米国は太平洋制覇の野望を抱いており、日本が植民地化を進めている満蒙を我がものとするために画策している。日本が邪魔でしょうがないから様々な圧力をかけてくる。日本が戦争回避の道をいくら探しても米国は日本排除を目的としているために両者の主張は噛み合いようがない。だから開戦に至った。
その一例として、米国は日露戦争で講和の仲介をしたが、それは日本に恩を売り、大陸への橋頭保を築くためであったことを挙げている。。事実、米国はその後、日本に対して大陸に敷かれた鉄道の権利を譲るように迫る。そして一度は桂首相にそれを認めさせた。帰国した小村寿太郎によって、反故にできたから良かったものの、アメリカは大陸支配の機会を虎視眈々と狙っていた。
大川の主張が正しいのかどうかは、アメリカの大陸政策についての本を読んだことがないから判断ができないが、仮に大川の主張を聞き入れると、確かに開戦するしか道はない。
大陸から日本が引きあげれば開戦には至らなかったことは間違いない。しかしそんなこと軍部がするはずがないし、まず第一に国民が許さなかっただろう。これまた仮にだが、内閣、軍部が満蒙から手を引いたとしても「どれだけの血を流して勝ち得たものだと思っているのか」と国中で暴動が起こり、満蒙支配を継続する内閣と軍部に入れ替わっただけだろうと思う。
大川は日本が東亜の盟主となって、米国を筆頭とするアングロサクソン文明の帝国主義からアジアを守らなければならないと主張してる。石原莞爾の最終戦争論もどうやらこの大川の思想から着想を得たようだ。
いまいちわからないのが、すべての国を格下に扱う朝貢貿易しかしたことのない中華思想の国家が、本気で日本の下に就くと思っていたのかどうか、だ。武力で支配してから、追い追い従わせる気だったのかもしれないが、いったいどれくらいの期間でそれを達成しようとしていたのだろう。開戦当時、泥沼化した日中戦争の状況は大川はもちろん知っていたはずだ。
この破たんに対する答えは棚上げにされている。
最近よく議論されている「なぜ負けるとわかっている戦争に日本は突入したのか」という問いに対して、昔の日本人は愚かだったと一笑に附すことはあまりに安易で危険だ。その態度は過去に真剣に向き合う態度ではない。自国の過去と無関係を装うその前に、当時の知識人の思考と国民性を考えることには大いに意味がある。
ちょっと長いレポだが、これでもほんのさわりしか内容に触れていない。
太平洋戦争を考える上で、とても大事な本だと思う。