Posted by ブクログ
2011年10月09日
この本は著者が下獄していたときのノートや手紙を元に編みなおした記録です。今回この本を読むのは三度目になりますが、その圧倒的な思索の量と質に驚きをかくせません。
どうも最近、こういう本ばっか読んでます。僕がこの本を読むのは今回を含めてちょうど三回目のことになりますが、読むたびに作者の強靭さと知識の...続きを読む深さ、量と。思索の緻密さに改めて舌を巻いたしだいでございます。この本は著者が当時、外務省のアフガン支援NGO問題に端を発したもろもろの政治事件に絡んで東京拘置所に下獄していた514日間の記録です。その間に自分のすべてを記録したノートを五分の一に圧縮したそうですが、それでもものすごい量で、これだけのことを獄中という特殊な環境でつづり続けたという事実は、作者の精神の強靭さと、辿ってきた外交官人生が以下に過酷なものだったかということを示すものだと思います。
もし、自分が信念を持って取り組んでいた仕事のために国や自分が所属する組織から裏切られてこのような境遇に自分がなってしまったときに、果たして彼のように『誠実』であることができるのだろうか?そんなことを自分に問いかけながら活字をずっと追っていました。でも、獄中の中でこれだけの思索ができるのは本当に見事としか言いようがありません。
作者は出獄後に論壇や文壇でその恐ろしいばかりの知識を使って、多彩な執筆活動を展開していくのですが、それが小菅の東京拘置所の中にその萌芽があったということに僕は驚きを隠せません。彼が読んでいた神学書や哲学書に関しては、相当難しいのでまだまだだなと自分を振り返りたくなりました。人はどんな境遇でも自分を見失わずにここまでのことができるのだと。そういう事実をこうして残してくれた筆者に、感謝します。