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美しい蔓薔薇と高麗芝の敷かれた洋館で、治子は五歳になる一人息子の信之と建材メーカーの社長である夫と明るい家庭を築いていた。だが、この家庭にも不安があった。それは、結婚後、数年たっても妊娠のきざしがないことから人工授精を受けて生まれた信之の本当の父親は、夫なのかドナー(精子提供者)なのか不明なことだった。そして、ある日――ドナーと名乗る男の出現によって平穏な家庭に大きな亀裂が生じていった……。治子の心を支えたのは脆い一本の試験管につながれた母と子の強い絆だった。表題作ほか日常生活のなかで遭遇する事件をテーマに、女性の微妙な心理を描いた作品集。
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大手スーパー〈マイウェイ〉の凍結庫で店長が凍死体になって発見された。東京四部長の逢坂常平は、早朝、警察からの電話で事件を報らされる。捜査は、自殺、他殺、事故死のいずれも決め手のないまま難航した。――逢坂の家庭では、妻千鶴を中心に、ひとり息子剛の東大合格だけを目標に生活を組みたてていた。少しでも入試に有利な条件を得るためのコネや情報、有能な家庭教師。だが、常平の九州への単身赴任、膨らむ教育費を補うための千鶴のアルバイト等により、家庭は大きな亀裂を生じていった……。家族全体を巻きこむ受験地獄と苛烈な流通戦争を描き、学歴社会を鋭く告発する社会派推理の力作長編。
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東大研究生として来日したアメリカ人女性ジュディ。核実験地で幼少時に被曝し、二四歳の若さで白血病に冒された彼女の切実な願いは、全面核戦争から、人類の絶滅を防ぐことだった。そして、ジュディと設計技師・吉田司郎との愛が、現代のノアの箱舟「ドーム」を発想させた。この巨大な施設が完成すれば、地球が“核の冬”に覆われても、尊い命を救うことができる――。ジュディの死を看取った吉田の活動で、「ドーム」の建設は多くの人々の共感を呼ぶが、背後では各国のイデオロギーや陰謀が複雑に絡みあっていく……。人類存亡をテーマに描いた感動の物語。(『ドーム―終末への序曲』改題)
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巨大な剣竜や爬虫類がいた六千万年も前の中生代の岩層から、奇妙な砂時計が発見された。その砂は、いくら落ちても減らず、上から下へ間断なく砂がこぼれおちて、四次元の不思議な世界を作り出していた。常識では考えられない超科学的現象……! さらに不可解な事件が起きた。この出土品の発見場所の古墳へ出向いていた関係者が、次々と行方不明となり、変死を遂げてしまったのだ――。強大な内なる闇に対抗するための、遥かな時間と空間を超えた壮大な戦いを、迫力に満ちたイマジネーションで描く日本を代表するSF長編作。偶然発見された、貴重な創作メモを収録。作家の思考の流れを詳細に辿り、創作の原点を明らかにするエキサイティングな特典解説つき!
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豪華客船『北斗』の船中で、殺人事件が発生した。福岡から日本一周の旅に出発し、舞鶴港に入港する直前の出来事であった。海上での犯罪ゆえ、海上保安庁と府警の合同捜索網が引かれ、その初動捜査の中、ひとりの不審人物が浮かび上がった。水野重治という人物が、船中から姿を消していたのだ。福岡から舞鶴沖まで無寄港であることから、海への脱出しか考えられない。さらに殺害された被害者のひとりは、乗船名簿にある名前と顔が一致しないことが判明した。では殺されたのは誰なのか。消えた男の行方は……。現実と幻想の狭間を蠢く男を綴る長編ハードロマン。
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多発性骨髄腫――末期癌の中でも最も激しい痛みを伴うこの悪魔が、日邑勘造の全身を蝕んでいた。日々苦痛に顔を歪める夫を見るたびに、妻は“安楽死”ばかりが脳裡に浮ぶ。そこへ“古い友人”と名乗る老人が見舞いに現れた。妻が老人を残し病室を空けた一瞬、老人は日邑に何かを注射して忽然と消えた。目撃した看護婦が、事件を公にした。担当の医師は毒物注射を疑い検査を始めるが、予想に反し日邑は恢復の兆しを見せた……。突然姿を消した老人とは何者か。そして、極限の苦痛から解き放つ奇蹟の薬とは。現代医療の矛盾と安楽死問題に、一石を投じる長編ハードサスペンス。
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そのとき、ブレーキの軋みと、若い男の叫ぶと、衝突音が同時に起こった。“はねてしまった……!”道路に倒れている男は動かない。が、彼は辺りに誰もいないことに気付いた……。車体の傷から轢き逃げの発覚を恐れた彼は、車を修理に出した。が、あとで、車の損傷部分をカメラに納めて帰った男がいることを知らされた。そして、その男の正体が、会社の陰険な部下であることを知ったとき、彼は心にどす黒い殺意が吹き上げてくるのを覚えた! ある日の出来事をきっかけに、平穏な日常から恐ろしい魔界に落ち込む、人間の恐怖と戦慄を描くブラック・ロマンの世界。全5篇収録!
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瀬戸内海に浮かぶ小島・黒島で、不可解な死体が発見された。場所は砂礫岩の裸地帯・北峠。死体の状況は、50メートル前後上空からの墜落死と思われた。自殺なのか、他殺なのか。もしくは事故なのか。被害者は85歳になる島の老人で、航空機やヘリコプターに乗っていた痕跡はない。また周囲には一本の高木も生えていなかった。それではどうやって……? 直後、再び老婆が変死体で発見された。今度は百舌の速贄さながら、木の枝に串刺しとなっていたのだ。即日設置された捜査本部は色めき立った。そして、多くの謎を残したまま第3の犠牲者が――。人類の大罪を問う傑作幻想長編。
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少年時代の終わりの日、僕は姉を犯そうとする「アレ」を撲殺した。執着と断絶を繰り返す異形の家族のサーガを既存の枠組みを踏み越え、ガルシア・マルケスにも擬えられるマジックリアリズム的手法で描く壮大な物語。
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南アルプスの荒涼とした岩山を中心に、ひとりの老猟師が“荒野の王者”と名付ける三頭の獣が棲息していた。巨大な犬鷲、狂猛な巨熊、長大な牙を誇る猪……老猟師は、いつしかすべての王者たちと闘う日が来るとは思っていた。が、とりわけ怨敵と考えていたのは、可愛い嫁や孫をはじめ猟犬の“隼”までも鋭爪にかけた巨熊だった。そんな折、老猟師は一匹の仔犬を拾い、二代目“隼”と名付けた。王者たちとの対決の日は刻一刻と近づいてくる……。最後の闘いに残り少ない命を燃やす老猟師と、一匹の犬との交流を描き、生命の不思議と悲しさを謳い上げた壮大なドラマ。作家・西村寿行の幻の処女長編であり、原点ともいえる名作。
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逃亡中の犯罪人・徳蔵は、山中で死にかけた仔犬をひろい、ゴロと名付けた。しかし、ゴロは骨肉しか喰わず、長ずるにつれて不敵な面持ちを備え始めた。四肢は異様に太く、眼窩は裂け、切れ長の目には底知れぬ青い光をたたえていた……。そして村の犬はゴロを避け、山からは鹿や猪が姿を消した。そんなある冬の夜、徳蔵は、悲壮感のこもったすさまじい咆哮をきいた。それ以来、徳蔵はゴロの姿を見なくなった。――徳蔵は新聞記事で、“猟師に追われた最後の日本狼”の話を知ったのは、それからしばらく後のことであった……。動物と人間との葛藤と交流を描く、西村寿行の感動の動物小説! 全6篇収録。
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放浪無頼の鉈割瓢と斧割糺は蔵王五色岳山麓で事もあろうに巨大な虎に出喰した。それは来日中の中国遼東雑技団から逃げ出した体長4メートルを超すアムール虎で、名は剛剛。剛剛には台湾側の手で中国の核ミサイル配置に関する極秘情報がボディランゲージとして憶え込ませてあるという。国際軍事バランスの鍵を握る巨大虎を手中にせんと台中米ソの精鋭部隊が大挙日本に乗り込む―。奇縁によって結ばれた城岬涼子と鉈割・斧割の三人は、アムール虎をめぐる血で血を洗う凄絶な攻防に巻き込まれ、遂には海を渡る。暴力と性の極限、男女の愛憎の相克を描いた比類なきハードロマン。
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無頼船の異名を持つ世界損保連盟の調査船、孤北丸は英国から喜望峰回りで帰国することになっていたが、南アフリカ共和国沖でまたもペーパーパイレーツ調査の依頼を受けた。結果、南アフリカ共和国の秘密警察とCIA要員テリーの演出したものとわかったが、既にジェーンを拉致され、テリーはオーストラリアへ帰っていた。無頼船は一路オーストラリアに向かった。だが、テリーらの巣窟があるタスマニア島に、事件の鍵を突き止めた一行を待ち受けていたものは巨大な桃源郷だった……。小数民族の興亡にメスを入れた意欲作!痛快冒険アクション・ロマン、シリーズ第5弾。
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世界初の小型電卓の開発で驚異的な成長をとげたOAメーカー〈ルコー〉は白藤三兄弟を中心とする同族によって経営されていたが、今日の繁栄をもたらした最大の功労者である天才的研究家・末弟の起人の不可解な死の後、次々と惨劇に襲われる。社長・隆太の自ら操縦する軽飛行機が墜落、死亡。その葬儀の席で、起人のかつての愛人で最近は隆太と親しかった常務の弥栄子が変死――。不吉な予感のなか、一族につながる女子大生・透子は起人の息子・秋人との出会いに運命的なものを感じ、急速に傾斜してゆく――。“死後の完全犯罪”の謎と悲劇的な愛が交錯する、会心のロマンティック・ミステリー。
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「おまえを殺す!」有能な医師を前に、十五年前の友人で今では著名な弁護士となっている男の吐いた言葉がそれであった。――社会的地位も得た人間同士が、遥か昔の誓いを理由に、なぜ殺し合わねばならないのだ……。しかし弁護士は、一方的に実行を宣言するのであった。原因はひとりの女にあった。過去ふたりは同時に同じ女に求愛していることを知り、互いに永久に彼女には手を出さないと約束を交わしたのだった。が、今、女は医師の愛人となっていた……。妄想が妄想を呼び、死を賭して闘う男ふたりと、運命に弄ばれる女の結末は……? スリルあふれるハードロマンの世界!
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