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ドルゴンがともかく魅力的な人物
歴史的事実にある程度基づいているとはいえ、小説である以上とうぜんフィクションが随所におりまぜられているが、とくにこの小説の下巻からの事実上の主役である摂政ドルゴンの人間的魅力には圧倒される。司馬文学得意の超高度な人物描写によるものだが、これが小説と割り切っていないと最近の歴女とかのように真の人物像を見誤ってしまうかもしれない。
さてクライマックスとなる李自成軍隊清朝軍の戦い。これが実に域で壮大で感慨ひとしおだ。中でも「戦いは序盤からいきなり終盤となった」という一説は司馬遼太郎文学の中をとどまらず、日本文学界に燦然と輝く歴史的名文といっても過言ではないだろう。 -
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人心掌握術の達人
明の建国の祖というだけでは興味がわかない人も、あの大モンゴル帝国の中心国である元を滅ぼした人間としてみれば興味がもう少しわくかもしれない。
かつて歴史上最大の領土を誇ったモンゴル帝国も分裂後、最大領域のみならず最強だったのがシナを抑えていた元だった。そしてこの最大部分を倒したのが朱元璋であり、しかも元はモンゴル帝国で最初に崩壊した国家となってしまった。
ちなみにロシアなどは15世紀後半になってようやくタタールのくびき(キプチャク)より独立できたのだから、朱元璋の軍事力の強さはそれだけでも歴史的なものだった。
この小説は貧農~乞食僧より白蓮教に加わり、持ち前の人心掌握術を駆使し...続きを読む -
北宋は日本と特異な関係の王朝
この著作は北宋の開祖で初代皇帝となった趙匡胤の物語だ。
ただ日本ではこの人物があまり人気がないばかりか有名でもない。そもそも北宋自体が歴代のシナの王朝の中で、領土的にも小さく、また軍事力も弱いため歴代北方民族に侵攻されては敗北をつづけていたという、いわばパッとしない王朝故是非に及ばずかもしれない。
しかるに日本との関係を考えると、この北宋という国は決して無視できない存在となっている。
確かに北宋は軍事では弱かったが経済大国であり、そのため遠くアラビアやペルシャからも商人たちが渡来し海外貿易が盛んであり、記録上ではユダヤ人移住者が初めてこの時代シナの歴史文献に記載されているほど...続きを読む -
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