2013年6月。香港発の情報は世界を震撼させ、そして激怒
させた。アメリカ政府の情報収集活動に係わったエドワード・
スノーデンがアメリカ国家安全保障局(NSA)が行って
いる広範囲な個人情報収集の手口を暴露したからだ。
『暴露 スノーデンが私に託したファイル』(グレン・
グリーンウォルド 新潮社)
...続きを読むは、スノーデンが入手した
NSAの極秘資料を公表する為に接触したジャーナリスト
による作品だったが、本書はグリーンウォルドが発表の
場としたイギリス紙「ガーディアン」に重きを置いて
書かれている。
なので、実際にスノーデンがどのような資料を持ち出したかに
ついては『暴露』の方が詳細な掲載をしているし、スノーデン
との邂逅までの緊迫感もある。こちらはアメリカよりもイギリス
や周辺国について、より詳しく綴っている。
そりゃね、ある程度のインターネットの監視はされているとは
思っていたよ。でもね、まさか現実に「ビッグ・ブラザー」が
いるとは思わなかった。あれはジョージ・オーウェルの小説の
なかだけのお話だと思っていたもの。
スノーデンが暴露したNSAの手口は勿論、衝撃的だったが、
本書で一番印象深かったのはイギリス当局による「ガーディアン」
への圧力である。
憲法で報道の自由が保障されているアメリカと違って、イギリス
では保障されないこと。もう目の敵ですよ、編集部は。新聞社の
コンピュータのハードディスクを破壊させるなんて暴挙、日本で
は考えられない。
あ…日本でも特定秘密保護法が施行されたんだっけ。現在の安倍
政権はメディアへの注文もうるさいっていうから、そのうち日本
にも「ビッグ・ブラザー」が生まれるのかしら。
『暴露』を先に読んでおくと本書の内容も分かり易いかもしれない。
スノーデンの生い立ちや、暴露に至った心境、アメリカ政府のや
同盟国なのに首相の携帯電話が盗聴されていたドイツの動きなど
にも注目。
スノーデンが乗っているかもしれないから…と、EU諸国がボリビア
大統領の乗った飛行機の上空通過を拒否って酷過ぎるだろう。結局は
スノーデンは搭乗しておらず、大統領を激怒させただけってさぁ。
まぬけか、CIA。
「NSAが収集していた大量のメタデータの分析によって、差し迫る
テロ攻撃を阻止できた事例を、政府は一つとして示していない」
アメリカ・連邦判事の言葉だ。そう、あらゆるデータを集めても
ボストンマラソンでのテロは阻止できなかったものな。ただ集め
ただけで、分析まで出来てないんでしょ。情報があまりにも多くて。
それにしてもスノーデンである。期限付きロシア亡命だったけど、
既に1年が経ったが未だにロシアにいるらしい。アメリカに帰れ
ないよな、収監されちゃうもの。2度と祖国には戻れないんだ
ろうか。