矢崎存美のレビュー一覧
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ネタバレ母一人子一人で育った泰隆は、母の再婚を機に会社を辞める。
我がままな夫に振り回された結果の母の離婚を、当時小学生だった泰隆は当然と受け止め、これ以上母に心労を与えないために自分ができること=いい子になった。
勉強はやれば結果を出すことができた。
足は速かったので、陸上部に所属した。
クラス委員やイベントの実行委員に立候補しては、卒なくこなした。
いい大学に行き、いい会社に入った。
何の問題もないはずだった。
だけど、本当の自分はどこにいるのだろう?と思った。
やりたいことがわからなかった。
朝、起きられなくなった。
でも母の期待を裏切ることはできなかった。
で、母の再婚をきっかけに会社を辞め、行きがかりで大学の先輩がやっているバーを手伝うことになった。
そこでは朝から午後2時まで朝食専門カフェを違う人が営業していて、夜からは泰隆が手伝うバーになるのだが、カフェを営んでいたのがぬいぐるみのブタ。
大学の先輩夫婦といい、カフェの店長ぶたぶたさんといい、常連の見上さんといい、適度に距離を置きながら泰隆のことを見ていてくれるのは、読者としては安心材料。
だからこそ、母親が真相を知った時の取り乱しようにぎょっとしたのだけれど。
「お母さんもよく頼んであげるから、会社に戻りなさい!」
それを言っちゃあおしまいよ。
親も子も互いを思うのはごく自然な感情で、それを変に気を回すから自責感に苛まれてしまう。
親のため、子どものためと言え、自分で考えて行った行為を、その相手が負担に感じる必要なんてない。
お互いさまなのだ。
見上さんの日常を垣間見るに、一条ゆかりのエッセイみたいだなあと思ったけれど、部屋を見たらマンガ家じゃないことはすぐにわかった。
ということは…大した謎じゃないんだな。
ひとつ、泰隆視点で書かれたり三人称で書かれたりが煩雑で、大学の先輩に対して綿貫とか、「見上さん」と言いながら遥はと書いてあったりするのにいちいちひっかかってしまう。
視点は統一してほしかったな。 -
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春日署に配属された新人刑事立川くんは、上司と紹介された山崎ぶたぶたさんに戸惑いを感じる。
だってどう見てもぶたのぬいぐるみなんだ。バレーボールくらいの大きさで、手足の先には濃いピンクの布が貼ってある。目は黒いビーズで、右耳がすこしそっくり返り、黄色いリュックを背負っている。
かわいい。
とてもかわいい。
でも中身は中年男性で、しかも奥さんと子供もいるんだって!?
立川くんは、ぶたぶたさんと事件を担当してゆくことになる。銀行立てこもり事件、宝石窃盗犯、ぬいぐるみへの針混入事件、家庭の居場所を求める小学生のお相手、そしてそれらの根本にあるのは赤ちゃんが自宅から連れ去られた事件。
ぶたぶたさんに関わった人たちは少しずつ変わってゆく。
「ぶたぶた」シリーズ。
前作の短編集は、お話ごとにぶたぶたさんの職業や環境が違っていたけれど、こちらでは1冊通して刑事で、事件も繋がっている。私はこちらのように同じぶたぶたさんでいてくれたほうが読みやすい。
こちらに出てくる事件や人の悩みは切ないものが多い。普通の家族なんだがすれ違ってしまうこと、性同一性障害、昔の友達への申し訳無さ、人間の心理の怖さ…。
ぶたぶたさんは、大型犬に乗ったり、コインランドリーで洗われたり、とんかつ食べて立川くんに「共食い…??」と混乱されたり(先輩刑事に「共食いならぬいぐるみを食べるだろ?ブタ食べたって共食いにはならんだろ」と言われて余計に混乱w)、、とにかくかわいい、かわいい。
起きていることはなかなかシリアスなんだが、ぶたぶたさんや立川くん達刑事たちがいい人たちで緩和してくれている。 -
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東京には、動くピンクのぶたのぬいぐるみが現れるという。バレーボールくらいの大きさで、手足の先には濃いピンクの布が貼ってある。目は黒いビーズで、右耳がすこしそっくり返り、黄色いリュックを背負っている。
かわいい。
とてもかわいい。
私こういう者です。渡された名刺には「山崎ぶたぶた」と書いてある。
ある時はベビーシッター、ある時はタクシー運転手、ある時はぬいぐるみ売り場の店員さん、そしてある時は…。
ぶたぶたに出会った人々は最初は戸惑うがすぐに受け入れる。だって生きているぬいぐるみっていうだけで、あまりにも自然に存在しているのだから。
家でしたい小学生、忙しい勤め人、人を殺したくなる青年、家族と離れてしまった人…、彼らはぶたぶたさんと接して少しずつ変わってゆく。
人々が抱えている悩みは日常的だが生きることの切なさが感じられる。ぶたぶたさんの存在でほんわかしているのだが、生きることの哀切も感じる。 -
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ネタバレ目次
・山崎さん① 本日の執事
・山崎さん② 本日のスイーツ
・角の写真館
・死ぬにはきっと、うってつけの日
・ボランティア
・最強の助っ人
・恐怖の先には
・噂の人
・新しいお母さん
・途中下車
・ぶたぶたさん
20~30ページほどの短い作品がいくつもあると、しかもそれがシリーズ物だと、感想を書くのが難しい。
安定のぶたぶたさん、としか言いようがないから。
どれも面白かったけれど、一番好きなのはというと『新しいお母さん』かな。
新しいお母さんは、うどん屋さんで働いていたお姉さんで、心の中ではとても嬉しく思っているけれど、なかなか言葉に出して言えない大河。
年長さんは随分言葉を知っているけれど、自分の心を伝える言葉って、なかなか難しいものね。
だけど幼稚園の上のクラスの女の子のお父さんであるぶたぶたさんについて、お母さんに話したところから、二人の距離は俄然縮まる。
ふたりでぶたぶたさんの家を探し、待ち伏せし、写真を撮らせてもらい…気がつけばお母さんとすっかり仲良しに。
新しいお母さんのこと好きなのに、恥ずかしくてぶっきらぼうな態度を取ってしまう。
そんな自分を反省するけれど、やっぱり思った通りには喋れなくて…という子どもの気持と、嫌われているのかと不安に思いながらもせかすことなく子どもに向き合う新しいお母さん。
優しくふたりの気持をすくい取って書く作者。
ホカホカと温かい気持ちになれました。
個人的には執事喫茶でぶたぶたさんに接客して欲しい。 -
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ネタバレ目次
・初めてのお一人様
・鼻が臭い
・プリンのキゲン
・初めてのバイト
ぶたぶたの話に慣れてきたからでしょうか、どれも想像の範囲内の話でした。
とくに、「初めてのバイト」。
ぶたぶたさんにまだ会ったことのない若葉が、風邪をひいた従姉の代わりに「キッチンぶたぶた」に行ったら、ぶたぶたさんが誘拐された!と大騒ぎになっていて……。
誰もぶたぶたさんの外見について説明することなく、若葉に「探してきて」という言う不自然さはさておき、みんなの言葉だけで状況を想像する若葉を面白がるのはちょっと悪趣味だなあ、と思いながら読んでいたのですが、最終的にやっぱり面白かったわ。←悪趣味だなあ -
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ネタバレ目次
・再会の夏
・隣の女
・次の日
・小さなストーカー
・桜色七日
スピンオフ作品多めの短編集。
特に『ぶたぶたの食卓』収録の『十三年目の再会』の前日譚である『桜色七日』がよい。
作者もこれを書きたくてこの本を出したようなものというだけあって、小池信江の、孫娘に対する愛情と、その後の彼女の運命を知ってしまっているがゆえの読み手が感じる切なさが相まって、胸が苦しくなってしまった。
個人的にお気に入りなのは『小さなストーカー』。
幼児がまっすぐに語る正論には誰も敵わない。
時も場所もかまわず言いたい事を言い、周囲の大人たちが振り回されても全然平気。
彼女の声、私の脳内ではトトロのメイちゃんでした。
可愛い可愛いぶたぶたさんの末娘。 -
購入済み
ブラウザで読めなくなった
文庫本も購入していて、外でも読めるようにこちらを購入したのだけど、最初はブラウザで読んでいたのに、いつの間にかアプリだけになっていた
続刊も購入したのに読めない
作品の感想じゃなくてごめんなさい -
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ネタバレ目次
・神様が来た!
・伝説のホスト
・気まずい時間
・ふたりの夜
・冬の庭園
ぶたぶたさんをめぐる、それぞれ無関係の短編が収録されています。
どれも語り手の思い込みや勘違いが、実際のぶたぶたさんとどんどんかけ離れていって、笑える作品となっています。
・神さまがお渡りになる祭りの日に現れた、ぶたぶたさん。(神様が来た!)
・伝説のナンバーワンホストに店を手伝ってもらえるよう頼みに行ったのだけど、ぶたぶたさんがホストですと?(伝説のホスト)
・家庭訪問の日にたまたま留守番をしていたら現れた担任の先生って…!?(気まずい時間)
・〆切は迫るのにアシスタントから逃げられ絶体絶命!と思った時に現れた凄腕のアシスタントとは(ふたりの夜)
・とあるビルを舞台に、そこで働く人々とぶたぶたさんとのちょっとした一コマがいくつか。
どれも面白かったけど、(神様が来た!)が面白かったな。
あと、このシリーズの読者で小学生を持つお父さんがどれくらいいるかわからないけど、もしいたとしたら、(気まずい時間)が刺さるのではないでしょうか。
お父さんはどれだけ子どものことわかっていますか?
子どもに「もっとお父さんと話がしたい」と言ってもらえるのはほんの短い期間。
担任の先生がぶたのぬいぐるみってことはほぼないでしょうが、共通の話題で盛り上がれるといいですね。 -
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ネタバレ目次
・キリ番とアップルパイ
・お守りの代わりに
・賢者フェルナンド
・雪の夜
・消えていく秘密
今回は会員制喫茶店の店員になったぶたぶたさん。
会員制と言っても高級店だというわけではなく、あまり客を増やしたくないという、オーナーの妙なこだわりのため。
ぶたぶたさんはそこ(3号店)で、コーヒーを淹れたりスイーツを作ったりしている。
秘密を話せ?――それはオーナーが勝手に言ってることだから、気にしなくてよし。
だけどぶたぶたさんの人柄に触れ、親しくなってくると、誰にも言えない秘密、一人で抱えている秘密を話してみようかな…という気になってくるのがお約束。
今回本当に深刻な秘密を抱えていたのは、会員ではなく、会員である少年のお兄さんの婚約者だった。
小さいころから人には見えないものが見える。
だけどそれは、「人に言ってはいけません」と両親に言われ、逆に彼女の心に強く住みついてしまった。
見たくないもの、見えてはいけないと思い込まされてきたものから目を逸らし続けているうちに、無意識に自分を追いつめてしまっていた彼女。
とても、とても勇気のいることだったであろう、それを向きあうこと。
彼女はたった一人でそれを決意した。
ぶたぶたさんをお守りに。
婚約を解消してまで。
面白かったのは『賢者フェルナンド』
売れっ子イラストレーターが誰にも内緒で、自分が好きな世界のマンガを描いてネットにあげていた。
誰にも教えていなかったのに、気づいたのは中学時代の漫研仲間だった。
これ、悪意の話かと思って読んだのだけど、普通に昔の友だちと交際を再開させて、普通に懐かしくて、でもちゃんと互いに大人になっていて、とても良かった。
すぐ悪く勘繰るの、良くないね。
連作短編の体をなしていますが、長編と言ってよいでしょう。
ちゃんとみんなが収まるべきところに収まります。
特別なハッピーもなければ、特別な悲劇もなく。
あるがままにぶたぶたさんはそこにいて、全て世はこともなし。 -
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ネタバレ目次
・夏の日のぶたぶた
・紹介したい人
今回のぶたぶたさんは、山の中にある幽霊屋敷に住み、本を読むという仕事をしているらしい。
ふもとのコンビニで父の手伝いとして配達をしている一郎は、最初こそ驚くが、すぐにぶたぶたさんと仲良しになる。
母が弟を連れて実家に帰ってしまったこと、幼なじみの久美の様子が最近ちょっとおかしいことを気にしながら、何もできないでいる一郎。
しかし、結果何もできなかったとしても、何もしようとしないのは違う。
このひと夏の経験の後日談が、「紹介したい人」に繋がっているのだが、語り手が弟の冬二となることで俄然ユーモアの度合いが増す。
「夏の日のぶたぶた」のときはまだ6歳で、両親の不和のことも兄の経験も知らなかった冬二は、ぶたぶたさんと語らう兄を見て、親のショックを和らげるために奔走する。
…って、一番ショック受けたのは冬二だよね。 -
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ネタバレ表紙のタイトルが気に入って読んだ。短編物は一般小説を読んでいるとどうしても物足りなくて、かといって短編だけど、一つ一つが最後につながって..といったものもそろそろ読み飽きてって思ってましたが、いい意味で裏切られました。一話一話はボリュームがないはずなのに奥深くていろいろ考えさせられる、それでいて、結末に驚かされる。決して小粒ではない短編なのに読み応えのある大粒の傑作集でした。女性作家が集まって作られた作品ということもあり、優しく包み込まれるような話ばかりで、一気に読むよりは一日一話づつちょっとづつ読むのがいいのかもしれません。
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ネタバレ目次
・人形の夜~春の物語
・柔らかな奇跡~夏の物語
・不機嫌なデズデモーナ~秋の物語
・アリスの迷宮ホテル~冬の物語
・小さき者と大きな空~再び、春の物語
今回のぶたぶたさんは、海辺の瀟洒なリゾートホテルで、基本的にはお客さんに姿を見せないバトラー兼社員の指導係。
そのせいか、姿を目撃した者は幸せになれるという伝説があるとかないとか。
通しのストーリーとしては、ホテルの周年イベントとして、街の人たちが演じるお芝居を、東京の有名な演出家の指導の下におこなう、というもの。
演目はシェークスピアの『オセロ』
4大悲劇の一つです。
が、演出家は、この舞台の主役といってもいいくらいの重要な役イアーゴーの役をぜひぶたぶたさんに、とゴネる。
え?マジすか?
その他のキャストにもいろいろ事情があったりで面白いのだけど、なんといっても実際の舞台の様子が最後の「小さき者と大きな空」で描写されていて、演出家の意図がわかると納得しかない展開に。
これからこの本を読む方は、ぶたぶたさんがこの芝居唯一の悪役をどう演じるか、を楽しみにお読みください。
そして、単純に大笑いしたのが「アリスの迷宮ホテル」。
ホテルに缶詰めになったホラー作家が、ぶたぶたさんと関わることでどんどん壊れていく…っていうか、最終的にはヒット作書けてよかったね、ホラーじゃないけど。
作家の脳内がもう大爆笑で、おすすめ。