アガサ・クリスティーのレビュー一覧
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素晴らしかった!
クリスティのウエスト・マコット名義で書いた本を読んでいる。これもまた恋愛、家族について考えさせられる。
死を選びそうな女性(主人公)が、出会った人にこれまでの人生を夜通し話すというスタイルで、幼少期の話から始まる。そこは正直読んでいて少しダルい感じもしてしまうのだが、主人公が内気な妄想好きの少女だった、ということがわかる。少女が大人になって、恋愛話が出てくると、一気に面白くなってくる!いろんな人から救愛されるのだけど、ちょっとでも違和感を感じると、彼女は流されず、断る。きちんと自分の好きな人を結婚相手として選ぶことができた。はずなのだが、ずっと続くと思われた結婚関係が、相手方の勝手な考え方や行動によって終わりを告げる。性格の違い(新しい物好き、独特の冷淡さ)によって破綻する。シーリア(主人公)は、それまでずっと夫に関してあれ?と思うことがあっても、包むような優しさで違和感を覆い隠し、彼に合わせてあげてきた。10年以上の結婚生活をぼいと捨てられる。本当に理不尽です。愛される人より愛してきた人の方が辛いです、多分。
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ネタバレポアロシリーズ⑯
「いいかい、彼女を殺してしまわなきゃいけないんだよ」
その言葉は夜の静寂へと流れでて、ややしばらくその辺りを漂い、やがて闇の中を死海の方へ消えていった。
冒頭から不穏な空気が満ちる。
そして、その場に居合わせてしまうポアロ。
家族を抑圧し支配下に置くボイントン夫人。歪んだ家族の形に、ボイントン家の誰もが陰気で無気力でどこか張り詰めていた。
そして、ヨルダンでの家族旅行の際、ボイントン夫人が死んだ。その手首には注射の跡があった。
ボイントン家の誰もが疑わしい。しかもポアロの聞いたセリフが疑念を後押しする。
しかし、ポアロは現場の事実を整理し、関係者の証言を聞くことで、矛盾を見つけ、それぞれの嘘を見つけ出す。
そして提示された真犯人。全く考えもしなかった人物で驚かされた。
事件が解決した後、どこまでも嫌な母親だったボイントン夫人について、次女のジネヴラの言葉が印象的だった。
「お母さんは変だったわ。みんなが幸福になった今思うと、なんだか可哀想に思えてくるわ。お母さんの人生の望みは叶えられなかったのね。それはお母さんにとっても難しかったのでしょうね」 -
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ネタバレ(再読後)
すごい…1回目と全然印象が違う。霧が晴れたように、細かい部分の面白さがわかる。色々つながる。人物描写も魅力的に感じるようになった。
だけど…ミスリードするためにわざと入れたように思える部分がいくつもあって、まんまと混乱したせいもあって、クリスティひどい〜と思ってしまった(以下ネタバレあり)。
1つ目は、牧師ではなくローレンスが語り手になって、プロザロー家のメイドに話を聞く場面。「わたし自身、彼女が犯罪に関わっているとは考えたくなかった。…彼女であるわけがない!なぜなのだろう?」
2つ目は、ストーン博士事件の謎。なぜスーツケースを置いていった?列車に乗り遅れそうになるほど熱弁をふるっていた理由は?
3つ目は、グリゼルダとデニスが警告電話をした話。牧師の身内がそんなことしちゃダメでしょ…。
(1回目に読んだ時の感想)
久々のクリスティ、登場人物多めで名前もややこしく、何度も登場人物リストを見返す羽目に…
次々と小さな事件が起こるし、話があちこちに飛ぶし「今は言えない」的なはぐらかしも多くて、迷子…。
この話、どこに出てきたっけ?と戻ろうとしても見つけられずモヤモヤ。
もう一度読み直さないとわけがわからないなぁと、自分の頭の悪さを実感させられてしまった。 -
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ネタバレポアロもの(ラスト)。
原題に「POIROT'S LAST CASE」とあるように、ポアロ最後の事件でございます。
ヘイスティングズは、ポアロの招待で彼との出会いの場所、〈スタイルズ荘〉に再び招かれます。
久々に対面したポアロは、老いと病で自由の利かない身体になってしまっていたものの、ご自慢の“灰色の脳細胞”は健在でした。
そんなポアロはヘイスティングズに過去に起きた、一見無関係に思える5つの殺人事件の背後に潜む人物が、このスタイルズ荘に滞在していると告げて・・。
あぁ・・なんて、悲しい結末なんだろう・・。
ポアロの最期についてはクリスティー他作品の“無神経な”解説などによって知ってはいましたが、彼の衝撃的な“決断”は本書を読んで知ったので、ちょっとショックでしたね。
そういった面を含めて、ある意味本作品は問題作とも言えるかもしれません。
「ヘイスティングズ、これが私の最後の事件となるでしょう。
そして、これまでで最も興味深い事件となるでしょう。
──なにしろこれまでで最も興味深い人物が犯人なのですから・・」
そう、今回の犯人「X」は、人の心を巧みに操り、“洗脳くん”ばりのマインドコントロールで犯行をそそのかす狡猾な人物。
このような手合いにかかると、脇が甘々のヘイスティングズなんて恰好のカモというか、実際、危うく闇落ちしそうになっていてヒヤヒヤさせられました。
・・おっと、一応フィルターはしていますが、これ以上内容に触れない方が良いですね。
この手強い「X」を相手にポアロの下した“決断”は、あるいは賛否分かれるかもしれません。
ただ、そうせざるを得なかった彼の苦渋を思うにつけ、その悲しみが伝わってきますし、ラストのポアロの手記に書かれている、ヘイスティングズへのあふれんばかりの友情に、思わず胸が熱くなった私でした。
「思えばすばらしい日々でした。
はい、ずっとすばらしい日々でした・・」
・・ありがとうポアロ、あなたの灰色の脳細胞は永遠です。
ということで、まさに今年の締めに相応しい一冊でございました。
そして、これにて今年最後のレビューとなります。
皆さま、よいお年を~(^^)/ -
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早いもので、今年も「クリスマスはクリスティー」の時期がやって来ました♪
てなわけで、久々のポアロもの。
文学者昼食会に出席したオリヴァ夫人は、ミセス・バートン=コックスなる女性から奇妙な依頼をされます。
その内容は、“自分の息子・デズモンドの恋人で、オリヴァ夫人の名付け子・シリヤの両親が過去に心中事件で亡くなっているが、夫と妻のうちどちらが先に拳銃を撃ったのか?”というもので…。
過去に起きた心中事件を再調査して真相追求する、所謂“回想殺人”ものですね。
他の方のレビューにもありますが『五匹の子豚』を彷彿させるものがあります。
さて、後期ポアロもの準レギュラーともいえるオリヴァ夫人が(心中事件の起きた)当時の事情を覚えていそうな人々(=象)へ、ヒアリングの為に訪ね歩くのですが、まさに“ミセス・オリヴァ活動中”(←という章タイトルまであるw)”といった感じで、何ならポアロよりも精力的に動いている印象で、今回オリヴァ夫人頑張ってましたね!
展開としては、件の過去に起きた心中事件をめぐるあれこれを様々な人々の記憶をたどって真偽を取捨選択していくものなので、ある意味地味というか、ミステリ的な二転三転といった動きはないのですが、そこは人間描写が抜群に上手いクリスティー。
人々の語りから登場人物達の個性が生き生きと伝わってくるので、おしゃべり部分を読んでいるだけでも楽しいですね。
そうした人々の記憶の断片から推理を構築していくポアロはやはり流石でございます。
まぁ、中盤で真相を知っていそうな人物が判明していたので、ちゃっちゃとその人に話を聞きにいけば早く済んだと言えばそうなのですけど、そこはポアロなりの配慮で最後の最後まで慎重に事を運んだってことなんでしょうね。
こうして、明らかになった心中事件の真相はとても悲しい事情があったわけですが、シリヤがそれを受け入れてデズモンドと幸せになってくれそうだったので良かったです。
ということで、ミステリというより愛憎劇といった感が強かった本作ではありますが、“やっぱ、クリスティーええわ~”とクリスティーの巧さを実感した次第です。
因みに、温存していたポアロもの長編シリーズが残すところ『ブラック・コーヒー 小説版 』『カーテン』の二作のみになってしまいました・・もうこうなったら、一気に残り二作続けて読んでしまおう!と目論んでおります~( *´艸`) -
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ネタバレその人生を幸福と呼ぶか。
ヒュー・ノリーズの元にゲイブリエルが死にそうだと報せが来る。ノリーズはゲイブリエルを憎んでいた。イザベラを死なせたゲイブリエルを。ノリーズの語るゲイブリエルの物語。
一気に読ませる。メアリ・ウェストマコット名義の作品なのでいわゆるミステリではない。しかし最後に明かされる真相に向かって進み、最後の打撃に痺れるという点では実によくできたミステリ的。
軽薄で自己宣伝的な醜男ゲイブリエル。彼の根底に流れる高貴なものへの歪んだ感情。生まれながらに貴族というのが日本には(一応)ないので、ここら辺の大英帝国的な価値観を完璧に理解はできないけど、なんとなく感覚的にはわかる。自分がつまらない、みっともないものだと思わされてしまう存在がそこにいて、それを愛してしまう苦しみ。ゲイブリエルの吐露には活字なのに巻き込まれそうな勢いがある。
まっすぐなイザベラ。彼女は自分で決めたことしかしない。そんな彼女の前でゲイブリエルが襲われた。銃弾に貫かれたのはイザベラだった。それが意味するところとは。背表紙のあらすじを読むと(本当にこのあらすじが9割)キリスト教的博愛とは『塩狩峠』みたいなもので、この話はイザベラがゲイブリエルを愛していたという解釈ではないのかと思ったが。
ダメ男に次々と引っかかる感傷的な女性とか、大袈裟におせっかいを焼く高齢女性とか、悪人ではなく平凡なまとめ役とか、ズレていると思いきや放った不思議な一言が真実を指している芸術家とか、相変わらず登場人物の描き方が秀逸。カッコいいと思ったのは、大英帝国の大奥様を象徴するレディー・セント・ルーと、クールに周囲の観察をして如才なく立ち回る義姉テレサ。語り手のヒューには病んでいるように見えて、その根は健康な精神を持っていると感じた。
第二次世界大戦末期における大時代なイギリスの終焉が感じられるのも面白い。この先に『日の名残り』があるのだと感じる。 -
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動機と殺害可能な状況、という理由で、完全に犯人にされそうな状況のエリノア。エリノアを信じたいロード医師に頼まれてポアロは真実解明に乗り出す。ポアロがいろいろな点に着眼して裏取りの手回しをしているけど、最終的には裁判で明らかになる形になっている。
この話は実はTVドラマでも見たが、ポアロは『味音痴のイギリス人が、サンドイッチの味の違いなんて分かるわけない』というようなことを言っている。イギリス人ではないポアロが軽くディスっている?小説にはそのシーンは無くて、テレビ用の脚色だったことに気づいた。あれ、面白かったんだけど…そうか、原作には無かったのか。
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ネタバレクリスティのマープルシリーズ第五弾。
ある一家の女主人に何か悪いことが起きそうだと、その女主人の姉から様子を見てきてほしいと頼まれたマープル。女主人の一族が勢揃いする中、銃声が響き…
マープルが最初から最後まで、小さいコミュニティの中で起きる事件にガッツリと関わる、これまでになかったケース。そこそこ多い一族から順番に事情を聞いて(というか聞かされて)、いつものとおり、村で起こった出来事と付き合わせて真相に迫る。
真相自体は意外性のあるものではないが、非常に手堅い完成度。だからある意味、地味すぎて埋もれてしまう作品なのかも。登場人物が多く、関係性が非常に複雑なのはマイナスか。
代表作と比べると影が薄くなるが、燻銀のような作品。悪くないです。