野中香方子のレビュー一覧
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共感はブラインドスポットを作り出し、それは即ち悪を生み出す。
繋がりが多様になった現代。自分ではない存在を知ることは容易で、自他の境界が数多存在する。それは自分にスポッとを、他者がブラインドスポットになることにも繋がり、また、繋がりがある者同士でしか共感しないことに拍車をかける。
そうして悪が加速した。
そして、共感しない人がトップに躍り立つ。
ブラインドスポットに共感しない者が、ブラインドスポットを敵とみなし、そこに共感力が高い人がフォローし付いて行く構図になる。
それで正しいのだろうか?
そうして起きた戦争、迫害、犯罪…はこれらの延長線上にある。
しかし気付いた。私たちには理性がある、と。啓蒙主義。
理性があるなら間違いは防げるはずなのでは、、、?
だから手に入れた民主主義の概念。
一人ひとりが存在し、人権を持ち、民意を創るのだ。が駆動しているのか。
そもそも駆動させられるのか?
つまり、またブラインドスポットを生み出し、同じ過ちを繰り返すのではないだろうか?
『非相補的行動』
右の頬を打たれたら左の頬を向ける。
物を盗まれたら、盗んだ人に食事を与える。
刑務所でリゾートのような暮らしを送り、再犯率を下げ、警官のモチベーションも上がる。
そんなことが可能だろうか。
可能なことを本書は証明してくれる。
人は本質的には善であるがゆえに、非相補的行動がとれる。
そして、人は互いを思いやることで、全体的にプラスに発展することができる。
臭いものに蓋をして、見て見ぬふりふりをして、距離をとるとますますブラインドスポットが広く深くなる。
だから、著者は交流することを勧める。
交流することで他者を知り、自分を知る。
至極当たり前だが、その当たり前を理解できなかったから過ちを犯してきた。
だから今日から、今から、思いやりを持って交流をするのだ。 -
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『ほとんどの人は、本質的にかなり善良だ』
この本は、この一文に向き合い、世界中の事例から証明しようとする本だ。
上巻では、無人島に残された少年たちは争い、ホッブズの「万人の万人に対する闘争状態」に陥ることを小説にした『蠅の王』を覆す『本当の蠅の王』の話から、
ジャレド・ダイアモンドが証明したイースター島の歴史を覆す話、
ミルグラムの電気ショック実験の真実、
キティ(スーザンジェノヴィーズ)の死で有名になった「傍観者効果」の真意、
そして、報道による読者への方向付けの注意喚起までを著している。
導入であり問である『人は本質的に善良だ』に対し、日本で生まれ、26年間生きた僕は、「そう思う。」という感想を持った。
良くも悪くも平和ボケした現代の日本に生まれ育った者は同じ感想を抱くのではないか?と思う。
しかし、なぜ本質的に善良なのか?という問を考えるために読み進める。
各国の事例を所狭しに著している本書は、地名や当事者の名前などでカタカナが多く、ある意味読み応えがある。
注意すべきは、それらの事例や歴史は、誰かの手によって記されており、つまり誰かのバイアスがかかっているということ。
それは多分に漏れず、著者のルトガー・ブレグマン、翻訳者の野中香方子のバイアスもだ。
これは、上巻の最後に触れられているメディアの話にも通ずる。
何を事実とし、何を信じるかを常に注意して読書し続けたい。
最後に思ったのが、この世は反面教師だということ。
善行を証明するために悪行を演じたり、悪行から考える構図になっている。
つまり、悪やマイナスがなければ、善もプラスも証明できない。
戦争があったことで、人権が付与されたことが例。
仮でも両端を捉え、考え、折衷を探るしかないと思った。 -
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メンタル関係で、どのように対応したらいいか?の処方箋、
そしてこんな時はこんなことを試してみよう、という項目や
心理的パターン(不安や自信をなくしているとき)に沿ったツールボックス群が
豊富に記載されている。
個人的にメンタル関係の書籍は何冊か読んできたものもあるが、それらを包括するような内容で今後もその都度参照する1冊だと思えた。
終章には人間関係にまつわる根本が愛着スタイルと関連している記載があるが、やや記載が浅い部分もあるため、別の専門書籍で補足が必要かもしれない。
巻末には各章で記載されいたツールボックスをまとめているため、一覧性としても活用出来そう。 -
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コロナウイルスのワクチンの仕組みと既存のものとの違いについて、かなり詳しく理解できた。本書のテーマは専門的で難しいかもしれないと思っていたが、RNAとその役割について分かりやすく説明してくれており、素人でも読みやすかった。
以下、本書よりメモ書き
コロナウイルスの特徴として、その形状が挙げられる。コロナウイルスの殻の外側にあるタンパク質はスパイクのような形をしていて、スパイクタンパク質と呼ばれる。電子顕微鏡で見ると王冠のように見えることからコロナと名付けられたことは周知の事実。
下記のシノバック、ジョンソン&ジョンソン、アストラゼネカは伝統的な手法で作られたワクチンで、ビオンテック、ファイザー、モデルナは人類の新たな試みとなる遺伝子ワクチンである。
- シノバック
殺したウィルスを使用し、生きたウィルスとの戦い方を免疫システムに教える。
- ジョンソン&ジョンソン
ヒトアデノウイルスをベクター(遺伝子の運び屋)にして、スパイクタンパク質の一部を作る遺伝子を運ばせる。それを受けたヒト細胞はスパイクタンパク質を多く生成し、免疫システムを刺激して抗体を作る。
- アストラゼネカ
上記のジョンソン&ジョンソンと同じだが、ヒトアデノウイルスの代わりにアデノウイルス(チンパンジーの風邪を引き起こす)をベクターとする。
- ビオンテック、ファイザー
RNAワクチンを製造。スパイクタンパク質の作り方をmRNAに運ばせる。mRNAが細胞の核内にあるDNAの遺伝子情報を転写し、それを核の外のタンパク質を生成する領域(細胞質)に運び、タンパク質生成を指示する。
- モデルナ
ワクチンの製造で難しい点は細胞への配送メカニズムの構築である。モデルナは10年前から脂質ナノ粒子と呼ばれる小さな油性カプセルの開発に取り組んできた。これがビオンテック/ファイザーに勝る利点となった。脂質ナノ粒子でmRNAを運べる。安定性が高く、極低温で保存する必要がない。 -
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科学の世界で繰り広げられるドロドロの人間ドラマ。特許権や論文を巡る争い、研究室同士の確執…どのような業界でも争いは存在するのである。自身の名誉と利権のためにあらゆる手を使って相手を出し抜く大人たち。笑顔の裏に潜む相手の本心は誰にも分からない。ノンフィクションだが、まるで上質なサイエンスミステリー小説のようでおもしろく読める。
以下、本書より抜粋。
「偉大な科学者だけが持つ特別なスキル。それは、緻密な実験を重ねることと、スケールの大きな問いをすることだ。神は細部と、そして全体にも宿る。」
「科学のブレイクスルーが一瞬のひらめきで起きることはめったにない。それらは総じて10年以上にわたって演じられるアンサンブルであり、個々のキャストは、1人では成し得ない偉大な業績の一部になるのだ。」エリック・ランダー -
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私たちは経済成長をいいものだと思っているが、必ずしもそうではないのかもしれない。
この本は今まで当たり前に思ってきた価値観が、資本主義によるものであり、それが環境問題や労働の搾取にもつながるもので、あらためて考え直してみる機会をくれた。
資本主義は、限りなく成長を求めさせ続けるもので、財やサービスの生産は、それがどのように役にたつかという使用価値でなく、より利益になるようにと交換価値に重きをおくものになっている。
そして、人為的に希少性をつくることで、あふれるほどの富がありながら、満たされることなく、より成長を求めて、自然や労働が搾取されていくような状況をつくっている。
資本主義は、いい面もあったかもしれないが、餓鬼道(仏教でいう、欲が決して満たされず苦しむ世界)をこの世につくってきた面もあるな、と考えさせられた。
最近、この本のように環境問題や格差など、資本主義の欠点を指摘する本が増えていて、マルクスが見直されたりもしている。
ただ、富裕層叩きや権力者批判とか、陰謀論とかそんなものでは何も解決しない。
この本もそのようなものではなく、社会全体的な構造に問題があり、個人では解決しない難しいところがある。
少なくとも学ぶことには意味があると思うし、学ばなければ、正しい理解も行動も生まれないと思う。 -
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資本主義が略奪、搾取を繰り返し、一部の富裕層の懐を過剰に満たす結果となった歴史を丁寧に解説し、これから目指していく世界の在り方を提起している。成長し続けることが必ずしも人間の性質ではなく、資本主義の成長も自然界や弱者から奪わなければ為し得なかったとわかった。成長を目指し続けることが当然の様な現代社会の実態は、過剰な利潤追求であり、本当の幸せを掴めていない。人間は地球上の生命体の一つに過ぎず、他の全てと互いに手を繋ぎ生きていきたいと思った。これまで当然とされていた資本主義や常識に対して本書のような意見を述べる研究者が最近増えており、地球上の全てと共存していける世界に変わっていくといいなと思う。自分についても必要以上のものをため込んでいないか、振り返りたい。
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【中国、世界の頂点に向けて…?】
筆者はアメリカの元政府関係者でもあった外交戦略家。書かれたのは2015年、原書タイトルは中国の100年マラソン。
2049年は、共産党成立から100周年のとして、その年を目指した中国の長期的な世界の覇権獲得へ考え方、アプローチが書かれている。
中国のナショナリスト・タカ派の理論こそが、中国の外交アプローチを真に決定づけているものである、とし、中国の歴史を遡って戦国時代の思想家・戦略家の考え方を理解することで、現代中国の世界派遣に向けた長期戦アプローチが見えてくるとする。孫氏や三国志のエピソードが引用されている。
全力でアメリカの視点から書かれた本であること、また10年近く前に書かれた本であり、彼の打ち出した出版当時の新規性は、現在ではより普及しているように思う。だからこそ、彼の著作は的を得ていただけではなく、思考枠組みを提供し、議論をさらに活発化した意義のある著作であったのかと思う。
日本では、中国の王朝の歴史や、国語・漢文などでも習う言い伝えや思想、日本の文化にもある程度共通する部分もある考え方などは馴染みのあるものが多いけれど、アメリカとしては、まったく遠いものであったりするのかな、と読んでて感じた。
大学で中国の政治について学んだ時も、中国は過去の屈辱を根に持っていて、世界の覇権の復興のために進めているといったことを学んだけれど、まさにそのアプローチが、日米関係の近代史と共に論じられていた。
もう一点思ったことは、中国語は翻訳が難しい、と書いていたけれど、一つの言葉や漢字について、エピソードを含めた深い意味を持っている言語である点、漢字は非常に含蓄のある言語であると改めて思った。 -
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人間のそもそもの本性が利己的でも暴力的でもない。自然や植民地を搾取しても良いと捉えた二分論が(GDPの増大という意味の)成長し続けることを強いる資本主義を成立させた。
なので、経営者が強欲なのではなく、投資家、融資先からの成長圧力で必要以上に成長を求めさせられる。
しかし、ケインズが100年ほど前に予想したように、人間の労働時間を下げ、ワークシェアし、健康と生態系に配慮した生活をすればより幸せになる。
GDPが一定以上成長せずとも、公共福祉に投資すれば、収入をあげなくても幸せに暮らせる。
そういったことをネイチャーネガティブと気候変動リスクという背景や、歴史的経緯と合わせて解説してくれる本。
改めて、ビルゲイツが決済機能は必要だが、銀行は不要と言い放ったこともわかる。 -
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これは希望に満ちた本である。
そして、真実というのはとても見えにくい事がある
・ほとんどの人は本質的にかなり善良だ
・ルソーの思想が正しいのでは?
・過酷な環境になると人は善良に動く
・本当の「蝿の王」はびっくり、本と真逆であり、とても心暖まる話だった。
・協調が重要
・「利己的な遺伝子」はホッブズ流
・アーレントの重厚な哲学(人間は善を装う悪に惹かれる)
・コミュニケーション、対決、共感、抵抗が重要
・人間の本性についてのわたしたちの見方が間違った方向に進みがち
・ジャーナリストは、扇情的な話を売るために容易に世論を操る
・緊急事態において、いかにわたしたちは互いを頼りにできるか