【感想・ネタバレ】資本主義の次に来る世界のレビュー

あらすじ

「少ないほうが豊か」である!
「アニミズム対二元論」というかつてない視点で文明を読み解き、
成長を必要としない次なる社会を描く希望の書!

ケイト・ラワース(『ドーナツ経済学が世界を救う』著者)、
ダニー・ドーリング(『Slowdown 減速する素晴らしき世界』著者)ほか、
世界の知識人が大絶賛!

デカルトの二元論は「人間」と「自然」を分離した。
そして資本主義により、自然や身体は「外部化」され、
「ニーズ」や「欲求」が人為的に創出されるようになった。

資本主義の成長志向のシステムは、人間のニーズを満たすのではなく、
「満たさないようにすること」が目的なのだ。

それでは、人類や地球に不幸と破滅をもたらさない、
「成長に依存しない次なるシステム」とは何か?
経済人類学者が描く、かつてない文明論と未来論。

本書が語るのは破滅ではない。語りたいのは希望だ。
どうすれば、支配と採取を軸とする経済から生物界との
互恵に根差した経済へ移行できるかを語ろう。
(「はじめに 人新世と資本主義」より)

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Posted by ブクログ

自然の摂理や原理原則を問い、思考しながら読み進める書籍は私好み!^_^!
そして本書の内容は特に意義と価値がある。

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2025年11月29日

Posted by ブクログ

ジェイソン・ヒッケル氏は、1982年アフリカのエスワティニ(旧スワジランド)生まれの経済人類学者。米ウィートン大学で人類学を学んだ後、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスで博士号を取得。現在はバルセロナ自治大学環境科学・技術研究所教授、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス国際不平等研究所客員教授、王立芸術協会フェローなどを務め、米国科学アカデミーの「気候とマクロ経済学円卓会議」などの委員会にも参加。GDP中心の成長主義に代わる持続可能な経済思想を提唱し、脱成長論の旗手として国際的に知られている。
本書は、著者の代表作の一つで、2023年に出版された。尚、原書は『LESS IS MORE』(2020年)。
私が理解したポイントは概ね以下である。
◆「資本主義=市場」という認識は間違い。市場は何千年も前からあったが、資本主義は、封建制崩壊後の平等主義の社会に不満を持った上流階級が、コモンズ(土地等)を「囲い込み」により私有化した500年前にできたもの。その特徴は、永続的な成長を軸にしていることで、「自然と労働から多く取り、少なく返せ」という単純な法則に従って機能する。同時期に起こった「植民地化」も、資源を強奪するフロンティアを開くという意味で、同じく資本主義の前提だった。それまで支配的だったアニミズムを否定し、人間(の精神)と自然(人間の身体を含む)を区別し、人間には自然を支配し利用する権利があるとしたデカルトの二元論は、資本主義を正当化した。
◆それまでの経済は「C1→M→C2」(個人間で有用なものを交換すること)と表され、「使用価値」を中心に回っていた。一方、資本主義は「M→C→M’→C’→M”・・・」と表され、ここで重要なものは「交換価値」であり、交換価値の蓄積には終点がなく、永遠に拡大するプロセスとなった。成長欲求は資本家に留まらず、GDP成長率という目標に縛られた国家に後押しされ、「人間の具体的な必要を満たすためでも社会的目標を達成するためでもなく、成長そのもののために、あるいは資本を蓄積するために、成長を追い求める」成長主義が世界的ルールとなった。
◆我々が直面する気候・環境問題を解決するために技術革新は不可欠だが、資本主義のシステムでは、技術革新による効率の向上が、搾取と生産の縮小につながることはなく、利益の再投資によりそれはさらに拡大することになる。
◆過去数世紀の福祉と寿命の向上は、公衆衛生、公教育、公営住宅のような新種のコモンズの整備によりもたらされたのであり、(GDPが一定水準にあれば)成長とは無関係。幸福感についても、GDPのつながりは希薄で、所得の配分が不公平な社会は総じて幸福度が低い。
◆国内と世界の不平等は拡大しており、人々の生活を向上させるために全体の成長が必要という考えはもはや意味をなさない。誰にとっての、何のための成長かをはっきりさせる必要がある。既に持っているものをより公平に分かち合う方法を見つけることができれば、地球からこれ以上略奪する必要はない。
◆イノベーションについても、経済全体の成長は必要なく、その分野に絞って投資をすればよい。
◆「脱成長」とは、経済全体の成長を目指すことをやめ、経済の物質・エネルギー消費を削減して生物界とのバランスを取り戻す一方で、所得と資源をより公平に分配し、人々を不必要な労働から解放して、必要な公共財への投資を行うこと。結果、GDP成長が鈍化・マイナスになったとしても、成長を必要としない経済を目指す以上、問題はない。
◆大量消費を止める方策としては、①計画的陳腐化を止める、②広告を減らす、③所有権から使用権へ移行する、④食品廃棄をなくす、⑤生態系を破壊する産業(牛肉産業、使い捨てプラスチック製造等)を縮小する、等がある。
◆脱成長経済における所得については、国民所得は、その国の経済が生産するすべての財の総額に等しいのであり、理論的には、国民が必要とするものを生産している限り、それらを購入するのに十分な所得は得られるはず。重要なことは分配の平等。
◆成長志向のシステムは、人間のニーズを満たそうとするのではなく、満たさないようにするインセンティブがあり、意図的に「希少性(不足しているように見せること)」を創出する。公共サービスの脱商品化(コモンズ化)、労働時間の短縮、不平等の是正により、それを逆行させれば、システムは変わるはず。
◆現在でも既に、大多数の人々は環題に配慮すべきと考えているが、その思いは少数の資本家により踏みにじられている。これは、民主主義と資本主義が(意外なことに)両立しないことを示しているが、我々はこの矛盾を乗り越えなければならない。
◆デカルトの二元論は、その後数世紀の科学の進歩により否定されつつあり、現在は、あらゆるものは唯一の壮大な「実在」の異なる側面に過ぎないというスピノザの思想に取って代わられている。同時に、世界各地の先住民族のアニミズム的世界観、あらゆるものとの互恵の精神が見直されている。
◆脱成長は、より少なく取るというプロセスから始まるが、最終的には、あらゆる可能性の扉を開くことになる。私たちを、希少性から豊富さへ、搾取から再生へ、支配から互恵へ、孤独と分断から生命あふれる世界とのつながりへと進ませる。
一読した感想としては、ほぼすべてにおいて納得できたし、提言については基本的に賛同する。
私は、資本主義の現状について、極端な経済格差や気候・環境問題にとどまらず、科学万能主義と結びついた、生命工学やAI技術の進歩という観点からも、強い問題意識を持っており、これまで様々な本を読んできたが、斎藤幸平『人新世の「資本論」』、セルジュ・ラトゥーシュ『脱成長』などは、「脱成長(による持続可能な社会の実現)」、「公共財のコモンズ化」などの点で、本書と近い方向性を持っている。
それにしてもだ。資本主義の矛盾・限界がこれほど様々な面で明らかになっているのに、なぜ人々は動けないのか。。。高所得国の人々は、これ以上の何を求めているのか。。。(この欲望は資本主義システムが恣意的に作り出していることは本書に書かれているが)
実は、私の書棚にはもう一冊、ヨハン・ノルベリの『資本主義が人類最高の発明である』が積読となっている。間を開けずに読まねばなるまい。
(2025年11月了)

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2025年11月14日

Posted by ブクログ

世界の終わりを想像するより資本主義の終わりを想像する方が難しい
1350年から1500年は労働者の黄金時代。
自然から精神をはぎとるという点で教会と科学の目的は共通だった。
もともと国民所得の向上が寿命につながると考えられていたが、コスタリカからわかったのは人との繋がりだった。
耐用年数を長くすることを義務付ける。広告を減らす。所有権から使用権へ移行する。食品廃棄を終わらせる。生態系を破壊する産業を縮小する。
労働時間の短縮は失業率の低下、生活の質の向上、環境負荷の減少の3つをもたらす。

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2025年10月13日

Posted by ブクログ

科学的根拠に基づく、恐ろしい、今世紀中に起こる環境破壊、気候変動、洪水、海面上昇、食糧難の記載から始まる。未来世代からの借り物、とか、宇宙船地球号といった、環境に優しい暮らしをしましょう、という緩やかな美徳としてではなく、差し迫った危機があるという実感が湧く。計画的陳腐化(iPhone、電球、タイヤなど)、広告、フードロス(世界中で最大50%が捨てられている)、牛肉、ファーストクラスの罪。

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2025年02月01日

Posted by ブクログ

胃もたれするくらいの世界の汚い部分を知る
自分に焼き付いてる根拠もないくせに頑張ることが美徳であるような思想の正体を知る
読み終わった後価値観が120度くらい変わってしまった感覚があった
目に映るほとんどがお金を中心に動いていて労働力や資源や気候を搾取しているバックグラウンドまでもを想像してしまう
自分の仕事はある業種の作業効率を上げることで経済成長を促進することであり
明日からまた成長主義に一旦加担することでしか自分や大切な人を生かしていけず仲間と認識していたコミュニティで生きていけなくなる
想像の段階で苦しい
どんなに自分はこう生きるのだと決めつけたところで人生のステージが進むにつれ戻れないところまで進まざるを得ないしSNS等インターネットにより他人との比較は必ず発生して価値観はまた揺さぶられる

ビジョンはとても魅力的
ただ押し進めたときに今自分が好きなものも資本主義ありきだったから存在している気もしてそれがどれだけなくなってしまうのだろうか、もっと具体的なイメージを知りたくなった


より多くの人類、そして生態系が幸せを得るために
グリーン成長だけで持続可能な社会を実現することはグリーン成長のための土地、資源が足りない
ではどうするか?
エネルギーと資源の過剰な消費を削減し、クリーンエネルギーへ転換することと同時に
永続的な成長ではなく人間の幸福と生態系の安定を重視するポスト資本主義経済へ移行することが必要
その方法は脱成長であり具体的に
・土地と人々と心の脱植民地化
・コモンズの脱囲い込み
・公共財の脱商品化
・労働と生活の脱強化
・人間と自然の脱モノ化
・生態系危機の脱激化
を意味する



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2025年01月05日

Posted by ブクログ

今ままでの思想を根底から覆される内容であった
成長に囚われすぎた現代で失ってきたものと、これから目指すべき場所をどう定義するかよく考えさせられた

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2024年12月12日

Posted by ブクログ

環境破壊や格差拡大など近年顕著な問題の根源は資本主義という構造にある、という主張は説得力があり腑に落ちた。成長・発展し続ける必要性に疑問を感じていたが、脱成長・脱植民地化と資本主義の辿った歴史を逆戻りするための具体的な取組みが大切なのですね。
資本主義で富を得た者の責務は、皆のために還元することなのでしょう。貴族が持つべきノブレスオブリージュに近い感性を持てるのか?

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2024年11月28日

Posted by ブクログ

成長は資本主義の最優先命令
 エネルギーと資源の消費と連動 大量の廃棄物
 資本主義は不公平 英64% 米55% 独77%(2015 英YouGov 世論調査)
 成長より環境を優先 EUの大多数 55~70% 他国でも同様  
→成長を必要としない経済へ

デカルト「二元論」人間と自然は切り離された存在
 科学=人間を自然の支配者に ↔ アニミズム(精霊信仰:地球や生物と相互依存)
 教会・資本家:支配
デカルト「人間論」 身体=精神+物質(=資源) 労働の商品化
 ↔自然は経済の外:植民地から無料で 先住民を二元論者に変える 自然=モノ

資本主義:自然と労働から多くとり、少なく返せ  利己的で自分の利益を最大化
 封建制/農奴制 廃止→自給自足社会→破壊的な囲い込み(国内植民地)→資本主義
 植民地化 奴隷と資源(海外囲い込み) →労働者=消費者
 貧困は富の源  私富と公富は負の相関  豊富にあるものを希少にする

資本 利益を再投資して増やし続ける 成長要求 資本は動かさないと価値が下がる
 年3% 23年で倍に 100年後に20倍 さらに100年後370倍
 GDPは 生態学/社会的コストを考慮しない 貨幣価値に換算できるもののみ
政府 国債返済のために成長が必要
 2009年以降 資源消費量はGDPの成長を上回っている 地球システムの限界

グリーンエネルギーへ移行 →他の資源は現在の2倍以上採取?
マテリアルフットプリント
 サービス業での利益で物を買う サービス業は物質インフラが必要
 効率向上で同じ資金/時間で生産がさらに拡大

福利 公的医療/教育への投資 1人1万ドルで上位 < 1人当たりGDP平均1.76万ドル
幸福度 ≒福祉制度 人生の有意義さ 不平等是正 ≠GDP 
 10%の富裕層が 世界CO2排出量の半分以上  上位1%は下位50%の100倍
 グルーバルサウス全員にコスタリカ同等の公的医療10兆ドル≒1%富裕層所得1/2
 国際機関は富裕層に有利 議決権や交渉力
真の進歩指数GDI  脱成長 物質とエネルギー消費削減+所得と資源の公平分配

ポスト資本主義  希少性を減らす
・計画的陳腐化を終わらせる  保証期間の延長 修理の権利 
・広告の削減  屋外広告規制 広告よりも検索
・所有権から使用権へ 
・食品廃棄を終わらせる  事前団体への寄付 廃棄料徴収 
・生態系を破壊する産業を縮小  牛肉 軍事 使い捨て容器 航空
  工業生産高減少 労働時間再分配 転職促進
  余暇増加=非集約的消費 低環境負荷活動:ケア、運動、ボランティア、学習へ
・不平等を減らす  最高位賃金制度 富裕税 
・公共財の脱商品化 公共の富の拡大 債務のない公共通貨制度

生態系との互関係 自然に法的人格  支配と搾取の関係から・・再生と互恵へ

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2024年12月01日

Posted by ブクログ

決して良い方向に進んでいるとは感じることができない資本主義。
その何となく感じる暗い資本主義の未来の、カウンターのように最近論じられている脱成長論。
現象学や生物学に至るまで、幅広い視点で論じられる本書は、個人的にはちょっと乱暴に感じる部分はあったにせよ、未来の行き先の一つの考え方として興味深く感じた。

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2024年09月08日

Posted by ブクログ

非常に興味深い
歴史・科学・宗教などの観点が非常に多面的に民主主義を論じていた。

(もう少し振り返る。)

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2024年09月05日

Posted by ブクログ

2024.9/4

最後の謝辞まで読んで欲しい。
著者のパートナーであるグディがすばらしい。

疑問を持つことは、何より強力である。

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2024年09月04日

Posted by ブクログ

自分の環境への意識を変えるには大変有益だった。また、GDPの無限の成長などという神話は非合理で破綻したものであり、私達を破滅に導くものだと丁寧に説明されている点がとても良い。
後半提示されている案には希望が持てるが、それを実行するには世界はまだ資本主義、個人主義に浸かりすぎているのだろう。それでも私達は地球の持続可能性を追求し努力しなければならないし、まず自分ができることを地道にしなければと思った。
沢山の人に読んでほしい本。

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2024年09月03日

Posted by ブクログ

食料危機に備え昆虫食が研究されているが、その昆虫の数も減少している。

昆虫は植物の受粉と繁殖に欠かせない。有機廃棄物を分解して土に変えている。他の数千種の食料にもなっている。

昆虫の減少は鳥の激減をもたらした。ある種の絶滅が別の種の絶滅を導く「連鎖的絶滅」が懸念される。陸だけの話ではない、世界中で漁獲高も減少している。

生態系の危機は、気候変動がその一因となるが、気候変動は成長を止めない資本主義社会の自然開発という名の自然破壊がもたらしたもの。科学者は既に「プラネタリー・バウンダリー」を大幅に超え、生物界に破壊的な影響を及ぼしていると指摘。そしてそれは人間に戻ってくる。

進むべき道は「脱成長」。生物はあるところまで成長すると、健全な均衡状態を維持する。同様に成長が不要な社会を模索する必要がある。

そのためには自然と人間を切り離す二元論の思考から、人間は他の生物や自然とつながっているというアニミズム(精神信仰)に回帰する必要がある。アニミズムは時代遅れどころか、物理学、精神医学、生態学、量子物理学など科学がやっと追いつきつつある概念なのだ。

自然は人間と切り離された「外」とし、人間に対峙するものとする二元論的存在論には未来はないであろう。豊かな生というものを想像すればいい。人間は、絶妙なバランスの中の一つの生き物でしかないのだから。

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2024年06月18日

Posted by ブクログ

今年ベスト!
資本主義の限界だけでなくポスト資本主義への道を示してる
こういう考え方で運営する自治体が日本に出てきたら移住してみたいた
世界はこの方向に行くしかない気がするがそうはなってない
多くの成長主義者のこの本への反論を聞きたい

自己正当化じゃないが真っ当に勉強したらリベラルになると思ってて、自分の読書遍歴の集大成的な本だった

・マザーツリー
・大地の五億年
・暇と退屈の倫理学
・あなたの体は9割が細菌
・くもをさがす
・意識高い系資本主義が民主主義を滅ぼす
・人間がいなくなった後の自然

等とリンクする

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2024年05月22日

Posted by ブクログ

資本主義の構造的支配に抵抗するため、個々人に何ができるだろう?
数年前から広告の類は意識的に見ないようにしている。販促のメールや通知は全部オフる。クッキーも必須以外は全て無効にする。パーソナライズはしない。広告視聴のポップアップが出てきたら読むのをやめる。

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2024年05月12日

Posted by ブクログ

日本人の、自然のありとあらゆる物の中に神が宿っている、という考え方は、欧米人からすると奇異な考え方なのかもしれない。脱成長にはとても共感した。備蓄価値ではなく、交換価値を促進するため、劣化する貨幣や、地域通貨が必要なのかもしれない。

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2024年05月03日

Posted by ブクログ

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これ資本主義とは何か的な本の中でめちゃくちゃ面白くて分かりやすかった。いかに自分が資本主義の中で洗脳されて価値観もそれに縛られて生きているかというのが分かった。ほんと感動した。

ジェイソン・ヒッケル
経済人類学者。英国王立芸術家協会のフェローで、フルブライト・ヘイズ・プログラムから研究資金を提供されている。エスワティニ(旧スワジランド)出身で、数年間、南アフリカで出稼ぎ労働者と共に暮らし、アパルトヘイト後の搾取と政治的抵抗について研究してきた。近著The Divide: A Brief Guide to Global Inequality and its Solutions(『分断:グローバルな不平等とその解決策』、未訳)を含む3冊の著書がある。『ガーディアン』紙、アルジャジーラ、『フォーリン・ポリシー』誌に定期的に寄稿し、欧州グリーン・ニューディールの諮問委員を務め、「ランセット 賠償および再分配正義に関する委員会」のメンバーでもある。

野中 香方子(ノナカ キョウコ)
お茶の水女子大学文教育学部卒業。主な訳書にアイザックソン『コード・ブレーカー(上下)』(共訳、文藝春秋)、サイクス『ネアンデルタール』(筑摩書房)、ヴィンス『進化を超える進化』(文藝春秋)、ウィルミア/トーランド『脳メンテナンス大全』(日経BP)、ブレグマン『Humankind 希望の歴史(上下)』(文藝春秋)、シボニー『賢い人がなぜ決断を誤るのか?』(日経BP)、ズボフ『監視資本主義』(東洋経済新報社)、イヤール/リー『最強の集中力』(日経BP)、メディナ『ブレイン・ルール 健康な脳が最強の資産である』(東洋経済新報社)ほか多数。

こうした暴力的な時期を、資本主義の歴史における一時的な逸脱として片づけることができれば、気は楽だ。だが、そうではなかった。植民地化と囲い込みは資本主義の基盤だったのだ。資本主義のもとでは成長は常に、対価を支払うことなく利益を抽出できる新たなフロンティアを必要とする。資本主義は本質的に、植民地支配的な性質を備えているのだ。

人類学者はこの世界観を精霊信仰と呼ぶ。アニミズムでは、すべての生物は互いとつながっていて、同じ精神あるいは霊的本質を共有するとされる。アニミズムを信仰する人々は、基本的に人間と自然を区別しない。両者は根本的につながっていると考えており、動物を親類と見なすことさえある。そのため、他の生物システムからの搾取を抑制する強力な道徳律を持っている。現代のアニミズムの文化圏では、人々は当然ながら漁業や狩猟、植物採集、畜産を行うが、根底にあるのは抽出ではなく「互恵」の精神だ。人と人が贈り物を交換するように、他の生物との取引においても敬意と礼儀が重んじられる。わたしたちが親類から搾取しないのと同様に、アニミズムを信仰する人々は、生態系が再生できる量より多くは取らないよう注意を払い、土地を守り修復することで生態系にお返しをしている。 近年、人類学者は、これは単なる文化の違いではないと考えるようになった。もっと根深い違いだ。

アニミズムの人間観は、二元論とは根本的に異なる。アニミズムはインター・ビーイング(相互依存)の存在論なのだ。 アニミズムの存在論は、帝国が台頭するに従って攻撃を受けるようになった。次第に世界は二つに分かれたものと見なされるようになり、神は生物から切り離され、それらの上に位置づけられた。

この新たな秩序において、人間は神の写し身と見なされ、特権、すなわち他の生物を支配する権利を与えられた。この「支配」という原則は、枢軸時代(紀元前500年頃)に、ユーラシア大陸の主要な地域で超越的な哲学や宗教──中国では儒教、インドではヒンドゥー教、ペルシャではゾロアスター教、レヴァントではユダヤ教、ギリシャではソフィズム(詭弁)──が生まれるに従って、より確固になっていった。人間を自然界の支配者と見なす考え方は3000年前の古代メソポタミアの文献にすでに詳述されている。おそらく最もはっきり記しているのは、創世記そのものだ。

その一つは教会だ。物質世界に精霊が満ちているという考え方は、自らが神に通じる唯一のパイプであり神の正当な代理人である、という聖職者の主張を脅かした。聖職者だけでなく、聖職者による信任を権威の根拠とする王や貴族にとっても由々しき問題だった。彼らから見れば、アニミズム的思想は反体制的であり、打破しなければならなかった。もし精霊が至るところに存在するのであれば、神は存在しない。神が存在しなければ、司祭も王も存在しない。そのような世界では、「神から授かった王権」はデタラメと見なされる★32。

アニミズム的思想を問題視する強力なグループがもう一つあった。資本家たちだ。1500年以降、優勢になったその新しい経済システムは、土地、土壌、地中の鉱物との新しい関係を必要とした。その関係は、所有、抽出、商品化、成長し続ける生産性(当時の言葉では「向上」)を原則として築かれた。しかし、何かを所有したり搾取したりするには、まず、その何かをモノと見なさなくてはならない。あらゆるものが生きていて精霊や主体性を内包する世界では、万物は権利を持つ存在と見なされ、所有および搾取──すなわち、財産化──は倫理的に許されない。

しかし、資本主義の長い歴史を振り返ると、この物語には欠落があることがわかる。囲い込み、植民地化、強奪、奴隷貿易……この物語に欠落しているのは、資本主義の歴史において、成長は常に強奪のプロセスであったことだ。自然と(ある種の)人間からの、エネルギーと労働の強奪である。確かに、資本主義はいくつかの驚くべき技術革新をもたらし、それらは驚異的なまでに成長を加速させた。しかし、テクノロジーが成長のために果たした最大の貢献は、無からお金を生み出すことではなく、資本家が強奪のプロセスを拡大・強化できるようにしたことだった★1。

もちろん、人口についても考える必要がある。世界人口が増えれば増えるほど、転換は難しくなる。この問題に取り組むにあたって、重要なのは──常にそうだが──土台になっている構造的動因に目を向けることだ。世界の女性の多くは、自らの身体と子供の数を自分ではコントロールできない。リベラルな国でさえ女性は子供を産むことへの社会的プレッシャーを受けており、子供の数が少なかったり産まなかったりすると、理由を詮索されたり非難されたりする。貧しい国では、こうした問題はさらに深刻だ。そしてもちろん資本主義自体が、人口を増やせというプレッシャーを生み出している。人口が増えれば労働者が増え、労働が安価になる一方、消費が増えるからだ。このプレッシャーはわたしたちの文化に浸透し、国の政策にまで影響している。フランスや日本などは自国の経済成長を維持するために、より多くの子供を産むことを女性に奨励している。

この傾向が最も明らかなのは計画的陳腐化という慣習である。売上を伸ばしたくてたまらない企業は、比較的短期間で故障して買い替えが必要になる製品を作ろうとする。この手法が最初に実行されたのは1920年代のことだった。アメリカのゼネラル・エレクトリック社を中心とする電球メーカーがカルテルを組み、平均で約2500時間だった白熱電球の寿命を1000時間以下に短縮したのだ★4。効果は抜群で、売上と利益は急増した。このアイデアはたちまち他の産業に広がり、現在、計画的陳腐化は資本主義的生産の特徴として広く普及している。

わたしたちが毎日使っているハイテク機器についても同じことが言える。アップル製品を所有したことのある人なら、よくご存じだろう。アップルの成長戦略は、次の三つの戦術に依存しているようだ。1・使い始めてから数年経つと、動作が遅すぎて役に立たなくなる。2・修理は不可能か、あり得ないほど高額。3・広告キャンペーンによって、自分が使っている製品は時代遅れだと人々に思わせる。もちろんそれはアップルだけではない。

時として広告は、計画的陳腐化と一体化して毒入りカクテルをつくる。ファッション業界を例にとってみよう。衣料品小売業者は、飽和状態の市場で売上を伸ばすために、捨てられるための服をデザインするようになった。数回着ただけでだめになり、数か月で「流行遅れ」になるペラペラの安っぽい服だ。加えて広告は人々に、自分の服はださくて、時代遅れで、ふさわしくないと思わせる(この戦術は「認知的陳腐化」と呼ばれることがある)。

計画的陳腐化

広告の力を抑制する方法はたくさんある。たとえば、総広告費を削減するために、割当額(クォータ)を導入する。あるいは、心理的に操作する広告手法を規制する。また、人々が見るものを選択できない公共空間から──オンラインのものもオフラインのものも──広告を締め出すのも一手だ。人口2000万のサンパウロは、すでに都市の主要な場所でこれを実施している。パリもこの方向へ動き、屋外広告を削減し、学校周辺では全面的に禁止した。結果は? 人々はより幸福になった。より安全だと感じ、自らの生活により満足できるようになった。

広告の削減は、人々の幸福にプラスの影響を直接与えるのだ★12。これらの措置は、無駄な消費を抑えるだけでなく、わたしたちの心を解放し、常に干渉されるのではなく、自分の考え、想像力、創造性に集中できるようにする。広告が消えた空間は、絵画や詩、それに、コミュニティを築き本質的価値を構築するためのメッセージで埋めることができる。

この件についてオープンで民主的な話し合いをする必要がある。すべての部門は成長し続けなければならないと決めつけるのはやめて、わたしたちが経済に何を求めているかについて話し合おう。すでに十分大きくなっていて、これ以上成長すべきでないのは、どの産業か。規模を縮小したほうがよいのは、どの産業か。まだ拡大する必要があるのは、どの産業か。これまで、こうした質問がなされたことはなかった。しかし、2020年のコロナウイルスのパンデミックで、誰もが必要不可欠な産業と、不必要な産業の違いを知った。どの産業が使用価値を中心に組織され、どの産業が交換価値を中心に組織されているかが、たちまち明らかになったのだ。わたしたちはこの教訓を踏まえて、前進することができる。

広告は自分と比較して劣等感を植え付け消費活動に持ち込むためのものらしい。

ある意味、これは当たり前のことのように思える。しかし、わたしたちはそれを容易に忘れてしまう。特に都市で暮らしていると、他の種と出会うことはめったになく、出会ったとしても飾りものにすぎないので、なおさらだ。農村や農場でも、野生生物はしばしば有害生物と見なされ、可能な限り駆除される。この状況では、人間以外の存在を──それらについて考えることがあったとしても、──主体ではなく客体と見なしやすい。あるいは、もしかしたら、わたしたちは忘れたり、誤解したりしているのではなく、心の奥底で真実だとわかっていることから無意識のうちに目を背けているのかもしれない。なぜなら、自分たちの経済システムが、他の生物を組織的に搾取することに依存していることを認めるのは、耐えがたいからだ。

細菌を例にとってみよう。わたしたちは何世代にもわたって細菌は悪いものだと教わり、それを信じきっていた。抗菌せっけんや化学的な消毒液で武装し、身体、家、それに食べ物から、わたしたちが「病原菌」と呼ぶ、目に見えない小さな敵を取り除いていった。しかし、近年、科学者たちはそうした考えを覆し始めた。

最近の科学者たちは、微生物を除去されたマウスは反社会的な行動をとることを発見し、人間も同様である可能性が高いと予想している★11。

木はわたしたちの行動にも影響を与える。研究者たちは、人は木の近くで過ごすと、より協力的で、親切で、寛大になることを発見した。また、世界に対する畏怖や驚きは増し、その結果、他者との関わり方が変わり、攻撃性や非礼な行為が減る。シカゴ、ボルチモア、バンクーバーでの研究により、樹木が多い地域では、暴行、強盗、薬物使用などの犯罪が著しく少ないことが明らかになった。社会経済的地位や他の交絡因子を調整しても同様だった★22。まるで、木と共に過ごすことで、より人間らしくなるようだ。

なぜそうなるのか、理由はよくわかっていない。緑が多い環境は快適で落ち着くというだけのことなのだろうか? ポーランドで行われた研究は、そうではないことを示している。その研究では、被験者は冬の都会の森で15分間立たされた。葉も、緑も、低木の植え込みもなく、ただまっすぐ伸びた裸の木々があるだけだ。そのような環境では、気分へのプラスの影響はほとんどないと予想されたが、結果は違った。裸の森で立って過ごした被験者には、都市景観の中で15分間過ごした対照群に比べて、心理的・感情的状態の大幅な向上が認められたのだ★23。 

気分と行動だけではない。木は身体の健康にも影響を与え、その影響は具体的で、計測可能なのだ。樹木の近くに住むと、心血管疾患のリスクが下がることが明らかになった★24。森林を散歩すると、血圧、コルチゾールレベル、心拍、その他、ストレスや不安の指標が下がることがわかっている★25。さらに興味深いことに、中国の科学者チームは、慢性疾患を持つ高齢の患者が森林で過ごすと、免疫機能が大幅に改善することを発見した★26。確かなことはわからないが、これは木が放出する化学物質と関係があるのかもしれない。たとえば、ヒノキが放出する香りの良い成分(フィトンチッド)は、免疫細胞を活性化し、ストレスホルモンのレベルを下げることがわかっている★27。

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2024年02月26日

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この手の本はもういいかなと思っていたのだが、あにはからんやとても面白く覚えておきたい箇所が多すぎて覚えられない本だった。経済成長を目標とする限り、人為的に希少性を作り出し、搾取する対象を作り出し、環境問題も格差も収まることはない。ジェボンズのパラドックスはパラドックスじゃなく、資本主義の原理そのもの。変えるのはアニミズム的価値観、広い視野での公平性と謙虚さ。生態系の科学が価値観の変容を促している。納得感が高い。これをみんなが理解したら世界は変わるのではないだろうか。

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2023年11月08日

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斎藤幸平氏と同じ主張で目新しさはないが、ここまで地球環境の悪化が進んでくるともうこの道しかないと言う気もするし、一方で脱成長の世界がディストピアにも見えてくる。
著者が描く「バラ色の」世界を読んで思い出したのが、共産主義末期の1989年に旅行した旧ソ連の世界。メガネメーカーが一社しかないのか誰もが揃いも揃って同じ古臭い額縁メガネをかけ、商店に行ってもモノがない。車もモデルチェンジがないから年代物が幅を利かせている。確かに資源の浪費は減るだろうが、この世界には選択する自由も楽しみもない。日本は恵まれていると思ったものだ。ただここまでしないと地球を守れなくなっているのかも知れない。
先進国で人口が減り始め、途上国でも増加率に歯止めがかかりつつある。脱成長にシフトする好機であるとも言える。

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2025年10月10日

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東南アジアの辺境やアフリカを訪れた時のことを思い出す。
先進国と呼ばれる国の人間が新しい考えだと思うことが、他の場所に既に存在していることは多々ある。

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2024年10月06日

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私たちは経済成長をいいものだと思っているが、必ずしもそうではないのかもしれない。
この本は今まで当たり前に思ってきた価値観が、資本主義によるものであり、それが環境問題や労働の搾取にもつながるもので、あらためて考え直してみる機会をくれた。

資本主義は、限りなく成長を求めさせ続けるもので、財やサービスの生産は、それがどのように役にたつかという使用価値でなく、より利益になるようにと交換価値に重きをおくものになっている。
そして、人為的に希少性をつくることで、あふれるほどの富がありながら、満たされることなく、より成長を求めて、自然や労働が搾取されていくような状況をつくっている。
資本主義は、いい面もあったかもしれないが、餓鬼道(仏教でいう、欲が決して満たされず苦しむ世界)をこの世につくってきた面もあるな、と考えさせられた。

最近、この本のように環境問題や格差など、資本主義の欠点を指摘する本が増えていて、マルクスが見直されたりもしている。
ただ、富裕層叩きや権力者批判とか、陰謀論とかそんなものでは何も解決しない。
この本もそのようなものではなく、社会全体的な構造に問題があり、個人では解決しない難しいところがある。
少なくとも学ぶことには意味があると思うし、学ばなければ、正しい理解も行動も生まれないと思う。

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2024年04月26日

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資本主義が略奪、搾取を繰り返し、一部の富裕層の懐を過剰に満たす結果となった歴史を丁寧に解説し、これから目指していく世界の在り方を提起している。成長し続けることが必ずしも人間の性質ではなく、資本主義の成長も自然界や弱者から奪わなければ為し得なかったとわかった。成長を目指し続けることが当然の様な現代社会の実態は、過剰な利潤追求であり、本当の幸せを掴めていない。人間は地球上の生命体の一つに過ぎず、他の全てと互いに手を繋ぎ生きていきたいと思った。これまで当然とされていた資本主義や常識に対して本書のような意見を述べる研究者が最近増えており、地球上の全てと共存していける世界に変わっていくといいなと思う。自分についても必要以上のものをため込んでいないか、振り返りたい。

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2024年03月22日

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人間のそもそもの本性が利己的でも暴力的でもない。自然や植民地を搾取しても良いと捉えた二分論が(GDPの増大という意味の)成長し続けることを強いる資本主義を成立させた。
なので、経営者が強欲なのではなく、投資家、融資先からの成長圧力で必要以上に成長を求めさせられる。
しかし、ケインズが100年ほど前に予想したように、人間の労働時間を下げ、ワークシェアし、健康と生態系に配慮した生活をすればより幸せになる。

GDPが一定以上成長せずとも、公共福祉に投資すれば、収入をあげなくても幸せに暮らせる。

そういったことをネイチャーネガティブと気候変動リスクという背景や、歴史的経緯と合わせて解説してくれる本。

改めて、ビルゲイツが決済機能は必要だが、銀行は不要と言い放ったこともわかる。

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2024年02月08日

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うんうん、納得。
・・・で、読み終わった今日から、私は何をしたらよい?
今、朝の9時。寒い。
今日も洗濯物乾きそうにないな、最初から乾燥機にかけようか、、、という思考は、OK?
(世界の上位数パーセントの富裕層以外は、今のままの生活を続けてOK?)

・・・具体的に、どうしたら、未来を変えて、豊かな世界を取り戻せるのだろう?

・・・そこは、それぞれが考えて実行することで、本が教えてくれるわけじゃないのね、そりゃそうですね。

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2024年01月13日

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永遠に終わらない成長が資本主義の本質とすると、脱成長こそがポスト資本主義になりえる。成長しないことは豊かさを失うこととは同義ではなく、成長という思い込みからの解放である。
必要なものを必要なだけ、適切に配分する、本当の豊かさがこれからの希望になる。

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2023年12月23日

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大量生産、大量消費。そうした世界にちょっとしんどさを感じていた今日この頃。資本主義のあり方について問う本書はなるほどなと思わされるところがいくつも。戦略会議で右肩上がりのグラフを見るたびに、本当にそうでないといけないんだろうかと疑問視していたので、脱成長が謳われているところに共感。はたして自分の仕事は使用価値を生み出しているのか、交換価値を助長しているのか、考えさせられる。自然回帰な暮らし。不便を楽しむくらいの暮らしが今こそ求められているのかもしれない。

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2023年11月26日

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自分がしっかりと資本主義社会に浸透されていることを改めて自覚した。
今は時代の流れに沿って頑張るけど、今の暮らしにも互恵関係を取り入れつつ生きてきたいな。
自然や世の中から何かをもらい続けることがつまらなくなってきたっていうのもある。消費者なんよな常に。
あと、将来海や緑の近くで古民家暮らしがしたいという思いがもっと強くなったな。

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2023年10月28日

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資本主義とは何か
格差拡大、気候変動を背景にポスト資本主義が注目されており、多くの議論がなされている。
多くは、資源や環境を維持しながらどうやって成長するかが課題であり、いわゆる脱成長は異端的な扱いだろう。

本書の序盤では、資本主義を長期の時間軸でふりかえり、資本主義の本質的な暴力性を主張する、なかなか過激な内容である。資本主義による成長は、資源化、希少化による交換価値の蓄積であり、必ず貧困や格差を生み出す、国も投資家も企業も、そのような資本主義を推進する指標、GDPや資本コストで動いている限り、ジャガーノートのように破壊し尽くすしかない、という。確かに一面ではそう思うが、特に日本は欧米とは格差レベルが段違いに低いので、それだけではないダイナミズムがあると思う。

中盤からの解決策は、今の多くの取り組みへの批判から始まる。グリーン成長は、奇跡を祈るようなものという。カーボンプライシングは炭素だけで不十分、自然エネルギーは増加分をまかなうだけで、エネルギー総量を減らさないと、など。

ではどうするのか?

それはコモンズと脱成長へのパラダイムシフトである。質素な生活を我慢することでも、技術革新を捨てることでもなく、多くの人が本当に大切にしたいことを大切にすることで可能だという。しかしすべての人がそうは思っていないため、実現には困難を伴う、具体的には、いま力のある人から力を取り戻す必要がある。

そんなことが可能だろうか?眼の前で火災、水害、疫病で多くの人が亡くなっても、今持っている人は何ともないのでは?と思う。

終盤からは、なぜかアニミズムの話になり、繰り返しも多く読みづらい…

歴史的に資本主義をふりかえったところは面白かったが、全体的に力が足りない。

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2024年04月28日

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ネタバレ

気候変動や生態系壊滅の理由は、資本主義に欠かせなくなっている成長主義、富裕層(先進国国民もふくむ)による過剰消費なわけで。なぜこうなったのか、の歴史が丁寧にひもとかれていてわかりやすかった。GDPを指標にしたのがダメ押しだったかー。背景となるデカルトの思想と、反発したスピノザの思想の話とか初めて知って、面白かった。

後半、資本主義と民主主義はセットではない、全体主義にならず民主主義のままでも脱成長主義は目指せる、とい書かれていて。本当にそうだといいのだが。

別の本でもあったけど、テクノロジーで解決できるというのは幻想だそうで。残念。省エネ化しても大型化したりして、結局エネルギー消費量は増えてるしね、、未来のドラえもんに期待せず、今できることをしないといけない。

さて、で自分は何ができるのか? (環境系の本を読むと必ずぶち当たる定番の問い)

とりあえず、本文より「大量消費を止める5つの非常ブレーキ」をメモ
1.計画的陳腐化を終わらせる
2.広告を減らす
3.所有権から使用権へ移行する
4.食品廃棄を終わらせる
5.生態系を破壊する産業を縮小する

ミニマリスト、足るを知る、などの最近(でもないか)のトレンドが、思想としてもっと強力になればいいのかなー

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2024年04月20日

Posted by ブクログ

ネタバレ

自分、資本主義の世で産湯に浸かり、
アメリカの豊かな生活に憧れる少年時代を
過ごしましたんで、
この本のように「資本主義にブレーキをかけなければ」
と主張されましてもなかなか目が覚めません。

でも一方では、
長時間勤務、勤勉な勤務、自己啓発、周囲の雰囲気をこわさないために職場で文句は言わない、有給休暇をとらない等々、よいとされている働き方をしていては育児との両立が非常に困難な生活実態について、
こんな社会は変だ、こんな社会を次世代に残すのはかわいそうだという気持ちは強いです。

著者が一刀両断、「GDP成長率を追求し続ける資本主義はあかんねん、地球がもたないからな(意訳です)」
「富の蓄積を解体して、新しい分配で世界を変えんとあかん(意訳)」
「人間の幸福に関して言えば、収入をふやせば幸福なのではなく、福利購買力を高めることが肝要(これも意訳)」
歯切れ良く主張している内容は確かに心地よいです。

自分、不器用なんで今日はここまでです。

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2023年12月01日

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