【感想・ネタバレ】Humankind 希望の歴史 下 人類が善き未来をつくるための18章のレビュー

あらすじ

「人間への見方が新しく変わる」――ユヴァル・ノア・ハラリ(『サピエンス全史』著者)推薦!

「希望に満ちた性善説の決定版!」――斎藤幸平(『人新世の「資本論」』著者)推薦!

「邦訳が待ちきれない!2020年ベスト10洋書」WIRED日本版選出

本国オランダでは発売忽ち25万部突破ベストセラーに。世界46カ国での翻訳が決定。

近現代の社会思想は、”性悪説”で動いてきた。だが、これらは本当か。

・ホッブズいわく「万人の万人に対する闘争」
・アダム・スミスによると、人は損得勘定で動くホモエコノミクス
・ダーウィンが唱えた、自然淘汰説
・ドーキンスは『利己的な遺伝子』を執筆
・少年たちのいじめ本性を描いた『蠅の王』がノーベル文学賞

著者は、この暗い人間観を裏付ける心理学や人類学の定説の真偽を確かめるべく
世界中を飛び回り、関係者に話を聞き、エビデンスを集めたところ意外な結果に。

・スタンフォード大の囚人実験(普通の人間は邪悪になれる)
・ミルグラムの電気ショック実験(アイヒマン実験は)
・イースター島絶滅は人間のエゴ説(ジャレド・ダイアモンド)

善人が悪人になってしまう理由とは。なぜ人類は生き残れたのか。
これから生き延びるためにどうすればよいかが書かれた「希望の書」。

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Posted by ブクログ

上下一気読み。
誰もが幻と思う人間の性善説について、まさに希望の証拠。
分断なんてしている場合じゃないよね、と世界に対してめちゃくちゃ客観的になれた。

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2025年04月29日

Posted by ブクログ

世界の全ての人に、今すぐにでも、読んでほしい一冊。まさしく、人生観の変わるものです。
ノルウェーの刑務所の話。1914年のクリスマス休戦の話。南アフリカ民主主義誕生を支えた二人の双子の話。
勇気を持って、人間について新しい見方をして、新しい現実主義を始めなければならない。

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2025年01月22日

Posted by ブクログ

上巻では、人間の本性は善であると結論づけた。ではなぜ人間は、戦争やテロを起こしたり、ガス室を作ったり、虐殺を行ったりするのだろうか。筆者は「共感が目を塞ぐ」と表現する。共感は、仲間意識や困っている人を助けよう、全なるものを見た時に理解できたり、自分もそうなろうとする原動力にもなるが、一方、狭いコミュニティや同種の者に対する贔屓をも誘発する。これが嵩じるとナショナリズムやヘイトにつながるわけで、この説明は納得。ではどうすべきかについて、「対話」であるとする。第一次世界大戦のクリスマスの逸話、ネルソン・マンデラの改革を後押しした全く正反対の立場に立った双子の話など、いくつかの興味深い事例を挙げている。相対主義や悲観主義にならず、良い意味での現実主義を持って行動することが大事。

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2024年11月24日

Posted by ブクログ

すごく感銘を受けた。

私はかねがね、性善説を信じていたけど、やっぱり間違いじゃなかったと思った。
尊重されれば、尊重する。
期待されれば、期待されたようになる。

たくさん思ったことがあるけど、私は愛の塊みたいになりたいし、みんなもそうだと信じている。

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2024年08月12日

Posted by ブクログ

ー 良いことをすると、気分が良くなる。世界に生きていると言うのは、素晴らしいことだ。私たちは食べ物を好むのは、それがなければ飢えるからだ。セックスを好むのは、それをしなければ絶滅するからだ。人助けが好きなのは、他者がいないと自分もいなくなるからだ。良いことをすると気分が良くなるのは、それが良いことだからだ。

これが本書の主張の全てだろうなと思う。最強の説得力。生まれながらに「気持ち良く」感じる行為は、本来人間に期待され備わった性質なのだから、良いことした後の爽快感は、性善説の証明になるという事。

著者は「スタンフォード監獄実験」や「ミルグラムの電気ショック実験」など、人間が服従により悪意を果たすような実験、傍観者効果のように、自己防衛本能を発揮する利己的な存在である事に反証するが、何もこうした議論をせずとも、前述の内容で語れてしまえそうな破壊力がある。

では、なぜ悪事は存在するのか。

人間は、生まれつき脳内に同族意識の芽を備えている。同じ色の実験だが、確かに、スポーツではユニフォームの色で敵と味方を分けている。また、乳幼児は生まれながらに外国人恐怖症の傾向を備えている。共感こそが、私たちを最も親切で最も残虐な種にしているメカニズムだという。〝善事は、味方にしか及ばない“

ならば、敵と味方を区別する境界線を知っておきたい所。それこそが、共通の「物語」だ。数百万人の人々とともに、並外れた規模で協働するために、宗教や資本主義、国家主義を創造した。これはユヴァル理論だが、しかし「物語」には、強制装置が必要だと著者はいう。いや、必要とは言ってないが、現実的に、暴力とセットだと言うのだ。暴力の脅威によって強化されている。例えば、お金はフィクションかもしれないが、請求を無視すれば、当局が追いかけてくる。強制装置には、相互監視社会や同調圧力もあると思う。

自発的、そうでなくても強制的に、敵と味方は分かれていく。限定的な善意は、この境界線の不安定さに揺さぶられ、時に暴走する。正義の快楽、とは敵や違反を罰する事だ。気持ち良い事は、本来人間に備わった性質。ここでの暴力は正義ではないか。なんと真逆。これを知った上で、この二面性と境界線の克服こそ、必要な論点である。

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2024年03月02日

Posted by ブクログ

人間の善性が見失われる現代への布石を投げかける一冊。
これは本当に不思議なことで、人間の悪性を前提にした設計があまりにも多いことに気づき驚かされるとともに、かなりの勇気を伴う作業にもなるが、こんなにも平和な、甘温い世界が目の前にあるのかもしれないとの希望的な話もない。

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2024年02月14日

Posted by ブクログ

上下巻の感想

上巻は過去の実験、論文が嘘、誤りだったという内容がメイン。
多くは以前、聞いたり、読んだりして、信じていたもので衝撃を受けてしまった。

下巻は人を理解する事でこんなに素晴らしい事が起きたという例がいくつか紹介され、邦題の通り、希望を抱く内容だった。

読み終えて、
これまで信じてきた物が嘘なら、この本も嘘?
一体、何を信じればいいの?、?

と、思いつつ、どうせ騙されるなら、希望を持った方がいいよねという結論にしました。

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2024年01月27日

Posted by ブクログ

高揚する本だった。
世界は大いなる善意で回っている。


ドイツ軍の人間ばなれした戦闘を可能にしたものは「友情」
テロリストにさえ当てはまる

自由を与え、あらゆる年代と能力の子どもが入り混じったコミュニティの中で、コーチやプレイ・リーダーが支援すれば、子どもは最もよく学ぶ
大人は、子どもに自由を与える勇気を持っているかどうかだ

ベネズエラの自治体トレス、とある候補者が、当選したら権力を住民に譲り渡すとして、本当に当選して、わたした。
そこから急速に発達していった。
次にブラジルのポスト・アレグレで起きて、今は世界中に広がっている

ノルウェーの刑務所システムは再犯率が世界最低

割れ窓理論はベニヤ理論の一種

オールポートの接触理論、交流には効果がある

著者の人生の指針10ヶ条
1. 疑いを抱いた時には、最善を想定しよう 疑わしきは罰せず 
2. ウィン・ウィンのシナリオで考えよう 
3. もっとたくさん質問しよう 自分がしてもらいたいと思うことを他人にしてはいけない。その人の好みが自分と同じとは限らないからだ
4. 共感を抑え、思いやりの心を育てよう 瞑想によって思いやりを鍛錬できる
5. 他人を理解するよう努めよう。たとえその人に同意できなくても 
6. 他の人々が自らを愛するように、あなたも自らを愛そう 
7. ニュースを避けよう ネット、SNSを制限
8. ナチスを叩かない 
9. クローゼットから出よう、善行を恥じてはならない 
10. 現実主義になろう 

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2023年12月28日

Posted by ブクログ

日ごろから「たぶんそうなんだろうな」と思っていて、それとは違う出来事に出会うと、「きっとこれは稀有な出来事なのだ」と思うようにしていた自分の考えが、根底から覆された、自分にとっては衝撃的な書物であった。

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2023年11月16日

Posted by ブクログ

人間は性悪説ということをとるとそれがマスコミや論文によって広まるとそれに基づく社会形成になってしまい、逆もしかり。ただマスコミはセンセーショナルな性悪説を取り上げがちになる。
また人間の共感力が強く、船上で他人を殺すのは、遠隔の武器であればあるほど良いし、殺戮の目的は占有や家族といった身近な人を守るためであり、共産主義やナチズムではない。もちろんトップの人間はそのようなことも考えない目的のためには何でも行うタイプであることは多いが、彼らは共感力を利用して人を動かす。
そのことを利用させないためには、直接の対話が必要となる。

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2023年10月29日

Posted by ブクログ

共感はスポットライト、見たいものしか目に入らない。誰かに共感するということは同時に誰かを否定することにつながる。
真実こそ信じる道。自分の理想が全てではない。
ニュースを信じない。疑ったときは最善を想定する。
結論、思いやりが全て。

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2023年10月08日

Posted by ブクログ

人は善である。そんなこともない、と思ってしまうのは、誤った情報を浴びせられているからか。では、なぜ、そんなことをするのか。反対のことをしたほうが面白い、うける、という思いを持つ人がいるという性質もあるのだろう。人とは、という哲学、は尽きることがない。自分なりの考えをつきつめるには読書だ!

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2023年06月08日

Posted by ブクログ

 希望の書。著者は言う、「わたしたちが、大半の人は親切で寛大だと考えるようになれば、全てが変わるはずた。」

 現在の社会の様々なシステム、民主主義、資本主義、教育、刑務所、介護・・・全ては「人間は本質的に利己的で、攻撃的で、すぐにパニックを起こす」という「最悪な人間を想定した」システムである。
れに対して「大半の人は親切で寛大」だと考えて政治(税金の使い道を決める)、刑務所、介護施設・・その他のシステムを動かし始めた人たちがいる。そしてそれは、前者よりもはるかに上手く機能している。そういう幾つかの実践を記す。

 訳者あとがきが本書を完璧にまとめてくれている。

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2023年01月02日

Posted by ブクログ

人は自分の都合の良いように情報を作り出すものだし、ファクトチェックも追いつかない 改めて自分の他人との関わり 寛容でいようと思う

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2022年07月14日

Posted by ブクログ

 少し前にわたしは、2013年に母国語であるオランダ語で綴った自著『進歩の歴史』を手に、腰を下ろした。それを読み返すのは苦痛だった。その本の中で少し前にわたしは、二〇一三年に母国語であるオランダ語で綴った自著『進歩の歴史』を手に腰を下ろした。それを読み返すのは苦痛だった。その本の中でわたしは、フィリップ・ジンバルドによるスタンフォード監獄「実験」を、何の非難もせず、善人が自発的に怪物に変わる証拠として取り上げた。明らかに、あの実験の何かがわたしの心を捉えたのだ。
 わたしだけではない。第二次世界大戦後、ベニヤ説の変種がいくつも生まれ、それらを裏付ける証拠はますます堅牢になっていくように見えた。スタンレー・ミルグラムは電気ショック発生器を使ってそれを証明した。メディアは、キティ・ジェノヴィーズの死の後、ベニヤ説を大々的に伝えた。そしてウィリアム・ゴールディングとフィリップ・ジンバルドはベニヤ説に世界的名声をもたらした。こうして、トマスホッブズが三〇〇年前に主張したように、悪はすべての人間のすぐ内側でくすぶっていると考えられてきた。
 しかし今、殺人事件と実験の書庫が開かれ、ベニヤ説が完全な間違いだったことがわかった。ジンバルドの監獄の看守は?彼らは俳優のように演技をしていた。ミルグラムの電気ショック発生器の被験者は?彼らは正しいことをしたかっただけだ。ではキティは?彼女は近隣の人の腕に抱かれて亡くなった。
 これらの人々のほとんどは、人助けしたかっただけのように見える。人助けできなかった人間がいるとすれば、それは科学者や編集長や、知事や刑務所長といった責任者だ。彼らは嘘をつき、操作した、怪物だった。これらの権力者は自らのよこしまな願望から人々を守るどころか、全力を尽くして人々を互いと敵対させたのだ。
 このことはわたしたちを、人はなぜ邪悪なことをするのかという本質的な問いに引き戻す。フレンドリーな二足歩行のホモ・パピーはいかにして、監獄やガス室を作る唯一の種になったのだろう。
 前章までで、人の仮面をつけた悪に誘惑されやすいことを学んだ。しかしこの発見は、別の疑問を生じさせる。歴史の流れのなかで、なぜ悪は、わたしたちを欺くことにこれほど熟達したのだろうか。どのようにして、わたしたちを互いに宣戦布告させるに至ったのだろうか。
 第3章で紹介した我らが「子イヌの専門家」、ブライアン・ヘアの観察が、わたしの頭から離れない。彼はこう言った。「わたしたちを最も親切な種にしているメカニズムは、同時にわたしたちを地球上で最も残酷な種にしている」


■史上最悪の虐殺へ駆り立てたのは友情だった
 この考えをわたしが理解するまでには長くかかった。
 オランダで育った一〇代の頃、わたしは第二次世界大戦を、「ロード・オブ・ザ・リング」の二十世紀版、つまり、勇敢なヒーローと邪悪な悪党とのスリリングな戦いとして思い描いていた。しかしモーリス・ジャノヴィッツが明らかにしたのは、異なる状況だった。 彼が発見した悪の起源は、堕落した悪人のサディスティックな性癖ではなく、勇敢な兵士の団結だった。第二次世界大戦は勇壮な戦いであり、友情と忠誠心と団結、すなわち人間の最善の性質が、何百万という普通の男たちを、史上最悪の虐殺へと駆り立てたのだ。


 ブルームによると、共感できる相手は、救いがたいほど限られている。共感は身近な人に対して感情である。わたしたちが匂いをかぎ、目で見て、耳で聞き、触れることができるに人に対して。家族や友だち、お気に入りのバンドのファン、そしておそらくは、町で見かけるホームレスに対して。さらにはイヌに対しても。畜産場で虐待された動物の肉を食べながら、わたしたちは、子犬を抱いたり可愛がったりする。また、テレビが映す人々に対しても共感を覚える。悲しげな曲をBGMにして、カメラがズームインする人々に対して。
 ブルームの本を読むと、共感は何よりもニュースに似ていることに気づく。第1章では、ニュースがスポットライトのように機能することを述べた。共感が、特別な人か何かにズー ムインしてわたしたちを騙すように、ニュースは例外的な何かにズームインして、わたしたちを欺く。
 一つ確かなことがある。それは、より良い世界は、より多くの共感から始まるわけではないということだ。むしろ、共感はわたしたちの寛大さを損なう。なぜなら、犠牲者に共感するほど、敵をひとまとめに「敵」と見なすようになるからだ。選ばれた少数に明るいスポットライトをあてることで、わたしたちは敵の観点に立つことができなくなる。少数を注視すると、その他大勢は視野に入らなくなる。
 これが、 子イヌの専門家ブライアン・ヘアが語ったメカニズムだ。わたしたちを地球上で最も親切で最も残虐な種にしているメカニズムだ。そして悲しい現実は、共感と外国人恐怖症が密接につながっていることだ。その二つはコインの表と裏なのである。


 権力を握る人々にも、同じ傾向が見られる。彼らは脳を損傷した人のような行動をとる。普通の人より衝動的で自己中心的で落ち着きがなく、横柄で無礼。浮気する可能性が高く、他人にもその気持ちにもあまり関心がない。加えて彼らは厚かましく、人間を霊長類の中で特別な存在にしている、顔の現象を往々にして喪失している。
 つまり彼らは赤面しないのだ。
 権力は麻酔薬のような働きをして、人を他者に対して鈍感にするらしい。


 あるアメリカの人類学者は、狩猟採集民の社会についての四八の研究を分析して、マキャヴェリズムはほぼ常に惨事を招く、という結論に至った。彼はその理由を説明するために、狩猟採集をしていた時代にリーダーに選ばれるために必要とされた特徴を挙げた。それは次の通りだ。
 寛大である
 勇敢である
 賢明である
 カリスマ性がある
 公平である
 偏見がない
 信頼できる
 機転が利く
 強い
 謙虚である
 狩猟採集民の世界では、リーダーは一時的な存在にすぎず、重要なことは皆で話し合って決める。後にマキャヴェッリが述べたような愚かな行動をとる人は、命を危険にさらすことになる。利己的な人間や強欲な人間は部族から追い出され、飢餓に直面する。結局のところ、食料を独り占めしようとする人とは、誰も食料を分かち合いたいとは思わないのだ。


 しかし、その後デシの疑念を裏づける研究結果が続々と報告されるようになった。一九九〇年代後期にイスラエルのハイファで行われた実験を紹介しよう。舞台は保育所だ。親の四人に一人は、子どもの引き取りが遅く、保育所が閉まってから来ていた。そのせいで子どもはぐずり、職員は残業を強いられた。そこで保育所は親に罰金を科すことにした。遅刻するたびに三ドルだ。
 良いアイデアだと思えるだろう。親にしてみれば、遅刻しない理由が二つになったのだ。すなわち道徳的な理由と、経済的な理由である。
 この新たな方針が発表されると、お迎えに遅れる親の数は……増えた。じきに親の三分の一が保育所が閉まってから迎えに来るようになり、数週間のうちにその割合は四〇パーセントになった。理由ははっきりしていた。親たちは遅刻のたびに支払うお金を、罰金ではなく追加料金と解釈し、子どもを時間内に引き取る義務から解放されたのだ。
 その後も多くの研究が、デシの発見を裏づけた。つまり、状況によっては、人が何かをする理由は多ければ多いほど良いというわけでないのである。時として、それらは互いを打ち消す。

■人生の指針とすべき10のルール
1.疑いを抱いた時には、最善を想定しよう
2.ウィン・ウィンのシナリオで考えよう
3.もっとたくさん質問しよう
4.共感を抑え、思いやりの心を育てよう
5.他人を理解するよう努めよう。たとえその人に同意できなくても
6.他の人々が自らを愛するように、あなたも自らを愛そう
7.ニュースを避けよう
8.ナチスを叩かない
9.クローゼットから出よう。善行を恥じてはならない。
10.現実主義になろう

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2022年06月12日

Posted by ブクログ

そもそも人間の本質は「善」であると唱えている。
「性善説」を人類の歴史、集団心理などから切り込んで持論を展開。
人間は善の仮面をつけた悪に誘惑されやすいという。
なぜか。
それは私たちは共感することで寛大さを失い、少数者に対してその他大勢を「敵」と見るからだという。
その心理状態なんとなくわかる。
興味深い実験があった。
子供たちに赤と青のTシャツの好きな方を選ぶ実験をすると、青のTシャツを多く選んだ子達が、赤のTシャツを選んだ少ない方の子達をいじめるようになる。
人間の心理は既に子供のころに、このような心理になることがわかる。

だが、人間の本質は「悪」ではなかった。
過去の心理状態の実験の数々は真実でなかったことをブレグマンは独自目線で解き明かしていく。
無人島に着いた少年たちが残虐な行為をしていく「蠅の王」では、実は少年達は互いに思いやり、生き延びたこと、「スタンフォード監獄実験」では看守役が囚人を殴るのは役を演じていたことがわかる。

他者に寛容でお互いが良い関係であること、
それは、全ての人が勝者になる。
許すことができれば反感や悪意にエネルギーを浪費しないですむ、
「人生の指針とすべき10のルール」の中で人を人として更生させていく矯正施設ノルウェー刑務所の例を挙げている。
刑務所の所長が言う。「汚物のように扱えば人は汚物となる、人間として扱えば人間らしく振舞う」と。
この刑務所の出所後再犯率の低さは世界最高だという。
更生後の人は社会で働き税金を納め、再び犯罪を犯すことが低くなっている。
これぞウィンウィンの関係になると説く。

そして人は思いやりの心をもち寛容である、弱気者に手をさしのべる、本来そういう生き物であると結論づけている。
それでは地球温暖化や凶悪事件など人類が起こした問題はどのように捉えたらよいのか。
歴史が繰り返した数々の問題があるからこそ、人間の本性の原点に目を向けるよう気づかせてくれたのでは。

私たちにできることは何か。
他人の失敗や発言を非難したり、ダメなところが目についてしまいがちな心に、思いやりを持って接していく、よいところを見る、そういうところから始めてみようと思う。
人は人を許し、受け入れて前を向かって歩いていく、人に対して新しい視点に立ち接していくことを教えてくれた、とても良い本に出会えた。

多くの人に読んで欲しい本です。 

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2022年02月10日

Posted by ブクログ

ハラリ大先生の帯文通り「人間観を一新させてくれる」一冊。
「人間の本質は善か?」というシンプルかつ大きな哲学的問い、すなわち性悪説(ロック派)と性善説(ルソー派)どちらに寄って立つべきかを、様々な角度から問うていく。

往々にしてロック派の論拠とされる数多の歴史的通説(ex:イースター島の悲劇、ホロコースト)や心理学実験(ex:ミルグラム、スタンフォード監獄実験)、多くの凶悪事件(ex:キティ殺人事件)の真相を徹底的に暴き出すことで、これらが(あるいはこれらに対する意味認識が)歴史家や教授、メディアがつくりだした虚構であると断言する。
一方で、第一次世界大戦中のクリスマス事件をはじめ、ルソー派に寄って立つべき論拠を多数引用することで、「人間の本質は善である」と一貫して主張する。

有名な学説、実験の数々が実は恣意的に造られたものであったこと、そしてそれが暴かれていく過程に知的好奇心が多いに湧き立つとともに、まさに帯文通りページを繰るごとに「人間観が一新されていく」感覚を得ることができた。
上下巻通して興奮止まらぬ読書体験で、本当に読んでよかった。全ての人に勧めたい、素晴らしい作品。

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2022年02月07日

Posted by ブクログ

本当に資本主義は間違えていないのか。
コモンの考え方について記述されている。
斎藤幸平氏の著書を想起させる。
サピエンス全史と共通した部分もあるものの、
人間は善なのかという問いをテーマにしている点で
独自性がある。
現実主義のすすめ。
性善説のすすめ。
下巻は示唆に富んだ、いい一冊だった。

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2025年11月13日

Posted by ブクログ

共感はブラインドスポットを作り出し、それは即ち悪を生み出す。
繋がりが多様になった現代。自分ではない存在を知ることは容易で、自他の境界が数多存在する。それは自分にスポッとを、他者がブラインドスポットになることにも繋がり、また、繋がりがある者同士でしか共感しないことに拍車をかける。
そうして悪が加速した。

そして、共感しない人がトップに躍り立つ。
ブラインドスポットに共感しない者が、ブラインドスポットを敵とみなし、そこに共感力が高い人がフォローし付いて行く構図になる。

それで正しいのだろうか?
そうして起きた戦争、迫害、犯罪…はこれらの延長線上にある。
しかし気付いた。私たちには理性がある、と。啓蒙主義。
理性があるなら間違いは防げるはずなのでは、、、?

だから手に入れた民主主義の概念。
一人ひとりが存在し、人権を持ち、民意を創るのだ。が駆動しているのか。
そもそも駆動させられるのか?
つまり、またブラインドスポットを生み出し、同じ過ちを繰り返すのではないだろうか?

『非相補的行動』
右の頬を打たれたら左の頬を向ける。
物を盗まれたら、盗んだ人に食事を与える。
刑務所でリゾートのような暮らしを送り、再犯率を下げ、警官のモチベーションも上がる。

そんなことが可能だろうか。
可能なことを本書は証明してくれる。
人は本質的には善であるがゆえに、非相補的行動がとれる。
そして、人は互いを思いやることで、全体的にプラスに発展することができる。
臭いものに蓋をして、見て見ぬふりふりをして、距離をとるとますますブラインドスポットが広く深くなる。
だから、著者は交流することを勧める。

交流することで他者を知り、自分を知る。

至極当たり前だが、その当たり前を理解できなかったから過ちを犯してきた。

だから今日から、今から、思いやりを持って交流をするのだ。

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2024年06月16日

Posted by ブクログ

善は伝播する。本書に触れて人間の本質に関するシニカルな見解を見直し、本来の現実主義になろうという呼びかけがまさに、人を良い方向に向かわせる伝導書にの役割があるんだなと。

しかし、少し気を抜くと欺かれるな、出し抜かれる前に蹴落とせなんていう競争社会に飲み込まれそうになるこの時代。自分の心持ちは本書で得ることのできた知識を糧に、人の善を信じるよう留めて行けるように邁進すべし。少し欺瞞的になりそうですが、ぎちぎちに追い込まず自分のできる範囲から。

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2023年10月19日

Posted by ブクログ

 上巻で、人は性善説に基づいていると説いており、この下巻では、現在の戦争などがなぜ起こっているのかを解説し、どうすべきなのかが説明されています。
 狩猟採集時代には、人は皆平等であったのが、農耕が始まることで、なぜ身分差や貧富の差が発生したのか。それは、元々肥沃な河川流域で、安定した生活を始めた人々が、人口が増えることにより、得られた食物等を巡って争いが起こり、それを統治するために神などの概念を持ち出したのだとか。
 現在も資源などを巡って争いが絶えません。しかし、過去に日本やドイツが敗戦が濃厚であるにもかかわらず、兵士が戦い続けました。それは、宗教や思想、統治者への信仰などではなく、仲間を助けるためだったことが分かってきています。仲間意識、つまりよく分かり合えている者同士であることが重要なんですね。争いが起こるのは、その隣人のことをよく理解していないからだと、筆者は述べています。言葉や文化が違えども、それを理解し合う、理解しようと務めることで、争いはなくなるのだとか。その意見には共感するものの・・・

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2023年10月20日

Posted by ブクログ

下巻では、上巻での見解(人は基本的には性善であるが、騙されて悪に走ることもある)を踏まえ、今後の社会設計をどうしていくべきか、実例を交えながらまとめられている。

人は本来性善的である、という前提のもとに考えられた社会設計(政治、経済、教育等)において、多くがポジティブな結果をもたらしているとのこと。こういった事例を見ていると、人間に対するポジティブな見方が強まっていくのを感じる。

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2023年01月22日

Posted by ブクログ

前巻も楽しかったけど後半は避けて通れないナチスなどの人間史に残る負の出来事と向き合う。
最終章では希望を作るための数箇条が提示される。

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2022年11月21日

Posted by ブクログ

上巻からの続きです。上巻の際には過去に実際にあった実験の結果などを詳細に検証して、例えば捏造や恣意的なものを被験者に前もって伝えるなどで本来の実験があるべき条件で実施されていないために結論は無効である、つまりその試験は結論を導く以前に成立すらしていないと書いていた章がかなりありました。それらが世の中を席巻しているため性悪説が基本となっていると。
下巻ではどのように人は考えて行動すればよりよい世界になっていくのかということが、捏造なき試験や史実とともに考察されていきます。より良い世界とは私が下巻を通じてふわっと感じた感覚であって、実際に具体的に「良い世界」の定義は個人間で違うでしょうが。
16章テロリストとお茶を飲む は特に興味深い章でした。人は右の頬を打たれたら左の頬を差し出す事ができれば最終的には吉となる。それを個人間だけでなく地域や国の規模として出来ればもっと世の中は良い方向に進むのでしょう。
感想を書くのはとても難しいのですが、大半の人は親しい人には優しく、自分から遠くなるほど敵意を持ったり、または逆に無関心になるという事。外国人恐怖症や異民族浄化などはそのせいでしょう。そのような事をなくすためには対話、コミュニケーションがとても大事だということ。書いてしまえば、そんなの当たり前過ぎでて誰でも知ってるわと言われそうですが、大半の人は私も含めてそれがをするのが難しく、出来ていなのではないでしょうか。善い行いも悪い行いも水面の波紋のように連鎖していくものなので自分がよい行いをすることを積極的に人の前でやるという事も大事なようなのでポツポツと実行していこうかなと思います。
本書の中では今の経済や社会の仕組みなどにも多く言及していますが、そこを読むと今の世に絶望を感じてしまいました、残念ながら。

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2022年10月16日

Posted by ブクログ

人間は元来は平和を好む友好的な生き物であり、通常、対立構造に置かれそうになっても、平和的手段で解決をしようと試みる。

ただ、そうした友好的な性質が故に、集団に対して抵抗するということがやや苦手であり、時として多元的無知と呼ばれる、誤った方向への暴走が見られる。

こうした暴走は、私有財産に端を発した階級社会の登場により、社会構造が歪められたことで発生しやすくなったと筆者は主張する。

これに対する対策として、共有地の設定があるが、長らくこの共有地は、共有地の悲劇と呼ばれ、全くうまくいかないという意見が当たり前であったが、その意見すらも、人は生来的に悪であるという思想からくるものであり、現実社会での共有地は、暴走者が現れれば排除されるように、エコシステムがうまく働き、機能している。

人は、他人から期待されたような人になると言われ、10歳、厳しく囚人を罰するアメリカの再犯率が高く、一方で尊厳を持って接せられるノルウェーでは低くなるという顕著な結果に表れている。

性悪説に立つことは、ネガティブな側面をあらかじめ予測する現実主義として、これまで褒め称えられてきたが、筆者はこれを冷笑主義として、好ましくないものとしている。

そうではなく、人は本来善であり、そうした行動を他人に期待することで、全ての人がより幸せな状態になる、これが一番のメッセージと受け取った。

悪い出来事ばかりを報道するニュースによって、我々のこうした見方は歪んでいるため、ニュースから適切な距離を置き、真の現実を見る現実主義者になりたいと思う。



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2022年09月19日

Posted by ブクログ

「人の本質は善である」との観点から、これからの社会について、希望を与えてくれる本です。

確かに、ある集団に対して偏見や嫌悪感を抱いていたとしても、実際に接したことがある人に対しては親愛の情を抱くのが人間の本質であることは、経験則上、理解できるところです。

個人的には、主として北欧の国で実施されている刑務所の改善と、南アフリカのネルソン・マンデラ大統領誕生に際しての双子の物語に感銘を受けました。

犯罪をする人は、社会に対する疎外感等でやり場のない怒りを抱えているケースが多いと思います。そのような人には、刑務所内での交流による人から尊重された経験が、更生に繋がる大いなる可能性を感じました。
我が国は解決すべき問題が山積みで、刑務所改革まで意識が向かないのが実際のところですが、あとは国民がどのような政治家を選択するかというところでしょうか。

「人の本質は善である」ことが人々の共有認識となり、よりよい方向へ社会が向かうことを祈りますし、自身もそのことを意識していこうと思います。

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2022年07月09日

Posted by ブクログ

金銭的インセンティブはモチベーションを下げる、マネジメントしないマネージャーなど、内なるモチベーションの力の章は興味深かった。たしかに、一文も得にならないこと、疲れるだけのことを、自ら望んで継続的にやってますからね。
ナチスの軍人は洗脳されていたわけではなく、戦闘に駆り立てていたのは友情だった。憎しみ、不正、偏見を防ぐ最善策は、アイデンティティを持ち、交流すること。ロシア軍の前線がウクライナの人々が隣人である事を再認識して、自らの過ち、それを指導する体制の過ちに気づき、遠く離れたクレムリンまで逆流する事で、悲劇に終止符が打たれるという歴史が作られれば、この本の主張の正しさが証明される事になると思った。

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2022年05月03日

Posted by ブクログ

この下巻では、上巻で、人間が本来性善であるという証明を試みたものを、今の社会が利己的・性悪説に立ったシステムの中で、本来的な性善を取り戻し社会に拡めるにはどうしたらよいか書いている。

同じ主観をもつ共感よりも、私の主観的な視点からの思いやりを持とう。
対立には、会話、質問による交流が時間がかかるが一番効果的。
遊びこそ自由への希求と自由を利他として使えるようになる行動。
権力者は利己的でないとなれないか、権力を持った途端利己的になる。そのための権力の譲渡が必要。

この本で学んだことは、
・シニカルな見方ではなく、性善説に立ったうえでの理性と現実直視からなる思考と行動をせよ。
→シニカルな見方は頭良さそうに見えるけど、自分を卑下したりプレッシャーをかけすぎることにつながる。現実的であるとは、観察の結果の合理的思考であり、冷笑的にみたり悲観的にみたりすることではない。
・他人は私がどのように扱ったかで変わる。
→優しくした、目をかけたという意図ではなく、どのような存在とみなしたうえで接したかが返って来る。ピグマリオン効果とゴーレム効果。プラセボとノセボ効果。

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2025年09月24日

Posted by ブクログ

上巻に続き、ヒトの良い面についての耳障りが良く信じたくなるお話。根拠はないがこれまでの経験則として耳障り良い話の後はヤバい未来が待っていることが多い。著者が求めるバキバキリベラルで社会保障天国な世界を作る目的から逆算された主張に読者を誘導してるようにも見える。

いっぽうで日々の生活の中で、コンビニの外国人店員、通勤電車で隣に座ってる人などよく知らないという理由でうっすら怖いと思ってしまうが、実はみんないいヤツと思うことにするだけで世の中が少し良くなりそう。体制やビジネスの仕組みはこのままでも普段接触の少ない人にも思いやりを持って接する必要があると感じた。

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2023年11月04日

Posted by ブクログ

人間の本質は善であるということを解き明かした上巻の内容をもとに、ではなぜ現に人類は戦争や犯罪や差別など、悪によってもたらされる事象が起こっているのか?どう対処していくべきなのか?を提案した内容。本質である善は自分が共感する対象に限られており、その対象から外れた存在には向かないから、というのはとても納得できる理由だ。70億人全てに共感することは難しいからこそ性悪説を盲目的に信じることをやめて、性善説に基づいて社会のシステムを組み立てるとともに、共感できなくても理解と思いやりを持つことが大事なのだと理解した。

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2022年04月17日

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