CIAの職員として、中国と友好関係を結ぶために長く働いてきた著者の自伝のようなもの。
悔恨の書というか懺悔の書というか、個人としてはそのような趣きがあるとしても、政府が発刊を許したのは、ここから反撃を始めるぞ、という狼煙の役割もありそう。
米中の橋渡しが著者の仕事だったとは言え、日本の姿がまったく
...続きを読む見えないこの半世紀の記述である。
せいぜい尖閣でのせめぎあいなど、チャイナが牙を見せ始めてからの一例として登場するくらい。
この存在感のなさが「戦後レジーム」なのだな、とつくづく。
また、チャイナの側も日本のことなどまったく歯牙にもかけていないのが伺い知れる。
それは、別にチャイナのGDPが膨張したここ十数年とかの話ではなく、中ソ関係が険悪だった1960年代であってもそうなのだ。
日本が、世界第二位の経済大国とか威張っていた時代にあっても、チャイナは日本を都合よく搾取する対象としてしか扱っていない。
そのために工作に勤しみましょう、というわけで、日本の地位を奪うとかそういう意識はない。
今、結果として日本を抜いた状況にあるだけ。
当たり前だが、目線は米の覇権にのみ向いていて、そのための100年なのである。
さて、そのチャイナの100年の戦略を知ってしまった今、我々はどうすべきか。
チャイナの膨張はどうやら習近平だからどうという問題でも無いとなれば・・・。
その答えも春秋時代の戦略に学べ、というのが著者の結論。
やっぱり、古典は大事ですね、と。
以下、読んでいて驚いた点。
ソ連の高官たちが、割と早い時期に自国の没落を覚悟していたこと。
チャイナに気をつけろと米国人である著者に忠告していたこと。
天安門後も米の対中政策に変更はなかったこと。
リー・クアンユーについて紙幅を割く著者だが、マハティールについての記述は無し。