邦題はダイレクトだが、原題は“Neanderthal Man: In Search of Lost Genomes”。原著は2014年刊。著者スヴァンテ・ペーボがノーベル生理学・医学賞を授与されるのは、この8年後の2022年。
ネアンデルタール人のゲノムを取り出し解析するという冒険の一部始終が語られる。自伝的なエピソードもたっぷり入っている。それにスウェーデン人で、ドイツで研究。それらが混然一体となって、ふしぎな読後感がある。
時系列で書かれた研究の進展はスリリング。快いほどのスピード感がある。ネアンデルタール人と現生人類が交配した可能性については、かなりの紙幅を割いている。2014年の刊行なので、終わったばかりのデニソワ人のゲノム解析までを紹介している。
一方で、自伝的な側面は衝撃的。2つあげてみる。ひとつは、バイセクシュアルだということ。自分がゲイだと思っていたのに、友人のボーイッシュな奥さんに惹かれ、最終的には結婚(友人とは合意の上の略奪婚)、子ももうけている。これって二重、三重のカミングアウト?
もうひとつは婚外子であるということ。ペーボという名は化学者の母親の姓。父親は、スウェーデンの生化学者スネ・ベリストローム、1982年のノーベル生理学・医学賞受賞者。おとなになるまで、父親とは会ったことがなかったらしい。本書には、肺血栓になり危ない状態になったが、その治療法について調べたら、自分の父親の論文に行き当たり、心が揺れるエピソードも登場する。