コモンズの悲劇に対する最善策は、卑怯者になる事。これが、遺伝子にプログラムされた老化という考え方への反論。進化に利他精神はない。
何の話かというと、何故、死ぬように進化したか、という理由についての本著の主張だ。つまり、種の多様性を齎す事で生殖の役目を終えた個体は、それ以上延命されても、限られた資源
...続きを読むを消費する事で却って種の存続を危うくする。だから、利他精神の下、死がインプットされたのでは、という事への反論だ。しかし、果たして、卑怯者戦略を取る個体は生き延びられるだろうか。集団でこそ生存率が高まる社会性生物のサピエンスにおいては、やはり、死を既定する事が有用だったと考えざるを得ない。不死ならば、経験や資本の蓄積の偏りにより個体が単一化し、多様化し難くなるからだ。
こんな考察一つでも本著は面白い。それを医学的、生物学的に深掘りしながら、寿命に関わる因子をハックする。例えば、逆境が生物を強くするホルミシスという現象。運動が一例だが、少量のヒ素が線虫の寿命を高めたり、酸化促進剤が寿命を延ばす事に成功しているらしい。アンチエイジングとしてのラパマイシンなんていう薬なども。
寿命や老化についての最先端の話。死なない時代がもう直ぐ来るのかも知れない。