ジェットコースターのような展開がとてもスリリングで読み飽きない。下巻はいよいよクリスパー(CRISPR)が実装されていくステージに入る。プレーヤーもバイオハッカーのザイナーやクリスパーベビーを誕生させたフー・ジェンクイらが登場してくる。
クリスパーに代表されるテクノロジーは「滑りやすい坂道」に例え
...続きを読むられている。クリスパーベビーのテーマは批判するのは簡単かもしれないが重い。この後に出てくる第41章「思考実験」、および第42章「誰が決めるべきか?」は生命倫理を扱うテーマだけに、これだけでもじっくり読む価値がある。ここのパートがあるので後半のダウドナらの行動についても理解が追いつくようになる。
最後はダウドナとシャルパンティエの2人がノーベル賞を受賞して大団円となる。でも受賞したのは彼女たちだけではない。そこまでに多様な人種、国籍、集団、組織、理念をもつ科学者たちがいて、オープン化された科学者たちのネットワークとその歴史があってこそ。フランクリンの苦労もそこで報われたともいえる。
エピローグにあるアイザックソンの言葉がとてもよかったので抜粋します。
「わたしたちは導き手として、科学者だけでなく人道主義者を必要とするだろう。そして何よりも、ジェニファー・ダウドナのように、その両方の世界に馴染んでいる人を必要とするだろう。
だからこそ、わたしたちが足を踏み入れようとしているこのミステリアスだが希望に満ちた新しい部屋を、すべての人が理解しようとすることが有益なのだと、わたしは考えている。
今すぐすべてを決める必要はない。子どもたちにどんな世界を残したいか自問するところから始めよう。そして、手探りで一歩ずつ、願わくは手に手を携えて進んでいこう。」