西村美佐子のレビュー一覧
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伝記作家のウォルターアイザックソンの新作。
ゲノム編集技術クリスパーの開発経緯から、その後の特許紛争、新型コロナへの対応までを、ノーベル化学賞を受賞したジェニファー・ダウドナさんを中心に描いたノンフィクション。
ゲノム編集という言葉は知っていたが、それがどんなもので、どのような経緯で開発されたか知らなかったので大変勉強になった。 著者自身が編集作業を経験したり、特許やこのツールの将来の在り方についても絡んでいて、自己の見解を述べたり、研究者間の橋渡し役になっている所が普通のノンフィクションとは違っている。当事者の視点も盛り込まれている。科学者間のポリシーの違いから、医療と生命倫理について考えさせられることも多かった。
遺伝子工学については全く予備知識が無かったので、疑問に思う事も多かった。もう少し勉強しておいた方がもっと楽しく読めたと思う。 -
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ジェニファー・ダウドナ著の『CRISPR 究極の遺伝子編集技術の発見』を読んだので、上巻は復習かなぁと思っていたが、知識の雨がざぁざぁと降ってきた上巻。
なぜ、面白かったのか。思いつくのは4つ。
1)全体的には登場人物が多いのに、メインのストーリーラインを失わない著者の構成力
2) 各人物について記述されている文章量に差はあれど、第三者視点でインタビューした内容が公平に書かれていること
3) 各章のはじめに人物の写真が載せられていて、それが大体章の内容を語っているという不思議な説得力
4) 研究とビジネス(特許権含む)の動きについて、目を瞑りたくなる部分にも、明瞭に公平にそして淡々と書かれていること
たぶん、スティーブ・ジョブズを読んだ後だったらこの感動は多少薄れるんだろうけど。。面白かった。 -
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ベストセラーとなった「スティーブ・ジョブスⅠ・Ⅱ」をはじめ、レオナルド・ダ・ヴィンチやアルベルト・アインシュタインなど、偉大なイノベーターの評伝で知られる著者が、2020年にノーベル化学賞を共同受賞したジェニファー・ダウドナ博士の半生を中心に、遺伝子研究の歴史がゲノム編集技術として結実するまでの軌跡を辿る一冊(上下2冊)。
幼い頃に科学者を志したダウドナが、好奇心と競争心を武器に女性蔑視の風潮や民間企業での挫折を乗り越え、研究者としての優れた資質とチームマネジメントの才を生かしてゲノム編集の鍵となるCRISPR-cas9の構造をいち早く解明し、論文発表に至る過程だけでも圧倒されるが、著者の知的探求はそこに留まらず、研究者同士の複雑な人間関係と競争がもたらすイノベーションの価値や、ゲノム編集が喚起するであろう倫理問題等についても深い洞察を展開することで、CRISPRという世紀の発見が、複数のテーマが幾重にも重なる壮大な物語として描かれている。
主人公であるダウドナに対し、その活躍を称賛しつつも時に辛辣な意見を述べる一方、ダウドナに敵対するライバルの言い分にも耳を傾けて理解を示す著者の誰に対しても公平であろうとする姿勢は、各界の重要人物からの信頼が厚く、相手の懐に入り込んで本音を引き出す取材の深さと相まって本書の価値を高めており、これまでの著作同様、大作ながら一気に読み進めてしまう知的興奮に満ちた傑作ノンフィクションとなっている。 -
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ベストセラーとなった「スティーブ・ジョブスⅠ・Ⅱ」をはじめ、レオナルド・ダ・ヴィンチやアルベルト・アインシュタインなど、偉大なイノベーターの評伝で知られる著者が、2020年にノーベル化学賞を共同受賞したジェニファー・ダウドナ博士の半生を中心に、遺伝子研究の歴史がゲノム編集技術として結実するまでの軌跡を辿る一冊(上下2冊)。
幼い頃に科学者を志したダウドナが、好奇心と競争心を武器に女性蔑視の風潮や民間企業での挫折を乗り越え、研究者としての優れた資質とチームマネジメントの才を生かしてゲノム編集の鍵となるCRISPR-cas9の構造をいち早く解明し、論文発表に至る過程だけでも圧倒されるが、著者の知的探求はそこに留まらず、研究者同士の複雑な人間関係と競争がもたらすイノベーションの価値や、ゲノム編集が喚起するであろう倫理問題等についても深い洞察を展開することで、CRISPRという世紀の発見が、複数のテーマが幾重にも重なる壮大な物語として描かれている。
主人公であるダウドナに対し、その活躍を称賛しつつも時に辛辣な意見を述べる一方、ダウドナに敵対するライバルの言い分にも耳を傾けて理解を示す著者の誰に対しても公平であろうとする姿勢は、各界の重要人物からの信頼が厚く、相手の懐に入り込んで本音を引き出す取材の深さと相まって本書の価値を高めており、これまでの著作同様、大作ながら一気に読み進めてしまう知的興奮に満ちた傑作ノンフィクションとなっている。 -
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DNA編集技術のクリスパーCAS9の発見に至る経緯を追うノンフィクション上下巻の後編です。後編ではDNAを編集できる技術をどう活用すべきかという論理的な問題が主なテーマです。DNA編集の技術は先天的な遺伝子疾患の患者さん達にとってはまさに福音でした。多くの遺伝子疾患が治療対象の候補となっています。一方で、人間の身体機能をより向上させることも実現できる可能性が出てきました。2018年には中国の研究者がHIVへの耐性を強化する処置を施した赤ちゃんを誕生させる事態へと至りました。
ウィルス耐性を向上させたり、遺伝子疾患を解消するのは「治療」と考えられ、多くの人がその妥当性には納得できそうです。一方、身長を伸ばす、筋力を増強させる等々は人間の機能の「強化」であって、この辺りになると妥当性への理解はあいまいになりそうです。そして肌の色、髪の毛の色、瞳の色、などに至ると人間のエゴが前面に出てきているように感じます。
「治療」への活用についても人間という種の多様性を損なうという負の側面があることに触れており、本書はDNA編集の論理問題は非常に複雑で多面的な性格を帯びている事を分かりやすく述べています。DNA編集技術は人間の将来に大きな影響を与えうる可能性があるだけに、多くの人がその技術の活用法について議論する必要があり、本書はそれを考えるきっかけを与えてくれる1冊です。
上下巻合わせて700ページに及ぶ大作ですが、DNA解読技術から始まってDNA編集技術を人類が獲得し、それをどう活用するのか、コロナウィルスのパンデミックに本書で登場する科学者たちがどう対処したのか、に至るまでの壮大な「物語」を、生物学の知識がない人でも追体験できるノンフィクションの大作でした。 -
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ゲノム編集技術CRISPR-Cas9システムの発明者の1人であるジェニファー・A・ダウドナを中心とした物語。
共同研究者のエマニュエル・シャルパンティエと共に2020年にノーベル化学賞を受賞しており、世界的に注目を集める研究者である。
そんな彼女が、そもそもなぜRNAの研究に足を踏み入れたのか、というところから序盤は始まる。
体裁は第三者的な目線で書かれているが、内容が細部にわたり、ダウドナの伝記を読んでいるようであった。
ダウドナの研究の基礎には、指導教官のジャック・W・ショスタクの影響が強い。
ショスタクがダウドナに残した以下の教訓は全ての研究者に刺さるのでは。
「リスクを恐れず新たな分野へ進むべきだ」「壮大な疑問を抱きなさい」
中盤以降は、CRISPR-Cas9が発見された経緯、それがどのように遺伝子治療へと応用されていったかという話。
面白いのはCRISPR-Cas9が遺伝子編集技術を見つけようと意図して発見されたわけではないこと。
もともとは細菌に対する遺伝子解析から見つかった不思議な規則的な反復配列であった。
その機能も細菌の免疫システムに関与していることであり、ここでは遺伝子編集とは結び付かない。
ダウドナは、このメカニズムをさらに明らかにして技術を改変して、遺伝子編集ツールへと応用させた。
CRISPRが細菌の免疫システムに関与していることを最初に報告した論文 (CRISPRの機能を明らかにした重要な論文) は、
Nature誌の編集者にその重要性が理解されず、即刻リジェクトされたとのこと。
ノーベル賞を取るような革新的な技術が世の中に出てくるまでには、表に出ない様々な研究者の苦労があるのだと気付かされる。
終盤はCRISPRの特許を巡って、研究者間で生じる軋轢の話が始まる。
上巻でこのボリュームはすごい。下巻も楽しみ。 -
Posted by ブクログ
コロナウイルスのワクチンの仕組みと既存のものとの違いについて、かなり詳しく理解できた。本書のテーマは専門的で難しいかもしれないと思っていたが、RNAとその役割について分かりやすく説明してくれており、素人でも読みやすかった。
以下、本書よりメモ書き
コロナウイルスの特徴として、その形状が挙げられる。コロナウイルスの殻の外側にあるタンパク質はスパイクのような形をしていて、スパイクタンパク質と呼ばれる。電子顕微鏡で見ると王冠のように見えることからコロナと名付けられたことは周知の事実。
下記のシノバック、ジョンソン&ジョンソン、アストラゼネカは伝統的な手法で作られたワクチンで、ビオンテック、ファイザー、モデルナは人類の新たな試みとなる遺伝子ワクチンである。
- シノバック
殺したウィルスを使用し、生きたウィルスとの戦い方を免疫システムに教える。
- ジョンソン&ジョンソン
ヒトアデノウイルスをベクター(遺伝子の運び屋)にして、スパイクタンパク質の一部を作る遺伝子を運ばせる。それを受けたヒト細胞はスパイクタンパク質を多く生成し、免疫システムを刺激して抗体を作る。
- アストラゼネカ
上記のジョンソン&ジョンソンと同じだが、ヒトアデノウイルスの代わりにアデノウイルス(チンパンジーの風邪を引き起こす)をベクターとする。
- ビオンテック、ファイザー
RNAワクチンを製造。スパイクタンパク質の作り方をmRNAに運ばせる。mRNAが細胞の核内にあるDNAの遺伝子情報を転写し、それを核の外のタンパク質を生成する領域(細胞質)に運び、タンパク質生成を指示する。
- モデルナ
ワクチンの製造で難しい点は細胞への配送メカニズムの構築である。モデルナは10年前から脂質ナノ粒子と呼ばれる小さな油性カプセルの開発に取り組んできた。これがビオンテック/ファイザーに勝る利点となった。脂質ナノ粒子でmRNAを運べる。安定性が高く、極低温で保存する必要がない。