あらすじ
ビル・ゲイツが「読むべき5冊」に(2021年末発表)に選出!
「生命科学の最前線を知る絶好の書。多くの人に読んでもらいたい
大変優れた本」――ノーベル賞生物学者・大隅良典氏推薦!
世界的ベストセラー『スティーブ・ジョブズ』評伝作家による最新作!
米Amazonで1万レビュー超え、平均4.7★ 。全米ベストセラー遂に上陸!
遺伝コードを支配し、コロナも征服。ゲノム編集技術クリスパー・キャス9を開発しノーベル賞受賞し、人類史を塗り替えた女性科学者ジェニファー・ダウドナが主人公。
20世紀最大の「IT革命」を超える大衝撃、「生命科学の革命」の全貌を描き尽くした超弩級のノンフィクション。
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下巻が特に面白いのは、世界で初めてゲノム編集赤ちゃんを作り出した中国の賀建奎を巡って人間がその領域に手を伸ばす事の是非を巡る論争。同氏はゲノム編集により双子の赤ちゃんを誕生させたが、倫理的な観点から国際的な非難を受けた。また、バイオハッカーと呼ばれる元NASAの生化学者、ジョサイア・ゼイナーも登場する。自分の遺伝子を変化させるために遺伝子編集ツール「CRISPR」を使用した最初の生体人間となった。
鎌状赤血球貧血症は赤血球に関わる疾患であり、赤血球を生産する幹細胞は、容易に患者から採取して、再び患者の体内に戻すことができる。この病気は、ヒトDNAの30億以上ある塩基対の1文字が変異しヘモグロビンタンパク質が変形することで発症する。ビル&メリンダゲイツ財団と国立衛生研究所と連携し、鎌状赤血球貧血症治療イニシアチブを立ち上げた。これは骨髄を取り出すことなく、患者の体内で鎌状赤血球の原因を編集する方法を見つけることを目標としており、一つの可能性としては骨髄内の造血幹細胞へと導くアドレスラベルをつけたゲノム編集分子を患者の血液に注入することが考えられる。最大の課題は、患者の免疫系を刺激しない配送メカニズムを見つけること。
論点は、釜状赤血球貧血症は遺伝性疾患であり、主にアフリカ系アメリカ人やアフリカ人患者である事だ。白人に多い嚢胞性線維症の研究にはその8倍もの資金が投入されているが、ゲノム編集は富裕層と貧困層の健康格差をさらに広げる恐れもある。ゲノム編集の是非は、選択的にスーパーマンを作り出すことだけではなく、それが選択できないものとの格差を齎す事にまで及ぶ。
先天的疾患があるなら、それを取り除く事には私は賛成だ。後々、その病気を自らの個性として本人が受け容れる人生があったとしても、それは受容の結果でしかなく、最初から疾患が無いのならば起こりえない過程だからだ。一方で、能力値を操作する行為は許されるべきか否か。男女の産み分けはOKか。能力値を弄らず産まれた現人類の肉体改造と共に、許される範囲について、考えさせられる内容だった。
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ゲノム編集について特に興味を持った。
病気や遺伝的異常を取り除ければ、とても優れた特徴であるが、生殖細胞系列のゲノム編集については考えさせられる。
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スティーブジョブスの伝記を書いたアイザックソンの著作ということで、期待をしていたが、その期待以上の筆致で唸らされた。(上)はこの本の主人公であるダウドナが、化学の道を選び、RNAの研究者としてクリスパーキャス9システムのメカニズムを解き明かしていくまでが時系列で丁寧に描かれている。
(下)はもっとスコープを広げてバイオテクノロジー分野に関わる人たちの物語という感じで、(上)(下)別の物語として楽しめる。(上)だけでも完結した価値で楽しめるけれど、(上)(下)通して読んだほうが絶対によい!
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とても面白かった。
生命科学の最前線でもあるし、コロナ禍で研究者が如何に困難に立ち向かっていったか、その結果ワクチンの開発が早く進んだこと、まさに今旬の話題だと思う。
Posted by ブクログ
ベストセラーとなった「スティーブ・ジョブスⅠ・Ⅱ」をはじめ、レオナルド・ダ・ヴィンチやアルベルト・アインシュタインなど、偉大なイノベーターの評伝で知られる著者が、2020年にノーベル化学賞を共同受賞したジェニファー・ダウドナ博士の半生を中心に、遺伝子研究の歴史がゲノム編集技術として結実するまでの軌跡を辿る一冊(上下2冊)。
幼い頃に科学者を志したダウドナが、好奇心と競争心を武器に女性蔑視の風潮や民間企業での挫折を乗り越え、研究者としての優れた資質とチームマネジメントの才を生かしてゲノム編集の鍵となるCRISPR-cas9の構造をいち早く解明し、論文発表に至る過程だけでも圧倒されるが、著者の知的探求はそこに留まらず、研究者同士の複雑な人間関係と競争がもたらすイノベーションの価値や、ゲノム編集が喚起するであろう倫理問題等についても深い洞察を展開することで、CRISPRという世紀の発見が、複数のテーマが幾重にも重なる壮大な物語として描かれている。
主人公であるダウドナに対し、その活躍を称賛しつつも時に辛辣な意見を述べる一方、ダウドナに敵対するライバルの言い分にも耳を傾けて理解を示す著者の誰に対しても公平であろうとする姿勢は、各界の重要人物からの信頼が厚く、相手の懐に入り込んで本音を引き出す取材の深さと相まって本書の価値を高めており、これまでの著作同様、大作ながら一気に読み進めてしまう知的興奮に満ちた傑作ノンフィクションとなっている。
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DNA編集技術のクリスパーCAS9の発見に至る経緯を追うノンフィクション上下巻の後編です。後編ではDNAを編集できる技術をどう活用すべきかという論理的な問題が主なテーマです。DNA編集の技術は先天的な遺伝子疾患の患者さん達にとってはまさに福音でした。多くの遺伝子疾患が治療対象の候補となっています。一方で、人間の身体機能をより向上させることも実現できる可能性が出てきました。2018年には中国の研究者がHIVへの耐性を強化する処置を施した赤ちゃんを誕生させる事態へと至りました。
ウィルス耐性を向上させたり、遺伝子疾患を解消するのは「治療」と考えられ、多くの人がその妥当性には納得できそうです。一方、身長を伸ばす、筋力を増強させる等々は人間の機能の「強化」であって、この辺りになると妥当性への理解はあいまいになりそうです。そして肌の色、髪の毛の色、瞳の色、などに至ると人間のエゴが前面に出てきているように感じます。
「治療」への活用についても人間という種の多様性を損なうという負の側面があることに触れており、本書はDNA編集の論理問題は非常に複雑で多面的な性格を帯びている事を分かりやすく述べています。DNA編集技術は人間の将来に大きな影響を与えうる可能性があるだけに、多くの人がその技術の活用法について議論する必要があり、本書はそれを考えるきっかけを与えてくれる1冊です。
上下巻合わせて700ページに及ぶ大作ですが、DNA解読技術から始まってDNA編集技術を人類が獲得し、それをどう活用するのか、コロナウィルスのパンデミックに本書で登場する科学者たちがどう対処したのか、に至るまでの壮大な「物語」を、生物学の知識がない人でも追体験できるノンフィクションの大作でした。
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ゲノム編集技術のクリスパー・キャス9を開発した女性科学者のジェニファー・ダウドナの評伝。下巻ではコロナワクチンの話もでてきます。最後にジェニファーとエマニュエルがノーベル化学賞に選ばれるまで。
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学者の在り方や競争といった現実のストーリーも面白かったが、何よりDNAを編集できるクリスパーシステムを得られた人類や、個人はどうあるべきか、の部分に非常に考えさせられた。人類の将来全体に影響を及ぼしうるテクノロジーをどう扱うか、というリスクの話もあれば、逆に遺伝子疾患の治療に代表される、不幸に対して使わないことに対する道徳的観点などは非常に重要かつ難しい問題。世の中には核安全保障や薬物問題、生命科学など、人類の存亡に大きく関わるテーマがあるんだと改めて認識
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上巻に比べて範囲が広いと感じた。クリスパーキャス9だけでなくクリスパーベビーを誕生させることとの倫理的問題、コロナウイルスを対処すべくmRNAワクチン、スパイクタンパク質、ゲノム編集、遺伝子工学、ジェームズワトソンの二重らせん、PCR,分子生物学等でコロナウイルスの治療に向けての取り組みがよく分かった。
Posted by ブクログ
コロナウイルスのワクチンの仕組みと既存のものとの違いについて、かなり詳しく理解できた。本書のテーマは専門的で難しいかもしれないと思っていたが、RNAとその役割について分かりやすく説明してくれており、素人でも読みやすかった。
以下、本書よりメモ書き
コロナウイルスの特徴として、その形状が挙げられる。コロナウイルスの殻の外側にあるタンパク質はスパイクのような形をしていて、スパイクタンパク質と呼ばれる。電子顕微鏡で見ると王冠のように見えることからコロナと名付けられたことは周知の事実。
下記のシノバック、ジョンソン&ジョンソン、アストラゼネカは伝統的な手法で作られたワクチンで、ビオンテック、ファイザー、モデルナは人類の新たな試みとなる遺伝子ワクチンである。
- シノバック
殺したウィルスを使用し、生きたウィルスとの戦い方を免疫システムに教える。
- ジョンソン&ジョンソン
ヒトアデノウイルスをベクター(遺伝子の運び屋)にして、スパイクタンパク質の一部を作る遺伝子を運ばせる。それを受けたヒト細胞はスパイクタンパク質を多く生成し、免疫システムを刺激して抗体を作る。
- アストラゼネカ
上記のジョンソン&ジョンソンと同じだが、ヒトアデノウイルスの代わりにアデノウイルス(チンパンジーの風邪を引き起こす)をベクターとする。
- ビオンテック、ファイザー
RNAワクチンを製造。スパイクタンパク質の作り方をmRNAに運ばせる。mRNAが細胞の核内にあるDNAの遺伝子情報を転写し、それを核の外のタンパク質を生成する領域(細胞質)に運び、タンパク質生成を指示する。
- モデルナ
ワクチンの製造で難しい点は細胞への配送メカニズムの構築である。モデルナは10年前から脂質ナノ粒子と呼ばれる小さな油性カプセルの開発に取り組んできた。これがビオンテック/ファイザーに勝る利点となった。脂質ナノ粒子でmRNAを運べる。安定性が高く、極低温で保存する必要がない。
Posted by ブクログ
上巻はダウドナ先生中心の情緒的な話題が多くつまらなかったが下巻面白い。ヒトのゲノム編集の是非は読み応えあり考えさせる。コロナへの対応については内容少なめ。
Posted by ブクログ
クリスパーキャス9の発明者の、発明に至る経緯と、特許紛争の実情等の、激しい開発競争の状況が明らかにされる。
中国のデザイナーベビー誕生が話題となったが、その状況についても詳しく書かれており興味深い。
今後もこの技術の活用が進んでいき、病気との戦いには明るい未来が見える。一方で、デザイナーベビーの問題や、何が病気なのかなど、倫理的な問題は残り、自主規制のような枠組みで本当に大丈夫なのか、リスクの高さからもっと強力な規制の仕組みが必要だと感じる。
Posted by ブクログ
特許だったか会社関係の話がちょっと長い、もちろんそこも歴史的には重要なドラマなんだけど、個人的には科学的発見の過程をもっと読みたかった
それは上巻で出尽くしたのか?
Posted by ブクログ
上巻はCRISPRの歴史や革新さについて記述があったが、下巻はそのCRISPR・Casシステムを社会に実装するうえで突き当たる課題が述べられている。
2018年の中国のデザイナーベイビーは、当時も大々的にニュースに取り上げられていたが、こうして辿って読んでもやはり衝撃。
CRISPR・Casシステムは簡便に狙ったゲノムを編集ができるから革新的なのだが、それ故に良くも悪くも様々な研究が行われてしまう。
研究を進めて科学を発展させる必要がある一方で、倫理や安全面からの規制も重要。このバランスの難しさを考えさせられる内容であった。