伊坂幸太郎のレビュー一覧
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・「ペッパーズ・ゴースト」の暗喩する存在。幾度もの不条理に巻き込まれながらも最後は希望を託して世間から姿を消すことを選択した有志たち。彼らへ思いを馳せるラストのフレーズは、どんな困難が続いたとしても、一筋の希望を見出す後押しをしてくれる。
・随所に引用されたニーチェの言葉とそれに添えられた著者の解釈が登場人物の心情描写と絶妙にマッチング。
ー一つでも魂の震えるほどの幸福があれば!
人生で魂が震えるほどの幸福があったなら、それだけで、そのために永遠の人生が必要だったんだと感じることができる。
これが生きるってことだったのか?よし!じゃあ、もう一度!
ーこの世の嘆きは深い
喜びのほうが、深い -
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短編シリーズでありながら、一話一話の完成度が非常に高く、とても引き込まれる作品だった。淡々とした語り口の中にユーモアと温かさがあり、読み進めるほどに物語の世界観に惹かれていった。
特に死神・千葉のキャラクターが印象的で、感情を持たない存在でありながら、音楽を好むという人間的な一面に強く共感した。その少しズレた感性が、かえって人間社会を鋭く映し出しているように感じられた。最後の話では、「生きること」や「運命とは何か」を静かに問いかけられ、読後もしばらく考えさせられる余韻が残った。短編でここまで深いテーマを描ける点に感心し、次は長編作品も読んでみたいです。 -
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ネタバレ阿部和重さんと伊坂幸太郎さんの合作の小説です。2人で思ったよりきちんと文書や話を推敲しあって作った長編小説のようです。
相葉時之はかつて少年野球のピッチャーを務めていた男でした。性格は行動力がある反面、あまり深くものごとを考えないため、いつも失敗してしまいます。後輩の女性を助けようとした結果、代わりに多額の借金を背負うことになります。この借金返済のため、心の拠り所だった実家を母から売却されてしまい、相葉は家を買い戻すための資金を必死で探していました。
井ノ原悠は、相葉とバッテリーを組んでいたキャッチャーで、常識な社会人です。小さい子供がいますが、原因不明の皮膚病院を患い治療費が嵩み、借金 -
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ネタバレ伊坂幸太郎25周年特別版のカバーに惹かれて購入
合作ということでどうかなって思ったけど、買って正解だった。
勢いだけ良くていつも肝心なところで選択を間違える相葉と、真面目っぽいけどなんだかんだと相葉に付き合う井ノ原のコンビがとても良かった。
特に相葉の、自分のせいで他人を不幸にしてしまったことを内心では悔やみながらも強がりが出て、また自己嫌悪するという人間臭いところがかなり好きだった。ちょこちょこ「ちゃんと考えて動きなよ…」って思うところもあったけど、そこも含めて相葉っていう人間って感じで、最終的には好きになってた。
話的には、テロの話は片付いた実感がない感じで呆気なく終わるし、借金もなん -
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先に『死神の精度』を読み、作中で春らしき登場人物が出てきたので気になって本作を読みました。
“春が二階から落ちてきた。”
季節が巡ることの詩的な表現かと思いきや物理的に春が落ちてきて一気に魅了されました。(笑)
伊坂さんの作品は個性強めのキャラクターと軽快な会話が見どころの一つなので本作も春という少し?結構?変わった人物と春と比べたら比較的まとも枠の兄泉水との哲学的な会話がテンポよく描かれていて良かったです。
様々な分野での偉人の引用や普通に生活してたら一生知らなかったであろう雑学を知れるのも魅力の一つですね!
遺伝子と放火とグラフィティアート、この三つが繋がった時の真実は重く苦しいもの -
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兄の優雅と弟の風雅が、誕生日に2時間に1度身体ごと入れ替わるという不思議な力をもって、様々な困難に挑む物語。
伊坂幸太郎さん特有の「痛快さ」を堪能できる小説。
幼い頃から受け続ける父親からの虐待を中心に、中学生、高校生と成長する兄弟の身に起きた出来事を回想形式で辿っていく。
兄弟が中学生の時に起きた小学生女児虐殺事件、風雅の就職後に起きた女子高生の事件、大学生の優雅のハルコさんとハルタくんとの出会い、父親との直接対決、最後に暴かれるテレビ記者の高杉の正体…。
それらの出来事が最後に繋がった時、見えた景色は壮絶で過酷なものだった。結末も決してハッピーエンドとはいかない。
しかし、彼らは自 -
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⭐︎3.8
千葉と調査対象の人間の判定までの数日間を描いている連作短編。共通の設定のなかでも、ミステリーだったり、恋愛だったり、ヤクザだったりと色んなジャンルが読めて楽しい。
淡々と仕事をこなし、興味がないと言いながらも人間達となんだかいい関係を築いてしまう千葉のキャラクターが魅力的だった。人間独特の考え方や感覚がまったく理解できないのも面白くて、死神という立場の活かし方がいいなぁと。最後のエピソードではサプライズもあってほっこり。
新装版の特別インタビューにて、判定が「可」なのか「見送り」なのか、結果を楽しみにする作品にはしたくないという言葉があって、伊坂さんらしい考え方でいいなと思ったし、