Posted by ブクログ
2022年04月08日
『重力ピエロ』、『アヒルと鴨のコインロッカー』に続き「伊坂幸太郎」作品の『ラッシュライフ』を読みました。
これまでに読んだ2つの作品とも、とても愉しく読めたんですが、扱われているテーマは重苦しいんですよね。
リアルに想像すると、とても耐えられないような事件が描かれているのですが、、、
物語として...続きを読む愉しく読める… そんな、独特な雰囲気や不思議な魅力に溢れている「伊坂幸太郎」作品の中毒になっている感じです。
-----story-------------
泥棒を生業とする男「黒澤」は新たなカモを物色する。
父に自殺された青年「河原崎」は神に憧れる。
女性カウンセラー「京子」は不倫相手との再婚を企む。
職を失い家族に見捨てられた男「豊田」は野良犬を拾う。
幕間には歩くバラバラ死体登場――。
並走する四つの物語、交錯する十以上の人生、その果てに待つ意外な未来。
不思議な人物、機知に富む会話、先の読めない展開。
巧緻な騙し絵のごとき現代の寓話の幕が、今あがる。
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相変わらず、個々の扱われているテームは重苦しい、、、
特にバラバラ死体を扱うシーンはグロテスクで、具体的な映像が頭に浮かび、不快な気分になってしまいましたね。
でも、物語としては愉しく読めるんですよねぇ。
ホント、「伊坂幸太郎」作品には不思議な魅力があります。
物語は、
①拝金主義者の画商「戸田」と、彼に振り回される新進の女性画家「志奈子」
②空き巣に入ったら必ず盗品のメモを残して被害者の心の軽減を図る泥棒の「黒澤」
③新興宗教の教祖にひかれている画家志望の「河原崎」と指導役の「塚本」
④それぞれの配偶者を殺す計画を練る女性精神科医「京子」とサッカー選手の「青山」
⑤四十社連続不採用の目にあっている失業者の「豊田」
の五つの視点で進行し、登場人物は上記の八人に加え、
■元画商の「佐々岡」
■新興宗教の教祖「高橋」
■「河原崎」の亡くなった父親
■「豊田」の拾う柴犬 等
が登場し、それぞれの人物や物語が交錯しながら、最終的にはパズルを埋めるように繋がります。
えっ!この物語が、あの物語のココに繋がっているのかぁ・・・ と意外な繋がりがわかった時には、パズルの最後のピースが見事にはまった感じで、とてもスッキリした気分になりましたね。
それぞれの物語が同時進行しているように見せかけて、実は時間軸がズレて進行していたことが、最後の最後になって理解できる構成になっていて、
読んでいる間は、まんまと、このトリックに騙されてしまいました。
本当に、それぞれの物語が時系列に繋がっているのかなぁ… という、疑問も生じましたが、「河原崎」→「黒澤」→「京子」→「豊田」の順で上手く繋がっているようですね。
不快な感覚を感じながらも愉しめる「伊坂幸太郎」作品。
他の作品も読むかどうか迷います。
ちなみに、、、
本作で泥棒として登場する「黒澤」は、『重力ピエロ』で登場する探偵の「黒澤」と同一人物のようです。
本作の中でも「探偵を副業とするのも良いのではないか」と、将来、探偵業を営むことが示唆されていました。
作品間のリンクを見つけるのも「伊坂幸太郎」作品の魅力のひとつかもしれませんね。