あらすじ
伊坂幸太郎デビュー25周年記念書き下ろし作品。
これはディストピア小説か? ユートピア小説か?
所在不明の人工知能〈天軸〉の暴走で、世界が混乱に陥る近未来。
開発者が遺した絵画〈楽園〉を手掛かりに
五十九彦(ごじゅくひこ)、三瑚嬢(さんごじょう)、蝶八隗(ちょうはっかい)の選ばれし3人は、
〈天軸〉の在処を探す旅に出る――。
書き下ろしの短編小説を、気鋭のアーティスト、井出静佳の
装画・挿絵とともに味わう「伊坂幸太郎史上最も美しい1冊」。
感情タグBEST3
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主人公の名前が五十九彦(ごじゅくひこ)、三瑚嬢(さんごじょう)、蝶八隗(ちょうはっかい)ときて西遊記のパロディかと思ったが、名前で遊んでても内容はなかなかに壮大で驚いた。
AI(アーティフィシャルインテリジェンス)に対するNI(ネイチャーインテリジェンス)の話だとだけ書いておこう。
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大人向けファンタジーな体裁の読みやすい短編。ディストピア小説にありがちな特有の陰鬱も深刻さが無く飄々とした物語なのだけれど、読後しばらくして、ひょっとしたらとてつもなく絶望的世界観なのかとも思えて。絶妙なバランスで語られていてかえって密やかに胸にくるものがある
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私もNI救会に入会しましたぁ!!
そして『楽園の楽園』 読みましたぁ!!
未来は。。。
人間は。。。
AIとNIによって。。。
奥深い森のように
深く 深く 迷い込んでしまう
お話でした。。。
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人は「ストーリー」を求める。確かにそうだと思う。
嫌なこと、理解できないこと、うらやましさ、感動ーー、そのたびに、私たちは勝手に物語を作り、原因や理由を探す。
「自然にまかせてみよう」と思っても、その“まかせる理由”さえ物語にしてしまう。
人がストーリーを求めてしまうことは、もう解明できない本能のようなものなのかもしれない。世の中にあふれるあらゆるものは、結局この性質に行き着く気がする。
環境破壊、人類の絶滅。
私たちはなんでも説明したがるけれど、もしそれらが“地球が生きるためのただの動き”だとしたら、人間も虫も植物も同じ存在にすぎない。
物語が好きで読書をしている私にとって、この発想は少し衝撃だった。
また、キャベツが青虫に食べられないように蜜蜂を呼ぶ匂いを出す、という自然ネットワークの話。
自分でどうにもできないとき、誰か(何か)を頼ることもまた「自然」と考えるなら、つらいときに助けを求めるのは「ずる」でも「卑怯」でもない。そう思えることで、少し救われる気がした。
…またストーリーを作ってしまっている…
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最期まで物語を求めた異物の物語。
NIに組み込まれているものは物語をもたないのだろうか?
物語をもつからヒトは異物なんだろうか?
ヒトは植物や虫や動物などの様に ただ生きて死ぬことができない。
生きること死ぬことに意味や理由を必要とする。物語を必要とする。だから異物なのか?
それとも最初はただ異質なだけだったのが年月をかけて異物になってしまったのか?
ヒトが紡ぐあまりにもヒト本位の物語にNIが愛想を尽かしてしまったのか?
考えてみるとヒトは生まれて名を得た時から もう何らかの物語に組み込まれているような気もするけれど…。
読むのはあっという間だったが読後の思考の揺れ動きが激しい。考えれば考えるほど深い…。
そういう意味では良書なのかも。そしてもちろん それを意図して書かれているのだろうけれど。
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読み始めは、西遊記のパロディかと思う登場人物の3人の名前に、暢気な冒険譚と思った。だんだんと怪しい雰囲気になって来て、最後はびっくりの結末。
短いし、読みやすい文なので、すぐ読み終えられる。
淡々としながらも、人間と自然の関係を考えさせられる内容で、深いなーと思った。
人間は理由を求めて、物語を作る。悲しみは悲しみとして、後悔は後悔として、切り離したほうがいい。印象的な言葉が心に残る。
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各国で大停電が起き
強毒性ウィルスが蔓延し
巨大地震が頻繁し
飛行機が墜落し
放射能漏れに怯える人々が大移動する…
これはそんな世界の話
特殊能力を持った3人の登場人物がこの世界状況を打破すべく不思議な旅をする
3人しか登場人物がいない本
挿絵がとてつもなく美しい本
AI社会
アダムとイブの伝説の樹木
いつもストーリーを求めるヒトの脳
キャベツの話
そしてNI(nature Intelligence)=自然界が持つ意思
ファンタジックかつ壮大な映画のような風景と哲学的思想の中にいつの間にか自分も迷い込んだ気持ちになる
もし本当にNI(自然界に意思)があり、それによってヒトが淘汰されるのであればごく自然な事に思えるなぁ
ヒトが地球にとってウィルスみたいなものだってのは間違いないもんね
そしてもちろんこの本でも仙台愛を披露する伊坂幸太郎さんなのでした 笑
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100ページ足らずの短編。挿絵が印象的だ。
伊坂ワールド全開だが、短いので数時間で読んでしまった。
AIならぬN I(nature intelligence)が実際にあるような気がしてしまう。
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伊坂幸太郎の単行本は装丁がかっこいい。
30分くらいでサクッと読める本作品は、挿絵(これもかっこいい)も相まって絵本に近い感覚。
伊坂さんらしく、フィクションに富んだ登場人物からダイナミックなメッセージが放たれる。
昔から環境破壊が取り沙汰される世の中だけど、人間がいなければ地球は今と全然違って、むしろこんなに植生豊かな大地にはなっていなかったなんて話も聞くので、所詮我々は創世記から続く林檎の樹に寄る小鳥に過ぎないのかもなぁなんて“物語”に思いを馳せてみた。
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立て続けに起こる大規模事故や天災。
それらは「天災及び事故、犯罪の予見と予防に関する基軸」なるアルゴリズムを基にした、略称『天軸』と呼ばれる人工知能の暴走が原因と考えられた。
五十九彦(ごじゅくひこ)、三瑚嬢(さんごじょう)、蝶八隗(ちょうはっかい)の3人は、その開発者の所在を探す旅に出た。
と、ここまで読んで、伊坂さん、『西遊記』が好きだなあって思った。
『SOSの猿』でも『西遊記』をモチーフに使ったし、今回は天竺の開発者が三蔵法師?いや、釈迦如来?
ところが話はもっと大きなものだったのだ。
少なくともお釈迦様の手のひらよりも。多分。
その仕組みの説明を読んで、伊坂幸太郎のデビュー作『オーデュポンの祈り』を思い出す。
案山子の優午。
実際、作中でも優午のことに触れられていたし。
作家デビュー25年の記念作品なのだそうだ。
だから、デビューからぶれていない伊坂幸太郎のテーマが前面に出ているのか。
とはいえこれは、あんまり万人向けではない。
私は、この世の世界の中のヒトという存在について、彼と近しい考え方をしているので「そうだよね」と思いながら読んだけど、「はあ?何言ってるの?」って思う人も一定数いそう。
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「西遊記」を彷彿とさせる登場人物の名前、そしてストーリー。コロナ禍や震災、台頭し始めているAIなど、現実の出来事を盛り込んで編まれたおとぎ話と言ったところか。
おとぎ話らしく、挿絵が載っているのが洒落ていて、まさに「大人の絵本」といった雰囲気のあるのが良い。絵のタッチも好きだ。
<先生>って三蔵法師のことかなぁ、などと呑気に構えていたら、ガツンと頭を強く殴られたような衝撃のラストが待っていた。
伊坂幸太郎作品ならではの機知に富んだ会話と巧妙な伏線が存分に味わえる。衝撃のラストにて、伏線がバッチリ決まるのが快感且つ恐ろしかった。そういう帰結か、と⋯
自然がネットワークを構築しているという内容に、映画「アバター」に登場する惑星パンドラのことを思い出した。確かに、人間だけが自然のネットワークから外れているよなと思う。例えば、地震の起きる前に普段大人しい犬が激しく吠えたり、鳥が一斉に飛び立ち大移動したりと、地震を感じ取っているかのような行動を取るという話があるが、人間にはそんな察知が出来ず、地震予知についての研究に四苦八苦している。ダーウィンによれば人間も自然界の進化の過程で生まれてきたはずの生き物なのに。不思議だ。
本来、おとぎ話とはブラックな側面を持っているものだと聞いたことがある。それを踏まえると、本作は本道のおとぎ話と言えそうである。現実に、自然から見限られても仕方が無い気はする。滅びの時の瞬間に「ま、いっか」と思うしかないのかもしれないな⋯
Posted by ブクログ
短くて読みやすいけど、内容がとても凝縮されているように感じる。
シンプルなのに訴えかけるものがきちんと伝わるってすごいなぁ、伊坂幸太郎やっぱり好きだなぁと思った。
主人公の五十九彦の心理描写、情景描写もすんなり感じられる。
所々に散りばめられてる西遊記のパロディも好き。笑
Posted by ブクログ
何だ、この本!何なんだ、この発想!!何!何!
五十九彦、三瑚嬢、蝶八隗の三人は、人工知能「天軸」の開発者である先生を探すという任務のもと、楽園を目指す。
【NI:ネイチャーインテリジェンス】
"インターネットが人間の集合知を活用するのと同じく、植物や動物が、私が気づかない方法で繋がり合い、さまざまなやり取りを交わし、大きな知能となっていても不思議じゃありません。
この森で、自然の植物や生き物が組み合わさって、ネットワークを作り、巨大な知能となっているんです。その知能が目的を達成するために、植物や生き物に指示を出していたんですよ。地球の生きとし生けるもの、すべての集合知。"
"大規模停電、強毒性ウイルスの蔓延、大地震の頻発、放射線漏れ、航空機の墜落、そういった世界の状況は、NIが侵入したウイルスを撃退するためにさまざまな指示を出して、免疫機構が働いた結果だったのでは?天変地異は全部、ヒト以外の力で起こせるんだ。人間の体内にウイルスが侵入した時に、高熱が出たり、倦怠感が出たりしてボロボロの状態になるように。"
"終わるのは、ヒトの世界だよ。ヒト以外にとっての世界は終わらない。わたしたちヒトが、ヒトが世界のすべてだと思い込んでいるだけ。"
この世界の中で、植物も動物も、自然でさえも、人間がコントロールできるという幻想を抱いていた。でも、自然が人間をコントロールしている可能性だってあるんだ。キャベツが蜂の好きな匂いを出して蜂を呼び、アオムシを退治するように。人間の大好物であるストーリーを使って。オナモミの実は、実は自然が人間を監視するためのGPS装置なのかもしれない。自然にも、意思があるのか!?伊坂さんの突飛な発想に度肝を抜かれた。ぞくぞくした。面白い!!
それと、半月板を半分取り除いたら4分の1月板になるという冗談が面白かった。
さらっと
久々の新刊書き下ろしで楽しみにしていました
さらっとあっさり数時間で完読。
相変わらずの伏線回収で感心
あんまりエンタメ要素は少なめ
現代社会のトレンド入ってる
星少なめも納得
紙媒体の装本は評判みたいなので本屋さんに
出掛けてみます。
Posted by ブクログ
楽園の楽園
伊坂幸太郎
短編でサクッと読めるてので読んでみた。
独特の世界観が伊坂さんっぽい!サラッと読んでたら最後サラッといかなかった。さすがだーー!!
やっぱり伊坂さん好きだって思った1冊でした。読めてよかった。
Posted by ブクログ
挿絵付きの小説で珍しいと思っていましたが、挿絵も含めてとても楽しめる作品でした。
最近良くあるAIの暴走の物語と思いきや、自然全体がそうしていた、と言うのはとても面白い発想だと思いました。
ヒトでいうウィルスと自然でのヒトは同じだから排除する作用が働いている、あるかもしれないと思える物語とすごく読みやすい文章で短い物語でしたが読んでいて楽しかったです。
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かなり短い物語でしたが、キャラクターが濃く、設定も深みがあって、もう少しじっくり読みたい気もしました。手に取りやすい量の中にメッセージが詰まっていたのでこれはこれでよかったのかも。
ちょっとぞっとするお話でした。
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人はどんなものにもストーリーがあると思い込む。
装丁が綺麗で、思わず手に取ってしまった本。
緑に輝く動物たちを描いたその美しい表紙の先には、短い物語が紡がれている。
最遊記の登場人物にも似たこの物語の登場人物たちは、”先生”を探し求め冒険をする。
行き着く結末は、少し寂しいものに感じた。
『オーデュボンの祈り』を思い出させるこの結末は、少し懐かしく感じた。
P24:「気に入らない相手だとしても、憎んではいけない。厄介な相手も、敵とは限らない」
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ヒトは物語(ストーリー)が好き。
起こった事象には原因・理由がある(はずだ)と考える。
今この世で起きていることは、全て地球の意思によるもの。人類の誕生から発展、自然災害、ウイルス蔓延…などなど。
なんだかとても現実離れしているけれど、はいはいそうですねと流しきれない深さがある。
AI(アーティフィシャル・インテリジェンス)じゃなくて
NI(ネイチャー・インテリジェンス)。
心に留めておこう。
さすがの発想の伊坂幸太郎氏。
次代のゴクー、チョウ・サンゴはどう生きるのかな。
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伊坂版ディストピア小説。
五十九彦、三瑚嬢、蝶八隗の選ばれし三人が、世界の暴走の原因と考えられる、人工知能『天軸』の所在を探る冒険譚。
設定自体は、何だか面白そうと惹きつけられるけれども、如何せんページ数が少ないので、ちょっと肩透かしをくらった感が拭えない物足りない作品でした❗️
伊坂さんは、『あるキング』で形態別に3種類の展開作品を出版されているので、もしかしたらこの作品の次回の出版時においては、改めて書き足したりするのではないだろうか⁉️と少し勘繰っています。
Posted by ブクログ
伊坂作品にしては短く、あっという間に読み終わりました。ストーリーと設定は面白く、長編で読みたいようなお話でした。表紙や挿し絵にこだわりを感じます。
Posted by ブクログ
登場するのは西遊記を思わせる名前を持つ3人。
五十九彦、三湖嬢、蝶八隗だ。舞台は近未来の地球か?大停電、大地震、感染症の災厄に見舞われている。理由が人工知能「天軸」の暴走かもしれないと考えた開発者が確認しに行ったものの行方不明。ある貨物飛行機事故がきっかけで、位置情報が得られたため、冒頭の3人が派遣された。免疫力が並外れて強く、感染症にもかからないことから選ばれたのだ。果たして3人は目的地にたどり着けるのか?といったお話のようだ。アダムとイブの物語に登場する生命の樹と知恵の樹を思わせる大木にからまるパラシュート。引き返せそうにない楽園。人間の世界の終わりを示唆する、不思議な本だ。
Posted by ブクログ
数々の大災害が人類を襲いその原因は人工知能「天軸」の暴走とされ、五十九彦、三瑚嬢、蝶八隗の選ばれし3人は天軸の開発者「先生」が残した絵画「楽園」を手掛かりに天軸を探す旅に出る。巨大樹の麓に残された天軸には先生からのメッセージが残されていた。人類を追い詰めた大災害の原因がAIの暴走ではなく、自然知能(Nature Intelligence(NI))が地球にとっての脅威である人類を排除し始めたことによるものだった。意図せずNIを再稼働させてしまった3人は人類の滅亡を予期しつつ大きな嵐に身動きがとれなくなっていく。
西遊記を思わせる人物設定の大人のための童話。100ページほどの短い物語だが、とぼけた3人の登場人物ののんきな会話から人類滅亡という唐突なバッドエンドにゾッとする。人工知能(AI)があるように、自然が連携し自然知能(NI)を生み出し人類を排除するという発想が面白かった。星新一っぽい。思わず手に取りたくなる美しい装丁も見どころ。伊坂幸太郎の登場人物っぽい、なんともトボけた会話を交わす3人組も楽しかった。
Posted by ブクログ
短編作なので少し物足りなさを感じるが、SF、ファンタジーな世界観が好きな人にはおすすめできる
短い中にも人々への問いかけがしっかり詰まっていて、思わず考えてしまう作品
Posted by ブクログ
104頁というこの短さで、よくもここまで内容を詰め込められたなぁと圧巻の作品。
挿絵も入っているので、ザ・大人の絵本という感じで、読みやすい作品です!
「わたしたちの脳は、ストーリーを求めている。」
この部分を読んで、先日読んだ「イン・ザ・メガチャーチ」を思い出した。
やっぱり、人間は物語に縋り、物語に翻弄され続けるのは、脳の仕組みからして仕方のないことなんだなぁと思った。
改めて、物語との付き合い方を考えてくれる作品になりました!
Posted by ブクログ
短いのに、世界の終わりと希望の物語がちゃんと詰まってる。AI〈天軸〉と「楽園」をめぐる旅の中で、人間とは何かを静かに問われる感じ。伊坂らしい皮肉と優しさが同居してて、最後の余韻が妙に長く残る。絵も雰囲気があって、ページをめくるたびに世界が広がるようだった。
Posted by ブクログ
人の世界が中心ではない。何か大きな力によって動かされている。こう言う自然の力みたいなものを重視しているところがすごく伊坂さんらしいと思える作品。