何年かぶりの再読。
前作「グラスホッパー」から6年後の話で、前作の主人公である鈴木や押し屋の槿などが登場していて殺し屋シリーズが好きな私にとってはとても嬉しい一冊だった。
タイトルのマリアビートルはテントウムシの意味だと作中で解説される。
作中には天道虫の異名を持つ殺し屋が登場し、ここぞ!という時に
...続きを読む持ち前の不運を発揮することで物語を掻き乱していく。展開を牽引するその姿はタイトルに冠されるに相応しいなと感じた。
ただ、彼は最後まで死の新幹線から無傷で生還するし、なんだかんだ後処理が面倒な事にも巻き込まれていない。
王子が不幸な天道虫を見て「自分の不幸が全部彼に降りかかることで自分は幸せになっているのでは?」と考えるシーンがあったが、実際のところ小さな不幸を日常的に被ることで一番幸せになっているのは天道虫自身なのかもしれないなと思った。
サイコパスじみた性質を持つ王子という中学生が登場するが、彼が日頃から感じている全知全能感や優越感などに少々の覚えがあり、自分が中学生の頃も同じだったなと微笑ましくも恥ずかしくなりながら読み進めていた。
悪魔のような事を平気でやる彼に嫌悪感を抱くのは当たり前なのかもしれないが、そこにある思春期特有の心情を理解し「そういう時期もあるよね」と抱きしめてあげる事も時には必要なのかもしれないなと思った(たぶん王子はそんな事望まないけれど)。
随分と長くなってしまったが、それくらいにこの小説が大好きでここまで書いてもまだ書き足りないと思うくらい感想が溢れ出てくる、とても良い一冊だと思う。
点と点がつながってひとつの物語になっていく様はさながら人生のようで、本当にとてもとても良かった。