伊坂幸太郎のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
トリプルセブンから来ました!
P524「たとえば、自分は明日、誰かに殺されるかもしれない、となったら、人間は経済活動に従事できない。そもそも、所有権を保護しなくては経済は成り立たないんだ。そうだろう?自分で買ったものが自分の物と保証されないんだったら、誰もお金を使わない。そもそも、お金だって、自分の物とは言えなくなってしまう。そして『命』は自分の所有しているもっとも重要なものだ。そう考えれば、まずは、命を保護しなくては、少なくとも命を保護するふりをしなくては、経済活動が止まってしまうんだ。だからね、国家が禁止事項を作ったんだよ。殺人禁止のルールは、その一つだ。重要なものの一つ。そう考えれば、戦争と死刑が許されるのも簡単だ。それは国家の都合で、行われるものだからだよ。国家が、問題なし、と認めたものだけが許される。そこに倫理は関係ない」
→どうして、人を殺してはいけないのか?という哲学的な問いに、個人的に今のところ一番しっくりきている回答で、禁止することが国家の拡大・発展に資するからということかなと。組織や社会の拡大・発展を目指す、ってとこでちょっと生殖記の議論ともつながってくるかなと思ったり。後は、ジェノサイドでも語られてたが、同種同士で大量に殺し合いをしている種族が動物界に他になく、ホモ・サピエンス同士が例外的であるのも個人的には感情的な理由としてはあると思うけど。
P125そもそも、自分の価値観にしっかりとした基準や自信を持っているものは多くない。特に年齢が若ければ、その価値の基準は常に揺れ動いている。周囲に影響を受けずにはいられないのだ。だから、王子はことあるたびに、確信を匂わせ、侮蔑や嘲笑を口にした。すると、それが主観を超えた客観的な物差しとなり、相手との立場を明確にすることがよくある。「あの男は、何らかの基準を持ち、判定ができる人間なのだ」と他の人間たちが認めてくる。頼んだわけでもないのに、そのような扱いを受ける。ある集団の中で「価値を決めるもの」というポジションに立てばあとは楽だ。野球やサッカーのような明確なルールなどないというのに、友人たちは、王子の判定を、審判のそれのように気にかけてくる。
→小川哲のゲームの王国にも同じような論法があったが(彼は、クソ問答という言い方をしていたが)、一定のポジションをゲットしてしまえばあとは皆が勝手にその人がエライと思いこむという性質についてであり、ここでは断定的な物言いをすることで、インフルエンサーという優位なポジションに立てるといっている。ホリエモンとか、何の根拠もなく(あるのかもだが)物事を断定してくれる人は、多くの価値観が揺れ動く大衆にとっては「楽」なんですよね、脳死でついていけばいいから。「今の時代にベンチャーに行かないなんて、アホなの?」って言われてもさ、その時の状況や個人の性格やら多種多様なな背景を無視して言い切ってるだけで、誰しもに当てはまるものでは全くない、と冷静に考えればわかるはずなのに、それが判断できなくなってしまう。上出遼平氏もどっかで言ってたけど、人の悩みなんてそんなに簡単に解決できるものじゃないって、物事を断定して「これをやれば絶対成功します、幸せになれます」って断定してくる人はまず疑ってかかった方がいい、ってことをまずはみんな認識した方がいいよね。
P131おそらく、と王子は思う。自分になにか特別な才能があるとすれば、それは、本を読解する力に秀でていたことだろう。本を読み、内容を嚙み砕くことで、語彙が増え、知識が増え、一層読解力がました。本を読むことは、人の感情や抽象的な概念を言語化する力につながり、複雑な、客観的な思考を可能にした。
→優秀だなと思う人に結構共通しているな、と思われるのは読書量が多い(若しくはかつて本を大量に読んだことがある)というのが結構相関関係高いと思う。東大の友人も、読書(国語)は他の教科にもすべてつながる、数学や社会だって問題文を読解しないと始まらない、から読書は受験含め生きてく上で有用、といっていたのが印象的。とはいえ、読書家が必ずしも幸せになるというわけではないもの示唆的。個人的には西加奈子氏が良くいっているように、つらい世の中、生活の中で「読書は救い」という感覚かな。
P322「人はね、周囲の人間の影響を受けて、行動するってことだよ。人間は理性じゃなくて、直感で行動する。そして、自分の意志で何かを決断しているように見えても、まわりの人間から刺激や影響を受けている。自分は独立した、オリジナルな存在だと思っていたところで、グラフを構成する一員にすぎないってこと。いい?例えば、誰かが、『自分の好きなように行動していいですよ』と言われたら、まずどうするか分かる?」
「他の人を窺うんだよ」
「好きに行動していい、と言われたのに、だよ。自由意志で行動していいのに、他人を気にするんだ。特に、『正解がはっきりしなくて、重要な問題』ほど、人は他人の答えを真似する。可笑しいでしょ。でもね、ひとはそうできてる」
「僕はね、そうやって人が知らないうちに、大きな力にコントロールされているのが好きなんだ。自己弁護や正当化の罠にかかって、他人の影響を受けながら、人は自然とある方向に進んでいく。それを眺めているのが、楽しい。そのコントロールを自分が出来たら最高。そう思わない?ルワンダの虐殺だって、渋滞による事故だって、うまくやれば、僕にも起こせる」
→スティーブ・ジョブズの言ってたfollow your mind(自分の心に従え)は、絶対やめてちゃんと考えて人のアドバイスも聞いた方がいいって誰かが言ってたな(誰が言ってたか忘れた)。要は、自分の心・自由意志なんて、youtubeやtiktokで流れてきている動画とかに影響されたり、自分の狭い世界の中で影響を受けた上での意志なんだから、たいてロクなもんじゃない、って、マジでその通りだなと思った。内館牧子氏も「養老院より大学院」で言ってたけど、やらない後悔よりやってする後悔の方がいい、みたいなことがロマンチシズム的に語られるけど、やってする後悔を甘く見ない方がいい、家族や仕事などの影響もしっかり考えて備えて相談したうえで行動しないと、大きなしっぺ返しが来ます。 -
購入済み
クリスマスという特別な日の雰囲気と、少し不思議な出来事が組み合わさっているところが面白いと感じた。探偵が登場するため、事件の謎を解いていく物語なのかと思っていたが、単純なミステリーではなく、人とのつながりや優しさが描かれている作品だと思った。
登場人物たちの会話や出来事がどこかユーモラスでありながら、読み終わった後には温かい気持ちになれるところである。大きな事件が起こるわけではないが、何気ない出来事の中に意味があり、それが最後につながっていく展開が伊坂幸太郎さんらしいと感じた。
クリスマスという「誰かと過ごすこと」や「人とのつながり」を意識しやすい日に物語が設定されていることで、登場人物同士の関係がより印象的に感じられた。ミステリーとして楽しめるだけでなく、人を思いやる気持ちについても考えさせられる作品だった。 -
Posted by ブクログ
装丁の美しさに惹かれて手に取った、伊坂幸太郎さん25周年記念の書き下ろし小説。
「知能は人間だけのものではない」という視点がとても新鮮だった。光や物質を感知したり、危険から身を守ったり、他者を利用して問題を解決したり……植物にも、人間とはまったく違う形の知性があるのだと知ると、面白くもあり、少し怖くもなる。
舞台は、天災や疫病によって人類滅亡の危機に陥った世界。なぜか西遊記を思わせるネーミングである、五十九彦・珊瑚嬢・蝶八塊の3人は、AI「天軸」と「先生」の居場所を目指して旅をする。伊坂さんらしいユーモアのある設定だなと感じた。
物語後半の、「私たち人間はずっと世界が終わりそうだと大騒ぎしていたけれど、ヒト以外にとっての世界は終わらない」という言葉にはハッとさせられた。いつだって人間はヒトが世界の中心だと思いがちだけれど、自然界から見ればそうではないのかもしれない。
そのほか、キャベツが蜂を呼び寄せてアオムシを追い払ってもらう話や、他の植物の成長を阻害するセイタカアワダチソウの話も興味深く、これまで知らなかった「植物の賢さ」に驚かされる作品だった。主人公たちの最期には胸が痛んだけれど、今までにない読書体験でとても良い気分になれた。