伊坂幸太郎のレビュー一覧
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【メディアと権力に立ち向かう本】
首相暗殺の犯人に仕立て上げられた青柳雅春の逃走劇。
人のあたたかさに触れる場面も、緊縛したスリリングな逃走の場面も、盛りだくさんの内容だった。父親や花火屋社長やマンホール職人のような、マスコミに流されない、信念を持った大人が出てくるところが良かった。一方で、警察やマスコミの陰湿な部分が描かれた、社会派の本だったと思う。
物語が長いにも関わらず同展開の繰り返しに感じることもあった。警察が市民に発砲したことが報道されないのは、今の時代ではリアリティがないように思う。結局最後は逃げることを選択したのだが、物語最後のインパクトとしては弱くそれでいいのか?というし -
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先に『死神の精度』を読み、作中で春らしき登場人物が出てきたので気になって本作を読みました。
“春が二階から落ちてきた。”
季節が巡ることの詩的な表現かと思いきや物理的に春が落ちてきて一気に魅了されました。(笑)
伊坂さんの作品は個性強めのキャラクターと軽快な会話が見どころの一つなので本作も春という少し?結構?変わった人物と春と比べたら比較的まとも枠の兄泉水との哲学的な会話がテンポよく描かれていて良かったです。
様々な分野での偉人の引用や普通に生活してたら一生知らなかったであろう雑学を知れるのも魅力の一つですね!
遺伝子と放火とグラフィティアート、この三つが繋がった時の真実は重く苦しいもの -
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兄の優雅と弟の風雅が、誕生日に2時間に1度身体ごと入れ替わるという不思議な力をもって、様々な困難に挑む物語。
伊坂幸太郎さん特有の「痛快さ」を堪能できる小説。
幼い頃から受け続ける父親からの虐待を中心に、中学生、高校生と成長する兄弟の身に起きた出来事を回想形式で辿っていく。
兄弟が中学生の時に起きた小学生女児虐殺事件、風雅の就職後に起きた女子高生の事件、大学生の優雅のハルコさんとハルタくんとの出会い、父親との直接対決、最後に暴かれるテレビ記者の高杉の正体…。
それらの出来事が最後に繋がった時、見えた景色は壮絶で過酷なものだった。結末も決してハッピーエンドとはいかない。
しかし、彼らは自 -
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⭐︎3.8
千葉と調査対象の人間の判定までの数日間を描いている連作短編。共通の設定のなかでも、ミステリーだったり、恋愛だったり、ヤクザだったりと色んなジャンルが読めて楽しい。
淡々と仕事をこなし、興味がないと言いながらも人間達となんだかいい関係を築いてしまう千葉のキャラクターが魅力的だった。人間独特の考え方や感覚がまったく理解できないのも面白くて、死神という立場の活かし方がいいなぁと。最後のエピソードではサプライズもあってほっこり。
新装版の特別インタビューにて、判定が「可」なのか「見送り」なのか、結果を楽しみにする作品にはしたくないという言葉があって、伊坂さんらしい考え方でいいなと思ったし、 -
Posted by ブクログ
伊坂幸太郎さんの作品はどれも、どこか「男の子の目線」が残っている感じがある。世界を斜めから見ていて、少しひねくれているけど、根っこは案外まっすぐ。理屈っぽい会話や軽妙なやり取りも、放課後の教室で延々と続くおしゃべりみたいな温度がある。
大人の側が持ち出す正しさや決めつけに対して、子どもたちが静かに疑問を返していく。そのやり取りが説教くさくならないのは、物語全体が「分かったつもりになるなよ」という男の子の視線で貫かれているからだと思う。伊坂幸太郎特有の、あのどこか浮世離れした軽快な文体。
日常に潜む違和感を鋭く突く書き味が、相変わらず心地よい。
大人になってもふと思い出す、あの甘酸っぱい懐か