タイトルの『ラッシュライフ』があくまでカタカナ表記なのが肝だと思った。
これを英語表記にすると、lash, lush, rash, rushと明確に4つの意味になるが、カタカナで書く事によって、豊潤な人生にもやけっぱちな人生にも成り得るという受け手に委ねられる解釈の余白が出来て良い。
また、サブタイ
...続きを読むトル的に書かれている「a life」も「the life」としていない辺りにも、選択一つで人生は如何様にもなるというな、そんなニュアンスが感じられた。
複数の人物のエピソードが同時に進んでいく話はいくつか読んだことがあるが、
ここまで大人数のエピソードが何度もカットバックして進んでいく話は読んだことがなかった。
大好きなマンガやドラマの続きが見たいけど、来週の今日まで待たなくちゃいけない、あー早く続きが見たいという、モヤモヤとワクワクが混ざりあったあの感覚を何度も味わえる作品だと思った。
(以下ネタバレ)
冒頭の「最高時速240キロの場所から物語が始まる」の伏線も素晴らしい。
これは戸田&志奈子が乗っている最高時速300キロの「のぞみ」ではなく、河原崎が眺めている「やまびこ」のこと。
河原崎がこの一連のスタートだと、物語が始まる前に提示していたり。
他にも、京子を殺そうとしていた夫婦の行く末が、戸田が持っていた新聞に書いてあったり。白人美女のスケッチブックの順序から時系列の答えが明かされたり。
自分にとっては大きな衝撃を受けた作品だったので読後、各ブロックの時系列を書き出してみた。学校の時間割表のように。
書き上げて気付いた事がいくつかあった。
この一連のストーリーは4日間の出来事だが、それぞれの人物が1日ずつ主人公になり、「特別な日」を送っていること。
それと「人生はリレー」というのが、この作品のテーマになっているが、展望台がそれぞれのゴールになっていて、バトンを繋ぐ走者はそこでエレベーターを待ちながら次の走者の事を想像しながら幕を下ろすこと。
そして、宝くじが各登場人物の手に渡りバトンのように次の走者に渡っていくこと。
(京子はニアミスだけど)
文庫版421pの佐々岡の言葉がこの作品の全てだと思う。
それと、オーデュボン伊藤(←こう書くと売れない芸人みたい…)の話とかチルドレン強盗事件とか重力ピエロで語られるエピソードのリンクもニヤリと出来て良い。