伊坂幸太郎のレビュー一覧

  • アヒルと鴨のコインロッカー

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    事前情報なしで読み進めたが、カットバック形式で物語が進行し、少しずつ真相へと近づいていく展開に引き込まれた。まるで静かな波紋が広がっていくような感覚だ。
    直感的に、アヒルはドルジ、鴨は河崎を象徴し、コインロッカーは「時間を閉じ込める場所」のように感じた。
    最後に神様――ボブ・ディランのラジカセ――をコインロッカーに入れて立ち去る場面は、ドルジが江尻との決着に向かう前の静かな覚悟のようにも思える。
    読み進めるほどにさまざまな解釈が生まれ、考えながら味わえる。その仕掛けこそが、伊坂幸太郎という作家の凄さだと感じた。

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    2025年10月26日
  • チルドレン

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    読書備忘録951号。
    ★★★★。

    伊坂さんの初期作品で連作短編(長編)。
    巻末の解説で香山さんが仰っていますが、今では普通になっている連作長編の手法はこの作品が最初じゃないか?と。
    それぞれの短編に登場する面々がそれぞれ主人公になったりして繰り広げられる小説世界。

    【バンク】
    舞台は仙台の銀行。
    閉店間際ギリギリの銀行に大学生の鴨居と陣内が訪れる。
    銀行からしたらはた迷惑な客。
    ただ、彼らは今日中にバイト代から学費を振り込まないとダメだと。もうちょっと言えば陣内が。カスハラまがいの屁理屈を捏ねる。捏ね捏ね。
    もっと早く振り込んでおけよ!と言いたくなる。
    そして銀行強盗に巻き込まれる2人。

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    2025年10月25日
  • グラスホッパー

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    それぞれの個性強い殺し屋たちの強みと弱点が関わりあって物語になっていく。暴力沙汰や殺人があるけれど嫌な感じはなく、楽しく読んだ。「結構頑張ってる」を自覚する鈴木が良かった。映画も観たが、やっぱり原作が数倍楽しい。

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    2025年10月25日
  • マリアビートル

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    最初から最後まで新幹線内での話。こんな新幹線があったら怖すぎます。
    みな強烈なキャラクターではあるものの、どこか愛すべきところがあるのに、王子は悪の塊のような感じ。大人でないことを活かして、一度信じさせる側になればあとは同調してくれる、そして自分の立場を常に人より上にしていく。
    スピード感があって面白かったです。何回絶対絶命のタイミングがあっただろう。いくつかは絶命でしたが。

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    2025年10月25日
  • AX アックス

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    ネタバレ

    家庭では妻のご機嫌ばかりとって、息子を溺愛している兜は有能な殺し屋。

    「グラスホッパー」「マリアビートル」に続く殺し屋シリーズ

    今回は登場人物はそんなに多くなくほとんど兜の場面。ちょこちょこ死んだりしますが、殺しの場面メインというより家庭での兜の場面だったり、殺し屋の顔と家庭の顔がじっくり楽しめる話でした。

    人間味があって悲哀も描写されて、それでいて伊坂さんならではのユーモアある場面がたくさんで面白かった。

    章を追うごとに兜の印鑑がだんだん斜めになっていって最後には印鑑が掠れていく。
    兜の死を表しているかのようだった。

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    2025年10月24日
  • 死神の精度

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    短編で構成される死神シリーズ1作目。
    個人的に2作目より好みであった。

    晴れた日を見たことのない千葉が最後、晴れを見ることができたり、いつも結果を可としている千葉がそうはしないこともあったりと短編ながら1つの物語としても、展開の妙が感じられ面白かった。

    またそれぞれの短編単体で見ても、先が気になる展開が用意されており、バラエティに飛んだ非常に良い作品だった。

    ⭐︎4.4

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    2025年10月24日
  • ラッシュライフ

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    グラスホッパーに続き13年ぶりの再読。
    4人の視点がクルクル変わるから頭が追いつかないところもあったけど、黒澤の会話のユーモアに気付けたのは良かった。豊田はずっと応援できた。
    出てきた銀行強盗はあの陽気なギャングかな?

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    2025年10月22日
  • アイネクライネナハトムジーク

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    伊坂幸太郎です。としか語れなくなってきたな...
    比較的心理描写を比喩するのが多い印象。
    『天気とパズル』みたいにほっこりするストーリーがメインですね。
    個人的にはライトヘビーが好き。

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    2025年10月22日
  • ペッパーズ・ゴースト

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    伊坂作品らしい個性的なキャラクターが登場し、伏線や意外な展開が随所に盛り込まれて“伊坂作品の全部乗せ”のような楽しさがあった。伊坂作品に出てくる"悪い人”、不思議と憎めないんだよな。
    登場人物の「ニュースはたいがい嫌な話しか取り上げない。ごく普通のいい話はニュースにならない」という言葉が印象的で、悲観的なニュースや不確かな情報に流されずに日常の中にある小さな希望をしっかり見つめようと思えた。

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    2025年10月22日
  • クジラアタマの王様(新潮文庫)

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    意外な方向に話が進んだなという印象。また、ゲームの世界と現実がリンクするという設定も、実際はありきたりではあるが、ここまできちんとまとめてあってすごい。挿絵もちょうど良く、テンポ良く読める。主人公岸の名前の由来には意外でクスッとしてしまった。

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    2025年10月22日
  • 重力ピエロ

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    ネタバレ

    他の伊坂幸太郎作品より間接的で哲学的な話が多く、終盤以外は正直ページが進みにくかったが、終盤は安定の伏線回収と重いテーマなのに爽やかな読後感にしてくれる。
    とは言え、伊坂幸太郎といえば!と期待していた分、うーん…と思ってしまった。
    個人的に、殺人の話はフィクションとしてフラットに見れるが、女性だからかレイプなどを含む話は胸糞感マシマシになるからかも?

    お父さんの性格というか存在自体が素敵だった!


    ーーーピエロは重力を忘れさせるために、メイクをし、玉に乗り、空中ブランコで優雅に空を飛び、ときには不格好に転ぶ。何かを忘れさせるためにだ。

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    2025年10月21日
  • 終末のフール

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    八つの短編が交わったり、すれ違いざまにちらりと見えたりしながら進んでいく構成が好きでした。
    世界の終末までの残りの時間を生きる人々を描いたこの作品は、生きる意味を死ぬ意味を、真正面から真面目くさく語るのではないところが良かったです。日常の生活の中にそのテーマを落とし込んでいるから、納得する描写がたくさんあったような気がします。

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    2025年10月21日
  • アイネクライネナハトムジーク

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    一つ一つの話が繋がって収束していくのが堪らなく気持ち良い。話もそれぞれ面白かった。

    自分も『大丈夫ですか?この人が誰かわかってるんですか?』をいつか使ってみたい。

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    2025年10月21日
  • 逆ソクラテス

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    珍しい。逆転のような、大人の決めつけをひっくり返す返してくれるような。これまで読んだことがないような小説だった。予想を裏切って、私たち大人に生き方の示唆をしてくれるストーリー。どれもこれも秀作ばかり。心にしっかりとしまっておきたい。

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    2025年10月19日
  • オー!ファーザー

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    父親が4人という突飛な設定ながら、それぞれが息子を思う姿が温かい。
    気づけば重大な事件に巻き込まれていくものの、少し風変わりで魅力的な家族の絆で乗り越えていく。ユーモアと愛情に満ちた、家族の形を描いた心温まる物語でした。

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    2025年10月19日
  • AX アックス

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    殺し屋シリーズ第3弾!スケールの大きさはマリアビートルとは全然ちがうけど、
    1人の【兜】中心に進んでいく。
    家族のお話と言ってもいいほど。
    最後はちょっと泣けてきてしまった。
    伊坂幸太郎の殺し屋の人はすごくいい人だったりするので、、、今回は兜をすごく応援している、、
    あー、ここで伏線回収か、、
    とてもよかったです

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    2025年10月19日
  • 夜の国のクーパー

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    きっと何かのメタファーなんだろうなあと思っていたものが綺麗に回収される気持ちよさはこの作品でも共通。この瞬間のために読んでいると言っても過言ではない。

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    2025年10月18日
  • アヒルと鴨のコインロッカー

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    過去と現在が交互に紡がれ、点と点が次第に線を描いていく物語。伏線が静かに回収され、ラストで全てが鮮やかに収束する。緻密に組み上げられた構成と軽妙な語りが見事に融合している。物語を操る巧みさに、改めて伊坂幸太郎の力量を感じる。構成の妙や物語の仕掛けを楽しみたい方におすすめの一冊。

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    2025年10月18日
  • 陽気なギャングの日常と襲撃

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    陽気なギャングシリーズの2作目
    前作とは違い4人の銀行強盗各々の短編かは始まり最後は一つの物語に収束する長編物語!
    個性あふれる4人の日常を覗き見しているようで大満足でした!!響野さんの深そうで深くない話や雑学に何度も笑わされツッコみたくなりました。
    序盤の些細な会話に出てくる物や小ネタが終盤に意味を持ってくるところが読んでいて気持ちいいです!

    次の作品が今の所最新作ということでこの世界観を堪能できなくなると考えると悲しいですが3作目噛み締めながら読みたいと思います!

    p.s. 記憶が無くなりそうなほどお酒を飲む時はパエリアがマストアイテムらしいですよ(笑)

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    2025年10月17日
  • 砂漠

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    最後の一ページが大好き。
    文をそのまま書くわけにはいかないので、ニュアンスを書く。
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    〇〇と過ごした学生時代を
    「そんなこともあったなあ」と昔観た映画と同じ感覚で思い出すことになるかもしれない。
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    昔すごい好きだった人と会っても何も感じなくなるし、逆に微妙だと思っていた小説家の作品に夢中になってたりする。
    今夢中になってることも時間が経てば
    どうでも良くなってしまうのかなと思うと
    寂しい。だけど時の流れには逆らえない

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    2025年10月18日