佐藤賢一のレビュー一覧
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前半は無頼漢ながら気の良い傭兵隊長・ピエールと無邪気な熱血少女ジャンヌ・ダルクの絡み合いが面白い。熱血少女に諭されて、傭兵隊が妙に家庭的になっていくところなど、なんだか少し不思議なおかしさもありますが、どちらかというと男性的な武勇談の雰囲気です。
後半はピエールの懺悔譚というか、次々に昔の悪事のつけが廻るような話。そして最後に、ちょっと都合が良すぎるような終焉に向かいます。
上下二巻。全体の構成ととしては、やや甘さを感じるのですが、読み物としてはなかなか面白いですね。類例的な感じがしないでもないですが、それぞれの登場人物のキャラクターもなかなか良いですし。
ただ、女性の描き方はどうでしょ -
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ロベスピエールは人民に寄り添う左翼政治家であるが、元は弁護士というインテリであって、下層民ではない。パリのサンキュロットとその親玉エベールが主導権を握りモンスター化する中、彼らの剣幕に押されて恐怖政治が始まる。パチパチと拍手が鳴り続いた、と佐藤賢一は国民公会の様子を描いているが、独裁と恐怖政治は独裁者の恣意により始まるのではなく、大衆の熱狂から生まれる。ロベスピエールは、この時点では、むしろ熱狂を懐疑する側に立っている。
熱狂の中、革命裁判も尖鋭化し革命の古株たちの血が流れる。もともと、第三身分の革命家たちはヴォルテールやルソーの言葉に心を熱くしたインテリだった。インテリの言葉遊びに始まった革 -
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5名の小説家による歴史座談会。山本兼一さんが亡くなられたので、途中から4名になっています。信長・秀吉・家康・幕末がテーマの4回。
やはり、同じ歴史上の出来事でも、それぞれが着目する点って違うんだな、と当たり前なんだけど新鮮に感じました。それだからこそ、数々の歴史小説を読む意味もあるというものです。まだまだ読書量も勉強も足りません。
司馬遼太郎の影響について言及されているのも興味深い。ざっくりいうと、司馬遼太郎を超えて行け、ということですな。あの竜馬を超えるのは大変でしょうねぇ。
三国志演義と三国史は別物。それに気づいたのっていつだろう?史書でなく小説・マンガから触れることが多いのが歴史だと思 -
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フランス国内で燻り続けた宗教戦争時の王母、カトリーヌ・ド・メディシスの物語です。
カトリックとプロテスタントの勢力が拮抗するフランスは、共存の道を模索します。
カトリーヌも共存を一番に考える側でしたが、双方の急進派が起こす流れには抗えません。
しかし、一度戦争となれば周りの男衆よりも一貫した姿勢で臨みます。
それまで地味な庶民のイタリア女として馬鹿にされていた彼女は、一変して強い指導者となります。
客観視された文章とカトリーヌの回想が分けられた構成となっています。
前者だけでも十分なくらいの女性らしい強さが、後者によって更に印象付けられました。 -
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のっけから、『三銃士』のパロディめいた勿体ぶった「序」ににやにやしてしまい、テンションが上がった。
主役2人がとても魅力的でなんともいいコンビ。この人の書く「男」は本当にかっこいいなと思う。
余談だが、ミシェルは私の知人に似ている。頭が良く、享楽的で人をくったようなところがあり、大勢の人を惹きつける人間的魅力と人望があって自信に満ちているように見えながら、実は自己評価が低く、人生観や社会観がどこか悲観的。はたから見れば得られないものなどなさそうなミシェルの厭世的な様子を読んで、その知人にも本人しかわからない闇があるのだろうな、などと思ったりしてしまった。
難をいうならば、女性の登場人物がス -
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1792年のフランス革命情勢はわかりづらい。テニスコートの誓い、バスティーユ陥落と続いた1789年はまだ諸勢力の旗幟が鮮明だったが、1792年には諸勢力の思惑はそれぞれに分裂し、保守合同で基盤を固めたはずのフイヤン派はシャンドマルスの虐殺がたたり不人気にあえぐ。国王は内閣を短期間で入れ替えて主導権を保とうとし、各勢力のいがみ合いと疑心暗鬼が深まる中で、諸外国が介入姿勢を強めていく。
しかし、オーストリアの老獪なレオポルド二世は、娘の嫁ぎ先を案じつつも戦争は考えていない。では誰が戦争を望んだのか。国王ルイ16世とマリー・アントワネットが外国王軍を呼び込んで自らの救出を図ったのだ、とすればわかりや -
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ネタバレジャコバン派の分裂は、革命を主導してきた人々の分裂といえる事件である。そして、分裂させた方の三頭派を、佐藤氏は政治技巧を弄するあまり嘘も辞さない人々として描いている。
ヴァレンヌ事件の幕引きを通じて王の信頼を得、ラ・ファイエット派と合流して議会の多数派を握り、眼の上のたんこぶの左派を追い出したのだから、何のことはない、声なき声を代表するものとして淡々と治めていけば、ブルジョアの天下は訪れたかもしれない。しかし、議会左派を共和政を唱える違憲勢力と決めつけて黙らせただけでなく、署名運動を進めるパリ市民に銃を向けてしまう。黙らされた側のロべスピエールはただうろたえるばかり。彼の狼狽は、現段階では三頭 -
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ヨーロッパ近代史の中でいくつかの王政が倒れ、共和政に移行したが、両大戦に起因しない内発的なものとしてはフランス革命が唯一の例と言って良い。というより、フランス革命において国王を断罪し首をはねたことが、19世紀に各国の旧体制の動揺を招き、第一次大戦の原因の一つになったと見ることができる。
本書の物語は1792年8月政変の後から始まる。既にルイ16世は自ら身を処す力を失っていて、彼をどう裁くかがジロンド派とジャコバン派の政争の具になる。国民公会の最大勢力は平原派であり、左右両派が中間派を取り込もうと演説を繰り広げる。革命が過激に突き進むことを警戒するジロンド派と、進まないことに苛立つロベスピエー -
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この本が読者を掴んでしまうのは、やはりゲクランの個性なのかもしれない。後書に佐藤氏のコメントがあるが、様々な古書からもあながち脚色ではないということで味わいも一層深まるというところである。いつまでもガキ大将で礼儀知らずそのくせ滅法な戦上手で戦をやらせたら連戦連勝、しかし女嫌いな醜男、一体これ以上のキャラクターが存在するのだろうかと思うほどである。脇を固めるのがやや神経質ともとれる従兄弟で托鉢修道士でもあるエマニエル、ゲクランが母との確執の中で疎遠になり、その後復縁したギョームとオリヴィエ、そして軍神ゲクランをフランス王家の復活と失地回復に最大限活用したシャルル5世。これだけ見ても
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フランスの100年戦争の初期に現れ、劣勢だったフランスの窮地をそれこそ連戦連勝で挽回した英雄ベルドナント・デュ•ゲクランの一代記である。上巻では、不遇を囲った幼少期から頭角を現し始めた無敵とまで言われた馬上槍試合で見いだされブロア伯の旗印のもとブルターニュ継承戦争に身を投じ、プルセリアンドの黒犬という傭兵軍団を率いて当時日の出の勢いのイングランドを背景につけたモンフォール伯の軍と長年に渡る戦いに身を投じる。物語では彼の戦上手が余すところなく語られ、当世一の醜男が軍神になる過程が描かれる。また、当時シャルル王子だったシャルル5世と邂逅し、生涯仕えていく運命の主君を認め、この後フランス王家復興の右
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上巻に比べると、デュ・ゲグラン自体の生き生きとした会話が減り、
どちらかと言うと周りの状況で話が進んでいく感じです。
それでもおもしろくは読めましたが、少し物足りなさは感じました。
晩年だからでしょうか・・・!?
実際登りつめていく若い時と違い、
登りつめてしまってからでは勢いは違うものですよね。
自分は変わっていなくとも、
自分を取り巻く人や環境が変わっていくのは若い頃だって同じなのだけど、
歳を取ってからの変化は何か寂しいものが付き纏います。
これだけみんなに愛されて、また好きに生きたであろうに、
それでもこの人の人生はとても悲しく感じます。
最後にモーニとエマヌエルに語らせなければ -
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民衆を巻き込んで教会で行われる裁判。
音響効果バッチリでイメージが膨らむ。響き渡る木槌の音、弁護士の声、傍聴席のどよめき…。
ズバリ下半身に関わる裁判。そこに弁護士フランソワの苦い過去、恨みつらみも絡まる。
品を崩しすぎない王妃の艶っぽさと大衆の(いい意味での)おおらかさな下品さ。
漢字表記が多いけれど、この世界観を出すのにとてもあっているように思えた。あけすけな言葉や表現の生々しさに歯止めをかけるのにもいくらか役立っている気もする。
裁判戦術に期待しつつも小難しいんじゃないかとちょっと構えていたけれど、杞憂だった。エンタメ性も感じられてむしろぐんぐんページが進んだ。
今までよくわからなか