あらすじ
十五世紀、百年戦争下のフランス。王家の威信は失墜、世には混沌と暴力が充ち、人々は恐怖と絶望の淵に沈んでいた。そんな戦乱の時代の申し子、傭兵隊を率いる無頼漢ピエールは、略奪の途中で不思議な少女に出会い、心奪われる。その名は――ジャンヌ・ダルク。この聖女に導かれ、ピエールは天下分け目の戦場へと赴く。かくして一四二九年五月六日、オルレアン決戦の火蓋は切られた……。
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傭兵は戦争に参加するもの。冬には盗賊になる。目に心地よいものばかりでなく、歴史の教科書には載らない、目をそむけたくなることも描写しているのがよい。
ピエールのように、悪行もすれば善行もするのが人間なんだろうなあ。
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百年戦争下のフランスで傭兵隊を率いるピエール。その旅の途中ピエールはジャンヌ・ダルク(ラ・ピュセル)という少女に心を奪われる。そしてピエールは彼女と共に戦いに向かう事となり…
初めの略奪の場面こそ血なまぐさいものの、個性豊かな傭兵隊のメンバーに、戦闘シーン、ピエールのラ・ピュセルへの思い、ピエールの傭兵隊の生活や、戦争で城主に雇われるまでのリアリティあるやり取りとエンタメ要素がぎゅっと詰め込まれていて、世界史なんてほぼかじっていない自分でも、難しいことは考えず楽しんで読むことができました。
そうした場面もさることながら、佐藤賢一さんの作品を読んでいて毎回面白く感じるのは、佐藤作品独特の”女性観”です。
中世ヨーロッパのキリスト教の思想があるためか、純潔や処女信仰を作中でも唱えつつ、それに対しての、性に奔放な登場人物たちが活躍します。(今まで読んだ小説ではいまのところ佐藤さんが一番性に関する露骨な記述が多い気がしています…)
そうした性に対する感覚は受け付けない人もいるのかもしれないですが、読めば読むほどそうした描写が徐々に、女性の真からの清純さや包容力や母性、またいつの間にか男を尻に敷いたり、(意識的か無意識的にかはさておき)惑わしたりといった、したたかさ、力強さを表す基盤になっているのではないのかな、と思えてきます。
ぶっちゃけ作中の女性描写が巧いとは思えないですし、作中の女性観もどこか歪んでいる気はするのですが(笑)、でもそうしたぎこちなさから浮かび上がってくる佐藤さんなりの女性観が、自分は好きなのだと思います。
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ジャンヌダルクと傭兵の話。
心の強い女性が力の強い男に絶対的な信頼を寄せ、男も全力でそれに応える。こういう話に惹かれるのは、こういう人を望んでるからなんだろう。
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俺の名前はドゥ・ラ・フルトの私生児ピエール。泣く子も黙る傭兵隊「アンジューの一角獣」のボスさ。西に戦争があれば今日沈む太陽よりも速く駆けつけ、東に富ある村があれば、略奪、強姦の限りを尽くしてやる。ところが、最近隊の様子がちょこっとおかしい。家庭的雰囲気ってやつか?攫ってきたはずの女どもが隊に妙になじんじまって、やりにくいったらありゃしねえ―。
後に百年戦争と呼ばれたフランスとイギリスの争い。アングル王(イギリス軍)の度重なる侵略戦争によってフランス王家の権威は失墜し、フランス国土全体を混沌が覆っていました。そんな混迷の時代に躍進した無数の傭兵隊のうちの一つ、ピエール率いる「アンジューの一角獣」の物語。公爵の私生児として生を受けたが父と生き別れになり、実力本位の世界に身を窶した隊長ピエール。腕前は隊長に勝るとも劣らず、伊達男の副隊長ジャン。冷静沈着、隊の財務大臣、会計係トマ。「スケベ坊主」こと従軍牧師ロベール。そして、ラ・ピュセルことジャンヌ・ダルク。個性豊かな面々が脇を固め、それぞれにいい味を出しています。特に、終盤、腑抜けになってしまったピエールに対するトマの一世一代の大芝居には、やられた、という感じでした。
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読書をほとんどしなかった高校時代、例外的に読んだ作品。
著者については全然知らなかったが、あらすじを読んでジャンヌ・ダルクものだと知って購入しました。
佐藤賢一初期の傑作といってよい、読み出したら止まらないエンタメ長編。
彼の小説に共通するのは、(語弊があるかもしれないが)男が男らしく、女が女らしく描かれていること。
ステレオタイプなジェンダー観というわけではなく、男の弱さ、女の強さ、男であること/女であることの哀しみが実に巧みに描かれているというか。
とにかく血の通った人物描写に唸らされます。
それと、熱意と失意、希望と絶望のさじ加減が絶妙なんですよね。
基本的にハッピーエンドが多いと思うのですが、どうしても一抹のほろ苦さが漂うところがまた堪らないです。
本書では兄弟の確執、傭兵仲間の心変わりなど、濃い人間ドラマが印象に残りました。
当然、佐藤賢一ファンになりましたよ。
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もしも、彼女が、生きていたら…?
15世紀、フランス。
時は英仏百年戦争の真っ只中。
気鋭の傭兵隊長ピエール。
人殺し、略奪、強姦。どんな悪事も平然としてやりまくった彼は、ある日ひとりの女と出会った。
彼女の名は、ジャンヌ・ダルク。
その時、彼の中の何かが変わった。
オルレアン攻防、ランス戴冠式、離別、魔女裁判、逃避行…
そして、彼は、彼女は…
とにかく、主人公ピエールが魅力的。
荒くれた傭兵たちをまとめる隊長でありながら、とっても仲間思いで、しかも女にはとっても弱くてw
この著者の作品はどれもそうだが、人物の描き方がすばらしい。まるで彼らが肉体を持っていて、その体温や、酒臭い息や、すべらかな肌が感じられるかのようだ。
みんな、怒って、泣いて、笑って、食べて、飲んで、寝てw
出てくる男も女も、なんと俗っぽいことか。
そしてなんと生き生きとしていることか。
「救世主」ジャンヌ
ほんとうの彼女はこんな人だったのかもしれない。
骨太の西洋歴史小説だが、ライトノベル読者でもぐいぐいと物語に引き寄せられると思う。
ぜひおすすめしたい傑作
Posted by ブクログ
傭兵ピエールとジャンヌ・ダルクの物語。
一応、架空歴史モノになるのだろうけど
そんな色眼鏡はとっぱらって読んで欲しい!風景、歴史状況、息づく人々…主要人物意外も『生きて』いて読むのが止まらない物語。オススメ。余談だが宝塚で演じられたこともあるそうなw
Posted by ブクログ
3年ぶりくらいに再読。
いや、おもろい!
ありがちな設定だけど、ラストはわかるけど
おもしろかった。
ただ最後の章はちょっとはしょりすぎかな。
あれだけはしょるなら最後の章自体はしょった
方がよかったかも。
Posted by ブクログ
なんといっても、書き出しは圧巻。その一行に引き込まれます。私生児という出自から引け目を感じ、「シェフ殺しのピエール」として生きてきたピエール。翳のある人物描写はやっぱりイイ!!
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上巻時点では歴史の流れに乗って悲劇に向かう冒険活劇といったところ。現代人の感覚的についていけない部分はやはりあるが、その溝をこそ楽しむべきなのだろうとは思う。
Posted by ブクログ
前半は無頼漢ながら気の良い傭兵隊長・ピエールと無邪気な熱血少女ジャンヌ・ダルクの絡み合いが面白い。熱血少女に諭されて、傭兵隊が妙に家庭的になっていくところなど、なんだか少し不思議なおかしさもありますが、どちらかというと男性的な武勇談の雰囲気です。
後半はピエールの懺悔譚というか、次々に昔の悪事のつけが廻るような話。そして最後に、ちょっと都合が良すぎるような終焉に向かいます。
上下二巻。全体の構成ととしては、やや甘さを感じるのですが、読み物としてはなかなか面白いですね。類例的な感じがしないでもないですが、それぞれの登場人物のキャラクターもなかなか良いですし。
ただ、女性の描き方はどうでしょうかねぇ。
Posted by ブクログ
上下巻読み終えたところです。
世界史(この場合は西洋史)の知識が無いために
「史実とフィクションの境目が分からなくては面白くないだろう・・・」と
この手の作品は遠慮していたんですが、細かい事はどうでもいい!
エンタメ作品として楽しめばいいんですよね♪
そう思えば非常に読み応えのある面白い作品でした!
Posted by ブクログ
(上)(下)まとめて。
史実をある程度なぞりながらも娯楽性をバランスよく散りばめた感のある前半の描写に始まり、上巻の後半あたりからはもう飛ばしまくりというか、少年誌の連載マンガのようなハチャメチャな展開に続いていく。
紙幅としてはかなり長い話ながら、中盤以降のスピード感はまさに疾駆の状態で、ご都合主義の何が悪い、という風な開き直りの声とともに、ドタバタという音すら聞こえてきそうなほどだ。
特に「王妃の離婚」などの傑作と比べると非常に粗い作品なんだけど、面白い。
そこはやっぱり佐藤賢一氏の筆力。
他の好きな作家たちと同じように、文章のリズムや選択された語彙が私の感覚にとても合っているから、どうあっても面白い。
Posted by ブクログ
ジャンヌ・ダルクと傭兵部隊「アンジューの一角獣」を率い闘ったピエールのお話
シャルル7世戴冠後、ジャンヌがどーなるか!ピエールは!?って感じで一気に読んだ
ピエール率いる「アンジューの一角獣」のメンバーが個性的その女房衆もまた個性的
漫画版も出てますが漫画版は後半が一足飛びだったのでこちらがおすすめです
Posted by ブクログ
ジャンヌダルクの話です.
貴族の血をひきながらも傭兵に身を落としたピエールと
神の声を聞きフランスの危機を救うジャンヌのお話.
歴史にIFを書いている作品です.
個人的には会計係のトマさんが好きです.
Posted by ブクログ
裏切り、殺し、略奪。
騎士の出ながら運命に翻弄され、傭兵に落ちぶれたピエールだが、1人の少女、ジャンヌとの出会いが彼を変えた。
ジャンヌを守れ、ピエール!
Posted by ブクログ
積読本がなくなったため再読。直木賞受賞作家・佐藤賢一によるジャンヌダルクの物語。百年戦争に参加する傭兵隊長ピエールの視点で物語は進む。
略奪に暴力、強姦に人攫いは当たり前。素朴というよりぼろい貧しい田舎町。汚物は窓から投げ捨てるのもの。中世ヨーロッパ風ファンタジーとは違う、中世ヨーロッパそのままの衛生感の発達してない世界が舞台なのが良い。
傭兵隊長ことシェフのピエールが愛嬌のある、どことなく憎めない男であることもマル。何より傭兵隊の女たちがいい。
この時代の女は、嵐のような現実に晒されて、じっと黙って愛想笑いを浮かべて耐えるだけ。耕した実りも村の娘も傭兵という賊の前では為すすべもなく、すべて奪われ殺されてしまう。何の因果かピエールの隊で攫った女はいつの間にか隊員の恋人、結婚相手となり、故郷に戻って素朴な暮らしをすることになる。男を堕落させる原罪とされる女が、たやすく奪われ犯されるこの戦乱の世で生きていくのはどれだけ苦行なことか。だが生きていくためにはしたたかでないと生きられない。例え自身の故郷を襲い誘拐された傭兵だとしても、やるだけやって捨てられるよりかは付いていって養ってもらわないと生きていけない。女が原罪なのではなく、そうしないと生きられない世の中だった。
さて救世主ことラ・ピュセルは奇跡の力を失った今でも王太子軍の光として生きることを選ぶこととなってしまった。ピエールと彼女は再び交わるのか、ジャンヌダルクは救われるのか。下巻も読もうと思う。
Posted by ブクログ
10年以上前に読んだ本を再読。
内容は全く覚えておらず、面白かったという記憶だけ。
上巻の途中まで何が面白かったのか理解出来ず。
オルレアンからランスにかけて戦いが終結に向かいラ・ピュセルの身に神の声が聞こえなくなった。
この辺りから面白くなりだした。
ここで、ピエール、何で強引に…。などと感情移入が増えてきた。
仲間を大切にし、女に弱いスケベ。
ラ・ピュセルを置いて、仲間と行ってしまったところは自分ならどうしたか悩んだ。
自分の気持ちに気付いたが、仲間(家族)がいる。
下巻どうなるのかな?楽しみ!
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ジャンヌ・ダルクと出会ったことで、
人生を大きく変えていく男の物語。
同じ段落で語り手(視点)が変わる場面があって
読みにくい部分があります。
またこの作品のせいではありませんが、
当時フランスの人名は同名が多いので
人物を把握するのもかなり大変です。
そのあたりの歴史的背景の描写は読み流してしまいました。
ともかく主人公ピエールが魅力的で好感がもてる。
ジャンヌ・ダルクが滑稽なまでに無垢で、何も知らない田舎娘なのも特徴。
最終的な感想は下巻で。
Posted by ブクログ
この作家の作品は初めて読む。前半部分はどうにも生臭いシーンが多くて閉口したが、戦いが始まるにつれてどんどん面白くなった。あくまでもファンタジーとして読むべきなのだろうが、虚構と現実の取り混ぜ方が絶妙で楽しかった。ジャンヌダルクが悲劇的な死を迎えることは知っているだけに、そこへ向けてどうストーリーを膨らませていくのか。下巻が楽しみだ。
Posted by ブクログ
ジャンヌダルクを愛した傭兵ピエールがジャンヌのピンチを援けながら,イングランド軍のフランス侵略からフランスを守っていく物語。をほとんど創作に近く,時代小説としてとらえればとても楽しく読める。ただ,下巻前半部分はややえげつない記述が多くなっているので,そこは・・・。読むにつれて物語に引き込まれていくが,結末が何となく予想できるので,そこはNG。その他,これが史実に近ければ星4つだった。
全2巻
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城、要塞、都市。そのいずれも降伏の印は、開門することだった。開門して敵軍の進駐を許すこと、それは屈辱に満ちた無惨な敗北である。なのに女の仕組みは開門なしには始まらない。ならば泣き叫ぶことこそ道理なのだ。ところが、どうにかすると喜ぶじゃないか。敗北することをもって、喜びとする。敗北し、門をこじ開けられ、侵攻を許すことが、女たちの快楽だった。(p.147)
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十五世紀、百年戦争下のフランス。王家の威信は失墜、世には混沌と暴力が充ち、人々は恐怖と絶望の淵に沈んでいた。そんな戦乱の時代の申し子、傭兵隊を率いる無頼漢ピエールは、略奪の途上で不思議な少女に出会い、心奪われる。その名は―ジャンヌ・ダルク。この聖女に導かれ、ピエールは天下分け目の戦場へと赴く。かくして1429年5月6日、オルレアン決戦の火蓋は切られた…。
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Posted by ブクログ
15世紀、百年戦争後記のフランスが舞台。上巻では傭兵部隊を率いるピエールの人間性が中心に描かれ、下巻ではジャンヌ・ダルクとピエールの関係を中心とした話が書かれている。
西洋時代小説という一つのジャンルを切り開いた作家らしく、人物や時代背景などを上手く描いている。ただ、難点は上巻の前半部分が説明的な文章が多く、入り込みにくい。時代小説の宿命とは言え、そこをうまく書ければ更に面白い話になると思う。
Posted by ブクログ
今度は、傭兵とジャンヌ・ダルクだ。
この時代の、荒っぽい傭兵といいように扱われる”女”という存在には、正直鼻白むものが無きにしも非ずだけれど、でもでも面白い。