佐藤賢一のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
下巻の主人公はカポネにとっては敵役、特別捜査官のエリオット・ネスだ。
ものすごく勘違いしていたことがあった。「アンタッチャブル」というのはカポネのことを指すのではなく、特別捜査官チームの名前としてネスが付けたものだった。カポネの力が強すぎて、手が出せないって意味かと思ってた。映画も観てたのに、全く頭に残ってなかった。
ネスはなんだかプライドが強くて、ヒーローになりたい願望が強く、正義漢とは程遠い人物として描かれている。実際はどうだったのか知らないが、このあたりの描写をみても著者がカポネに肩入れしているのがわかる。
物語としては下巻の方がいろんな事件が起きるので面白いが、人物へ感情移入ができるかどうかというと、あまりできない。カポネ頑張れ!負けるな!と応援したくなる。 もうちょっとネスを格好良く描いてもいいんじゃないだろうか。
しかしまあ、この時代の警官というのは汚職ばかりしていて、金でいくらでも不正を働く。痴漢とか万引きとか、証拠品なくしたとかで日本の警察がたまに騒がれるが、こんなことで騒ぐのは日本だけじゃないかと思えたりする。最近アルゼンチンで警察がストライキをして、略奪行為で街が破壊されるのを傍観していたし、日本の警察はなんだかんだいっても優秀だと再認識した。
話がずれたので戻す。
カポネは禁酒法では逮捕できなかったので、脱税で逮捕された。はっきりいって微罪だし、普通は追徴課税分を支払えば有罪でも執行猶予だ。カポネには有能な弁護士がついていたわけだし。でも、なんだかんだうやむやにされて刑務所にぶち込むこまれ、最後はアメリカ一厳しいアルカトラズへ放り込まれた。さすがアメリカ、強引だ。個人の権利や法より国家が優先される。ある意味天晴れ。
アルカトラズでは希代のギャングスターも看守や囚人にいじめられ、最期は梅毒の菌にやられたために、気が触れてしまったらしい。梅毒のことを知らなかった人たちのなかには、このときの不当な扱いでカポネが気が狂ってしまったと思っていた人もいたらしい。出所後に治療したものの手遅れだった。
カポネの最期の姿にセントヘレナのナポレオンの背中が重なる。
カポネの人生、哀れだ。 -
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ネタバレ暗黒街の帝王、アル・カポネの成り上がっていくさまを描いていて、上巻では青年時代からファミリィを率いてシカゴを制覇するところまでが書かれている。
個人的に、この手の話の序盤は「我慢して読んでいく」ものだという印象があるのだけど、この小説では冒頭から面白い。話の構成から進めかたにいたるまで、巧妙で惹きつけられる。名の知れた人、モノを題材としているから、などではなく純粋に物語として楽しめる。ただ、緻密さは望めない。しかしこれはあくまでも小説なのだから、これでいいと思う。
ピカレスクということで「政府はクズだ」「警察はゴミだ」といったように作者が主張したり、あるいはカリカチュアライズされていたりといったこともなく、語り手は常に冷静であるところも非常にいい点だと思う。確かに読んでいると政府はクズで警察はゴミであるのだけど、それを声高に唱えず、事実を事実として書いているだけなので、読者は余計なことを考えずに読み進めることができる。
ここまで読んでいて気持ちのいい小説は久しぶりだった。 -
Posted by ブクログ
フランス王アンリ2世妃カトリーヌ=ドゥ=メディシス~メディチ家からフランス王フランソワ1世の次男に嫁いだカトリーヌは,料理を始めとする文化を持ち込んだが,地味な女として知られ寵姫ディアーヌ・ドゥ・ポワティエの陰に目立たない存在だった。ディアーヌはスペインに父の身代わりに人質となる7歳以来,母親の愛情に飢えていたのだが,ディアーヌだけは優しく額にキスをして送り出したのだ。北西と南東と西に戦いに駆けめぐり,大元帥の保身の為に煮え湯を飲まされ,王妹の輿入れのための馬上槍試合で試合に勝ったにも拘わらず相手の折れた槍が面貌内に入り,右眼を失って命を落とした。そもそも一つ年上の兄フランソワが生きていれば王になることもなく,冷遇の故に無口になった夫だった。フランス王家で喪服は白と決まっていたが,カトリーヌが黒を使ったのは王家こそが我が家であると自覚できたからだった。長男フランソワ2世の年上の嫁マリー・スチュアールはスコットランドから我が家を奪いに来た女に見える。中耳の膿が脳に回ってマリーは必死に開頭手術を求めるが,我が子に余分な苦しみを与えないことが母の愛だと断念した。嫁はそうそう郷に帰す。次男のシャルルを王にして実質摂政と地位の占めるが,新教徒も旧教徒も王家の権限を奪いに来る。シャルル9世を数年に及ぶ行幸を続け,体格に優れた王となったが,新教徒との戦いに王家を担ぎ出そうとする勢力にはうんざりだ。精力は外に及ぼすべきだが,力を注ぐべきは長女の嫁ぎ先であるスペイン・フェリペ2世ではなく,反乱を起こしているゴイセンのネーデルラントでもなく,半島であるべきなのだ。子の中でしっかりしているのはスペインに嫁いだエリザベトだが,すっかりスペイン人になって死んでしまった。一番可愛いのはアンジュー公アンリで,シャルルを抑えて戦功を挙げさせることができたが,男色に走っている。次女マルグリットは兄たちと関係を持ち,新教徒のキーズ公アンリとも関係を持っているとなれば気が気でない。シャルルは新教徒のコリニィ提督を父の様に慕ってネーデルラントに誘い出そうとしている。気を変えるためには,マルゴとナヴァル王アンリの婚礼で,コリニィの暗殺を仕掛け,母か父代わりかを選ばせ,狂喜に走らせるしかなかった~イタリア女にとって最も大切なのは家族。店屋の娘と蔑まされたカトリーヌ=ドゥ=メディシスにとっては,夫の寵姫が威張り散らしている一家を夫の死に際して自分のモノとすることだけが大事だった。世界史の中で出てくるサン=バルテルミの虐殺を詳細な検証により,旧説を覆らせる大胆な試みだ。でも・・・王母の回想があちこちに飛んでしまって,しかも登場人物が多くて,関連が複雑だから,ちょっと視点が元に戻せないなぁ
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Posted by ブクログ
東西南北今も昔も、信心ほど恐ろしいものはない
イタリアのメディチ家からフランス王家に輿入れし、国王アンリ2世の王妃となった一代の女傑カトリーヌ・ドゥ・メディシスの半生を描く著者お得意の史伝小説である。
夫が騎馬槍試合における不慮の事故で亡くなって以来、彼女は常に黒衣を纏ったことから、「黒王妃」と呼ばれるようになったという。ここで興味深いのは当時フランスでは喪に服す着衣は白であったにもかかわらず、あえて黒を選んだことである。
服飾史研究家の増田美子氏の研究によると、本邦で喪服が黒になったのは奈良時代からで、それまでは白だった。その後室町から江戸時代にはふたたび白に戻り、明治維新で西欧にならってまたしても黒となって現在に至るそうだが、その倣った欧米というのはおそらくドイツだろうから、独仏自体も白黒いろいろ変遷していたのではないだろうか?
この国でもむかし血族の死に際会して、どうしても黒服を纏うことをがえんずることなく断固として平服で通した人がいたが、私にはその気持ちがよく分かるような気がした。
だいぶ話が書物から飛んだが、ともかくこの腹の据わった黒衣のイタリア女が、周章狼狽する息子の国王シャルル9世やアンジュウ公アンリの首根っこを押さえながらあの有名な「聖バルテルミーの大虐殺」を引き起こす。
1572年8月24日、現在のルーブル美美術館一帯は数千人のユグノー(プロテスタント)教徒の死者で溢れ、セーヌ河は深紅の血に染まったというが、東西南北今も昔も信心ほど恐ろしいものはない。 -
Posted by ブクログ
ネタバレかの有名なヴァレンヌ逃亡のみを扱った一冊。
捕まることは分かっている逃走劇だけども、逃走劇というのはやはりおもしろい。
何よりも、フランス革命において欠かすことのできないルイ16世がようやく主人公になったこと。
うまいなあと思ったのは、ヴァレンヌで国王であるとばれたときに、王は国王であることを名乗らざるを得ない状態におかれたのだと思っていたけど、ここでは国王の権威を利用するというポジティブな宣言であるという描かれ方をしていて、目からうろこ。名乗ってしまえば逃げれるのではないかという書き方もよい。
結論としてどうやって失敗するのかは次のお楽しみ。
美化されがちのフェルゼンがこてんぱんに書かれていて、ルイ16世も愚鈍どころか王としての思考を巡らせていて、今までで一番飽きない巻だったと思う。