佐藤賢一のレビュー一覧

  • カルチェ・ラタン

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    のっけから、『三銃士』のパロディめいた勿体ぶった「序」ににやにやしてしまい、テンションが上がった。

    主役2人がとても魅力的でなんともいいコンビ。この人の書く「男」は本当にかっこいいなと思う。
    余談だが、ミシェルは私の知人に似ている。頭が良く、享楽的で人をくったようなところがあり、大勢の人を惹きつける人間的魅力と人望があって自信に満ちているように見えながら、実は自己評価が低く、人生観や社会観がどこか悲観的。はたから見れば得られないものなどなさそうなミシェルの厭世的な様子を読んで、その知人にも本人しかわからない闇があるのだろうな、などと思ったりしてしまった。

    難をいうならば、女性の登場人物がス

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    2017年09月01日
  • ジロンド派の興亡 小説フランス革命 10

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    1792年のフランス革命情勢はわかりづらい。テニスコートの誓い、バスティーユ陥落と続いた1789年はまだ諸勢力の旗幟が鮮明だったが、1792年には諸勢力の思惑はそれぞれに分裂し、保守合同で基盤を固めたはずのフイヤン派はシャンドマルスの虐殺がたたり不人気にあえぐ。国王は内閣を短期間で入れ替えて主導権を保とうとし、各勢力のいがみ合いと疑心暗鬼が深まる中で、諸外国が介入姿勢を強めていく。
    しかし、オーストリアの老獪なレオポルド二世は、娘の嫁ぎ先を案じつつも戦争は考えていない。では誰が戦争を望んだのか。国王ルイ16世とマリー・アントワネットが外国王軍を呼び込んで自らの救出を図ったのだ、とすればわかりや

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    2017年08月10日
  • 赤目のジャック

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    まだ人権も何もなかった時代。拠り所をなくした人々がいとも簡単に理性を失って残酷なことをしてしまう。平和な現代の日本にいると、全く想像もできない状況、人々の心理かもしれないが、人間には誰しもこのような状況に追い込まれてしまう弱さがあるのでは?と考えさせられた作品。
    戦争って、こんなことが日常になってしまうということ、平和を守ることは、思いやりを持つことなんだと痛感した。

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    2017年08月10日
  • フイヤン派の野望 小説フランス革命 8

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    ネタバレ

    ジャコバン派の分裂は、革命を主導してきた人々の分裂といえる事件である。そして、分裂させた方の三頭派を、佐藤氏は政治技巧を弄するあまり嘘も辞さない人々として描いている。
    ヴァレンヌ事件の幕引きを通じて王の信頼を得、ラ・ファイエット派と合流して議会の多数派を握り、眼の上のたんこぶの左派を追い出したのだから、何のことはない、声なき声を代表するものとして淡々と治めていけば、ブルジョアの天下は訪れたかもしれない。しかし、議会左派を共和政を唱える違憲勢力と決めつけて黙らせただけでなく、署名運動を進めるパリ市民に銃を向けてしまう。黙らされた側のロべスピエールはただうろたえるばかり。彼の狼狽は、現段階では三頭

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    2017年07月23日
  • 王の逃亡 小説フランス革命 7

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    物語の語り手はここでルイ16世に移る。
    この有名なヴァレンヌ逃亡劇は、革命史観に立てばマリー・アントワネットの世間知らずを嘲笑したくなるし、ベルばら側に立てばフェルゼンの愛を信じたくなる。300年語り尽くされてきたこの物語を、佐藤氏はルイ16世の視点で語る。しかもその彼は、家族を愛し、馬車の御術に通じた小市民的発想の持ち主。斬新で良かったけれども、逃亡はかなわず、やがてパリに連れ戻されてしまう彼の運命が悲しい。

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    2017年07月17日
  • シスマの危機 小説フランス革命 6

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    ミラボー死す。享年42歳。
    欲得に忠実なミラボーと、理想を追い求めるロベスピエール。革命の物語はこれまで、この対照的な二人を中心に進んできたが、世間を知るミラボーの方が二歩も三歩も先んじていただけに、彼の死は喪失感が大きい。
    この喪失感はルイ16世も感じただろうし、ラ・ファイエットごときでは埋まらないだろう、というのが佐藤氏の見方。

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    2017年07月17日
  • パリの蜂起 小説フランス革命 2

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    ミラボーとロベスピエールがデムーランを焚き付けて蜂起を促すシーンが面白い。多分佐藤氏の創作なのだろうけど、そうであったと思わせる筆致が素晴らしい。

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    2017年06月25日
  • 共和政の樹立 小説フランス革命12

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    ヨーロッパ近代史の中でいくつかの王政が倒れ、共和政に移行したが、両大戦に起因しない内発的なものとしてはフランス革命が唯一の例と言って良い。というより、フランス革命において国王を断罪し首をはねたことが、19世紀に各国の旧体制の動揺を招き、第一次大戦の原因の一つになったと見ることができる。

    本書の物語は1792年8月政変の後から始まる。既にルイ16世は自ら身を処す力を失っていて、彼をどう裁くかがジロンド派とジャコバン派の政争の具になる。国民公会の最大勢力は平原派であり、左右両派が中間派を取り込もうと演説を繰り広げる。革命が過激に突き進むことを警戒するジロンド派と、進まないことに苛立つロベスピエー

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    2017年05月05日
  • 双頭の鷲(下)(新潮文庫)

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    この本が読者を掴んでしまうのは、やはりゲクランの個性なのかもしれない。後書に佐藤氏のコメントがあるが、様々な古書からもあながち脚色ではないということで味わいも一層深まるというところである。いつまでもガキ大将で礼儀知らずそのくせ滅法な戦上手で戦をやらせたら連戦連勝、しかし女嫌いな醜男、一体これ以上のキャラクターが存在するのだろうかと思うほどである。脇を固めるのがやや神経質ともとれる従兄弟で托鉢修道士でもあるエマニエル、ゲクランが母との確執の中で疎遠になり、その後復縁したギョームとオリヴィエ、そして軍神ゲクランをフランス王家の復活と失地回復に最大限活用したシャルル5世。これだけ見ても

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    2017年04月27日
  • 双頭の鷲(上)(新潮文庫)

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    フランスの100年戦争の初期に現れ、劣勢だったフランスの窮地をそれこそ連戦連勝で挽回した英雄ベルドナント・デュ•ゲクランの一代記である。上巻では、不遇を囲った幼少期から頭角を現し始めた無敵とまで言われた馬上槍試合で見いだされブロア伯の旗印のもとブルターニュ継承戦争に身を投じ、プルセリアンドの黒犬という傭兵軍団を率いて当時日の出の勢いのイングランドを背景につけたモンフォール伯の軍と長年に渡る戦いに身を投じる。物語では彼の戦上手が余すところなく語られ、当世一の醜男が軍神になる過程が描かれる。また、当時シャルル王子だったシャルル5世と邂逅し、生涯仕えていく運命の主君を認め、この後フランス王家復興の右

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    2017年04月26日
  • 双頭の鷲(下)(新潮文庫)

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    上巻に比べると、デュ・ゲグラン自体の生き生きとした会話が減り、
    どちらかと言うと周りの状況で話が進んでいく感じです。
    それでもおもしろくは読めましたが、少し物足りなさは感じました。

    晩年だからでしょうか・・・!?
    実際登りつめていく若い時と違い、
    登りつめてしまってからでは勢いは違うものですよね。

    自分は変わっていなくとも、
    自分を取り巻く人や環境が変わっていくのは若い頃だって同じなのだけど、
    歳を取ってからの変化は何か寂しいものが付き纏います。

    これだけみんなに愛されて、また好きに生きたであろうに、
    それでもこの人の人生はとても悲しく感じます。
    最後にモーニとエマヌエルに語らせなければ

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    2017年03月09日
  • 王妃の離婚

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    民衆を巻き込んで教会で行われる裁判。
    音響効果バッチリでイメージが膨らむ。響き渡る木槌の音、弁護士の声、傍聴席のどよめき…。
    ズバリ下半身に関わる裁判。そこに弁護士フランソワの苦い過去、恨みつらみも絡まる。

    品を崩しすぎない王妃の艶っぽさと大衆の(いい意味での)おおらかさな下品さ。
    漢字表記が多いけれど、この世界観を出すのにとてもあっているように思えた。あけすけな言葉や表現の生々しさに歯止めをかけるのにもいくらか役立っている気もする。

    裁判戦術に期待しつつも小難しいんじゃないかとちょっと構えていたけれど、杞憂だった。エンタメ性も感じられてむしろぐんぐんページが進んだ。
    今までよくわからなか

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    2017年08月05日
  • 新徴組(新潮文庫)

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    恥ずかしながら新徴組については知識なしでした。新選組の兄弟分となる組織があったのですね。著者独特の節回しのきいた文章は相変わらず。前半だけなら★5つ。後半、戦争が始まると登場人物の存在感が一気に希薄になるのが残念。

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    2017年01月29日
  • バスティーユの陥落 小説フランス革命 3

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    いよいよ革命は民衆をも巻き込んだ壮大で、後戻りのできないものへと変化していく。ヴェルサイユ行進の成功は、国王一家、そして議会をパリに引きずりだす。これらから先この革命はいかにとめるのかミラボー、しかし歴史の結果からわかることはそれはかなわなかったこと。そしてロベスピエールが向かう先も…
    革命が複雑化し、さまざまな想いが交錯していくようになり、これからが目が離せなくなる。

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    2016年05月08日
  • 革命のライオン 小説フランス革命 1

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    全巻文庫で集めて満を持してのスタート。第1巻はミラボーの活躍を中心に、三部会の召集と、第一身分の合流までの話。まだまだ序盤だが、この先の展開が楽しみ。フランス革命についてよく知っているつもりの自分なので、知らない人が読むとどのように感じるかが分からない。よく知っている側からすれば、第一巻は知っている話ばかりで、小説を読んでいるというよりは、教科書をなぞっている感じがしてします。第2巻以降、ここにそれぞれ個性豊かなフランス革命の主人公たちの感情が入ってくれば盛り上がること間違えなし。期待を込めて読み進めていく。

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    2016年03月26日
  • 英仏百年戦争

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    著者は歴史家ではなく、歴史小説家。

    それがために語り口は全然学者っぽくない。

    あえて言えばべらんめぇ調である。

    ぼく自身、百年戦争は過去に読んだことがある。

    それもとても良い本だったが、殆ど忘れてしまった。

    覚えていることと言えば、登場人物が錯綜してヤヤコシイ。

    イギリスもフランスも沢山の家系が出てきて、それぞれが組んずほぐれつの争いを繰り広げる。

    以前読んだ時はまだ若かったので、家系図を見比べながらかなり真剣に理解に勤めた。

    今はもう歳なのでそんなエネルギーがないことは分かっているし、すぐに忘れることを知っているから、読み飛ばすに限る。

    そして結局はフランス人同士の戦争であ

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    2016年02月29日
  • カルチェ・ラタン

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     1536年のパリ。新米夜警隊長のドニ・クルパンとその元家庭教師ミシェルは、パリで起こる様々な事件に挑む。
     しかし、ある事件でミシェルが犯人として疑われ、ドニはカルチェラタンの神学生たちとともに、パリの裏にうごめく陰謀に挑むことになる。

     主人公のドニは、他の佐藤作品と違い女性にかなり奥手。そんなドニに事件の指南と共に、女性指南もするのがミシェルです。このミシェルの女癖はかなり悪く、それだけにドニとのデコボココンビぷりが際立ちます。この二人のやり取りが面白いです。

     そして、登場人物たちも豪華です。神学生として登場するのは、フランシスコ・ザビエルやイエスズ会の創立者、グナチオ・デ・ロヨラ

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    2015年12月18日
  • ジャガーになった男

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     太平の世が訪れようとしていた江戸を飛び出し、遣欧使節に加わった伊達藩士の寅吉。たどり着いた先イスパニアでの寅吉の冒険と恋を描いた西洋歴史ロマン小説。

     久々にこんな気持ちのよくて、そしてバカな男の話を読んだなあ、という気がしました(笑)。ある意味憧れますが、でも一方で反面教師にしないといけないような、彼の生き方は何とも複雑な気持ちにさせられます。

     戦国時代が終わったものの、戦いと冒険を求める根っからの武士である寅吉。だからこそ、戦国時代が終わり安定した政治が始まろうとする江戸時代の日本を捨てイスパニアに向かいます。

     イスパニアに行ってすぐ冒険があるわけでもなく、寅吉はそこで恋をし、

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    2015年10月24日
  • ヴァロワ朝 フランス王朝史2

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    一番印象に残ってるのは、シャルル6世の項。と言ってもシャルル6世自体は影がうすい。
    ブルゴーニュ公との熾烈な戦いは読み応えあった。

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    2015年08月05日
  • カペー朝 フランス王朝史1

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    カペー朝の各王をこんなに詳しく知れる本は貴重。熟読必須。
    とりあえずカペー朝は尊厳王フィリップ2世、聖王ルイ9世、美男王フィリップ4世を覚えておけばよさそう。

    ユーグ・カペー
    ロベール2世
    アンリ1世
    フィリップ1世
    ルイ6世
    ルイ7世
    フィリップ2世
    ルイ8世
    ルイ9世
    フィリップ3世
    フィリップ4世
    ルイ10世
    (ジャン1世)
    フィリップ5世
    シャルル4世

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    2019年10月23日