あらすじ
総司の義兄にして天然理心流の剣客沖田林太郎は、新選組勢と袂を分かち、新徴組創設に加わる。その上役たる酒井玄蕃(げんば)はフランス式兵法をも修めた英才だった。そして戊辰戦争が勃発。庄内藩中老の玄蕃が指揮し林太郎らが支えた歩兵隊のスナイドル銃は、勢いづく官軍を食い止め歯軋りさせた。だが時代は彼らの不敗神話さえ呑み込んでゆく。著者が父祖の地を舞台に描く二人の漢(おとこ)の物語。(解説・池上冬樹)
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Posted by ブクログ
とにかく酒井玄蕃がかっこいい。(変人でもあるが)新撰組の陰に隠れていまいち地味な新徴組と、庄内藩。が、こんなにスカッと爽やかな戊辰戦争ものは他に無いような素敵な戦いでした。
Posted by ブクログ
フランスを舞台にした歴史小説の大家である佐藤賢一氏の「珍しい」国内もの。もともと幕末ものの読み物にしばしば「庄内藩」という名称が出てくることが気になってはいた。なぜ東北のそれほど大きくもない藩が江戸で警察のような仕事をしていたのか、それを知りたくて本書を開いた。
面白い!自分にとっての歴史知識の空白部分を埋めてくれたばかりか、戦場の描写はアクション映画さながらの手に汗握る緊迫感。結末が分かっていながら「もしかしたらこのままいけるのでは」と期待させてしまうのは、類稀なる著者の力量なのだろう。久々に読み応えのある小説を読んだ。
Posted by ブクログ
恥ずかしながら新徴組については知識なしでした。新選組の兄弟分となる組織があったのですね。著者独特の節回しのきいた文章は相変わらず。前半だけなら★5つ。後半、戦争が始まると登場人物の存在感が一気に希薄になるのが残念。
Posted by ブクログ
山形県鶴岡市出身の作者が、庄内藩側から戊辰戦争を描いた小説
といっても、庄内藩の中心ではなく、庄内藩で厄介者扱いの酒井吉之丞と新撰組と袂を分かった浪士組の新徴組(ここでも傍流)で庄内藩士ではない者たち(傍流)で、しかも中心に描かれるのは、新徴組でも幹部ではなく、沖田総司の兄、沖田林太郎。
歴史からすると傍流の傍流の傍流のさらに傍流。
歴史の大河に押し流されながら、その中で自分を見いだし、保護すべき人々を守り抜く生き様が描かれている。
普段は決して格好良くはないのだが、いざそのときだけは格好良くなれる。それはやはり格好いい。