佐藤賢一のレビュー一覧

  • 双頭の鷲(上)(新潮文庫)

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    舞台は中世フランス。
    イングランドとの百年戦争の前半あたりでしょうか?
    ブルターニュの貧乏貴族、ベルトラン・デュ・ゲグランの一代記です。

    このデュ・ゲグランという人物。
    粗野粗暴で教養も常識もはなく、
    下品と言うより品というもの自体を知らないような人。
    こう書くと本当にかかわりたくないような人だけど、
    どこか憎めない人物として描かれています。

    実際本人には全く悪気はなく、恐ろしく純粋で無邪気な人なのです。
    そしてなぜか子供の頃から滅法喧嘩が強い。

    この物語は、そんな彼がその才能をいかんなく発揮し、
    登りつめていく様を描いています。

    彼を理解してくれる人物に恵まれ支えられ、
    無邪気なまま

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    2017年02月26日
  • ジャコバン派の独裁 小説フランス革命14

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    ネタバレ

    十二人委員会からジロンド派の追放まで

    革命の3度目の蜂起。実行したのはエベールや激昂派だが、実質的な火蓋を切ったのはマラにロベスピエール。エベールらサンキュロットの言い分にも、ロベスピエールの停滞した議会に対する思いも理解するが、やはり暴力は破壊するだけだ。
    迷いのあったロベスピエールは、ここからどう恐怖政治に向かうのだろう。

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    2016年10月30日
  • ジャガーになった男

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    夢を追い続ける人々のお話。
    新大陸の冒険譚が驚きでした。

    佐藤賢一氏の基盤ここにありという物語だと思います。

    夢は主人公にとって完璧な現実でありながら、
    でもやはり夢は夢。儚いもの。
    そこで生き切るしかない強い意志を持ち、
    風のように流れていくのか
    流されていくのか。

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    2015年10月13日
  • 傭兵ピエール 下

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    地獄に身を落とさないと幸せを実感できない、矛盾しているにもかかわらず、なぜだか理解できる。どうしようもないけどそれが人間なんだろうと思うと、涙が出る。

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    2015年10月09日
  • 傭兵ピエール 上

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    傭兵は戦争に参加するもの。冬には盗賊になる。目に心地よいものばかりでなく、歴史の教科書には載らない、目をそむけたくなることも描写しているのがよい。
    ピエールのように、悪行もすれば善行もするのが人間なんだろうなあ。

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    2015年10月07日
  • 共和政の樹立 小説フランス革命12

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    以前の巻から思っていたことだが、ルイ16世の描き方が非常に好ましく感じられた。そのルイ16世の最後、作者のイメージであるとはいえ、それが小説の醍醐味だと思う。

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    2015年10月05日
  • 革命の終焉 小説フランス革命18

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    ロベスピエールの死を以て革命は終焉を迎えることになります。徳を説き、正しさを貫き、万民が認める清廉の士であった彼は、その死の間際に信じた人々からの裏切りに合い、最後の最後に人間の醜悪さを悟り、自分の錯誤を知って命を失うことになりました。前巻のダントン派の処刑時には、読者としてはロベスピエールやサン・ジュストの冷酷さに、不気味さや怒りを覚えていたというのに、どうしてこうもこの二人の死の場面を読むと哀しくなるのか……。これも全ては作者の腕前によるのでしょう。天晴れ。今度はナポレオンが始まるということで、これまた非常に楽しみで大期待です。

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    2015年06月14日
  • 革命の終焉 小説フランス革命18

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    左派エベール派と右派ダントン派を粛清したサン・ジュストたち。戦争での勝利も得てロペスピエールの独裁は順調にいくかと思いきや、やり過ぎを嫌う中道派との対立がます。革命疲れとも言うべき中でロペスピエールはダントン派の粛清を悔やみ、理想主義に傾いていく。中道派との妥協を強いられたサン・ジュストは融和演説を邪魔されると敢えて逆らわず、反動を許してしまう。ロペスピエールたちへの逮捕から処刑までの短い時間の中で、民衆の支持を失ったことをしるロペスピエール。ミラボーの言葉通り現実の人間を見なかったロペスピエールたちの理想主義の敗北。ポルポトを想起させる。最後に女囚たちのエピソードで締める。どんなに寒い冬でも

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    2015年06月10日
  • 革命のライオン 小説フランス革命 1

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    ネタバレ

    秀逸❗️その一言❗️現在、過去、未来の世界の政体、そして人間の欲と理想を非常に考えさせられた。最終巻の解説は非常に示唆に富む。
    「己が欲を持ち、持つことを自覚して恥じるからこそ、他人にも寛容になれるのだ。独裁というような冷酷な真似ができるのは、反対に自分の欲がないからだ。世のため、人のためだからこそ、躊躇なく人を殺せる」
    「しかし、私は自分にこそ常に厳しく接していたい。いや、それは私だけの話であってもならないはずです。なんとなれば、もう皆が立派な市民なのです。人権を与えられた自律的な存在であるからには、これからの世ではフランスの万民が常に自分に厳しく接し、また全ての振る舞いに責任を持つべきなの

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    2015年05月28日
  • ダントン派の処刑 小説フランス革命17

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    エベールら左派を処刑したロペスピエールやサン・ジュストら。次の標的は右派のダントン派だった。革命初期から活躍した民衆の代表とも言えるダントン、デムーランたちが処刑され、革命は終わりを迎える。誰も幸せにならない社会変革、徳と恐怖政治による革命の理想的な実現を目指すロペスピエールやサン・ジュストには、普通の幸せを求めて革命に参加したデムーランの気持ちは理解できないだろう。ダントンのあらゆる考えを持つフランス人全員を抱え込み、あまつさえ自らを処刑しようとするロペスピエールの心さえ救おうとする器量は、ただの八方美人にしか見えない。さらに夫を救おうとして運動したデムーランの妻リシェルの処刑をロペスピエー

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    2015年04月21日
  • 双頭の鷲(下)(新潮文庫)

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    全くなじみのないフランスの歴史小説。
    でもすごくおもしろかったなー。
    上下巻ともボリュームがあったけど、ちょうどいい読み応え。
    質、量ともによかった。

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    2015年04月08日
  • 共和政の樹立 小説フランス革命12

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    ルイ16世の処刑が描かれる。ベルばらのせいか、ボーっとした王様のイメージが強かったけれど、本作では政治的感覚に長けたしたたかな国王として描かれていて新鮮。

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    2015年03月29日
  • 粛清の嵐 小説フランス革命15

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    毒舌家マラの暗殺。過激なエベール派の暴走でマリーアントワネット、ジロンド派、女性革命家、ロラン夫人などが断頭台の露に消える巻。ロベスピエールは若いサンジュストたちに促され、公安委員会に入る。さらに9月のエベール派の蜂起により国民公会で恐怖政治が議決。疑いを受けただけで逮捕できる嫌疑者法が作られる。さらに脱キリスト教を叫ぶエベール派は聖職者を還俗させ、理性の祭典と自由の女神を信じることを強要する。ロベスピエール、デムーラン、ダントンら革命の古株は打倒エベールで協力すること。

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    2015年02月26日
  • 王の逃亡 小説フランス革命 7

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    ルイ16世の視点で書かれている巻。これが像として正しいかどうかは知らないが、面白い!このルイ16世で1本小説を書いてほしいくらい。

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    2015年02月08日
  • 傭兵ピエール 下

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     ジャンヌ・ダルクと共に戦ってから2年。ピエール率いる傭兵隊は田舎町で安全かつ安定した生活を送っていた。そんなピエールのもとにジャンヌ・ダルクを救出せよという密命が依頼される。

     上下巻通してやっぱり面白い! 
     ジャンヌ・ダルクへの思いをつらぬき、ようやく見つけた安住の地から旅立つピエールの姿はカッコいいの一言に尽きます!

     ジャンヌ・ダルクとピエールの恋愛模様はキリスト教や聖女といった観念から擦れ違いが起きるのですが、それをどう乗り越えていくか、そして乗り越えるピエールの言葉も(下ネタにも関わらず)カッコいい!

     そうしたピエールのかっこよさだけでなく、戦乱のヨーロッパの悲劇や闇とい

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    2014年12月28日
  • 傭兵ピエール 上

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     百年戦争下のフランスで傭兵隊を率いるピエール。その旅の途中ピエールはジャンヌ・ダルク(ラ・ピュセル)という少女に心を奪われる。そしてピエールは彼女と共に戦いに向かう事となり…

     初めの略奪の場面こそ血なまぐさいものの、個性豊かな傭兵隊のメンバーに、戦闘シーン、ピエールのラ・ピュセルへの思い、ピエールの傭兵隊の生活や、戦争で城主に雇われるまでのリアリティあるやり取りとエンタメ要素がぎゅっと詰め込まれていて、世界史なんてほぼかじっていない自分でも、難しいことは考えず楽しんで読むことができました。

     そうした場面もさることながら、佐藤賢一さんの作品を読んでいて毎回面白く感じるのは、佐藤作品独特

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    2014年12月24日
  • 共和政の樹立 小説フランス革命12

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    ついにルイ16世が断頭台に。ギロチンは最新式の処刑道具で平等で人権的なものらしい。苦しまないで王も庶民も平等の処刑の仕方で執行される。しかし王の死刑を遅らせようとするジロンド派と即時の死刑を求めるジャコバン派。サン・ジュストの歴史的な演説で、流れは一気にジャコバン派へ。両派をまとめることで存在感を高めたダントンは、金銭スキャンダルとジロンド派の裏切りで影響力を落とす。ロラン夫人の斡旋の甲斐なくダントンはジャコバン派を支持。ジロンド派は敗北し、王は即時の死刑となる。開明派の王として即位。国民から愛された王ルイは何故死刑されなければならなかったのか。立憲君主制で何が悪いのか?サン・ジュストの演説は

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    2014年12月02日
  • 共和政の樹立 小説フランス革命12

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    2014年9月から毎月一冊の文庫版の刊行が再開された、小説フランス革命。
    今回の『共和政の樹立』は第2部の第3巻で、通算12巻となる。

    フランス革命の一側面である、処刑の色が強くなる。
    ルイ16世の幽閉から処刑までを描いた一冊。

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    【内容(「BOOK」データベースより)
    1792年8月の蜂起で王権が停止され、国王一家はタンプル塔に幽閉された。パリの民衆は反革命の容疑者たちを次々に虐殺。街に暴力の嵐が吹き荒れ、立法議会に代わって国民公会が開幕すると、新人議員サン・ジュストの演説をきっかけに国王裁判が開かれることに。議員たちのさまざまな思惑が交錯する中、ついに

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    2014年12月01日
  • 八月の蜂起 小説フランス革命11

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    先月(2014年9月)から刊行が再開された、小説フランス革命。
    第2部の第2巻(通算11巻となる。)

    今回は、タイトルの「八月の蜂起」のとおり、血の流れる話になっている。

    フランス革命について、1789年に全てのように考えていたけども、その後数年にわたる混乱や、政治の体制の変化、そして、有名な処刑などにつながっていくのを、この小説のおかげで、時間を追って知ることができる。

    その後のフランスがどうなるか、そして、登場人物がどうなるのかをある程度知っていながらも、この後どうなるのか、どういう展開になるのかを手に汗握りながら読んだ。

    特に今回は戦闘を含んだ内容でもあり、その臨場感に圧迫されつ

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    2014年10月25日
  • カペー朝 フランス王朝史1

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    再読。ゲルマンの一部族フランク族がカロリング朝を起こし、メロヴィング朝にかわる。シャルルマーニュによる西ローマ帝国再興と皇帝戴冠。孫の代に三分割されフランス、ドイツ、イタリアの原型ができる。ドイツは皇帝位を手にするが、分裂したまま、イタリアも同様。フランスのみが統一できた。西フランク王国を継いだカペー朝の歴代王たちの苦闘の天下統一の物語が語られる。名を得た初代、実を得たフィリップ征服王、格を得たルイ尊厳王。それを支えた子作り。アンジュー家との死闘にからくも勝利するが、それは100年戦争の伏線になる。

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    2014年10月02日