佐藤賢一のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
舞台は中世フランス。
イングランドとの百年戦争の前半あたりでしょうか?
ブルターニュの貧乏貴族、ベルトラン・デュ・ゲグランの一代記です。
このデュ・ゲグランという人物。
粗野粗暴で教養も常識もはなく、
下品と言うより品というもの自体を知らないような人。
こう書くと本当にかかわりたくないような人だけど、
どこか憎めない人物として描かれています。
実際本人には全く悪気はなく、恐ろしく純粋で無邪気な人なのです。
そしてなぜか子供の頃から滅法喧嘩が強い。
この物語は、そんな彼がその才能をいかんなく発揮し、
登りつめていく様を描いています。
彼を理解してくれる人物に恵まれ支えられ、
無邪気なまま -
Posted by ブクログ
左派エベール派と右派ダントン派を粛清したサン・ジュストたち。戦争での勝利も得てロペスピエールの独裁は順調にいくかと思いきや、やり過ぎを嫌う中道派との対立がます。革命疲れとも言うべき中でロペスピエールはダントン派の粛清を悔やみ、理想主義に傾いていく。中道派との妥協を強いられたサン・ジュストは融和演説を邪魔されると敢えて逆らわず、反動を許してしまう。ロペスピエールたちへの逮捕から処刑までの短い時間の中で、民衆の支持を失ったことをしるロペスピエール。ミラボーの言葉通り現実の人間を見なかったロペスピエールたちの理想主義の敗北。ポルポトを想起させる。最後に女囚たちのエピソードで締める。どんなに寒い冬でも
-
Posted by ブクログ
ネタバレ秀逸❗️その一言❗️現在、過去、未来の世界の政体、そして人間の欲と理想を非常に考えさせられた。最終巻の解説は非常に示唆に富む。
「己が欲を持ち、持つことを自覚して恥じるからこそ、他人にも寛容になれるのだ。独裁というような冷酷な真似ができるのは、反対に自分の欲がないからだ。世のため、人のためだからこそ、躊躇なく人を殺せる」
「しかし、私は自分にこそ常に厳しく接していたい。いや、それは私だけの話であってもならないはずです。なんとなれば、もう皆が立派な市民なのです。人権を与えられた自律的な存在であるからには、これからの世ではフランスの万民が常に自分に厳しく接し、また全ての振る舞いに責任を持つべきなの -
Posted by ブクログ
エベールら左派を処刑したロペスピエールやサン・ジュストら。次の標的は右派のダントン派だった。革命初期から活躍した民衆の代表とも言えるダントン、デムーランたちが処刑され、革命は終わりを迎える。誰も幸せにならない社会変革、徳と恐怖政治による革命の理想的な実現を目指すロペスピエールやサン・ジュストには、普通の幸せを求めて革命に参加したデムーランの気持ちは理解できないだろう。ダントンのあらゆる考えを持つフランス人全員を抱え込み、あまつさえ自らを処刑しようとするロペスピエールの心さえ救おうとする器量は、ただの八方美人にしか見えない。さらに夫を救おうとして運動したデムーランの妻リシェルの処刑をロペスピエー
-
Posted by ブクログ
ジャンヌ・ダルクと共に戦ってから2年。ピエール率いる傭兵隊は田舎町で安全かつ安定した生活を送っていた。そんなピエールのもとにジャンヌ・ダルクを救出せよという密命が依頼される。
上下巻通してやっぱり面白い!
ジャンヌ・ダルクへの思いをつらぬき、ようやく見つけた安住の地から旅立つピエールの姿はカッコいいの一言に尽きます!
ジャンヌ・ダルクとピエールの恋愛模様はキリスト教や聖女といった観念から擦れ違いが起きるのですが、それをどう乗り越えていくか、そして乗り越えるピエールの言葉も(下ネタにも関わらず)カッコいい!
そうしたピエールのかっこよさだけでなく、戦乱のヨーロッパの悲劇や闇とい -
Posted by ブクログ
百年戦争下のフランスで傭兵隊を率いるピエール。その旅の途中ピエールはジャンヌ・ダルク(ラ・ピュセル)という少女に心を奪われる。そしてピエールは彼女と共に戦いに向かう事となり…
初めの略奪の場面こそ血なまぐさいものの、個性豊かな傭兵隊のメンバーに、戦闘シーン、ピエールのラ・ピュセルへの思い、ピエールの傭兵隊の生活や、戦争で城主に雇われるまでのリアリティあるやり取りとエンタメ要素がぎゅっと詰め込まれていて、世界史なんてほぼかじっていない自分でも、難しいことは考えず楽しんで読むことができました。
そうした場面もさることながら、佐藤賢一さんの作品を読んでいて毎回面白く感じるのは、佐藤作品独特 -
Posted by ブクログ
ついにルイ16世が断頭台に。ギロチンは最新式の処刑道具で平等で人権的なものらしい。苦しまないで王も庶民も平等の処刑の仕方で執行される。しかし王の死刑を遅らせようとするジロンド派と即時の死刑を求めるジャコバン派。サン・ジュストの歴史的な演説で、流れは一気にジャコバン派へ。両派をまとめることで存在感を高めたダントンは、金銭スキャンダルとジロンド派の裏切りで影響力を落とす。ロラン夫人の斡旋の甲斐なくダントンはジャコバン派を支持。ジロンド派は敗北し、王は即時の死刑となる。開明派の王として即位。国民から愛された王ルイは何故死刑されなければならなかったのか。立憲君主制で何が悪いのか?サン・ジュストの演説は
-
Posted by ブクログ
2014年9月から毎月一冊の文庫版の刊行が再開された、小説フランス革命。
今回の『共和政の樹立』は第2部の第3巻で、通算12巻となる。
フランス革命の一側面である、処刑の色が強くなる。
ルイ16世の幽閉から処刑までを描いた一冊。
----------------
【内容(「BOOK」データベースより)
1792年8月の蜂起で王権が停止され、国王一家はタンプル塔に幽閉された。パリの民衆は反革命の容疑者たちを次々に虐殺。街に暴力の嵐が吹き荒れ、立法議会に代わって国民公会が開幕すると、新人議員サン・ジュストの演説をきっかけに国王裁判が開かれることに。議員たちのさまざまな思惑が交錯する中、ついに -
Posted by ブクログ
先月(2014年9月)から刊行が再開された、小説フランス革命。
第2部の第2巻(通算11巻となる。)
今回は、タイトルの「八月の蜂起」のとおり、血の流れる話になっている。
フランス革命について、1789年に全てのように考えていたけども、その後数年にわたる混乱や、政治の体制の変化、そして、有名な処刑などにつながっていくのを、この小説のおかげで、時間を追って知ることができる。
その後のフランスがどうなるか、そして、登場人物がどうなるのかをある程度知っていながらも、この後どうなるのか、どういう展開になるのかを手に汗握りながら読んだ。
特に今回は戦闘を含んだ内容でもあり、その臨場感に圧迫されつ