佐藤賢一のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
歴史は後から俯瞰してみると、最初から間違った意識のまま見誤ってしまうことが多い。今回もそうでした。
歴史じゃないんだ。
生きた人間が一人ひとり動いて、そこに出来た何かが残っていくんだという事が良く分かった一冊に。
英仏百年戦争。
フランス人のイングランド領主と、フランス人のフランス領主との戦いであったのが驚きでした。
そもそも、フランス人という認識もこの時点ではないはずなので、この表現も間違ってますが。。。笑
大きい意味では内紛 (領地の争い)
中くらいの意味で一族の争い (家の争い)
小さい意味で隣村との小競り合い (利権の争い)
この100年程の期間に、その時々に起こった事実(領土問題や領主の交代や政略結婚や古いしきたりなど)を、その時その時で、時の領主が解決しようとした。
その偶然の結果で、イギリスという国とフランスという国、「らしきもの」、が成立したんですね。
シェークスピア。
そのお陰?で、シェークスピアという才能が生まれ、生き生きとした物語としてみんなに愛される時代となった。
何が何だか分からなくなる、ヘンリー何世だのシャルル何世だのが、なんとなく一人の人間として肉付けしてくれてて、ホントに有り難い。笑
ジャンヌダルク。
本来は当時すら使い捨てにされただけで、ほぼ同時代の文献にも出てこない、歴史にも埋もれるはずだったジャンヌダルクすらも、一時代のヒロインとして創作され語られるようになる。
ナポレオンが政治的宣伝として忘れられていたジャンヌを発掘したらしい。
まさに日本で言うと、坂本龍馬の様な、後世の都合で作られた英雄が、そこかしこに存在する。
それが理解出来たので、急に身近に感じれました!
しかし、やっぱりですが、政治はロマンではなく、現実や事実があるだけですね。笑 -
Posted by ブクログ
文句なしの☆5つ評価。
とにかく面白く・読みやすく・ためになる。
新書本の見本のような一冊かと。
この一冊でテンプル騎士団の概要が分かる。
数年前にマルタ島へ旅行した時に、「ヨハネ騎士団は
形式上残ってる。テンプル騎士団は弾圧されて壊滅現在
残っていない」的な説明があったと記憶しているが
その理由が本書を読んで分かった。
青池保子の”アルカサル 王城”に出てくるカラトラバ、
サンティアゴの両騎士団の存在も関連付けて
理解できた気がする。もちろん”サラディンの日”の
「テンプル騎士団はヨーロッパ王室の金庫番だからな」等の
セリフの背景なども。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ何度も何度も挑戦しては挫折するのが、西洋史。
百年戦争も薔薇戦争も、何冊も本を読んでいても全く頭に入ってこない。
だって、イギリス人はヘンリーとエドワードとジョンばっかりだし、フランス人はルイとシャルルとフィリップばっかりなんだもの。
誰が誰やら、ちんぷんかんぷん。
それはこの本を読んでももちろん変わらず、ヘンリーとかアンリとかがたくさん出てきますが、でも、この本は一味違う。
まず最初に書いているのが、イギリス人のシェイクスピア症候群。
西洋史にあまり詳しくない日本人でも、劣勢だったフランスがジャンヌ・ダルクの登場で戦況を覆し勝利した、ことぐらいは知っていると思うけど、イギリス人にとっての百年戦争はイギリスの勝利が常識になっているのだそうだ。
それは、イギリスの司馬遼太郎とも目される(?)シェイクスピアが、数々の戯曲でそのように書いているから。
司馬史観ならぬ、シェイクスピア史観。
“ちょこざいなシャルルが歴史にフランス王として罷り通るのは、イギリス自身の不幸な内乱(薔薇戦争)のせい”だとシェイクスピアはほのめかしている。らしい。
でもって、シェイクスピアもびっくりなのが(しなかったかもしれないけど)、イングランド王って、イングランドの貴族たちって、みんなフランス人だったってこと。
フランスの、フランスによる、フランス人のための戦争が、英仏百年戦争だった。
そもそもフランスの王家と大貴族には、明確な格差がなかった。
侵略や結婚などで領地が増えたり減ったりしているなかで、王家より力の強い貴族が現れることもあり、そうなると反逆だ内乱だということになってしまうのは、当たり前の流れ。
その一つとして、フランスの貴族と、母方の遺産としてイングランドを領地として持つ貴族の娘が結婚したことにより、莫大な領土を治めるフランスの大貴族が出来上がる。
彼らとフランス王家とのいざこざが、そもそものはじまりなのだ。
つまりフランス貴族とフランス王家との争い。
このころのフランスって、鎌倉幕府のような感じ。
一応王様がいるけれど、分家や婚姻で関係が入り乱れて、一枚岩になれない。
つねに謀反や裏切りの危険にさらされている。
鎌倉幕府も、将軍や天皇はさておき、北条家がまさにそんな感じでずっとごたごたしていた。
オルレアンの少女、ジャンヌ・ダルクは、ナポレオンが見出すまでは決してメジャーな存在ではなかった。
これもまた、司馬遼太郎に見いだされるまで無名の若者だった坂本龍馬を思い出させる。
歴史って、事実の上に主観の上塗りをされるから、洋の東西を問わず似たようなストーリーが出来上がってくるのかもしれない。
シェイクスピアが書くヘンリー五世
“父親との不仲ゆえに非行に走り、身分卑しき悪漢どもと徒党を組んで、不良少年の一頃をすごしながら、父親の死で王位につくや、とたん君主の鑑に生まれ変わると、シェークスピアは日本史における織田信長ばりの神話を紡いでいる。あるいは一連の描写に、王子を気さくな庶民派たらしめる作為を読み取るなら、むしろ「暴れん坊将軍」のようだというべきか。”
史実なのか、物語なのか。
それの見極めは、かなり難しい。
それが常識とされてしまうと、もはや疑ってかかることすら至難の業だ。
ところで。
英語の単語の中には、フランス語由来のものが結構あるのだそうです。
大陸の、文化の中心である大国のフランスの言葉は、田舎の島国であるイングランドの言葉よりも論理的だったり、抽象概念を表す言葉が豊富だったから。
日常的な、単純な事柄は英語で表現できても、複雑な思考や公的な事柄を表すにはフランス語の力を借りなければならなかった。
この辺は、中国語と日本語の関係を見るようでもあります。
そして人名。
英語名のヘンリーがフランス語名になるとアンリであるとか、英語名のジョンがフランス語名のジャンだとかは知っていたけど、フランス語名のギョームが、英語名だとウィリアムになるってのはどうよ!?
ムしか合ってないじゃないの。
しばらくしてまた西洋の本を読んだら、一から勉強しなくちゃならないくらいに忘れているんだろうなあ。
でも、英仏百年戦争が、フランス人同士の戦争であったことは、もう忘れないと思う。 -
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歴史は勝者がつくると言われるように、『ガリア戦記』も勝者カエサルが記したもの。敗れたガリア側の視点で描かれるのは珍しい。
ローマ総督ユリウス・カエサルvsガリア王ヴェルチンジェトリクス。
ローマの英雄カエサルは、部下たちに「チビで女好きの禿げ親父」と陰口を叩かれ、ポンペイウスへの劣等感に悩む中年男。朗らかで人好きのする性格の裏で、周囲に細心の気を配り、空気を読むことでのし上がってきた。
一方の若きガリア王は、光の神ルーゴスにも喩えられる美丈夫。若さゆえの不遜さで傍若無人に振舞いながらも、不思議な魅力で人心を掌握していく。
英雄も初めから英雄だった訳ではない。年齢も性格も立場もまったく違う二人が、人間くさく悩み足掻きながらも、やがて英雄になっていく姿に引き込まれる。
特に、失脚した父の想いを継ぎ、周りの期待を一身に背負うヴェルチンの孤独な闘いが哀しい。
投降間際、ヴェルチンが妻エポナに見せた不器用な優しさ。最後の最後に心が通じた二人に少し救われる。 -
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舞台は中世フランス。
イングランドとの百年戦争の前半あたりでしょうか?
ブルターニュの貧乏貴族、ベルトラン・デュ・ゲグランの一代記です。
このデュ・ゲグランという人物。
粗野粗暴で教養も常識もはなく、
下品と言うより品というもの自体を知らないような人。
こう書くと本当にかかわりたくないような人だけど、
どこか憎めない人物として描かれています。
実際本人には全く悪気はなく、恐ろしく純粋で無邪気な人なのです。
そしてなぜか子供の頃から滅法喧嘩が強い。
この物語は、そんな彼がその才能をいかんなく発揮し、
登りつめていく様を描いています。
彼を理解してくれる人物に恵まれ支えられ、
無邪気なまま知らず貧乏貴族から
フランスの大将軍まで登りつめてゆく様は痛快です。
その無邪気な言動の裏に見え隠れする頑固なコンプレックスや
報われない渇望する想いがより人物像をしっかりさせ、
ただの痛快な物語だけにしていないところがまたいいです。
本書は上巻だけで600ページ近い大作ですが、
映画や舞台のようにぱっぱと場面が切り替わる構成によって、
中弛みやだらだら感が全くありません。
あきさせず面白く読ませてくれます。
さて、下巻はどうでしょうか?
昇った日はやがて落ちていくのでしょうが、
まだまだやってくれそうで、本当に読むのが楽しみです♪ -
Posted by ブクログ
左派エベール派と右派ダントン派を粛清したサン・ジュストたち。戦争での勝利も得てロペスピエールの独裁は順調にいくかと思いきや、やり過ぎを嫌う中道派との対立がます。革命疲れとも言うべき中でロペスピエールはダントン派の粛清を悔やみ、理想主義に傾いていく。中道派との妥協を強いられたサン・ジュストは融和演説を邪魔されると敢えて逆らわず、反動を許してしまう。ロペスピエールたちへの逮捕から処刑までの短い時間の中で、民衆の支持を失ったことをしるロペスピエール。ミラボーの言葉通り現実の人間を見なかったロペスピエールたちの理想主義の敗北。ポルポトを想起させる。最後に女囚たちのエピソードで締める。どんなに寒い冬でも必ず春は来る。人類史上最大の実験の壮大な失敗。それでも後世に与えた影響は巨大だ。身分制度の廃止、基本的人権、女性解放、選挙権、信教の自由、理性と道徳の称揚など。いくら正しくても、そこに生活がなければ人は付いてこない。反動は王政復古と革命勢力の激突から革命の鬼子としてナポレオンという怪物を生み出す。そしてアンシャンレジームは完全に消えて、時代は近代に入る。理性絶対、社会契約、自然法の啓蒙主義の時代から、感性や夢、恋、不安、自由、民族意識、エキゾチックなど人間性の解放と個性の重視を求めるロマン主義の時代へ。自己抑制と道徳的理性の強い人間を称える時代の最終形態ナポレオンの反対運動としての一面を持つロマン主義。だが、その中の民族意識の称揚が国民国家の母胎になった。人間が人間らしくあることを称える時代になり、さらに完全な人間性の獲得、宗教からの解放の先に写実主義が生まれる。