佐藤賢一のレビュー一覧
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ブルボン朝の始祖アンリ4世からルイ16世および王政復古後のルイ18世、シャルル10世、ルイ・フィリップの年代氏。アンリ4世が獅子奮迅の働きでヴァロワ朝末期のユグノー戦争の後始末をまとめる。それ以降は、王領以外のところへの支配力をアンタンダン制と呼ばれる地方政治のチェックを官僚化によって強化し、徴税能力を高める、またルイ14世以降特に国家の文化的威信を高め、中央集権化を完成させる。また特徴としては、歴代の王の在位期間が長い。30年弱とヴァロワ朝より10年近くのびた。またリシュリュー、マザランといった優れた宰相がいたことも幸いした。文化への継投が啓蒙主義を保護し、結果としてはフランス革命を促した側
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ネタバレ 購入済み
こんな天才軍略家がかつていた
世界史を学ばなかった私にとっては名前しか知らない人物。ハンニバル・レクターの方を先に知ったぐらい(笑)。天才的軍略を発揮するカルタゴの将軍ハンニバル。それに対抗するローマの若き司令官スキピオ。相手の虚を突き、裏をかき、布陣を駆使して知略軍略の限りを尽くした戦いはまさに名勝負。終始スキピオ視点で語られるため、ハンニバルの人物像や思考もすべてスキピオの憶測に過ぎず、結局ハンニバルの実像はよく分からないままだが、かえってそれが不気味さと恐怖心を増幅させる絶妙な効果をもたらしている。
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直木賞作家が綴るフランス史。英仏百年戦争からユグノー戦争に至るおよそ260年の歴史です。日本で言えば鎌倉末期から秀吉の時代までですね。カペー朝で封建社会が確立したフランスですが、ヨーロッパ唯一の超大国として、規模が大きくなりすぎうまく機能しなくなります。財政上の問題もあり中央集権国家を目指します。しかし王権が弱く身内からも離反が相継ぎます。中央集権に不可欠な王や国家のカリスマは次のブルボン朝を待たねばなりません。諸侯の集まりでしかないフランスが、国としての自覚を持とうとする姿はダイナミック!
王朝が交替するということ
幸運王フィリップ六世(一三二八年~一三五〇年)
良王ジャン二世(一三五〇年 -
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「今から逆算すると、フランスはカペー朝から始まった」と言えるのだろうが、
よくぞこの「自称 王」から始まって国家になれたものだなあと。
ただし、カペー朝は「創業」だけでその役割を終える。
ここから先に行くには、もはや「ファミリービジネス」では続かないのだ。(いや、相対的にはファミリービジネスの域を超えていたからこそ、ここまでこれたのだが、ここから先の段階に進むには、更なる組織化が必要不可欠)
東フランク王国が、神聖ローマ帝国となり、ドイツ統一は遅れた。
中央フランク王国は、教皇庁の強い影響なのか、やはりイタリア統一は遅れた。
西フランク王国が、混乱の中からいち早く統一国家への道を歩んだのは -
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人それぞれ好みはありますが、私はこの本は好きです。
古代ローマ帝国の属国となった国の解放奴隷たちの一部が剣闘士となり、生粋のローマ人のために命をかけて、闘技場でまさに命を賭けて戦う……
剣闘士としての栄誉は与えられても、境遇は一切変わらず、スパルタクスが仲間と共に脱走し、それが大規模な解放奴隷の反乱に繋がっても、当たり前だとすら思います。
支配する側とされる側…そこには決して埋められない溝があり、ローマの体制と自身の生き方に疑問を持ったスパルタクスがイタリア中を移動しながらもローマからの脱却を目指した…それに意義があると思ってます。
物語後半になるにつれ、各属州出身の方々の思惑もあり、思うよ -
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カエサルとガリアとくれば、『ガリア戦記』(ユリウス・カエサル著)が有名ではありますが、それはしょせん、勝者の立場から書かれた作品。
多くの歴史が証明しているのは、”歴史は勝者によって書き換えられる”ということです。
本書の巻末にもありますが、文学の想像力によって歴史の裏側に追いやられたことを想像し、そして何かを読み解くことはとても大事なことです。この本に出会えて、ガリアのことを少しでも知ることが出来たのが最大の収穫でもあります。
一番のポイントは、若くて魅力的なガリア王ウェルキンゲトリクスと、中年になりローマでの保身を大事にするユリウス・カエサルの対比です。
些細なことにとらわれずに、この -
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ドーバー海峡を挟んで隣国であるフランスとイギリスが、最近まで剣呑の仲であることは承知していましたが、歴史をたどっていけばその謎も解けるというものです。
この戦争を機に現在のイギリスとフランスの地盤が出来たといっても過言ではないでしょう。
フランス王家から分かれたイングランド。
フランス王家といえども、国内の諸侯の力が強すぎ、かつ、その諸侯たちも自分たちの思惑でフランス側についたりイングランド側についたり…
このような内戦ともいえる状況を乗り越えてこそ国家としての自覚が誕生するものなのですね。
注目すべきはイングランドの黒太子エドワードの戦術と、風のように訪れてフランス王の窮地を奪回し、風のよ -
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原告:フランス王ルイ12世ことルイ・ド・ヴァロワ
被告:ジャンヌ・ド・フランス
申し立て内容:婚姻の無効
ナント地方の弁護士であり、かつてはカルチエ・ラタンの伝説の男であるフランソワ。
離婚裁判を傍聴にいき、ある事情から王妃の弁護を引き受けることになります。
絶望的とも思える瀬戸際から、現場の手練れの弁護士の凄腕をもって、傍聴人を釘づけにし、時には王妃に対して侮蔑的とも思える弁護(これも作戦の一部)を繰り返し、一気に形成逆転。
「婚姻の無効」とは…と考えてしまう一方で、背後にあるフランス王の思惑、ローマ教皇の思惑をも感じとり、そして最終的には王妃の意にそった形での決着を迎えます。
法廷を -
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乱世である。フランス王国は戦火に苛まれていた。アングル(イングランド)王の侵略が始まって、もう百年がたとうとしている。この戦争は昨今「百年戦争」と呼ばれていた。
(上巻本文15ページより)
時は革命から遡ること360年前の百年戦争の最中。
傭兵部隊「アンジューの一角獣」のシェフ(料理人ではなく頭目のこと)であるピエールは、ある夜、「自分はフランスを救うために、神に遣わされた」と主張する一人の少女と出会います。
彼女こそ、のちのフランス救世主ラ・ピュセル(乙女)ことジャンヌ・ダルクでした。
この運命ともいえる出会いを皮切りとして、戦乱の世を共に戦い、一度は別れ、再び劇的なめぐりあいを果たす、冒 -
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弱さが幸いする、ということもあって、そこが人間の世の中の面白さになっている。
己の無力さを知っていたユーグ・カペ―だからこそ、細く長く続く先に、希望を繋げることが出来たんですね。
987~1328年のカペー朝。
ルイ一世はフランスの王ですらなかった。
西欧はローマ帝国とカトリックの歴史が外せないから、素人すると幅が広すぎて大変だけど、フランスだけに目を向けた一冊としては、読み易くて楽しかった。
フランスの成り立ちすらこんなに多様な進み方。
やっぱり。
今は歴史の流れって、今でも一時であって、まだまだ国然り、制度然り、思想然り、変わっていくんでしょうね。 -
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100年戦争の英雄と言えばジャンヌダルクぐらいしか思い浮かばないけど、フランス史にこんな痛快な英雄がいたことを全く知らなかった。
ベルトランの無邪気な振る舞いは正に子供のようで、エマニエルやシャルルをはじめそれに振り回されつつも盛り立てる人々が親のようであり、その互いに思い遣る関係に温かい気持ちになる。
現代社会でも無邪気な子供を優しく見守ることのできない未熟な大人がいるように、中にはベルトランの出世に嫉妬する貴族や実弟もいる。そんな人たちには相応の末路が用意されているあたりも痛快だった。
ただベルトランの過去、実の母親に愛されることがなかった過去はあまりに辛く哀しい。
連戦連勝でフランス王家 -
Posted by ブクログ
100年戦争の英雄と言えばジャンヌダルクぐらいしか思い浮かばないけど、フランス史にこんな痛快な英雄がいたことを全く知らなかった。
ベルトランの無邪気な振る舞いは正に子供のようで、エマニエルやシャルルをはじめそれに振り回されつつも盛り立てる人々が親のようであり、その互いに思い遣る関係に温かい気持ちになる。
現代社会でも無邪気な子供を優しく見守ることのできない未熟な大人がいるように、中にはベルトランの出世に嫉妬する貴族や実弟もいる。そんな人たちには相応の末路が用意されているあたりも痛快だった。
ただベルトランの過去、実の母親に愛されることがなかった過去はあまりに辛く哀しい。
連戦連勝でフランス王家