佐藤賢一のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ヨーロッパの王侯貴族56人を綽名と共に年代順に並べ、
その時代と綽名に纏わるエピソードを紐解く。
1話4ページの軽快な、歴史&人物伝エッセイ。
世界史資料のヨーロッパ王侯貴族系図に、名前と共に
付記されている綽名に興味を持っていました。
が、名前や綽名の成り立ちには詳しい本はあれど、
個々の綽名についての本には出合わず。
ある本の巻末リストには整然と200名の綽名が並ぶ。
え~そんなにあるんだ!
で、出会ったのがこの本。56人の綽名が年代順に紹介。
1話4ページと短いながら、綽名の理由がエピソードと共に
語られています。歴史や国、血族関係やお家騒動等の、
その時代の状況も分かるし、綽名と人物像の関連、
そしてその人物像まで浮かび上がっています。なんてお得!
名君がいれば愚君もいる。凡人がいれば暴君もいる。
戦いや捕虜で、ほとんど国や領地にいなかった王がいる。
それ故の綽名があれば、誤字や翻訳でなってしまった綽名もある。
『不思議の国のアリス』にテニスンが描いた「醜い公爵夫人」の
モデルにされてしまった「大口女伯」チロル女伯マルガレーテ。
戦争をしないことで中興の祖と成り、ローマ教皇にも選ばれた、
「平和王」サヴォイア公アメデオ8世。
夫の棺と8カ月もスペイン国内を彷徨った「狂女王」の
スペイン王フワナ1世の姿は、後世の絵画に描かれています。
フランスで一番人気の王は「助平ジジイ」フランス王アンリ4世。
なんて痛快な生き方の「解放皇帝」ブラジル皇帝ペドロ1世など。
表紙は「征服王」イングランド王ウィリアム1世の肖像。
他の方々の肖像も付記してほしかったです。 -
Posted by ブクログ
ヨーロッパの歴史を題材にした小説を発表している、佐藤賢一。
長いこと、この作家さんの作品から遠ざかっていたのですが、その間に、魅力的な作品の数々を発表していることを知りました。
「久しぶりに、佐藤賢一の作品世界に触れてみよう」と思い立ち、文庫化されている作品の中から、特に時代が古いと思われるこの作品を、読んでみることにしました。
時は紀元前219年。
名門貴族の家に生まれたスキピオが17歳のシーンから、物語が始まります。
スキピオは同名で共和政ローマの最高職、執政官である父親から、出征を命じられます。
戦争の相手は、地中海を挟んでローマと対峙する、カルタゴ。
20年以上続いた戦争(第一次ポエニ戦争)で、ローマが勝利した相手ですが、19年の時を経て再び、大国となったローマに挑んできます。
そのカルタゴを率いるのが、ハンニバル。
戦地に赴いたスキピオは、ローマ軍が容易に勝てる相手と考えていたカルタゴ軍に、圧倒されてしまいます。
どこを目指して行軍しているのかも、どのような戦術でローマ軍と戦うのかもわからない、カルタゴ軍。
ハンニバル率いるカルタゴ軍の不気味さと、若きスキピオの苦戦が、描かれていきます。
自らを「凡夫」と定義するスキピオが、「天才」ハンニバルにどのように、立ち向かっていくのか。
その展開を読むのが、本書の楽しみ方だと思います。
ポエニ戦争については、ずいぶん前に読んだ『ローマ人の物語』で、おおよその流れを知っていました。
その記憶を辿りながら読んだのですが、スキピオという個人の視点で描かれていることもあり、ポエニ戦争での戦闘の過酷さ、ハンニバルという武将の怖さを、いっしょに体験するような感覚を、味わわせてもらいました。
作品の舞台は、紀元前のヨーロッパとアフリカ。
登場人物たちの名前も、多くの日本人読者には馴染みのないものが多いと思います。
そんな「遠い世界」の話ですが、スキピオをはじめとする登場人物に個性を持たせ、現代日本人が話しているような言葉で会話が進むので、理解に困ることなくすんなり、読み通すことができました。
久しぶりに読んだ佐藤賢一作品は、やっぱり面白く、読み応えがありました。
他にも未読の作品があるので、文庫化されているものを探して、読んでいきたいと思います。
. -
Posted by ブクログ
読んだ本 ナポレオン 台頭篇 佐藤賢一 20240113
文庫になるのを楽しみにしていたんですが、全然分割してなくて一冊700頁もある。電車で読んでても小指がつってくるんだよな。京極夏彦以外にこんなことする人がいるなんて。
年末に映画の「ナポレオン」を観ていることもあって、期待度は高まっていたんですが、これは面白い。期待以上。
佐藤賢一は「フランス革命」から読み始めたんですが、あまり読み易い印象はなくて、特に人物に思い入れが起きるような描写がなく、時代だけが進んでいく印象でした。客観的に時代を俯瞰するような狙いだったんですかね。それで出てくる人みんな入れ代わり立ち代わりギロチンにかけられるんで、印象的にはいいもんじゃありませんでした。それでも、興味を満たしてくれるという面白さは満点でしたけど。
この「ナポレオン」は、その人物の描き分けが丁寧にされていて、歴史小説の小説の部分がすごく強調されている気がします。ナポレオンはじめ登場人物が目の前に浮かんできますね。ナポレオンという人の愛嬌というか独善というか、そういったものが絡んでくると出来事自体も素直に頭に入ってきて、歴史がナポレオンを中心につながっていきます。
分厚いのは許します。 -
Posted by ブクログ
舞台は1500年代のパリ、セーヌ左岸の学生街「カルチェ・ラタン」。新米夜景隊長のドニ・クルパンの奮闘記であり青春群像劇です。
学生街の雰囲気は『グイン・サーガ』のアムブラを思い起こさせます。おそらく、モデルの一つ。そして、青春群像劇ということでは、『四畳半神話大系』のような作品に通じるものがあると思います。『四畳半〜』はアニメ勢なので、齧っただけですが。
正直、モラトリアムの悶々とした日常というものには、あまり馴染めてこなかったのですが「カルチェ・ラタン」はするすると読めてしまいました。歴史ものという点で馴染みがあり、入り口を開いてくれたのかもしれません。
ジュブナイルは好きなのですが、モラトリアムは苦手。言葉の意味では、同じようなものかもしれませんが、自分の感覚の話なので。
理想とするものに、真剣になることができるかどうか、が違いなのかな。理想が手に届かないと知りつつ諦めきれずにいるものの、そのこと自体から目を逸らし理想を追っているのだ自分は、という逃げ道の中で右往左往している様が好きではないからでしょう、モラトリアムは。
自分勝手な区別ですよ。
その悶々とした感情が誰でも大なり小なり経験したものであるから、共感を強く得られるのでしょうねモラトリアム。
となると、共感しづらい自分の人生経験はいかがなものか、ということになるな。それを自己分析なり自己対話なりで鬱々としてゆくのは、モラトリアムの登場人物のそれなのか。
自分自身を突きつけられるのは嫌だなぁ。 -
Posted by ブクログ
ナポレオンの生涯の最終盤。
前巻までの飛躍が一転、政治生命に転落が訪れる。
ナポレオンが皇帝の地位を確かなものにするためにジョゼフィーヌと離婚、オーストリアから皇妃を迎え、子にも恵まれる。
しかし、ロシア遠征でモスクワまで攻め登るも、モスクワの大火のため、退却することに。退却途中にロシア軍から攻め立てられ、敗北を喫する。
それを機に皇帝位を奪われるも、その後の王政復古の政権も長く持たず、ナポレオンは再度皇帝位につくことに。
近隣諸国との戦争を戦うが、ワーテルローの戦いで負け、フランス皇帝の地位を退位させられる。その後はイギリス亡命を試みるも、イギリス領セント・ヘレナ島に送られその生涯を終える。
波瀾万丈で、浮き沈みの激しい人生である。偉人の中でもさらに異色の経歴、業績を残した人物なのだと知った。 -
Posted by ブクログ
ナポレオンがフランス皇帝に上り詰める過程を描いた本巻。
フランスの拡大を阻止すべく、最大のライバルとなるイギリス。それを牽制するためにナポレオンはエジプトに遠征。ある時は敗戦しながらも要所では勝利を収めるなか、フランス本国が政治的危機に。
エジプトから帰還したナポレオンは、執政を経て皇帝に。その後も戦争を続けるなか、本巻の最後は有名なアウステルリッツの戦いでの勝利で終わる。
イギリスがフランスに戦いを挑み続ける理由が、資本主義の発展をいち早く経験したから、という理由には非常に納得がいった。
古典的名著の戦争と平和やレミゼラブルで語られる時代が展開されていく。フーシェは、彼が組織した警察機構が明治期の警察を作る際に参考にされたことで名前だけは知っていたが、想像以上の怪人物に描かれており、ナポレオンとの戦いは引き込まれる。
あとがきで非常に納得したのはナポレオンが、海外の人物なのに他の偉人と比べて日本でよく名前を聞くことについて。幕末、維新に奔走した人々がナポレオンを一つの典型として活動していたことにある、という内容。歴史上、偉大な人物ではあると思うが、その中でも日本人により親しまれている理由が自分なりに整理されて、腹落ちした。