【感想・ネタバレ】英仏百年戦争のレビュー

あらすじ

それは、英仏間の戦争でも、百年の戦争でもなかった。イングランド王、フランス王と、頭に載せる王冠の色や形は違えども、戦う二大勢力ともに「フランス人」だった。また、この時期の戦争は、むしろそれ以前の抗争の延長線上に位置づけられる。それがなぜ、後世「英仏百年戦争と命名され、黒太子エドワードやジャンヌ・ダルクといった国民的英雄が創出されるにいたったのか。直木賞作家にして西洋歴史小説の第一人者の筆は、1337年から1453年にかけての錯綜する出来事をやさしく解きほぐし、より深いヨーロッパ理解へと読者をいざなってくれる。【目次】序、シェークスピア症候群/前史 一、それはノルマン朝の成立か/二、それはプランタジネット朝の成立か/三、第一次百年戦争/本史 一、エドワード三世/二、プランタジネットの逆襲/三、王家存亡の危機/四、シャルル五世/五、幕間の悲喜劇/六、英仏二重王国の夢/七、救世主/八、最終決戦/後史 一、フランス王の天下統一/二、薔薇戦争/結、かくて英仏百年戦争になる

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Posted by ブクログ

ネタバレ

何度も何度も挑戦しては挫折するのが、西洋史。
百年戦争も薔薇戦争も、何冊も本を読んでいても全く頭に入ってこない。
だって、イギリス人はヘンリーとエドワードとジョンばっかりだし、フランス人はルイとシャルルとフィリップばっかりなんだもの。
誰が誰やら、ちんぷんかんぷん。

それはこの本を読んでももちろん変わらず、ヘンリーとかアンリとかがたくさん出てきますが、でも、この本は一味違う。

まず最初に書いているのが、イギリス人のシェイクスピア症候群。
西洋史にあまり詳しくない日本人でも、劣勢だったフランスがジャンヌ・ダルクの登場で戦況を覆し勝利した、ことぐらいは知っていると思うけど、イギリス人にとっての百年戦争はイギリスの勝利が常識になっているのだそうだ。
それは、イギリスの司馬遼太郎とも目される(?)シェイクスピアが、数々の戯曲でそのように書いているから。
司馬史観ならぬ、シェイクスピア史観。

“ちょこざいなシャルルが歴史にフランス王として罷り通るのは、イギリス自身の不幸な内乱(薔薇戦争)のせい”だとシェイクスピアはほのめかしている。らしい。

でもって、シェイクスピアもびっくりなのが(しなかったかもしれないけど)、イングランド王って、イングランドの貴族たちって、みんなフランス人だったってこと。
フランスの、フランスによる、フランス人のための戦争が、英仏百年戦争だった。

そもそもフランスの王家と大貴族には、明確な格差がなかった。
侵略や結婚などで領地が増えたり減ったりしているなかで、王家より力の強い貴族が現れることもあり、そうなると反逆だ内乱だということになってしまうのは、当たり前の流れ。

その一つとして、フランスの貴族と、母方の遺産としてイングランドを領地として持つ貴族の娘が結婚したことにより、莫大な領土を治めるフランスの大貴族が出来上がる。
彼らとフランス王家とのいざこざが、そもそものはじまりなのだ。
つまりフランス貴族とフランス王家との争い。

このころのフランスって、鎌倉幕府のような感じ。
一応王様がいるけれど、分家や婚姻で関係が入り乱れて、一枚岩になれない。
つねに謀反や裏切りの危険にさらされている。
鎌倉幕府も、将軍や天皇はさておき、北条家がまさにそんな感じでずっとごたごたしていた。

オルレアンの少女、ジャンヌ・ダルクは、ナポレオンが見出すまでは決してメジャーな存在ではなかった。
これもまた、司馬遼太郎に見いだされるまで無名の若者だった坂本龍馬を思い出させる。

歴史って、事実の上に主観の上塗りをされるから、洋の東西を問わず似たようなストーリーが出来上がってくるのかもしれない。

シェイクスピアが書くヘンリー五世
“父親との不仲ゆえに非行に走り、身分卑しき悪漢どもと徒党を組んで、不良少年の一頃をすごしながら、父親の死で王位につくや、とたん君主の鑑に生まれ変わると、シェークスピアは日本史における織田信長ばりの神話を紡いでいる。あるいは一連の描写に、王子を気さくな庶民派たらしめる作為を読み取るなら、むしろ「暴れん坊将軍」のようだというべきか。”

史実なのか、物語なのか。
それの見極めは、かなり難しい。
それが常識とされてしまうと、もはや疑ってかかることすら至難の業だ。

ところで。
英語の単語の中には、フランス語由来のものが結構あるのだそうです。
大陸の、文化の中心である大国のフランスの言葉は、田舎の島国であるイングランドの言葉よりも論理的だったり、抽象概念を表す言葉が豊富だったから。
日常的な、単純な事柄は英語で表現できても、複雑な思考や公的な事柄を表すにはフランス語の力を借りなければならなかった。
この辺は、中国語と日本語の関係を見るようでもあります。

そして人名。
英語名のヘンリーがフランス語名になるとアンリであるとか、英語名のジョンがフランス語名のジャンだとかは知っていたけど、フランス語名のギョームが、英語名だとウィリアムになるってのはどうよ!?
ムしか合ってないじゃないの。

しばらくしてまた西洋の本を読んだら、一から勉強しなくちゃならないくらいに忘れているんだろうなあ。
でも、英仏百年戦争が、フランス人同士の戦争であったことは、もう忘れないと思う。

1
2018年03月27日

Posted by ブクログ

情報のポイントが絞られていて、概略として掴みやすかった。

また、「英仏百年戦争」という現代的認識の誤解をかなり指摘していて、歴史を学ぶ醍醐味を味わえた。
巻末に、「国民国家という軛」からの解放が近いのでは、という著者の考えにもとても共感した。というのも、ギリシャ史をまとめた本を読んだ時、「ギリシャ」という現代の地理的区分にこだわって叙述することの難しさや実態とのギャップを感じずにいられなかったからだ。これは、日本を含めどの地域でもそうだと思う。

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2024年07月27日

Posted by ブクログ

英仏百年戦争
それはイギリスとフランスの戦争でも、百年の戦争でもなかった。
戦う二大勢力はともに自身を「フランス人」であると認識。
領地の感覚が優先し、国の感覚が希薄だった時代に、イギリスという国とフランスという国の戦争など、設定できない。

しかし、英仏百年戦争は、イングランド王、フランス王にそれぞれの王国を一元的に支配させる力を与えて終了。
これにより、今日のイギリス、フランスに通じる、いわゆる中央集権国家が誕生。
後の、国民国家に発展する土台となった。

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2022年04月29日

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大学の一般向け講座を受講した際に勧められた著作。

非常に読みやすく、わかりやすい。

概説書としての側面もありながら、専門性もある。

『百年戦争』の考え方、国民国家を基軸とする歴史の考え方をもう一度捉え直す著作である。

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2021年03月20日

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フランスを舞台にした歴史小説を得意とする佐藤賢一氏による百年戦争の概説書である。

百年戦争は、現代の主権国家体制に馴染んだ我々からすると、つい安直にフランスとイングランドが戦った戦争である、と思い込みがちである。
そう思い込むと、大変分かりづらくなるのが百年戦争である。

本書は、百年戦争以前にはいわゆる国家としてのフランス・イングランドは存在しなかったという前史を確認することから始まり、この百年の争いを通じてナショナリズムが芽生えていったとの結論で終える。
元々、読みやすい文章を書く人だが、全体が上記のあらすじに支えられているため、茫漠としていた百年戦争の輪郭が読むほどに浮かび上がるようだ。

読みやすさとそれなりに踏み込んだ歴史知識を盛り込んだ一般読者層向けの概説書を書かせたら一級品である。
大変楽しく読めたし、この時代に関する理解が深まった。お勧め。

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2020年11月17日

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いわゆる英仏百年戦争を前史・後史含めた全体を叙述した一冊。戦争を通して変容する国家観についての考察や、ジャンヌ・ダルクについての詳述など興味深い点が多い。前に読んだヴァロワ朝と記述がかぶる点も多いけれど面白かった。

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2019年12月20日

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ドーバー海峡を挟んで隣国であるフランスとイギリスが、最近まで剣呑の仲であることは承知していましたが、歴史をたどっていけばその謎も解けるというものです。

この戦争を機に現在のイギリスとフランスの地盤が出来たといっても過言ではないでしょう。
フランス王家から分かれたイングランド。
フランス王家といえども、国内の諸侯の力が強すぎ、かつ、その諸侯たちも自分たちの思惑でフランス側についたりイングランド側についたり…
このような内戦ともいえる状況を乗り越えてこそ国家としての自覚が誕生するものなのですね。
注目すべきはイングランドの黒太子エドワードの戦術と、風のように訪れてフランス王の窮地を奪回し、風のようにこの世を去っていったジャンヌ・ダルクです。

その一方で、両国が戦争に明け暮れた結果、戦争が済んだら傭兵を解雇した結果、一番の被害を被ったのは紛れもなく、普通に平凡な暮らしをしていた一般市民たちです。
フランス国内で「ジャックリーの乱」が勃発し、農民たちが暴徒化するのも至極当然といえます。

「ジャックリーの乱」を肯定する訳ではありませんが、この戦争中にイングランドをフランスが得たもの、失ったもの…それぞれの意味を考えることは、現代社会においても決して他人事ではなく、しっかりと考えていかなければいけないところです。

余談ではありますが、一時は「魔女」として火あぶりの刑に処せられたジャンヌ・ダルクの名声を復活させ、愛国心溢れる女性戦士として再注目させ、自身の宣伝活用に大いに利用したのはナポレオンです。

個人的には、気持ちが荒んでいるときに何度でも再読し、自分を深く顧みることのできる一冊です。

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2019年03月29日

Posted by ブクログ

歴史は後から俯瞰してみると、最初から間違った意識のまま見誤ってしまうことが多い。今回もそうでした。

歴史じゃないんだ。
生きた人間が一人ひとり動いて、そこに出来た何かが残っていくんだという事が良く分かった一冊に。

英仏百年戦争。
フランス人のイングランド領主と、フランス人のフランス領主との戦いであったのが驚きでした。
そもそも、フランス人という認識もこの時点ではないはずなので、この表現も間違ってますが。。。笑

大きい意味では内紛 (領地の争い)
中くらいの意味で一族の争い (家の争い)
小さい意味で隣村との小競り合い (利権の争い)

この100年程の期間に、その時々に起こった事実(領土問題や領主の交代や政略結婚や古いしきたりなど)を、その時その時で、時の領主が解決しようとした。

その偶然の結果で、イギリスという国とフランスという国、「らしきもの」、が成立したんですね。

シェークスピア。
そのお陰?で、シェークスピアという才能が生まれ、生き生きとした物語としてみんなに愛される時代となった。
何が何だか分からなくなる、ヘンリー何世だのシャルル何世だのが、なんとなく一人の人間として肉付けしてくれてて、ホントに有り難い。笑

ジャンヌダルク。
本来は当時すら使い捨てにされただけで、ほぼ同時代の文献にも出てこない、歴史にも埋もれるはずだったジャンヌダルクすらも、一時代のヒロインとして創作され語られるようになる。
ナポレオンが政治的宣伝として忘れられていたジャンヌを発掘したらしい。

まさに日本で言うと、坂本龍馬の様な、後世の都合で作られた英雄が、そこかしこに存在する。

それが理解出来たので、急に身近に感じれました!

しかし、やっぱりですが、政治はロマンではなく、現実や事実があるだけですね。笑

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2018年10月07日

Posted by ブクログ

「王妃の離婚」や「物語フランス革命」などヨーロッパを題材とした小説で有名な佐藤賢一。エンターテイメント小説を手掛けているためか、大変読みやすく100年戦争が描かれている。
100年戦争が終結する以前のヨーロッパは、地方領主がひしめく中、ローマ教皇や神聖ローマ皇帝が歴史を動かす軸として存在感や影響力を持ってきた。それが100年戦争の終結によりフランス・イギリスという国民国家の萌芽が生まれてくる。
ここにおいて、それ以降の歴史がイギリスやフランスのイタリアとドイツに対する優位という構図となる。ある意味で歴史の主役が逆転してくる。戦争を継続的に行ってきたためか、それまでより強い王権のもとで現在で言うところのイギリスとフランスは国内を統一していく。その一方でドイツ、イタリアの国民国家の萌芽はウエストファリア体制を経てさらにナポレオン戦争を待たなければならなかった。そう考えるとこの100年戦争の結果がフランスとイギリスにとって後の歴史における大きなアドバンテージを生み出す要因であることが理解できる。
本書を読んでとりわけフランスの影響の大きさを感じるのは、まずイギリスはフランスの地方領主が征服した国であること、そして100年戦争中動員できる兵力はなんだかんだでフランスが上回り続けていたこと、それから後世においてフランスの統一された国家は、ドイツ領邦に刺激を与え続けてきたことなど。100年戦争以降のヨーロッパ史の主役がフランスであることを思った。
本書が現代に投げかける課題も目をひく、ひとつは後世で歴史は自国に都合よく書き換えられること。もうひとつは忘れられた救国の英雄は、時の権力によって都合よく偶像化されること。確かに今でもそんな感じ。

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2014年04月18日

Posted by ブクログ

古本で購入。
これは久々の目からウロコ本。

高校世界史レベルの知識だと、「百年戦争」の図式は
 イギリスVSフランス
てなところだが、実際は
 フランス人のイングランド王VSフランス人のフランス王
という、フランス人同士の王座を巡る闘争だった。まず、ここで「おぉ」と思わされる。

いや、そもそも当時は「イギリス(=グレートブリテン)」も「フランス」もなかったんだよ、という時点で「確かに!」。

そしてこの戦争を通じて今言うところのイギリスとフランスが形作られる、著者の言葉で言えば「英仏が百年の戦争をしたのではない、百年の戦争が英仏をつくったのだ」。
事ここに及んで「なるほど!!」。

百年戦争は単なる領土争いではなく、両国にとって国家の仕組みを大きく変革させる一大画期だったわけですね。

実はこれらはよくよく考えればわかりそうなこと。
イングランドを征服したのは「ノルマンディー公」だし。当時のスコットランドはイングランドと別個の国だし。
でもそういうのを無視して「百年戦争」というひとつの出来事で覚えてしまうから、いかんのだな。

ついでながら、教科書的な意味での「百年戦争」の期間だけではなく、その前史・後史を合わせて著述されているのがより理解を深めてくれる。
「戦史」と言うより、ある意味「建国史」と言っていい。

それにしても人物が区別できん。名前のパターン少なすぎ。
一体何人のルイやシャルルやジャンが現れたことか!

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2013年07月18日

Posted by ブクログ

英仏百年戦争の流れをざっと紹介した内容。元々はフランスとして一体だった集団が、百年の抗争を経て国民意識に目覚め、英仏の二国を成立させていくという考え方は、分かりやすいものであった。地図と系図を手元において読みたい。

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2025年06月17日

Posted by ブクログ

個人的には王様の名前が同じすぎたり、ブルゴーニュとブルターニュがごっちゃになってしまってややこしかったりするが、本書にて11世紀から15世紀の英仏関係がよく分かる。我々は国民国家の概念が当たり前に刷り込まれているため、指摘されなければ想像できないが、英仏百年戦争の結果として両国のナショナリティが確立されたと考えれば腑に落ちる。時系列で見ると百年戦争が終結した頃にはすでに大航海時代が始まりつつあり、中央集権化の流れで議会制が残った英国が海洋覇権国家として台頭していく流れになる。外様の諸侯との折り合いや英仏の抗争が複雑に絡み合ってベネルスク3国の起源になっている点も興味深い。そして英仏百年戦争といえば悲劇のヒロイン=ジャンヌ・ダルクだが、ナポレオンが広報として宣伝して知られるようになったのは有名な話。

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2025年01月20日

Posted by ブクログ

ヨーロッパ中世史を面白く読めるよう工夫された文章であるが、やはりこの時代のヨーロッパ史は複雑で、難解ではある。
著者はこの時代を、英仏が国民国家として成立していく過程として重要なものであったと評価している。

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2024年08月25日

Posted by ブクログ

国民と国家という意識が当たり前では無いという前提から考えると納得がいくことも多く、今は当たり前だけど当時は、と何事も疑ってみることは大切だと感じた。
また、なぜ英語の中にフランス語由来の単語が多いのか、の理由の一つが分かったような気がする。

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2022年06月04日

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英仏百年戦争というが、英国も仏国もなかった。フランス人同士の長い戦いの中で英と仏という国ができた。というお話。なるほど。世界史詳しくないので一つ理解できなかったのが、王とそれ以外の公や伯との違い。イギリス王だって元々ノルマンディ公ですよね。でも、王になるとフランス王と同格になる?他の領主に封を与える権利?これはどこから来てるの?ローマ法王?日本の戦国時代の将軍や天皇と各大名の関係とも違う気もするし。ここが理解できる本があったら教えて下さい。巻末に両王家の系図があるので確認しながら読むのをお勧めします。

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2020年04月23日

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百年戦争の入門書として最適な良書。

まず、現在語られている歴史は、国民国家の時代を生きる我々の価値観に合わせて作られたモノだと筆者は述べる。
英国の最初の王朝はフランス人によって作られたものであり、英仏百年戦争の序盤はフランスのお家争いであったのだ。
これは中々衝撃的な内容であった。

その後、国民国家としてフランス、英国が成り立つ過程を丁寧に描いている。

入門書としてだけでなく、歴史を学んだ人でも面白いと思える良書であった。

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2018年11月28日

Posted by ブクログ

・英仏百年戦争はフランドルの羊毛貿易問題、ボルドーの葡萄酒貿易問題、なかんずくアキテーヌの領有問題、フランス王位継承問題等々を争点として、中世末に行われた(1337年〜1453年)。序盤は圧倒的なイギリスの優勢で進んだ。クレシーの戦い(1346年)、ポワティエの戦い(1356年)で立役者となった軍事的カリスマ、エドワード黒太子の活躍で勝利。十五世紀に突入するにつれ、フランスは国土の半ばを占領され、国家存亡の危機となるが、オルレアンの攻防(1428年〜1429年)で救世主ジャンヌ・ダルクの登場(これは後世に大部分が創作されたもの)により勝利を収め、そこからフランスの快進撃が始まる
・英仏百年戦争は元々「フランス人」同士の争いであったが、戦争を経る中で、イングランドがイングランドとして、フランスがフランスとして、今日の国家に通じる形が誕生した
・現在では英仏百年戦争が生み出した国民国家そのものが過去の歴史になろうとしている

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2018年11月04日

Posted by ブクログ

著者は歴史家ではなく、歴史小説家。

それがために語り口は全然学者っぽくない。

あえて言えばべらんめぇ調である。

ぼく自身、百年戦争は過去に読んだことがある。

それもとても良い本だったが、殆ど忘れてしまった。

覚えていることと言えば、登場人物が錯綜してヤヤコシイ。

イギリスもフランスも沢山の家系が出てきて、それぞれが組んずほぐれつの争いを繰り広げる。

以前読んだ時はまだ若かったので、家系図を見比べながらかなり真剣に理解に勤めた。

今はもう歳なのでそんなエネルギーがないことは分かっているし、すぐに忘れることを知っているから、読み飛ばすに限る。

そして結局はフランス人同士の戦争であったことが記憶に残っている。

今回読んでも、同じ結論に至る。アタリマエだ。

だが、この本において、実は当時イギリスもフランスも国として存在せず、各有力な領主たちの緩い集合でしかなかったこと。(封建国家)

この百年戦争を経ることによって、国民の中にナショナリズムが芽生え、中央集権国家、即ち現代に通じる国家が形成されるきっかけになったのだと説明される。

ぼくが国家とは何かについて、ぼんやりした疑問を懐いていたものを、この本が、百年戦争を例にとって明確に提示してくれた。

さらに、歴史は現代からの視点や尺度ではなく、その時代の尺度に立って見なければ見誤ることを再認識させられた。

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2016年02月29日

Posted by ブクログ

フランスはいつからフランスか、イギリス人はいつイギリス人になったのか。
うーむ、刮目の一書。

百年戦争のはじまりの頃、それは「フランス人」同士の戦いであった。

ノルマンコンクウェストがフランス人によるイングランドの征服であったこと、イングランド王室の宮廷ではフランス語が話されていたこと、一つ一つの知識はあったはずなのに、それがどういうことなのか理解してなかった。
失地王ジョンは何をなぜ失ったのかも、全然わかってなかった。

非常に勉強になった。

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2015年07月27日

Posted by ブクログ

ネタバレ

石川雅之『純潔のマリア』から「英仏百年戦争」へ。
イングランドを治めていたのは、フランス人。と言うことは、英仏と言いながら、実はフランス人とフランス人の戦いであった訳だ。まだまだ知らないことは、多い。
また、「〇〇史」(←〇〇には国名が入る)とカテゴライズしてしまっているが故に見えなくなってしまっているものがあるという指摘も納得。文学も又然りである。
このまま「百年戦争」に関する小説を読んでみたいと思う。

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2015年02月15日

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私が初めて教科書以外で、世界史に触れた本です。
そして世界史というものの見方が大きく変わることとなった一冊でした。
今までの教科書や授業は”現代的な枠組み”を用いて歴史を振り返っていますが、この本では当時の人々の感覚に近づいて話をすすめていくので、先を知りたい気持ちによってするすると読み進めていくことができました。
また要所要所で家系図があるので流れもとらえやすかったです。

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2013年07月28日

Posted by ブクログ

歴史の本には、その道のプロによるものと、作家の余技と言えるものがある。殆ど専門家と変わらない知識を有する作家もいるが、作家と専門家を分ける分水嶺は、知識ではなく歴史を扱うときの態度であろう。作家は、歴史を生き生きと伝えるために、物語を作ることにためらいが無い。一方、専門家は、自分のアクセス可能な資料から、慎重に歴史の流れを拾い上げていく。作家の著作のほうが専門家の著作よりも素人にはなじみやすいが、読んでいてどことなく作為的なものを感じるケースも、やはり作家の著作に多い。塩野七生女史などは、その典型である。本書の著者である佐藤賢一も、どちらかといえば作家寄りの素養の持ち主であるらしく、親しみ溢れる語り口が持ち味だ。
英仏百年戦争を「ナショナリズムの発生過程」と位置付ける本書の立ち位置が、はたして専門家の見解の一致するところなのかどうかは、私には分からない。しかしながら、それが英仏百年戦争を素人にも分かりやすく説明するには魅力的なパラダイムであるとは言えそうである。世界史教科書の内容を一通り覚えている人には、結構面白いかもしれません。

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2019年01月16日

Posted by ブクログ

[ 内容 ]
それは、英仏間の戦争でも、百年の戦争でもなかった。
イングランド王、フランス王と、頭に載せる王冠の色や形は違えども、戦う二大勢力ともに「フランス人」だった。
また、この時期の戦争は、むしろそれ以前の抗争の延長線上に位置づけられる。
それがなぜ、後世「英仏百年戦争」と命名され、黒太子エドワードやジャンヌ・ダルクといった国民的英雄が創出されるにいたったのか。
直木賞作家にして西洋歴史小説の第一人者の筆は、一三三七年から一四五三年にかけての錯綜する出来事をやさしく解きほぐし、より深いヨーロッパ理解へと読者をいざなってくれる。

[ 目次 ]
シェークスピア症候群
前史(それはノルマン朝の成立か
それはプランタジネット朝の成立か
第一次百年戦争)
本史(エドワード三世
プランタジネットの逆襲
王家存亡の危機 ほか)
後史(フランス王の天下統一
薔薇戦争)
かくて英仏百年戦争になる

[ POP ]


[ おすすめ度 ]

☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

[ 関連図書 ]


[ 参考となる書評 ]

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2014年10月26日

Posted by ブクログ

ネタバレ

英仏の百年戦争が単純にイギリスとフランスの戦争ではないというのは面白かったですね。フランスという「国」自体がまだ未完成で内乱のような形で戦争が進んでいき戦争の結果国家としてのフランスが完成していくのが興味深い(笑)有名なジャンヌ・ダルクに関する解釈や黒太子、デュ・ゲクランの話をもっと読みたかった気もする(笑)色んな知らない話がたくさん読めて良かった(笑)

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2025年11月24日

Posted by ブクログ

初佐藤賢一。英エリザベス女王の国葬を見て英国の歴史に興味を抱き挑戦。
世界史には無知だったので百年戦争といってもイメージがなかったが、ゲルマン民族の大移動から始まるヨーロッパの歴史を踏まえ「英仏戦争はフランス人同士の戦争であった。」ということに納得。国王の名前などの系譜の変遷は覚えられなかったが非常に興味深い内容だった。名前だけは知っているジャンヌダルクのことも改めてよく分かった。

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2022年11月16日

Posted by ブクログ

どちらもフランス人という所はなるほど、中世らしい話と納得。
途中は、まあそんな感じかと思うが、ジャンヌ・ダルクが農民の娘が利用されただけと切って捨てるのは、どこまでそうなのか。
うつてつけの題材と思うが、ナポレオンまで気が付かなかったのか?

最後、国民国家とナショナリズムを産んで終息したというのはわかりやすいが、その時代でそこまで言えるのか。
国民国家としても、15世紀と18世紀では同じにならないし、それ以前でも同じ国語を話す者の一体感はあったのでは?
きれいに割り切りすぎな感がある。

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2022年05月14日

Posted by ブクログ

イングランド王、フランス王と、頭に載せる王冠の色や形は違えども、戦った二大勢力はともに「フランス人」だったとは知りませんでした(汗)

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2018年10月12日

Posted by ブクログ

歴史についてというより雑学本な感じがした。
戦争についての細かい所が描かれてなくて少し読み足りない

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2014年04月27日

Posted by ブクログ

百年戦争はイギリスとフランスという二つの国を作る戦いだったというまとめ。
なるほどなぁと思わせる話だった。しかしややこしいくらいいろんな名前が…エティエンヌがスティーブンてわけわからん。

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2014年01月16日

Posted by ブクログ

百年戦争について。英仏といいつつ戦っているのは同じフランス人であったことに衝撃を受けた。またジャンヌ・ダルクはかなり有名だが、当時の扱いは小娘程度だったようだ。歴史系の書物は自分には読み難くなかなか頭にはいってこなかった。

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2013年02月16日

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