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それは、英仏間の戦争でも、百年の戦争でもなかった。イングランド王、フランス王と、頭に載せる王冠の色や形は違えども、戦う二大勢力ともに「フランス人」だった。また、この時期の戦争は、むしろそれ以前の抗争の延長線上に位置づけられる。それがなぜ、後世「英仏百年戦争と命名され、黒太子エドワードやジャンヌ・ダルクといった国民的英雄が創出されるにいたったのか。直木賞作家にして西洋歴史小説の第一人者の筆は、1337年から1453年にかけての錯綜する出来事をやさしく解きほぐし、より深いヨーロッパ理解へと読者をいざなってくれる。【目次】序、シェークスピア症候群/前史 一、それはノルマン朝の成立か/二、それはプランタジネット朝の成立か/三、第一次百年戦争/本史 一、エドワード三世/二、プランタジネットの逆襲/三、王家存亡の危機/四、シャルル五世/五、幕間の悲喜劇/六、英仏二重王国の夢/七、救世主/八、最終決戦/後史 一、フランス王の天下統一/二、薔薇戦争/結、かくて英仏百年戦争になる
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Posted by ブクログ
フランスを舞台にした歴史小説を得意とする佐藤賢一氏による百年戦争の概説書である。
百年戦争は、現代の主権国家体制に馴染んだ我々からすると、つい安直にフランスとイングランドが戦った戦争である、と思い込みがちである。
そう思い込むと、大変分かりづらくなるのが百年戦争である。
本書は、百年戦争以前にはいわゆる国家としてのフランス・イングランドは存在しなかったという前史を確認することから始まり、この百年の争いを通じてナショナリズムが芽生えていったとの結論で終える。
元々、読みやすい文章を書く人だが、全体が上記のあらすじに支えられているため、茫漠としていた百年戦争の輪郭が読むほどに浮かび上がるようだ。
読みやすさとそれなりに踏み込んだ歴史知識を盛り込んだ一般読者層向けの概説書を書かせたら一級品である。
大変楽しく読めたし、この時代に関する理解が深まった。お勧め。
Posted by ブクログ
ドーバー海峡を挟んで隣国であるフランスとイギリスが、最近まで剣呑の仲であることは承知していましたが、歴史をたどっていけばその謎も解けるというものです。
この戦争を機に現在のイギリスとフランスの地盤が出来たといっても過言ではないでしょう。
フランス王家から分かれたイングランド。
フランス王家といえども、国内の諸侯の力が強すぎ、かつ、その諸侯たちも自分たちの思惑でフランス側についたりイングランド側についたり…
このような内戦ともいえる状況を乗り越えてこそ国家としての自覚が誕生するものなのですね。
注目すべきはイングランドの黒太子エドワードの戦術と、風のように訪れてフランス王の窮地を奪回し、風のようにこの世を去っていったジャンヌ・ダルクです。
その一方で、両国が戦争に明け暮れた結果、戦争が済んだら傭兵を解雇した結果、一番の被害を被ったのは紛れもなく、普通に平凡な暮らしをしていた一般市民たちです。
フランス国内で「ジャックリーの乱」が勃発し、農民たちが暴徒化するのも至極当然といえます。
「ジャックリーの乱」を肯定する訳ではありませんが、この戦争中にイングランドをフランスが得たもの、失ったもの…それぞれの意味を考えることは、現代社会においても決して他人事ではなく、しっかりと考えていかなければいけないところです。
余談ではありますが、一時は「魔女」として火あぶりの刑に処せられたジャンヌ・ダルクの名声を復活させ、愛国心溢れる女性戦士として再注目させ、自身の宣伝活用に大いに利用したのはナポレオンです。
個人的には、気持ちが荒んでいるときに何度でも再読し、自分を深く顧みることのできる一冊です。
Posted by ブクログ
歴史は後から俯瞰してみると、最初から間違った意識のまま見誤ってしまうことが多い。今回もそうでした。
歴史じゃないんだ。
生きた人間が一人ひとり動いて、そこに出来た何かが残っていくんだという事が良く分かった一冊に。
英仏百年戦争。
フランス人のイングランド領主と、フランス人のフランス領主との戦いであったのが驚きでした。
そもそも、フランス人という認識もこの時点ではないはずなので、この表現も間違ってますが。。。笑
大きい意味では内紛 (領地の争い)
中くらいの意味で一族の争い (家の争い)
小さい意味で隣村との小競り合い (利権の争い)
この100年程の期間に、その時々に起こった事実(領土問題や領主の交代や政略結婚や古いしきたりなど)を、その時その時で、時の領主が解決しようとした。
その偶然の結果で、イギリスという国とフランスという国、「らしきもの」、が成立したんですね。
シェークスピア。
そのお陰?で、シェークスピアという才能が生まれ、生き生きとした物語としてみんなに愛される時代となった。
何が何だか分からなくなる、ヘンリー何世だのシャルル何世だのが、なんとなく一人の人間として肉付けしてくれてて、ホントに有り難い。笑
ジャンヌダルク。
本来は当時すら使い捨てにされただけで、ほぼ同時代の文献にも出てこない、歴史にも埋もれるはずだったジャンヌダルクすらも、一時代のヒロインとして創作され語られるようになる。
ナポレオンが政治的宣伝として忘れられていたジャンヌを発掘したらしい。
まさに日本で言うと、坂本龍馬の様な、後世の都合で作られた英雄が、そこかしこに存在する。
それが理解出来たので、急に身近に感じれました!
しかし、やっぱりですが、政治はロマンではなく、現実や事実があるだけですね。笑
Posted by ブクログ
「王妃の離婚」や「物語フランス革命」などヨーロッパを題材とした小説で有名な佐藤賢一。エンターテイメント小説を手掛けているためか、大変読みやすく100年戦争が描かれている。
100年戦争が終結する以前のヨーロッパは、地方領主がひしめく中、ローマ教皇や神聖ローマ皇帝が歴史を動かす軸として存在感や影響力を持ってきた。それが100年戦争の終結によりフランス・イギリスという国民国家の萌芽が生まれてくる。
ここにおいて、それ以降の歴史がイギリスやフランスのイタリアとドイツに対する優位という構図となる。ある意味で歴史の主役が逆転してくる。戦争を継続的に行ってきたためか、それまでより強い王権のもとで現在で言うところのイギリスとフランスは国内を統一していく。その一方でドイツ、イタリアの国民国家の萌芽はウエストファリア体制を経てさらにナポレオン戦争を待たなければならなかった。そう考えるとこの100年戦争の結果がフランスとイギリスにとって後の歴史における大きなアドバンテージを生み出す要因であることが理解できる。
本書を読んでとりわけフランスの影響の大きさを感じるのは、まずイギリスはフランスの地方領主が征服した国であること、そして100年戦争中動員できる兵力はなんだかんだでフランスが上回り続けていたこと、それから後世においてフランスの統一された国家は、ドイツ領邦に刺激を与え続けてきたことなど。100年戦争以降のヨーロッパ史の主役がフランスであることを思った。
本書が現代に投げかける課題も目をひく、ひとつは後世で歴史は自国に都合よく書き換えられること。もうひとつは忘れられた救国の英雄は、時の権力によって都合よく偶像化されること。確かに今でもそんな感じ。
Posted by ブクログ
古本で購入。
これは久々の目からウロコ本。
高校世界史レベルの知識だと、「百年戦争」の図式は
イギリスVSフランス
てなところだが、実際は
フランス人のイングランド王VSフランス人のフランス王
という、フランス人同士の王座を巡る闘争だった。まず、ここで「おぉ」と思わされる。
いや、そもそも当時は「イギリス(=グレートブリテン)」も「フランス」もなかったんだよ、という時点で「確かに!」。
そしてこの戦争を通じて今言うところのイギリスとフランスが形作られる、著者の言葉で言えば「英仏が百年の戦争をしたのではない、百年の戦争が英仏をつくったのだ」。
事ここに及んで「なるほど!!」。
百年戦争は単なる領土争いではなく、両国にとって国家の仕組みを大きく変革させる一大画期だったわけですね。
実はこれらはよくよく考えればわかりそうなこと。
イングランドを征服したのは「ノルマンディー公」だし。当時のスコットランドはイングランドと別個の国だし。
でもそういうのを無視して「百年戦争」というひとつの出来事で覚えてしまうから、いかんのだな。
ついでながら、教科書的な意味での「百年戦争」の期間だけではなく、その前史・後史を合わせて著述されているのがより理解を深めてくれる。
「戦史」と言うより、ある意味「建国史」と言っていい。
それにしても人物が区別できん。名前のパターン少なすぎ。
一体何人のルイやシャルルやジャンが現れたことか!
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