それは、英仏間の戦争でも、百年の戦争でもなかった。イングランド王、フランス王と、頭に載せる王冠の色や形は違えども、戦う二大勢力ともに「フランス人」だった。また、この時期の戦争は、むしろそれ以前の抗争の延長線上に位置づけられる。それがなぜ、後世「英仏百年戦争と命名され、黒太子エドワードやジャンヌ・ダルクといった国民的英雄が創出されるにいたったのか。直木賞作家にして西洋歴史小説の第一人者の筆は、1337年から1453年にかけての錯綜する出来事をやさしく解きほぐし、より深いヨーロッパ理解へと読者をいざなってくれる。【目次】序、シェークスピア症候群/前史 一、それはノルマン朝の成立か/二、それはプランタジネット朝の成立か/三、第一次百年戦争/本史 一、エドワード三世/二、プランタジネットの逆襲/三、王家存亡の危機/四、シャルル五世/五、幕間の悲喜劇/六、英仏二重王国の夢/七、救世主/八、最終決戦/後史 一、フランス王の天下統一/二、薔薇戦争/結、かくて英仏百年戦争になる
Posted by ブクログ 2022年04月29日
英仏百年戦争
それはイギリスとフランスの戦争でも、百年の戦争でもなかった。
戦う二大勢力はともに自身を「フランス人」であると認識。
領地の感覚が優先し、国の感覚が希薄だった時代に、イギリスという国とフランスという国の戦争など、設定できない。
しかし、英仏百年戦争は、イングランド王、フランス王にそれ...続きを読む
Posted by ブクログ 2020年11月17日
フランスを舞台にした歴史小説を得意とする佐藤賢一氏による百年戦争の概説書である。
百年戦争は、現代の主権国家体制に馴染んだ我々からすると、つい安直にフランスとイングランドが戦った戦争である、と思い込みがちである。
そう思い込むと、大変分かりづらくなるのが百年戦争である。
本書は、百年戦争以前には...続きを読む
Posted by ブクログ 2019年03月29日
ドーバー海峡を挟んで隣国であるフランスとイギリスが、最近まで剣呑の仲であることは承知していましたが、歴史をたどっていけばその謎も解けるというものです。
この戦争を機に現在のイギリスとフランスの地盤が出来たといっても過言ではないでしょう。
フランス王家から分かれたイングランド。
フランス王家といえど...続きを読む
Posted by ブクログ 2018年10月07日
歴史は後から俯瞰してみると、最初から間違った意識のまま見誤ってしまうことが多い。今回もそうでした。
歴史じゃないんだ。
生きた人間が一人ひとり動いて、そこに出来た何かが残っていくんだという事が良く分かった一冊に。
英仏百年戦争。
フランス人のイングランド領主と、フランス人のフランス領主との戦いで...続きを読む
Posted by ブクログ 2014年04月18日
「王妃の離婚」や「物語フランス革命」などヨーロッパを題材とした小説で有名な佐藤賢一。エンターテイメント小説を手掛けているためか、大変読みやすく100年戦争が描かれている。
100年戦争が終結する以前のヨーロッパは、地方領主がひしめく中、ローマ教皇や神聖ローマ皇帝が歴史を動かす軸として存在感や影響力を...続きを読む
Posted by ブクログ 2013年07月18日
古本で購入。
これは久々の目からウロコ本。
高校世界史レベルの知識だと、「百年戦争」の図式は
イギリスVSフランス
てなところだが、実際は
フランス人のイングランド王VSフランス人のフランス王
という、フランス人同士の王座を巡る闘争だった。まず、ここで「おぉ」と思わされる。
いや...続きを読む
Posted by ブクログ 2012年05月09日
「英仏百年戦争はあったのか?」と問うところから、終章まで一気に駆け抜け、概念の再構築をしてくれる。
「イギリス」「フランス」の成立を、制度と文化から描いているが、なぜ「英仏百年戦争」なのか、それがぴしりとわかる明晰な内容。
この本を読んでから年表を見たり、記号にしか見えなかった王や諸侯、諸領をみ...続きを読む