あらすじ
男は死んだ。後世に思いを馳せて――稀代の英雄の一代記、ナポレオン小説の金字塔が堂々の完結! またたく間にヨーロッパの頂点へ上り詰めた男の栄光と凋落。諸国との戦争に破竹の勢いで勝利し続け、ヨーロッパをほぼ手中に収めたナポレオン。オーストリア皇女と再婚して跡継ぎにも恵まれ、絶頂期を迎えるが、酷寒の地・ロシアへの遠征に失敗し、対フランス同盟軍に追い詰められてゆく。1814年、ついに退位を余儀なくされ、地中海に浮かぶエルバ島への追放が決まるが……。「まだ私は終わりではない」。再起を懸け、男は最後の戦いに挑む! 第24回司馬遼太郎賞受賞作。
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Posted by ブクログ
フランス在任中はフォンテーヌブローに住んでいた。世界遺産の宮殿があり、ブルジョワの街。もともとはフランソワ1世の居城であるが、歴史的にはナポレオンの居城として、数多くのエピソードを持っている。有名なのは、ジョゼフィーヌと隣り合わせの部屋の間のドアを塗りこめて通れなくして離婚の布石を打ったり、ローマ教皇を幽閉的に住まわせたり。一番有名なのは、皇帝を退位してエルバ島に流されるときに、この宮殿から階段を下りて去っていったというエピソードが有名。訪問者を連れて何度も訪問した思い出があり、展示物も含め、ナポレオンはとても親近感のある人物。なので、個人的な関係もあるが、この大河小説、期待通りの素晴らしい出来栄えだと感じた。
この長大な小説は、これらのナポレオンの生涯に渡るあらゆるエピソードを詳細に取り上げながら、佐藤さん特有のキャラ立ちと巧みなストーリー展開で、極めて魅力的なナポレオン像を打ち立てたことに特色がある。
ナポレオンというと独裁者とか冷酷とかのイメージがあるが、佐藤さんにかかると、ナポレオンは天才肌ではあるが憎めない奴に大きく変わる。それは他の登場人物も同じで、サトケンワールドと呼ばれる面白さがある。
多くの語るべきエピソードから1つだけ挙げるならば、エルバ島から脱出し、復位して決戦に臨んだワーテルローの闘いを挙げよう。この敗戦でナポレオンは歴史の舞台から姿を消すが、この最後の山場、なぜ負けたのかについて、佐藤さんの重要な考察にはとても驚いた。具体的には言えないが、人間ナポレオンの弱さを心痛く感じてしまった一瞬だった。
年末年始、他の本も読みながら、約1ヶ月に及んでしまったが、貴重な読書体験ができ幸せだった。
Posted by ブクログ
ナポレオンに寄り添う視点が時に響いてくるし、時に臨場感が伝わってくる。phenomenon。フランスでは差し詰め、坂本龍馬のような存在か。
帝王でありながら、前線で指揮をとる。こんな英雄、もう居ない。
フランス革命と、レ・ミゼラブルなどと比較しながら読むと、フランスの激動期が多角的に理解出来そう。
Posted by ブクログ
ナポレオンの生涯の最終盤。
前巻までの飛躍が一転、政治生命に転落が訪れる。
ナポレオンが皇帝の地位を確かなものにするためにジョゼフィーヌと離婚、オーストリアから皇妃を迎え、子にも恵まれる。
しかし、ロシア遠征でモスクワまで攻め登るも、モスクワの大火のため、退却することに。退却途中にロシア軍から攻め立てられ、敗北を喫する。
それを機に皇帝位を奪われるも、その後の王政復古の政権も長く持たず、ナポレオンは再度皇帝位につくことに。
近隣諸国との戦争を戦うが、ワーテルローの戦いで負け、フランス皇帝の地位を退位させられる。その後はイギリス亡命を試みるも、イギリス領セント・ヘレナ島に送られその生涯を終える。
波瀾万丈で、浮き沈みの激しい人生である。偉人の中でもさらに異色の経歴、業績を残した人物なのだと知った。