あらすじ
史上最凶の敵から祖国を守れ!
時は紀元前三世紀。広大な版図を誇ったローマ帝国の歴史で、史上最大の敵とされた男がいた。カルタゴの雷神・バルにあやかりつけられた名はハンニバル。戦を究めた稀代の猛将軍・ハンニバルが今、復讐の名の下にアルプスを超えた。予測不可能な強敵を前に、ローマの名家出身の主人公・スキピオは、愛する家族と祖国を守り抜けるのか?
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Posted by ブクログ
佐藤賢一先生の著書を読むのは2作目ですが、前回の「双頭の鷲」もそうなのですが、登場人物が生き生きと描かれており、とても感情移入がしやすく読みやすかったです。
ハンニバル将軍の名前は良く聞きますが、そのハンニバルをライバル視して努力を重ね、最終的にこの戦の天才に勝利したローマ人が居たことを、本書で初めて知りました。
ローマの歴史の物語ですから、馴染みはありませんでしたが、とても面白く読めました。
日本の人物の物語も、いつか書いて頂きたいと思いました。
Posted by ブクログ
第二次ポエニ戦争をスキピオ視点で描いた「ハンニバル戦争」。
終始、スキピオ視点で物語は進みます。ハンニバルを人物として描写されるのはザマの戦い直前。
その会談の中で、生の感情に触れたスキピオが感じた人間としてのハンニバル。それまでは戦術の天才として、軍神とまで思っていた彼が一人の人間であると知る瞬間。この変化を描くために、ハンニバルを描かずにいたのかな、と思いました。
ローマに勝利し続けるハンニバル。イタリアでの敗戦の描写。ハンニバルを学ぶことで勝利を収めてゆくスキピオ。
ザマへ至るまでの全ての描写が、ハンニバルの圧倒的な強さをローマやスキピオだけでなく、読者にも刻み込ませるものであって、とにかく彼の存在を大きく強く高く見せつけるものでした。
人間が到底達することのできない存在あるかに思えたハンニバル。会談で彼も人であると気づけなければ、勝利はなかったでのはなかろうか。そう思ってしまうほど、ハンニバルという存在の大きさを感じます。
スキピオ視点の物語であるのに、読後に残っているのはハンニバルの凄みという。
直接描かないことで、英雄を神格化に持ってゆくという形でしょうか。
漫画『ドリフターズ』でのスキピオの台詞に「ローマは100万の軍勢は恐れないが、こいつただ一人を恐れた」というものがありましたが、それも納得の存在感。
また、スキピオ視点の戦場の混乱描写がいいのです。混乱、狼狽、焦燥、絶望、とさまざまなものが次々に襲いかかってくる。緊迫感が強い。
ハンニバルとスキピオという不世出の英雄二人。ともに国家の英雄として活躍するも、政争には敗れ不遇な後半生を過ごしたというのは、何かの皮肉なのかなと思います。歴史を彩るのは天才や英雄であっても作るのは凡人であって、行き過ぎた絢爛豪華さは、忌避され排除されてしまうものなのか。
同年に亡くなったというのも、歴史の舞台から退場させられたのだ、と思ってしまいますね。
神であるかのようなハンニバルに対抗するために、研鑽を積み神に近づこうとしたスキピオ。凡人ではなくなった存在は、人の世に居場所は無くなってしまったということでしょうか。
情緒がすぎるかな。
こんな天才軍略家がかつていた
世界史を学ばなかった私にとっては名前しか知らない人物。ハンニバル・レクターの方を先に知ったぐらい(笑)。天才的軍略を発揮するカルタゴの将軍ハンニバル。それに対抗するローマの若き司令官スキピオ。相手の虚を突き、裏をかき、布陣を駆使して知略軍略の限りを尽くした戦いはまさに名勝負。終始スキピオ視点で語られるため、ハンニバルの人物像や思考もすべてスキピオの憶測に過ぎず、結局ハンニバルの実像はよく分からないままだが、かえってそれが不気味さと恐怖心を増幅させる絶妙な効果をもたらしている。
Posted by ブクログ
500頁超の大作であるが、1章ずつが寝床で読むにはちょうどいい分量で、毎晩楽しみに読んだ。
カルタゴのハンニバルが、どれほど大きな脅威をローマ帝国に与えていたかということも、よくわかった。
Posted by ブクログ
ヨーロッパの歴史を題材にした小説を発表している、佐藤賢一。
長いこと、この作家さんの作品から遠ざかっていたのですが、その間に、魅力的な作品の数々を発表していることを知りました。
「久しぶりに、佐藤賢一の作品世界に触れてみよう」と思い立ち、文庫化されている作品の中から、特に時代が古いと思われるこの作品を、読んでみることにしました。
時は紀元前219年。
名門貴族の家に生まれたスキピオが17歳のシーンから、物語が始まります。
スキピオは同名で共和政ローマの最高職、執政官である父親から、出征を命じられます。
戦争の相手は、地中海を挟んでローマと対峙する、カルタゴ。
20年以上続いた戦争(第一次ポエニ戦争)で、ローマが勝利した相手ですが、19年の時を経て再び、大国となったローマに挑んできます。
そのカルタゴを率いるのが、ハンニバル。
戦地に赴いたスキピオは、ローマ軍が容易に勝てる相手と考えていたカルタゴ軍に、圧倒されてしまいます。
どこを目指して行軍しているのかも、どのような戦術でローマ軍と戦うのかもわからない、カルタゴ軍。
ハンニバル率いるカルタゴ軍の不気味さと、若きスキピオの苦戦が、描かれていきます。
自らを「凡夫」と定義するスキピオが、「天才」ハンニバルにどのように、立ち向かっていくのか。
その展開を読むのが、本書の楽しみ方だと思います。
ポエニ戦争については、ずいぶん前に読んだ『ローマ人の物語』で、おおよその流れを知っていました。
その記憶を辿りながら読んだのですが、スキピオという個人の視点で描かれていることもあり、ポエニ戦争での戦闘の過酷さ、ハンニバルという武将の怖さを、いっしょに体験するような感覚を、味わわせてもらいました。
作品の舞台は、紀元前のヨーロッパとアフリカ。
登場人物たちの名前も、多くの日本人読者には馴染みのないものが多いと思います。
そんな「遠い世界」の話ですが、スキピオをはじめとする登場人物に個性を持たせ、現代日本人が話しているような言葉で会話が進むので、理解に困ることなくすんなり、読み通すことができました。
久しぶりに読んだ佐藤賢一作品は、やっぱり面白く、読み応えがありました。
他にも未読の作品があるので、文庫化されているものを探して、読んでいきたいと思います。
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Posted by ブクログ
ずっと前から読もうと思いながらも積んだままになっていた本。
『(第二次)ポエニ戦争』とせずに『ハンニバル戦争』としているところがポイント。ローマがカルタゴを抑え込んだ凄さではなく、ローマを長く苦しめたハンニバルの脅威を強調して描いている。ホントにもうしつこいくらいに。
物語の視点はスキピオの方。ハンニバルとの直接対決が最後の方で、しかも序盤は敗けが続くのでなかなか盛り上がらない。その辺りは仕方のない部分ではあるけれど。
ともあれ歴史物は面白い。他のも読みます。
Posted by ブクログ
読んだ本 ハンニバル戦争 佐藤賢一 20230802
2020年に長期勤続の休暇と旅行券がもらえるってことで、パリに行こうと計画してました。気分を盛り上げるために、佐藤健一著の「フランス革命」を読み継いでたんですが、コロナでそれどころじゃない上に、「フランス革命」があんまり凄惨で。次々と登場人物がギロチンにかかっていく。読み終わる頃には、ちょっと気持ち悪くなってきて、パリに行きたくなくなってました。歴史というものに向き合うって意味では本当に面白かったんですけど。それ以来、いくつか佐藤健一の本を読んでたんですが、ナポレオンが発刊されてて、文庫化を楽しみにしてたんですが、やっと出たと思ったらめちゃくちゃ分厚いのが3冊。気軽に読み始めれない。もっと分けてよと思いつつ、あれ、「ハンニバル戦争」だと思って、買ってみました。なんか、フランス=佐藤健一、イタリア=塩野七生みたいな住み分けを個人的に持ってたんですが。
内容としては、結局スキピオの話なんですが、ローマ最大の危機と言われるハンニバルの来襲に対して、史実を交えてスキピオがいかにハンニバル=カルタゴを破ったかを描いてるんですが、史実を追うだけでなく、スキピオの成長していくさまが丁寧に描かれています。前半結構長々と、ハンニバルに蹂躙されるスキピオが書き込まれ、そこからある戦術の完成形をスキピオが追い求めるっていう結構わかりやすさもあって、おもしろかったです。スキピオの悲しい晩年が少ししか描かれてなかったのが、ちょっと残念でしたが。スキピオ像がなんとなく固まった気がします。