あらすじ
1498年フランス。時の王ルイ12世が王妃ジャンヌに対して起こした離婚訴訟は、王の思惑通りに進むかと思われた。が、零落した中年弁護士フランソワは裁判のあまりの不正に憤り、ついに窮地の王妃の弁護に立ち上がる。かつてパリ大学法学部にその人ありと謳われた青春を取り戻すために。正義と誇りと、そして愛のために。手に汗握る中世版法廷サスペンス。第121回直木賞受賞の傑作西洋歴史小説。
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Posted by ブクログ
この作者は本当に日本人かしら…そう疑うほどの歴史認識と西洋理解、モンマルトルを歩く学生はほぼ坊さんで、血の気は多いは理屈っぽいはにはじまって、苦悩の先に離婚裁判。でも、ちょっと待って?!フランスってカトリックだよね、離婚できたっけ??
こんなお話を面白く地についた物語に仕立てるって、出来る?もう、一気読みでした。凄いです。作者はややこしいフランス王朝史をきっちりものされ、フランス革命をあっさりバッサリわかりやすく説明出来(ほんとにこれって凄い事です。目から鱗でした。)フランスを中心としたヨーロッパの歴史を学問し尽くした佐藤賢一氏。ですよね、でないと書けないよね。
読みながら、なかなか日本人には分かりづらいヨーロッパの権力の二重構造が少し見えたり、ちょっと薀蓄があったりして、それも楽しい。読後感も爽やかなので、ほんとにお勧めです。ちょっと泣けちゃいました。
佳き。
一気に拝読しました。堪能しました。ありがとうございます。
離婚したくない王妃と離婚したい王が、セックスしたのかしていないのか(どなたかも仰っているようにR指定に同意します)、婚姻関係を22年経た後の、教会裁判の物語、が出来事になります。
その裁判を通して、心と「身体」に喪失を抱く中年弁護士が救済されていく物語が、主旋律として覆いかぶさるように奏でられていきます。さらに彼に複雑な想いを抱き続け生きてきた近衛騎士も、救われているように読めました。
沢山の人たちの想いが、切なく重なり合い描かれ、本当に佳き。。。
重くなりがちなエピソードが続くのに、グイグイと読まされました。ありがとうございます。
歴史全般、明るくはないのですが、ボルジアの毒薬については、塩野七生さんや川原泉さんの作品で愉しんでいました。本作でも触れられ、そこから俄然、面白さが倍増しました。
この作品、コミックで是非とも。
『異世界の沙汰は社畜次第』を連載中の采 和輝さんが描かれたら嬉しいなぁって妄想します。
集英社様、如何でしょうか。
Posted by ブクログ
これは面白かった!!
佐藤賢一氏の小説は初読み。歴史書である新書『テンプル騎士団』が面白かったので読んでみました。
ヨーロッパの歴史を舞台にしたエンタメ小説。
ちょっと下ネタ満載なのでR15指定してもいいくらいですね。
でも面白い。
この時代ってキリスト教がすべてにおいて優先されるので裁判も教会が仕切っていたのですね。勉強になる。
いわゆる離婚裁判なのですが、この当時のキリスト教では離婚は禁じられています。
ではどのように離婚を?となりますが、そこは抜け道があります。
その結婚は最初から無効だったのだ!
と唱えるわけです!
・・・ってそりゃ詭弁だろ!
いろいろとツッコミどころ満載の当時の制度ですが、いやはや、昔の人と言えど、やはり同じ人間。同じ悩みがあるのですなぁ。
まあ、すごく面白かったので、ヨーロッパの歴史に興味がある人はぜひ一読を。
Posted by ブクログ
原告:フランス王ルイ12世ことルイ・ド・ヴァロワ
被告:ジャンヌ・ド・フランス
申し立て内容:婚姻の無効
ナント地方の弁護士であり、かつてはカルチエ・ラタンの伝説の男であるフランソワ。
離婚裁判を傍聴にいき、ある事情から王妃の弁護を引き受けることになります。
絶望的とも思える瀬戸際から、現場の手練れの弁護士の凄腕をもって、傍聴人を釘づけにし、時には王妃に対して侮蔑的とも思える弁護(これも作戦の一部)を繰り返し、一気に形成逆転。
「婚姻の無効」とは…と考えてしまう一方で、背後にあるフランス王の思惑、ローマ教皇の思惑をも感じとり、そして最終的には王妃の意にそった形での決着を迎えます。
法廷を舞台にした物語ではありますが、フランソワや王妃ジャンヌの苦しみや悲しみ、そして喜び
Posted by ブクログ
日本の歴史小説ばかり読んでいた自分に、西洋の歴史小説の面白さを教えてくれた思い出の本です。
十五世紀末のフランスである離婚裁判が始まります。原告はフランス国王ルイ十二世、そして被告は王妃ジャンヌ。キリスト教徒は離婚は認められていませんが、例外もあります。夫婦間に肉体関係がもたれなかったとすれば「結婚の無効取消」が認められ、離婚が成立します。とはいえ原告は国王。だれも王妃の弁護など引き受けません。その弁護を引き受けたのは実績などないに等しい弁護士フランソワ。誰の目にも負けるのは必至。果たして国王の鼻をあかして、王妃に勝利をもたらすことができるのか…
王妃は処女なのかを議論して調査(要するに触診です)する描写もありますが、これが論点なので当人たちは大真面目。でもどこか滑稽。宗教裁判ですから、現在の法治国家の裁判とはまるで違うところも面白いです。最初は心もとないフランソワが後半ではどんどん相手を追い込んでいく様がスリリングで、傍聴者のひとりとして法廷で応援している気になります。GO!GO!フランソワ!
直木賞の選考では満場一致で受賞作に決定だったらしいですが、うなずける快作です。
Posted by ブクログ
小説として、純粋に面白い!!あらすじにあるように「中世フランスの法廷サスペンス」という触れ込みだったので、歴史蘊蓄が中心の堅っ苦しい本なのかなー、と思っていたんですがとんでもない誤解でした!確かに、必要十分な中世フランスの歴史知識は書かれていましたが、くど過ぎない程度で、むしろフランス史に興味がわきましたねー。題材が離婚裁判だけあって法廷シーンが多いのですが、まるで、生で裁判を見ているような臨場感です。裁判に挑む、王妃ジャンヌの気高さには自然とうっとり。そして何より、人を愛することの甘美さが文章のそこらじゅうに溢れていて、登場人物たちの感情の渦に深く飲み込まれてしまいます(小説の醍醐味はやっぱり人間模様ですよね!)。際どい描写もあるのですが、匂い立つようなエロスは感じるのに、過剰ないやらしさは全くなくて感嘆しきり。逆に、神聖な行為と思えるぐらいです。ところどころベタな展開もありましたが、それも許容範囲。この物語は大団円で終わってもらわないと困ります(笑)佐藤賢一さんは初読だったのですが、この作品で一気にファンになりましたよー。
Posted by ブクログ
男性の観点から描かれる、ちょっとデフォルメされた女性像が若干引っかかるところがなくも無いけど面白かった。
あとがき読んで佐藤賢一さん作品読破したるでえええって気持ちがわいた。笑
Posted by ブクログ
海外の歴史小説系でしかも中世の裁判だの宗教だのととっつきづらく思って長年積んでいたのだけど、登場人物も話も舞台のように掴みやすくて見所が多く、あっという間に読み終えた。恋人ベリンダの魅力と当時のインテリ学生の若く熱い勢いが小説全体を覆っている。基本的に痛快なやりとりが多くてイヤミスとか嫌な気分になる場面も少ない。1999年とちょっと古いからしょうがないのかな、王族の裁判の話なのに下品とまではいかないけどエロというか世俗的で官能的な表現やシーンが思ったより多い。それが痛快で魅力なわけだけど。
Posted by ブクログ
痛快で良質なエンタメ。
もっと早く手に取っておけばよかった。
舞台劇で見てみたいが、最後のところのネタバレがあると台無しなので、やっぱり難しいかな…
Posted by ブクログ
一気読み
ヒリヒリしたー
宗教上離婚が婚姻の無効によるしかない時代で、法定での議論の持っていき方がまぁまぁえげつない下ネタばっかり。
それを傍聴するパリの民衆のエネルギーや、政治的背景をも味方につける主人公の弁護士の手腕が見どころかなぁ。
小説から、きっついユーモアがあふれるというかパワーが吹き出してるというか。
キャラが濃い小説だなぁという印象。
Posted by ブクログ
落ちぶれた天才が、圧倒的に不利な状況を、法廷での華々しい論争、国際政治と世論を用いた盤外戦術で、ひっくり返すところが非常に面白かった。ただ、最後の結末は、物語の最初の方でわかるので、星4つ。
Posted by ブクログ
表紙のデザインから予想するより面白かった。
中世近世?ヨーロッパ の背景に明るくないので、気後れせずに読めるのか少し心配しつつ、面白く思えたら読書をするのに好きな時代背景が増えていいなぁと期待して読んだ。
主人公の人物像は、現代日本男性なのではないかと思うぐらい、現実よりに思えた。不利な裁判をオセロのように、主人公側に有利に持っていく快進撃はテンポ良く痛快。
途中でもっと時代背景を知りたいと思い、wikiで検索したり、舞台になっていたフランスの協会等を画像検索したり、映画「アンブーリンの姉妹」、ドラマ「ボルジア家 愛と欲望の教皇一族」を観たりして、この本を中心に新たな興味に出会えた事も満足度が高い要因。
Posted by ブクログ
AA作品から逆流して読んだ原作。そんなわけで展開は知っていたのだが、この作者の情景→短い会話→詳細な説明という文章のパターンが思った以上に好みに合って面白かった。というか歴史的背景とか抜きにすればほぼ現代的リーガルドラマなので読みやすいったらありゃしない。
Posted by ブクログ
どうしようもないフランス王、ルイ十二世から離婚裁判をおこされた“醜女”ジャンヌ王妃の実話をベースにした物語。絶対不利な状況で弁護人に雇われたのは、舌鋒鋭いながら過去にトラウマを持つフランソワ。細かな心情を執拗に描き出す佐藤賢一氏らしい作品は、ハマらないと読むのが辛くなるが、この作品はどんどこ読みたくなる展開に、執拗な描写が見事にハマって、調子良く読み進めることができた。ラストの仕掛けもわざとらしくなくドラマチックで、ハリウッドで映画化したら面白そうと思ってしまった。
Posted by ブクログ
想い出と現在との関わり、
登場人物のディテール、
当時の文化など、
非常にうまく繋がって、飽きさせず、
一気に読まされました。
真実をついている、と思わされる箇所も多々あり、
とても面白かったです。
Posted by ブクログ
ぺこさんご推薦の本です。
いやいや、なかなか楽しめました。この作品だけ捉えればリーガルサスペンスになるのかな。なかなか迫力のある法廷シーンです。
バランスがいいのでしょうね。単に法廷シーンだけでなく、当時の社会情勢・背景が適切に交えられ、更に本人の恋愛体験なども織り込まれ、渾然一体となって話が進みます。西洋史などというものにちっとも興味が無いのですが、そんな事を一切のハンディーと感じさせず、楽々と読めてしまいます。
Posted by ブクログ
佐藤賢一初体験(小説は)。
登場人物が皆、偏屈で泥臭い一方で内省的で、とても魅力的だった。最後の2人のフランソワの会話にはなんかもうじーんとしてしまい、読み終わった後もしばらくは、前の方を読み返したりして余韻に浸ってました。読後感爽やか。
どちらかというと、現代小説を読んでいるような印象だった。もう少し「15世紀フランス」の香りがぷんぷんしたりすると、より嬉しかったかな。(2007.5.5)
Posted by ブクログ
民衆を巻き込んで教会で行われる裁判。
音響効果バッチリでイメージが膨らむ。響き渡る木槌の音、弁護士の声、傍聴席のどよめき…。
ズバリ下半身に関わる裁判。そこに弁護士フランソワの苦い過去、恨みつらみも絡まる。
品を崩しすぎない王妃の艶っぽさと大衆の(いい意味での)おおらかさな下品さ。
漢字表記が多いけれど、この世界観を出すのにとてもあっているように思えた。あけすけな言葉や表現の生々しさに歯止めをかけるのにもいくらか役立っている気もする。
裁判戦術に期待しつつも小難しいんじゃないかとちょっと構えていたけれど、杞憂だった。エンタメ性も感じられてむしろぐんぐんページが進んだ。
今までよくわからなかった宗教と法律との折り合いに触れられたのもよかった。
フランス語は記録に残らないというのもおもしろかった。
Posted by ブクログ
裁判モノとしての面白さもあるが、男女の一言ではあらわせない心や在り方について考える一冊でもある。
結婚とは何だろう、そこに何を求めるんだろう。何せ一生をかけてまで共にあろうというのだから。
まあ今となっては、そこまで深刻に考えることでもないのかもしれないけどね。
いかにも男性の書いた作品だという感がした。
女性の肉感的にして瑞々しい魅力がふんだんに描かれている。女性が女を書くとこうはならない。もっとヒステリックで、不快で、神経質になる。
異性からみた女性の魅力はこうなんだな~と思った。というか、理想の女性像なんだろうか。
当の裁判はやったかやらないか、という下世話な議題を延々と繰り返しているのだが、そうでもないと離婚できないご時世だったのね。
王妃が簡単に離婚できてもそれはそれで問題かもしれないけどね。
痛快な部分もあればスリリングな部分もあり、最後には男女についての一つの答えのようなものもあり、色んな楽しみ方のできる一冊。
Posted by ブクログ
1999年上期:第121回直木賞受賞作品。
面白かったです。
作者の佐藤賢一さんは、西洋史学で修士号、フランス文学で博士課程満期退学という経歴の持ち主で、中世ヨーロッパの背景描写がとても細かく、物語の世界に引き込まれます。
かつてパリ大学の伝説であった、今は落ちぶれた田舎弁護士・フランソワが、時のフランス王・ルイ12世の離婚訴訟に、王妃ジャンヌの代理人として立ち向かう物語。
法廷での舌戦やフランソワの過去への決着、アクションの緊張感にドキドキ!
王妃ジャンヌ・ドゥ・フランスは実在の人物。物語の彼女は賢く機転が利いて、そして女性としての弱さもあって、応援したくなります。裁判の結末も彼女に拍手を送りたい、スッキリ楽しめる小説でした。
Posted by ブクログ
歴史小説という意味でも、法廷ミステリという意味でも十分楽しめた。
それどころか、「家族」や「夫婦」という人間ドラマとしても様々な風景が見られて面白い。
Posted by ブクログ
とある書評で、夏休みに自分の作品を読破するぞ、と言われたいと著者がおっしゃっていた、と読んで興味を抱き、とりあえずそこで勧められていた本書を読んだ。
面白かったけど、性的描写がしつこくて苦手。読み終わってから、そういえば多分以前も途中まで読んだところでうわぁとなって、その後はかいつまんで読んだのだったかも、と思い出した。
もっと安心してエンタメを楽しみたい。。
Posted by ブクログ
王妃の離婚裁判に関わらざるをえなくなった弁護士。彼は弁護をしながら自らの過去と向き合うことになっていく。相手を徹底的ににやり込めた時に王は弁護士に何をするのか。若き日の悲恋が最後に報われる。カノン法がよくわからなくても、面白く最後まで読める。直木賞受賞作。
Posted by ブクログ
中世が舞台のリーガル・サスペンス。人間の、男と女の、みっともない、でもどこか愛おしい、生の姿がありありと描かれている。
序盤で何度か脱落しかけたが、100ページを超えてからは俄然面白くなり、最後まで一気に読むことができた。
もっと小難しい話かと思っていたら、意外と…会話シーンなどはキャラノベか?と思うような雰囲気も(個人的にはもう少し抑えめが好み)。
歴史に疎くても十分楽しめる。ルイ十二世とジャンヌの離婚が史実だというのも読み終わってから知った。
Posted by ブクログ
最初はつまらなくてなかなか進まなかったが裁判が始まったら面白くなりどんどん読み進めていった。
作品中では弁護士と王妃のロマンスも見られたが実際はおそらくそのようなことはなかったであろうし、王妃は40歳で亡くなったらしい。
離婚したのは何歳の時かはわからないが若いうちから夫に疎遠にされた挙句、離婚まで言い渡されずいぶん気の毒な人生だったであろう。
夫でもありいけ好かないルイ12世のその後の人生もパッとせず自業自得。
後世の評価も芳しくない。
Posted by ブクログ
佐藤文学の最高峰と言われて、ちょっとハードルを上げてしまったか。期待ほどではなかった。
物語は面白いと思うのだけど、硬質というか、高圧的というか、どうも文章が好みではないのかなあ。
離婚という題材の性でもあるのかな。
そういう世界・時代だということを考慮しても、どうもね。
特に好ましく思える人物がいなかったのもあるか。
とはいえ、中世西洋を知るという楽しみは、他には変え難い。そして、エピローグでほろりとさせられたのは、流石。
続いて他の作品を読んでみたいと思った。
Posted by ブクログ
評価が難しい作品だった。
イギリスとの百年戦争開けのフランスの王家の離婚裁判。
チェーザレボルチアやニーベルンゲンの歌のジークフリードなどなんの説明も無く話に出てくるので、多少の中世ヨーロッパの知識が必要かもしれない。
日本では室町時代末期、応仁の乱の時にヨーロッパではこんな本格的な裁判が実施されたと思うと、たしかに中世までは世界の中心はヨーロッパだったと理解した。
Posted by ブクログ
評価が高くて期待していたが、期待し過ぎだったようだ。
結婚について、男女の関係について色々考えさせられながら読んだ。裁判の描写は痛快で面白いのだけど、主人公の美人な元恋人も、おブスなジャンヌ王妃もまさに男性の考える女性そのままでやや興ざめ。あと、下ネタのヤジは全然良いんだけど、まぐわいの描写が色気も艶もなくてさらに興ざめ。最終的に「ふーん」で終わってしまった。
今の時代、離婚は珍しく無いけど「本当は離婚したいのに別れられない人」って男女共にいて、時代が変わっても男女の間は変わらないのねと思う。