あらすじ
混沌とするガリア諸族を率いローマ軍に牙を剥く、美しくも残忍な青年ウェルキンゲトリクスと、政治家人生も終盤を迎え、劣等感に苛まれるローマ軍総督カエサル。熾烈な戦いの果てに二人が見たものは?
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Posted by ブクログ
カエサルとガリアとくれば、『ガリア戦記』(ユリウス・カエサル著)が有名ではありますが、それはしょせん、勝者の立場から書かれた作品。
多くの歴史が証明しているのは、”歴史は勝者によって書き換えられる”ということです。
本書の巻末にもありますが、文学の想像力によって歴史の裏側に追いやられたことを想像し、そして何かを読み解くことはとても大事なことです。この本に出会えて、ガリアのことを少しでも知ることが出来たのが最大の収穫でもあります。
一番のポイントは、若くて魅力的なガリア王ウェルキンゲトリクスと、中年になりローマでの保身を大事にするユリウス・カエサルの対比です。
些細なことにとらわれずに、この対照的な二人の心のうち、目指すものを中心に読んでいくと、「ああ、そういうこともあるだろう…」と妙に納得するかもしれません。
ただの「男」としての勝負になったとき、天はどちらに微笑むのか…まさに時の運としか言いようがありません。
Posted by ブクログ
歴史は勝者がつくると言われるように、『ガリア戦記』も勝者カエサルが記したもの。敗れたガリア側の視点で描かれるのは珍しい。
ローマ総督ユリウス・カエサルvsガリア王ヴェルチンジェトリクス。
ローマの英雄カエサルは、部下たちに「チビで女好きの禿げ親父」と陰口を叩かれ、ポンペイウスへの劣等感に悩む中年男。朗らかで人好きのする性格の裏で、周囲に細心の気を配り、空気を読むことでのし上がってきた。
一方の若きガリア王は、光の神ルーゴスにも喩えられる美丈夫。若さゆえの不遜さで傍若無人に振舞いながらも、不思議な魅力で人心を掌握していく。
英雄も初めから英雄だった訳ではない。年齢も性格も立場もまったく違う二人が、人間くさく悩み足掻きながらも、やがて英雄になっていく姿に引き込まれる。
特に、失脚した父の想いを継ぎ、周りの期待を一身に背負うヴェルチンの孤独な闘いが哀しい。
投降間際、ヴェルチンが妻エポナに見せた不器用な優しさ。最後の最後に心が通じた二人に少し救われる。
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英雄中の英雄として知られるジュリアス・シーザーを
いきなり冴えない中年と評するところから出発し、
この冴えない中年がいかなる選択を繰り返し、
若き英傑ヴェルキントリクスといかに対決し、
そして英雄と呼ばれるにふさわしい戦歴を残すこととなったのか。
英雄の風評を逆手にとって、
意外なキャラクター造形を設定し、
しかもそれを史実と矛盾なく、むしろ「こうきたか!」という
驚きに変えて引き込んでしまうという、
まさに佐藤賢一節の真骨頂!
題材のメジャーさもあって
間違いなく楽しめる必読の一冊!
Posted by ブクログ
ローマに虐げられているガリアを纒め上げ、解放させようとしている英雄中の英雄、王の中の王のウェルキンゲトリクスと、若くて才能溢れるポンペイウスへの劣等感に苛まれながらもローマ都督として成功して巻き返しを計ろうとしているカエサルの対比がおもしろい。
特にウェルキンゲトクリスの存在感たるや凄いものがあり、史実を知っていてもカエサルが戦に破れてしまうのではないかとはらはらする。
焦土戦術に徹底しきれなかった時も長老たちの権力を削ぐのに利用し、カエサルに破れても大したことではないと言いきり、大義であるガリア統一をひたすら目指す。
しかし落ち目な中年おじさんのカエサルもウェルキンゲトリクスに翻弄されて窮地に立たされると、精神的な若さを取り戻し怪物的な速度で成長していく。
今一番映画化して欲しい作品だ。
Posted by ブクログ
政治的に力の衰えてきた中年男カエサル。
属国である祖国を解放しようとする美貌の青年ウェルキンゲトリクス。
2人の攻防が最終的にはどうなるかどうなるかとハラハラしながら読みました。
目的を達成するため手段を選ばず人を思いやる余地のないウェルキンゲトリクスが、人としての感情に目覚めてから、そして過去の栄光にすがって政治的地位ばかり気にして生きているカエサルが、目の前の戦闘に目覚めた時から話はおもしろくなります。
私的にはウェルキンゲトリクスよりカエサルが気に入ってしまって、
「カエサルを撃たないで~」
と思いながら読んでました。
Posted by ブクログ
その場に身を置いたような読後感。征服される側からの物語に引き込まれてました。
この本を読んだ後、「ローマ人の物語」を読み、また違ったヴェルチンジェトリクスに会いました。
Posted by ブクログ
カエサルに抵抗したガリアの偉大な首長、ウェルキンゲトリクスの話。歴史の敗者側で注目されにくいこの人物にスポットを当てて生き生きと描いている。ときどき出てくる過激な性描写は読者の範囲を狭めてもったいない気が・・
Posted by ブクログ
世界史が全然分からないままに読んだ。
カエサルは名前を聞いたことがある程度。
ブルータスってのは「ブルータス、お前もか」のブルータスか?と思いつつ読んだがその場面は出て来ず。
ウィキで調べるとやはりこのブルータスでした。
カエサルのウィキペディアが面白かった。
引用↓
カエサルには「ハゲの女たらし」という異名があり、彼の軍団兵たちも凱旋式の際に「夫たちよ、妻を隠せ。薬缶頭(ハゲ)の女たらしのお通りだ」と叫んだ。
最悪のあだ名である 笑。
しかしカエサルは実は凄いおっさんだった。
(普通は知ってるのでしょうが…)
またウィキ引用↓
イタリアの歴史の教科書には「指導者に求められる資質は、次の五つである。知性。説得力。肉体上の耐久力。自己制御の能力。持続する意志。カエサルだけが、この全てを持っていた。」との記述がある。
ドイツのローマ法学者であるテオドール・モムゼンは「ローマが生んだ唯一の創造的天才」と評した。
この小説はカエサルの生涯のほんの一部分でしかない。
カエサルの書いたガリア戦記を元に作られた小説である。
内容は歴史物というよりは、青春物の印象が強い。
理想に邁進する青い若者と因循姑息な中年の、戦いと葛藤がテーマに描かれている。
幕末の尊王攘夷VS江戸幕府みたいな感じが少しした。
それにしても、出てくる女性が全員レイプされるので、女性の中には拒否反応を示す人がいるかもしれない。
私はちょっとうんざりした。
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ヴェルテン率いるガリアの戦いに対応する過程で、抜け毛を気にするしみったれたオヤジだったカエサルが指揮官として磨かれていく、というビックリな設定が佐藤氏らしい。ウェルテンに出会わなければさいは投げられなかった? ヴェルテンのキャラが、わがまま勝手で暴力的。実はそうみえて、不器用なだけのナイーブな彼なんです、、、なんてありがちなフォローもなく、とことん困った奴なのが面白い。
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佐藤賢一もこれで四冊目。だんだんと性的な味付けが全部一緒に見えてしまって困った。ウェルキンゲトリクス視点のガリア戦記と聞いて読み始めたが、実際のところは燦然たる若者の輝きが中年男をまばゆいばかりに照らし出す話だった。実質的な主役も覚醒カエサルの方だった。っぱローマよ。
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時は紀元前52年若きガリア王ウェルキンゲトリクスは侵略するローマ総督カエサルに牙を剥く。所謂ガリア戦記がテーマ。本作品、ガリア王、カエサルだけでなくガリアの職人、ローマ兵士など視点を所々変えながら一つ一つの事実に当時の人物達の愛憎と破滅と希望を壮絶なる人間ドラマとして息吹を与える。更にカエサルを猜疑、嫉妬心が強く、ポンペイウスに劣等感を持つ禿げた冴えない中年男として描く事でより生々しい政治闘争の苦しみに深みを持たせている気がする。それにしても現場を見たかのような細かい情景、音や匂いまで感じる描写。脱帽♪~(´ε` )
Posted by ブクログ
カエサルに内省を強い、英雄として一皮剥けさせたのは、ガリアの長ウェルキンゲトリクスであったのか・・・は、まあどちらでもいい。熱気を孕む主人公の行動が眩しい。
Posted by ブクログ
キリスト誕生まで50年というフランスを制圧するローマ軍とガリア人の戦いを描く。ローマ軍のガリア総督カエサルとガリア王ヴェルチンが,ガリア人対ローマ人という構図を飛び越え,心の中ではカエサル対ヴェルチンでの戦いになるまでのカエサルとヴェルチンのそれぞれの立場から物語が展開されていく。結局,ヴェルチンは,ローマ軍というよりはむしろカエサルを倒さないとガリアの独立はなく,同時に,自分の勝利も得られないと悟り,カエサルを撃てと叫んでいくのである。最終的にはローマ軍が勝利するが,カエサル対ヴェルチンの戦いはヴェルチンが勝利し,カエサルは運が良かったため,ローマ軍が最終的には勝利したという話になる。
Posted by ブクログ
完全無欠のヒーローはいない。
カエサルは自らの禿頭とポンペイウスへの劣等感に苛まれていた。
一方、ローマに牙を剥いたガリア諸族の王ウェルキンゲントリクスは美しくも残忍な若者。『ガリア戦記』で彼は、長髪で髭をたくわえ、絶妙な戦略眼を持ち、堅忍不抜にして高潔、決断力にみちた将軍として描かれている。その彼をカエサルは倒した。自画自賛めいている。
ここにはウェルキンゲントリクスからみた『ガリア戦記』と異なるもう一つの物語が描かれている
Posted by ブクログ
『王妃の離婚』『双頭の鷲』『カルチェ・ラタン』などなど、重厚な歴史物が得意な著者の今回の舞台はローマ三頭政治時代のガリア、すなわちヨーロッパです。
カエサルってのはもちろん日本でも有名なかのジュリアス・シーザーことユリウス・カエサル。
当時広大なガリア地方はローマの支配下に置かれていましたが、ヴェルチンジェトリクスという若者が各部族に分かれていたガリアを統一し、ローマに戦いを挑みます。
解放戦争って奴ですね。
若く猛々しいヴェルチンに対し、カエサルが臆病な中年男として書かれているのが面白いです。
でもヴェルチンの方は性格とか母親の影響とか、『双頭の鷲』のデュ・ゲクランに似ているのが気になりましたね。親戚が心配性の参謀とかも。
この作者にとって「英雄」というのは皆こんな性格なのかな?
ローマの悪行に、どうしてもガリアを応援しちゃうんですけど、カエサルがエジプトに行ってクレオパトラと出会ったり、最後はローマでブルータスに殺されちゃうなんてことは誰でも知ってます。
つまり、ガリアは……。
歴史とは、戦争とは、こんなことばかりを繰り返しているんでしょうかね。