佐藤賢一のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレタイトルから想像していたのと少し違うが、著者が小説を書くまでの経過はおもしろい、歴史好き・興味がある人には「どう読むか」の視点を得られるかもしれない、具体的な事例を期待したが一般論、司馬史観(戦国は良く、江戸は悪く、幕末維新は良い)というような物語構造)が生まれる迄の経過・環境の話が面白い
また「はじめにイデオロギーありき」で歴史を都合よく拡大・縮小・改竄・捏造する態度に対する著者の警鐘は興味深い、歴史学者に当てはめると自説を誘導する見苦しさを想像する、また政治活動かが自己正当化の目的で現代の歴史叙述全般——政治的な「物語化」や選択的な強調——にもつながる問題?昨今の政治家や論客の議論で、事実より「メッセージ性」や「感情の共有」を優先する姿勢を見ると、まさに本書が批判する「ウソ」の構造と言えるのではないだろうか・・・違うかw -
Posted by ブクログ
ネタバレ169頁の講演調のほとんど自明の論ではあるが、最後の「史観」論のみ秀逸。
・歴史小説家(歴史小説)は人を書き、歴史学者(歴史学)は歴史的事実を書く。
・戦後日本の歴史学が皇国史観や唯物史観の反省から、専門分化の実証主義に陥ると、歴史の発展の体系的な見方を求められうようになる。その様な時代に司馬史観が生まれた。
・歴史小説家はウソにより感動を与えるので、その史観には危ういものがある。百田尚樹。
・しかし、史観は個人の価値観を離れて存在しえない。史観を打ち出すのは歴史家であり、それは歴史学者、歴史小説家、素人を問わない。
・歴史小説は一種のSF小説。サイエンスとアートの融合。 -
Posted by ブクログ
中世ヨーロッパを舞台とした名作を多く著している佐藤賢一氏、今作は日本、それも宗教家か、と些かの吃驚と期待を抱いて手に取った。
なるほど、確かに平安・鎌倉期に各宗派を率いた(あるいは拓いた)高僧たちの中でも、日蓮を主人公に選んだことについては何となく合点がいく。
いわば"優等生的な"教祖として、空海や親鸞が創作の中で描かれているケースをしばしば目にするのに対し、日蓮は、タイプこそ大きく異なれど道鏡や道元らと並ぶ怪僧の一人…というイメージがあった、個人的に。
世俗に敏く政治に阿るのとは対極に、自身が読み込んだ古来よりの経文こそに絶対的な価値基準を置き、師や権力者が働き掛けようと一切融通が利かず、時に詭弁とも思われる論を弄する姿は狂信的でさえあり、殉教者と呼ぶにふさわしい。
浄土宗の念仏と違い、現世の娑婆でこそ救われるべきなのだ、と法華経を用いて主張する日蓮の教えは、為政者にとっては前者よりも不都合であろうし、それを援用し成立していた既得権益の枠組みを壊すことは至難であったろう、という背景も推察できるので、上手く立ち回ったとて覆せなかったかもしれないが、日蓮の主張にここまで符合する法難の数々が都合よろしく発生するという有利な状況がありながら、ついには正教としての地位を確立することができなかった…とは、世渡り下手にも程があると呆れてしまうが…。
このように排他的な日蓮のパーソナリティーに焦点を当て、さらには、どれほど勉強されたのか、と感嘆するほどの蘊蓄や解釈を盛り込みながら、巧みに仕上げられた娯楽小説としてぐいぐいと読んでいったが、それも中盤まで。
後半に入っても同じような展開が繰り返され、またその起伏も平板になっていき、明らかに息切れ? と思われた。
「王妃の離婚」や「黒い悪魔」に見たような高い完成度は感じられず、残念。
本筋と関係ないが、釈迦本人の言葉として網羅的に遺されたものがなく、キリスト教の新約聖書に当たる教典がないからこそ仏教の解釈は多様に渡り、だから厄介なのだな…と改めて感じた。
「仏教、これまちまちにして旨趣究めがたく、なお不審な点も多くあり、どれが正しくどれが誤っているか、私は理非を明らかにできたわけではありません。」
「日蓮はすぐには答えなかった。いや、答えられなかった。日蓮とて、相手の気持ちを考えないではないからだ。
(中略)
日蓮は思い切った。やはり強々に答えることにした。」 -
Posted by ブクログ
日蓮宗開祖である日蓮の半生の物語。
堕落腐敗した宗教界に対して、毅然と立ち向かう姿勢というのは尊敬すべき点であると思う。ただ、問答の場に引き出すために必要以上に煽り立てるとか、何かと強引な手法を取る部分はいかがなものか、と思ってしまいました。
自分の信じた道を進むことを決して諦めない。どんなに理解されなくとも、権力には屈することなく、命の危機を迎えてもなお、自分の信じた道を全うする事を選び抜いた半生。
尊敬すべき人物ではありますが、心の底から賞賛できないのは、攻撃性が高いからでしょうか。融和でなく排斥の道であると感じたからだと思います。
宗教2世である自分は、宗教家を題材にした小説は読まない方がいいのかもしれない、と思ってしまった。いろんな鬱屈した想いが掘り返されて、物語として素直に読めない部分がありました。
外部情報に左右されて楽しめないのはよくないぞ。