佐藤賢一のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
中世ヨーロッパを舞台とした名作を多く著している佐藤賢一氏、今作は日本、それも宗教家か、と些かの吃驚と期待を抱いて手に取った。
なるほど、確かに平安・鎌倉期に各宗派を率いた(あるいは拓いた)高僧たちの中でも、日蓮を主人公に選んだことについては何となく合点がいく。
いわば"優等生的な"教祖として、空海や親鸞が創作の中で描かれているケースをしばしば目にするのに対し、日蓮は、タイプこそ大きく異なれど道鏡や道元らと並ぶ怪僧の一人…というイメージがあった、個人的に。
世俗に敏く政治に阿るのとは対極に、自身が読み込んだ古来よりの経文こそに絶対的な価値基準を置き、師や権力者が働き掛けようと一切融通が利かず、時に詭弁とも思われる論を弄する姿は狂信的でさえあり、殉教者と呼ぶにふさわしい。
浄土宗の念仏と違い、現世の娑婆でこそ救われるべきなのだ、と法華経を用いて主張する日蓮の教えは、為政者にとっては前者よりも不都合であろうし、それを援用し成立していた既得権益の枠組みを壊すことは至難であったろう、という背景も推察できるので、上手く立ち回ったとて覆せなかったかもしれないが、日蓮の主張にここまで符合する法難の数々が都合よろしく発生するという有利な状況がありながら、ついには正教としての地位を確立することができなかった…とは、世渡り下手にも程があると呆れてしまうが…。
このように排他的な日蓮のパーソナリティーに焦点を当て、さらには、どれほど勉強されたのか、と感嘆するほどの蘊蓄や解釈を盛り込みながら、巧みに仕上げられた娯楽小説としてぐいぐいと読んでいったが、それも中盤まで。
後半に入っても同じような展開が繰り返され、またその起伏も平板になっていき、明らかに息切れ? と思われた。
「王妃の離婚」や「黒い悪魔」に見たような高い完成度は感じられず、残念。
本筋と関係ないが、釈迦本人の言葉として網羅的に遺されたものがなく、キリスト教の新約聖書に当たる教典がないからこそ仏教の解釈は多様に渡り、だから厄介なのだな…と改めて感じた。
「仏教、これまちまちにして旨趣究めがたく、なお不審な点も多くあり、どれが正しくどれが誤っているか、私は理非を明らかにできたわけではありません。」
「日蓮はすぐには答えなかった。いや、答えられなかった。日蓮とて、相手の気持ちを考えないではないからだ。
(中略)
日蓮は思い切った。やはり強々に答えることにした。」 -
Posted by ブクログ
日蓮宗開祖である日蓮の半生の物語。
堕落腐敗した宗教界に対して、毅然と立ち向かう姿勢というのは尊敬すべき点であると思う。ただ、問答の場に引き出すために必要以上に煽り立てるとか、何かと強引な手法を取る部分はいかがなものか、と思ってしまいました。
自分の信じた道を進むことを決して諦めない。どんなに理解されなくとも、権力には屈することなく、命の危機を迎えてもなお、自分の信じた道を全うする事を選び抜いた半生。
尊敬すべき人物ではありますが、心の底から賞賛できないのは、攻撃性が高いからでしょうか。融和でなく排斥の道であると感じたからだと思います。
宗教2世である自分は、宗教家を題材にした小説は読まない方がいいのかもしれない、と思ってしまった。いろんな鬱屈した想いが掘り返されて、物語として素直に読めない部分がありました。
外部情報に左右されて楽しめないのはよくないぞ。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ神殿騎士のたぐいはファンタジーの中でも時々見かける職種(?)だが、十字軍で活躍したことをかろうじて知っているくらいでその起こりや消滅に関しては何も知らなかった。帯の「軍事、経済、政治。すべてを掌握した最強の組織。」の言葉に惹かれて購入した。
読み始める前は帯の文言は過大だろうと思っていたが、特に経済的な影響力に関しては目を見張る物があった。
気候すらも大きく異なる異教徒、異文明の地に拠点を維持し戦い続けるために発展した、後方(ヨーロッパの領土)での支援・輸送体制は中世の枠を超えており、近代的である。この輸送販売網の構築には、これも中世を超えた人材登用が効いているのかもしれない。封建制度とは異なる各支部間の強いつながりも面白い。
ヨーロッパの広い地域でネットワークを張り、旧来の領地とは異なる思想で運営された組織は魅力的だし、それが本当にあっけなく崩壊するところやその財産が大航海時代へと続いていくのも興味深かった。