佐藤賢一のレビュー一覧
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ブルジョワが指導権をにぎり、ほぼ革命が達成しかけた「人権宣言」あたりまでを半分だとしたら、その後民衆も巻き込んでさらに激しい残り半分があったフランス革命に比べると、日本の明治維新も終戦時の民主主義革命も、後半の半分がない状況、いつも革命は二分の一だというお話。さて、今度の民主党の革命はどこまでいくか。
印象に残っているのは、「人権宣言」は民主党のマニフェストと一緒、それを実現しようとしすぎると、かえって革命が混乱していく、というくだり。人間は本当に言葉に弱い生き物だと思う。フランス革命自体はその途中から高まっていった残虐性を考えると正直全肯定できないけれど、それでも、巻末に収められた人権宣言は -
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16世紀西洋では,キリスト教が腐敗し,ルターによる宗教革命が起きていた。そんな中,カトリックとプロテスタントそして,そのどちらにも汲みしない人などが論争を繰り広げていた。ドニ・クルパンはそんな時代のパリの夜警隊長だった。ドニとその先生であるミシェルが様々な事件の真相を解決して行く。結局は,ミッシェルは師匠と対決することになる。
『善は悪よりすばらしい。そんなことは馬鹿にだって分かる。だがな,人間は差はあれ,罪を背負って生きているのさ。単純に善悪を見極めるのではなく,どこまでが許され,どこからが許されないのか,その線引きを慎重に見極める作業こそが,ある意味で人は神学と呼んでいる』
『かえって考え -
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キリスト誕生まで50年というフランスを制圧するローマ軍とガリア人の戦いを描く。ローマ軍のガリア総督カエサルとガリア王ヴェルチンが,ガリア人対ローマ人という構図を飛び越え,心の中ではカエサル対ヴェルチンでの戦いになるまでのカエサルとヴェルチンのそれぞれの立場から物語が展開されていく。結局,ヴェルチンは,ローマ軍というよりはむしろカエサルを倒さないとガリアの独立はなく,同時に,自分の勝利も得られないと悟り,カエサルを撃てと叫んでいくのである。最終的にはローマ軍が勝利するが,カエサル対ヴェルチンの戦いはヴェルチンが勝利し,カエサルは運が良かったため,ローマ軍が最終的には勝利したという話になる。
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西洋歴史小説の大家、佐藤賢一によるカペー朝通史です。佐藤先生は小説家ですが、出身が東北大学大学院文学研究科西洋史専攻の博士課程満期退学という歴史学を専門に修められた方なので、史料読解や歴史学的手法はお手の物、歴史科が書いた本と遜色なく信頼できる本ではないかと思います。本の体裁は、パリ伯ユーグ・カペーがフランス王に即位したのを皮切りに、カペー朝各王ごとに区切られた通史となっています。小説家であるため読ませる技術は抜群で、ついつい引き込まれてしまいます。カペー朝といえばユーグ・カペーの他にも尊厳王フィリップ2世、聖王ルイ9世、端麗王フィリップ4世が高校世界史に登場しますが、それ以外にも「アルビジョ
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城、要塞、都市。そのいずれも降伏の印は、開門することだった。開門して敵軍の進駐を許すこと、それは屈辱に満ちた無惨な敗北である。なのに女の仕組みは開門なしには始まらない。ならば泣き叫ぶことこそ道理なのだ。ところが、どうにかすると喜ぶじゃないか。敗北することをもって、喜びとする。敗北し、門をこじ開けられ、侵攻を許すことが、女たちの快楽だった。(p.147)
ジャンヌ・ダルクを軸に巡る物語。100年戦争下のフランスとイングランド。後半は何となく都合よく話が組み立てられているような気がするが、冒険人生の意思は貫かれている。異民族、田舎の農夫の訛り方が楽しい。