佐藤賢一のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
さくさく読める短編集。ジャンヌダルクの話とダビンチの話が中心。
カルチェ・ラタンよりはよかったけれど、王妃の離婚には遠く及ばず。短編の限界かな。ト書き(というのかな)の部分にも、登場人物の発言が盛り込まれるので慣れるまではちょっと読みにくい。そこが彼の持ち味なんでしょうが。
「ジャンヌ・ダルクまたはロメ」は、ジャンヌダルクとは何者だったのかという謎に挑んでいて、ほうほうという感じ。権謀術数が渦巻く宮廷の状況と絡められていて面白かった。ただ、オルレアンだのアンジューだの混乱したけ。カルチェ・ラタンに通ずるところがあるかな。
一番よかったのは、「エッセ・エス」。スペイン王家の話だけれども、中世の冒 -
Posted by ブクログ
ネタバレいよいよ1789年の7月が始まる。球戯場の誓いから,ミラボー「銃剣の力によるのでないかぎり、ここから動くことはない」,デムーラン「武器をとれ」による民衆と軍隊の衝突まで。
小説だけあって,主要登場人物が限られており,流れを追いやすい。一巻から引き続き主役級のミラボーとロベスピエールに,デムーランが加わる恰好。創作がかなり入ってて,活躍しすぎといえばしすぎだが…。昔,中公文庫『世界の歴史』で大革命読んだときは,人が多すぎいまいち消化できなかったなぁ。対照的。
デムーランがけしかけられる場面は,ええっ?という感じ。三国志で,諸葛亮が周瑜をけしかけて赤壁をやった伝説となんだかかぶった。…ていう -
Posted by ブクログ
バスティーユ要塞の陥落といえば、フランス大革命の最初の山場である。というより、さらっとした理解では、この陥落こそがフランス革命であると勘違いしかねない。そのくらい印象的な大事件である。確か、オスカルが戦死したのも、このあたりの設定だったと思う。
実際のところどうだったのかはもちろんわからないけれど、この小説では、ごく普通の人たちが集まって盛り上がっている中でひょいと生まれた、一種の弾みのように感じる。物足りないという漢字もしたけれど、実際のところ当事者にとってはそういうモノなんだろうと思う。そういえば、あくまで小説であって歴史の本ではないから、登場人物は常に当事者である。当たり前のことなんだ -
Posted by ブクログ
三部会が手詰まりになり、いよいよ革命が動き出す。きっかけとなる若き弁護士デムーランの演説は、はじめてこのあたりを勉強した時にかなり夢中になってあこがれたものだけど、この作者の手にかかると何とも拍子抜けするような感じになる。しかし、物事が動いていくというのは、実はそういうことなのかもしれないな、と思ってしまう。
ひとりひとりの人間はすごく卑近で卑小で、でも渦のようなものを創り出すことができて、ひとたび渦が回転し出すと、そういう人間を次々の否応なしに巻き込んでしまう。そんなことを思いながらも、このほんのラスト近くでの逆転劇には、やはり心が沸き立ってしまうのである。 -
Posted by ブクログ
フランス革命には昔から興味がある。その興味を産んだのが「ラ・セーヌの星」で、育てたのは「ベルサイユのバラ」であるのは秘密だけど。そのフランス革命の物語を、小説として佐藤賢一が書き綴ってくれるというのは、本当に魅力的である。前から読みたいなと思っていたのだけど、ちょっとためらってもいた。佐藤賢一の場合、チラリと癖が鼻につくことがあるからだ。
読んでみるとある程度は予想通りでミラボーもロベスピエールもみんな、見事に佐藤賢一の登場人物になっている。あわてていうなら、それぞれにみんな魅力的だ。特にタイトルにもなっているミラボーの活躍からは目が離せない。「佐藤賢一の登場人物」と僕が言いたくなるのは、そ -
Posted by ブクログ
「歴史は繰り返す」は俗によく言われる言葉だが、実際にどう繰り返されているのか良く分からない言葉でもあります。本書は近年の民主党政権の成立・大地震による影響等のトピックと、人・政治の動きを捉え、「フランス革命」と対比することで共通点を挙げていきます。
その上で民主党政権の成立をフランス革命の工程の1/2に当るとしているのが面白い。
この1/2や民主党政権成立に対する評価云々ではなく、単純に類似しているポイントを説明してくれているので、今後の日本で起きそうなことの推論にもなる。自分も現在も混乱が続く日本の政治を、フランス革命と比較しながらウォッチしてみたいと思います。