佐藤賢一のレビュー一覧
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中世ヨーロッパを舞台とした名作を多く著している佐藤賢一氏、今作は日本、それも宗教家か、と些かの吃驚と期待を抱いて手に取った。
なるほど、確かに平安・鎌倉期に各宗派を率いた(あるいは拓いた)高僧たちの中でも、日蓮を主人公に選んだことについては何となく合点がいく。
いわば"優等生的な"教祖として、空海や親鸞が創作の中で描かれているケースをしばしば目にするのに対し、日蓮は、タイプこそ大きく異なれど道鏡や道元らと並ぶ怪僧の一人…というイメージがあった、個人的に。
世俗に敏く政治に阿るのとは対極に、自身が読み込んだ古来よりの経文こそに絶対的な価値基準を置き、師や権力者が働き掛けようと -
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日蓮宗開祖である日蓮の半生の物語。
堕落腐敗した宗教界に対して、毅然と立ち向かう姿勢というのは尊敬すべき点であると思う。ただ、問答の場に引き出すために必要以上に煽り立てるとか、何かと強引な手法を取る部分はいかがなものか、と思ってしまいました。
自分の信じた道を進むことを決して諦めない。どんなに理解されなくとも、権力には屈することなく、命の危機を迎えてもなお、自分の信じた道を全うする事を選び抜いた半生。
尊敬すべき人物ではありますが、心の底から賞賛できないのは、攻撃性が高いからでしょうか。融和でなく排斥の道であると感じたからだと思います。
宗教2世である自分は、宗教家を題材にした小説は読まな -
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ネタバレ神殿騎士のたぐいはファンタジーの中でも時々見かける職種(?)だが、十字軍で活躍したことをかろうじて知っているくらいでその起こりや消滅に関しては何も知らなかった。帯の「軍事、経済、政治。すべてを掌握した最強の組織。」の言葉に惹かれて購入した。
読み始める前は帯の文言は過大だろうと思っていたが、特に経済的な影響力に関しては目を見張る物があった。
気候すらも大きく異なる異教徒、異文明の地に拠点を維持し戦い続けるために発展した、後方(ヨーロッパの領土)での支援・輸送体制は中世の枠を超えており、近代的である。この輸送販売網の構築には、これも中世を超えた人材登用が効いているのかもしれない。封建制度とは異な -
ネタバレ 購入済み
新しい「ムサシ」像…。
2023年8月読了。
中世フランスを舞台とした小説や、突然「アル・カポネ」や「モハメド・アリ」の人生を冴えた筆致で描いてきた著者ですから、それほど驚きは無かったんですが、今「宮本武蔵」をやるのか…、と虚を突かれた思いでした。
数多ある剣豪小説で散々書かれてきた〝武蔵〟を、「剣聖」「日本一の剣客」と云うより、その場,その場で必死に相手の出方を窺い、物理的な“理”で勝ち抜く方法を考え出す、極めて現代的な思考をする人物像に成っています。
有名な「吉岡一門」との決闘も、むかし“下り松”を見たことがあるので、まるで映画を見ている気分で圧倒されました。
やがて、戦国乱世も終焉し、「豪快な武芸」がどん -
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読んだ本 ハンニバル戦争 佐藤賢一 20230802
2020年に長期勤続の休暇と旅行券がもらえるってことで、パリに行こうと計画してました。気分を盛り上げるために、佐藤健一著の「フランス革命」を読み継いでたんですが、コロナでそれどころじゃない上に、「フランス革命」があんまり凄惨で。次々と登場人物がギロチンにかかっていく。読み終わる頃には、ちょっと気持ち悪くなってきて、パリに行きたくなくなってました。歴史というものに向き合うって意味では本当に面白かったんですけど。それ以来、いくつか佐藤健一の本を読んでたんですが、ナポレオンが発刊されてて、文庫化を楽しみにしてたんですが、やっと出たと思ったらめ