山崎豊子のレビュー一覧
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ネタバレスパイ容疑で労改送りになった主人公だったが、解放軍に所属している親友と養父の尽力により冤罪が晴れて釈放される。
北京駅での養父との再会シーンは涙なしには読めない。
毛沢東の死去により文化大革命は終焉し、中国の歴史も大きく変わろうとしている。
もとの就労先に戻った主人公は、日本人であること、日本語が話せることから、異例の大出世をして、日中共同の製鉄事業に携わることになる。
そして、この事業によって、生き別れになっていた日本人の実父との再会も果たす。
しかし、お互いにその正体を知らないまま物語は進んでいく。
お互いに親子であることはいつ判明するのか、そして生死不明の妹と再会することはできるの -
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ネタバレ山崎豊子先生の戦争シリーズ。
不毛地帯は、日本とソ連。二つの祖国は日本とアメリカ。本作は日本と中国が舞台。
毎回そうだが、本作でも主人公の置かれた境遇はかなり過酷なもの。
冤罪で労改送りになり、謂れのないリンチや暴力、過酷な労働はシベリア拘留を彷彿とさせる。
一巻では、戦争孤児の主人公が小学校教師の父に拾われて養子となり、大学進学、就職、労改送りになったところまでが描かれている。
歴史背景は、日本の敗戦、中国において共産党が国民党に勝利し、中華人民共和国を建国。
毛沢東の大躍進政策、失敗、そして文化大革命までの話。
この後、中国と日本を取り巻く環境は大きく変わるが、そこに主人公がどう関わ -
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『不毛地帯』第4巻
妻・佳子を不慮の事故で失い、単身、アメリカへ行き、アメリカ近畿商事の社長となった、壱岐正。
アメリカ自動車メーカー・フォークと千代田自動車との提携に奔走するが…
副社長・里井により、担当を外される…
資源に乏しい日本の先々を考え、原油を確保する道を探していた…
フォークと千代田との提携は、東京商事・鮫島の暗躍によって…
副社長・里井の壱岐への嫉妬はみっともない。
壱岐にまかせておけば…
自らの功としようとするばかりに、壱岐の意見を聞き入れなかったために。
昭和の会社とはこんなものなんだろうか⁇
息子・誠の壱岐への態度は受け入れられない。
シベリア抑留中のことも、 -
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『不毛地帯第3巻』
近畿商事入社後、異例の昇進で、常務取締役業務本部長となった壱岐正。
近畿商事の重工業化路線を推し進めようと、脱繊維化を推進しようとするが、嫉妬から反発を受ける…
そんな中、アメリカ・ビッグスリーの自動車メーカー・フォークは日本市場への参入のため、日系自動車メーカーとの提携を模索する。
フォーク・千代田自動車の提携を推進しようとする壱岐。
千代田自動車と富国自動車との国内メーカー同士の提携を推進しようとする副社長・里井。
社内抗争へと…
そんな壱岐を憂いながら佳子は…
2年後、アメリカ近畿商事社長となった壱岐は極秘裏に、2年前に立ち消えとなった千代田自動車とフォーク -
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ネタバレ主人公の花巻朔太郎(はなまき さくたろう)は東都工業大学と防衛大学を受験し、防衛大学に合格する。
防衛大学入学には兄姉の反対があったが、元海軍軍人であった父は反対しなかった。
花巻朔太郎の乗る潜水艦「くにしお」は観光用の遊漁船と接触し、遊漁船を沈没させる。
民間人30人の死者を出す大事故だった。
朔太郎は過酷な試練に苦悩する。
東洋フィルのフルート奏者の小沢頼子と出会い、恋心を抱くが、事故の遺族への弔問や海上自衛隊からの聴取に時間を取られ、頼子と会う機会もなく、頼子のことは忘れようと煩悶する。
当時の自衛隊は金食い虫の役立たたずと、国民から疎まれていた。
国民の知らない所で国防 -
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ネタバレ上巻を読んでいた時、登場人物がことごとく金の亡者で、自分だけは得をしようともがく姿が見苦しく、興が乗らないなあと思ったけれど、少し時間を空けて頭が冷えたのか、面白くぐいぐい読めた。
まず、金の亡者とはいえ、みんな小粒。
結局世間知らずのプライドが高いお嬢様たちなので、泥をかぶってでも金が欲しい、ということにはならない。
プライドよりも世間知を優先したら、弁護士なり中立な不動産業者に相談して、簡単に大番頭である宇市の横領は発覚したはず。
登場人物の中で一番の悪党と思われた宇吉にしても、この程度の綱渡りな悪行なのよ。
相手が世間知らずのお嬢さんたちだから、そして頭は良くても気が弱い養子婿だから -
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ネタバレ大阪の老舗木綿問屋の、四代目当主が亡くなったことで繰り広げられる相続争いの話。
代々女系の家系で、総領娘が養子婿をとって事業を継続していたので、当主と言えども家庭内では影の薄い存在であった。
長女の藤代は出戻りの33歳。
総領娘として母親から甘やかされて育ち、プライドが高い。
父の跡を継ぐ(財産も家名も)のは当然自分であると思っていた。(事業にタッチしていないのに、この自信は何だ?)
次女の千寿は地味で大人しく、姉が嫁に出てしまったため、養子婿をとった。
全てのことで姉に差を付けられてきたことを恨んでいる。
末の雛子は、まだ19歳。
マイペースな現代っ子(連載当時)だが、苦労知らずゆえの酷 -
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これは小説というよりルポですね。日航機墜落事故の詳細を知るための資料です。あの事故は企業の利益優先主義が招いた人災だったのですね。
「償う」の正しい姿とは何か。「誠心誠意」とはどの程度をいうのか。被害者側の求めるもの、加害者側の応えられる度量に開きがあるから分かり合えず、いがみ合い、訴訟に発展する。
「鎮魂」の本来の意味は?裁判を起こして人間同士が争う事は死者の魂を慰めることになるのか。「このような大事故を今後起こさないため」「空の安全のため」はただの建前になってないか。 保証金の額を釣り上げようとすることは、「鎮魂」なのか?
ああ、ごめんなさい。主人公が加害者側にいる物語だから、どうし -
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最終巻が一番おもしろかった。先が全然読めなかった。
それでいて、この巻が一番、読む前の期待に近いものが描かれていた。
でもやっぱり取材は大変だったんだな、とあとがきを読んで思った。こんな大舞台の小説、どうやって取材して書いたんだろうとずっと思っていたけど。
取材先は女の旅は不可能な国ばかりだった、みたいなことを書かれておられたが、そういう意味ではハンデ背負っての取材だったんだなぁ。
簡単にジェンダーでくくるのは物事を単純化するようでよろしくないけど、でも、この作品を大正生まれの女性が書いた、というのはやっぱり私には偉業としか思えないな。女なんて何も知らなくていいんだ、と言われて脇においやら -
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実際には、40年ほど前の新潮文庫、白い巨塔(上・下)、続白い巨塔を本棚から取り出して再読。
映画やドラマで何度も公開されて好評だった名作だが、原作は大阪の国立浪速大学医学部を舞台にした医事紛争裁判を深く抉った社会派小説。
大学医学部の医局内での派閥争いや医学界におけるドロドロとした内情などの中で翻弄される患者の運命。
医療技術の進歩により、原作当時(昭和37年前後)の医療知識や治療法とは隔世の感があるのは否めないが、癌というものに対して初見時には深い感情を抱かなかったが、癌というものを身近に感じる年齢になった今、ちりょおうや手術、解剖の場面などは身につまされる思い。
主人公の財前五郎をはじ