あらすじ
ろうたけた美貌とたぐいまれな才を宿し、大正歌壇に彗星の如く登場し、束の間の輝きを放って突如消息を断った幻の歌人御室みやじ。河内長野の大地主の総領娘として、苛酷な因襲に抗いながら、国文学者荻原秀玲との宿命の恋に全てを賭け、略伝に夭逝と記されたように、自らの生をまで世間から葬り去った、激しい情熱と苦悶に貫かれたその半生を重厚な筆致でたどった長編小説。
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Posted by ブクログ
大地主の総領娘であり、大正時代に類まれな歌人として知られた御室みやじの波乱万丈で数奇な半生。
旧い因習の中から飛び立つことを許されず、それによりさらに燃えたぎる情熱、冷徹さ、孤独が、痛いくらいの美しさと真っ直ぐさで迫ってくる。重厚で激しい美しさをもつ小説。短歌はまったくわからないけれど、御室みやじの詠む歌は、はっとするほど典雅。
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なんて悲しく、そして気高い生涯なんでしょう‥。美貌と、才能と、大地主の長女としてのあふれるほどの富を持ちながら、突如 早逝されたと記され、歌壇から消息を絶った歌人・小室みやじ。しかし彼女は生きていたのです。その謎をゆっくりと紐解くように、彼女に54年間付き添った老婢のよしが語り始めます。
大正時代の美しい 尊敬語、謙譲語で語られる文章は、現代の私たちには 読みづらいと感じるかもしれませんが、それこそがミステリアスで残酷な運命をたどった 小室みやじをよく表現していると思います。
このお話にはモデルがいると噂され、ネットでもこの人では?と名指されていて、あとがきでは作者はきっぱりと否定していますが、 この時代、 似たケースはあったのではないでしょうか。
古い因習にがんじがらめにされ一生を棒に振ってしまった美しく 気高い女性たちが 他にもいたような気がします。
巻末の富士正晴さんの解説は無い方が良かったように思います。 男が描けていないと批評されてますが 、本書は 女を書いた小説です。主人公に苦しみを与えたのは全て男たちの仕業です。
富士正晴先生には申し訳ないですが 、「だから 男って女を分かっていない」と申し上げたいです。
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粘着質で濃厚な世界観がたまらないです。
情念の描かれ方が良いです。
現代からは想像もつかない、戦争と旧態依然として家に殺される女流作家。
想像がつかないだけに重く、知らない価値観に蹂躙されます。
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やはりこの人は白い巨塔以前と以後にわけることができるな、筆のタッチが違うような、話も女性にスポットをあてたものが多いように思う。
大地主の家にうまれ、300年の家の風習に雁字搦めにされながら生きた女性の話。
ミステリタッチの部分もあり謎を解きながら読めた。
ろくな男がいない苦笑
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『大地の子』『沈まぬ太陽』で知られる作者だけに、ヒューマニズムあふれる救いを期待したのだが、救いようがない。旧家の総領娘でありながら歌人としての才をもつ貴婦人の半生。てっきり初恋の学者に懸想して家を傾けた内儀の話かしらんと思っていたが、そっちの淡い想いは軽く、むしろ夫との泥沼の愛憎劇がとにかくひどい。女性の権利が制限されていた時代の悲劇なのだろうなと思う。解説では養子婿に同情的であったけれど、いちばん人間として外道なのは、この人だろう。
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あれ?これ、山崎豊子?彼女の本を読んだことがあればあるほど、そう思ってしまうだろう。いつもは社会の腐敗について考えさせられるが、今回はある女の一生を通して人生というものを考えさせられた。
今の時代でも、自分で選んだ結婚相手を親が気に入らず、別れを選ぶカップルがいる。しかし花紋を読むと、それが正しい選択なのかわからなくなってしまう。
自分の意思を尊重する現代的な女性であった郁子が、保守的な結婚をする。保守的な女性ならそれを受け入れ徐々に順応するだろうが、郁子は最初から受け入れず徐々に拒絶を強める。
保守的な家系、意地の悪い継母や妾腹、腹黒い夫が郁子の不幸を一層際立たせるが、郁子自身にももう少し順応する力があれば、数段幸せに暮らすことができたかもしれない。
現実を受け入れる力、それが幸せ力なのだろうと思った。自分も我流を貫き通すことがあるので、この本に学ばなければならないだろう。
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太平洋戦争の前後を生きた女流歌人の物語。
歌と恋愛をどこまでも一途に希求しながら、旧家の伝統としきたりに押しつぶされていった女性の無念の一生が、流麗な文章と短歌を交えて描かれています。
明るい部分よりも、無念さ、悲しさを表現した部分が多い作品です。
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旧家の総領娘であり、歌人御室みやじの秘められた恋と数奇な運命をたどる。
今までこの方、社会派の作家さんだと思っていました。『不毛地帯』とかが有名すぎて。
宮尾登美子といい、この作家さんといい、円熟した筆で描かれる女性の一生というものは読みごたえ満点です。目がくらむほどきらびやかで豪奢な反面、がんじがらめで窮屈な旧家の様子が生半可ではない描写力で描かれていました。
波瀾万丈とはまさにこのこと。
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大正時代の世界感に、かなりはまりました。
名家に生まれ、自分の思い通りに生きられない運命の下、凛とした強さを持った、御室みやじに魅了されました。
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先日訪問した富田林寺内町の旧杉山邸にいた歌人石上露子の自伝小説だったので興味津々で読みました。小説なのであくまでもフィクションでしょうけど、旧家の因習ってことのすごさ、家の大切さ。うーん、現代でもこういうのに縛られるってのはなかなか苦労するやろなぁ。と・・でも、皇室の方々なんかはもっとすごい縛りがあるんやろうなぁ。
大きな家の中ほど、色々なものが渦巻いてドロドロとしている典型的なものなのか・・・
身近に土地だけに、風景を想像しながらのめりこんで読みました
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明治大正に生きた閨秀歌人御室みやじの数奇な運命を描いた一作。
短歌のことは分からずともその展開にトリコにさせるのはさすが山崎豊子といったところ。
河内長野の因習に囚われ、自由に生きることが出来なかったみやじの苦悩を描く。
昔の慣習に囚われすぎた昔の人々は今となっては納得できないものの、当時としてはシリアスだった面も伺える。
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山崎豊子さん作、女主人公の作品の中では今のところこちらがベストとなりました。
歌人御室みやじこと葛木郁子の人生を一時彼女と共に暮らした女学生が訪ね聞き歩く形で綴られる物語。
山崎豊子さん作品としては個人的に新鮮さを感じ楽しんで読めた。
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解説でも書いていたが、著者の代表作といわれる作品と比較すると少々筋立て等が粗っぽい。
題材も取り立てるほどのものでもない気がしなくもない。
著者の作品で今まで未読の作品だった訳だが、それもむべなるかな?という感じ。
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あちこちに矛盾がある、というか。キャラプロットがいまいちなのだよね、この話。特に脇役の男性キャラの。
主役『御室みやじ』と語り部『よし』はいい。丁寧に作られている。が、『みやじ』の息子は前半に語られた人物像と『よし』が語る人物像とが無夜の中で合致しない。
内容。
時代は戦前から戦直後。
大地主の総領娘として気位高く育った『みやじ』。本名、郁子。歌の天才。ろうたけた美貌。類まれな才能。金。家柄。
彼女を見守るのは「よし」という小作の娘。生涯を郁子のために費やす。
郁子はわがまま。冷たいところもあって、主役を張るよりは意地悪なライバル役といったところ。これに振り回されて狂死することになる夫は可哀想だった。
郁子の恋の相手もまたなんだか冷たさばかりが目立つ。なんかみんな勝手だなあ。
因習が、業が、どうのこうのというけれど、みんな勝手にやってたようにしか見えない。
壮絶なエゴの物語(言い切り)
正味417ページ。文字が小さく、詰まってます(笑)どろどろしたのが好きな人はどうぞ。
Posted by ブクログ
大分前に古本屋で購入してそのまま読まずにいた本です。今日読み始めて暇を見つけ見つけ読み、今読み終わりました。
やはり文章が上手ですね。畳み掛けるような物語の展開にいつの間にか引き込まれてしまいます。
一言で言うとこの本の主役は時代と言うものだろうな、と思いました。今の日本でも勿論旧家のしきたりなどはあるでしょうがこれほどの重みと執念にも似た確執で受け継がれはしないだろうと思うのです。
そして解説にもありましたが実は一番不幸なのは婿養子だったのでは?と思わなくもありません。
いまや携帯電話やメールで世界の端まで連絡がすぐに取れる時代。便利になったけれども物語性は大分薄れたかもしれないな、と思いました。
面白かったです。
Posted by ブクログ
河内長野で三百余年続く大地主の総領娘として生まれた女性の数奇な物語。
ほんと明治大正期に残る古くからの因習ってすげぇなって思う。
山崎豊子初期の作品ってことで読みにくい点や説明くさい点があるっていう指摘はもっともだけど、山崎作品に共通する寡黙で芯の強い主人公は尊敬する。
自分もそういう人間になりたい。
Posted by ブクログ
極端な人たちばっかりの集まりだなぁ〜と無理を感じるも、主人公と同じように家だの格式だのの呪縛で一生を過ごしてしまった明治生まれの女性を何人か身近に見たことあり、あたまから「ばかばかしい」とは言えない。
自らが選んだのではない人生をイヤイヤ、ブツブツ、憎しみや怨念にかられて生き、毛穴から内蔵した憎悪、恨みをフツフツとさせていた類と、観念諦観して(心中は淋しかったかもしれないけれど)飄々と生きていた類と二通り見た。
ま、両方いやだけど、後者の方がマシだろう。
主人公が自分の不幸な情感のみで生きていたのにとても歯がゆい思い。いづれにせよ、21世紀の今日、家だの伝統だのの呪縛に無理矢理押し込めるのは数少ないだろう。
が、天皇家に産まれた赤ちゃんの行方を国全体が勝手に決めて、本人の意思も何も無視しているのが遺憾。