あらすじ
松本勝男は、敗戦直後に祖父と母を喪い、妹と生き別れた。戦争孤児となった少年は、死線をさまよう苦難を経て、中国人教師に拾われ、中国人「陸一心」として育てられる。しかし、成人した一心を文化大革命の波が襲う。日本人の出自ゆえにリンチを受け、スパイの罪状で労働改造所送りに。終わりのない単調な重労働に明け暮れる日々、一心が思い起こすのは、養父・陸徳志の温情と、重病の自分を助けた看護婦・江月梅のことだった。NHKでドラマ化された山崎豊子の感動巨編。
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『大地の子』を読んでみました。
『華麗なる一族』に続いての山崎豊子作品でしたが、中華人民共和国という国の恐ろしさ、そして知識人に向けられる異様な圧力が印象深く描かれていたと思います。読んでいて胸が締めつけられるような場面も多く、ここから物語に救いがあるのか気になっています。
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大地の子といえばすぐに上川隆也を思い浮かべるくらい印象深いドラマだった。
この作品を舞台化すると知り、そういえば小説は読んだことがなかったと思い、今回audible で聞いた。
audible の朗読は声も速さもちょうど良く聞きやすかった。
時節柄、映画も戦争関係作品を目にする機会が多い。
こういう時代があったのだと刻んでおかなければならない。
中国残留孤児のニュースは子供の頃、よく目にしていた。
記憶の片隅にあったその言葉を小説で思い出す。
日本軍の大陸での行い、残された子供達がたどったその後。
小説だけでも辛すぎる。
山崎豊子さんの凄さが身に沁みる。
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文化大革命の言葉は知っていても具体的に何が行われていたか詳細には知らなかったので冒頭から衝撃的だった。読み終わってこれからまだあと3巻もあるのかと思うと、これから待ち受けている一心の運命の過酷さが想像できて辛くなるが、読み進めたくなる面白さで名著だと実感した。早く次も読みたい!
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日本人残留孤児とはどのような存在だったのか深く考えさせられる。残留孤児という言葉すらほとんど聞くことすら無くなった現代において、自分達の歴史を認識する意味でも価値のある小説である。主人公の人生に寄り添うことや共感することすらおこがましい平和な現代に生まれ生きる自分にとって大きな学びを与えてくれる。
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日本人であるが故に様々な苦難が待ち受けている。
そんな中でも味方になってくれる人は必ずいる。
中国と日本の歴史観、歴史教育も違う、日本人も酷いことをしてきたこと、歴史観は双方からみて初めて理解できるのだと感じた。
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大地の子(一〜四) 山崎豊子著を読んで
大地の子は、中国残留孤児:陸一心(ルーイーシン)の波乱極まる半生。戦後の日中合同ビジネスである宝華製鉄所。二つの切り口で中国の現状を巧みに表現した1987年から1991年にかけての長編小説である。
この作品を執筆するにあたって、著者のたゆまぬ努力が背景にあった。中国への取材の申し込みは困難を極めた。諦めかけていた時、当時の総書記との会見が実現した。我が国の欠点、暗い影を正直に書いて下さい。それが真の日中友好である。と背中を押してもらった。国家機関、労働教養管理所、労働改造所の取材。戦争孤児と養父母の家への訪問。農村でのホームステイ。三年間に及ぶ忍耐と努力の日々であった。さらに、参考文献は百六冊。想像を絶する彼女の学びの上で準備を整え、執筆には五年間の道のりがあった。二度の病で倒れながらも書き上げた。祖国の体質、犯した罪、沢山の人々が犠牲となった戦争を忘れないで欲しい。という彼女の強い信念からであった。
著者は、戦中戦後の度重なる社会問題が人々に与えた影響を細部まで執筆した。日本政府に見放された満州開拓団の悲劇とそこから生まれた戦争孤児の壮絶な苦しみ。狂気をはらんだ文化大革命の嵐。労働改造所の実態。日中共同プロジェクトの製鉄所建設をめぐる日中双方のすれ違いや葛藤。中国政府、中国という国のいつ足元を狙われるか分からない複雑な体制と制裁。
孤児である一心は社会問題の荒波に揉まれ、苦しんだ。日本人という理由で多々の差別を受け続けた。いとこや学友にいじめられた。学生時代は、努力を惜しまず優秀な成績であったが、共青団の入団への道のりは険しかった。大学卒業後の職務は納得いく行先ではなかった。恋人には日本人という理由で別れを告げられた。職務でも真面目で熱心に取り組んでいたが、差別を受けた。労働改造所で囚人として5年半を過酷な環境に身をゆだねることになった。職務復帰後も僻地への左遷が言い渡された。しかし、二年後に意外な人物が彼の為に政府へ働きかけた。彼は古巣である宝華製鉄所に復職した。
様々な差別から彼を救い出してくれたのは、多くの愛情に恵まれたからだと痛感した。教師であり教育まで受けさせてくれた中国の養父:陸徳志(ルートウチ)と日中合同ビジネスで奇遇にも再開できた実父:松本耕次との親子愛。7歳で生き別れとなり、中国の貧しい農家の嫁となった妹:あつことの兄妹愛。一心と共に逃亡を計らい、その後も苦楽を共にした袁力本(ユウンリーベン)との友愛。大学時代知り合った丹青(タンチン)との恋愛。労働改造所で知り合った妻:月梅(ユメエイ)と娘:燕々(イエンイエン)との家族愛。どの愛情に惹かれるかは、読者次第であると思う。
一心の妹、あつ子のことは頭から離れない。5歳の時、中国で兄と生き別れてから貧しい農家に引き取られ、その生涯は壮絶なものだった。学校には無縁の畑仕事の毎日。夫からの暴行の連続。悲しすぎる5回の出産。愛情を注いでもらうことがない暗黒の生活。感情さえも奪われていった。 兄との再会が実現した時、長年の過酷な労働で彼女は病床に伏せていた。ただ、兄との時間は、彼からの愛情を思いきりかみしめることができた。そう思う。記憶が蘇り、兄ちゃんと叫び、抱きついた。これまでの苦悩な思いをを吐き出すかのように号泣した。日本に帰って家族に会いたい。と言った。最愛の人に感情を受け止めてもらえた喜びが感じられた。
二度目に会ったのは病院であった。あつ子は兄の訪問を待ちわびていた。日本に帰って家族と話をすることを夢見ていた。兄から日本語を教えてもらった。
三度目に出会えた時、彼女の命の灯は消えかけていた。兄に付ききりで看病してもらい、41歳で静かに息を引き取った。兄からの愛情で、彼女は人としての存在を認めてもらえ、守ってもらえた。そう感じる。兄は甘えることが許される唯一の人であったと思う。意識がもうろうとする中であったが人生に幕を下ろす時、最愛の兄が傍にいてくれたこと。溢れる温もりを受け取ることができたと思う。短期間であったが、互いを思い合えた奇跡。兄妹の深い愛情は、国境を超えた日本へもこだましたに違いないと切に願った。
丹青の一心への想いは、紆余曲折もありながら、感慨深いものだった。彼女は高級官僚の娘であり、その特権を利用している卑怯な女性だと思われていた。大学時代の恋人で、日本人ということだけで彼を捨てた。パートナーには恵まれたものの、やはり自分の心の人は一心である。とじわじわと気づいてくる感情に共感できるものがあった。一心を宝華製鉄所に復職させた要の人物であった。愛する人の幸せを願い、いつまでも忘れないであろうその心境が胸に刺さった。
実父である松本耕次に情がわいた。彼の自責の念と孤独感は耐え難いものであったであろう。開拓民として家族で満州へ渡ったのち、軍からの招集があった。戦後、家族は亡くなったと伝えられた。
娘のあつ子とは死後の再会。息子の勝男とは宝華製鉄所で再会。彼らは、お互い離れ離れでいた時の苦労を語り合った。自分は1人で寂しい。日本に帰って来て欲しい。中国では日本人という差別が今後いつ起こるか分からない。素直に気持ちを伝えた。勝男からは後に「私はこの大地の子です。」と中国人として生きることを告げられる。自らも父親となった勝男は、彼の胸中に熱いものを感じた。親愛なる我が子との距離は遠くなった。
しかし、勝男は人に温かく誠実な人柄である。自分は1人ではない。自分を忘れる事は決してない。離れて暮らしていても、心は通じ合っている。と息子からの愛情を受け止めながら暮らして欲しいと心から思う。
毎年、八月になると戦争関係のニュースが流れる。日本は世界で唯一の被爆国である。広島、長崎の原爆で多くの犠牲者が出た。自分達は被害者という立場の報道に疑問を感じるようになった。日本政府は加害者である。他国へ戦争をしかけた。国内、海外に想像を絶する犠牲者を出した。その反省は決して忘れてはならないと思う。戦争と向き合う機会を与えてくれた著書に感謝したい。
令和5年6月16日
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読んでいてとても精神的に辛い話だ。しかし、それよりも山崎さんがどれだけ歴史的背景や製鉄の知識を勉強してこれほど壮大な話を構築できたのかと想像すると、頭が下がる思いだった。
とにかく作者の熱量に圧倒された。
これほどこれまでの日本と中国の関係性、中国人のものの考え方を理解するに適した小説があるだろうか。
ドラマを観た時は感動する話として受け止めていたが、小説を読んだ印象は違った。
感動なんて言葉で表現するのは作者に対して失礼だ。
日本と中国のこれからの関係性をはかるうえで日本人は皆読むべき小説なのではないだろうか。
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すごい小説だと思います。
約30年前にNHKのドラマで見た時も面白かったですが、原作も時代の残酷さが伝わってきて、一気に読み終えることが出来ました。
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実は本よりも先にNHKのドラマを見てしまいました。上川隆也のデビュー作!もちろん若い!そして涙なしでは見られない感動巨編。満州での悲惨な歴史を知らない人も多いと推測するが、本かドラマに是非とも触れてもらいたい。最近は漫画版まであるそうで。でも、やはりドラマが素晴らしい。中国の父がとにかく泣ける。
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序盤では、文化大革命によりインテリに対する激しい弾圧が行われる中、出自が日本人であるというだけで濡れ衣を着せられ、吊るし上げられ、労働改造所に強制送還させられるという、陸一心の身に起こったあまりに理不尽で不条理な出来事に頭がついていかなかった。
ただ、日本軍に見捨てられ中国で戦争孤児として生き抜いてきた陸一心の子供時代を読み進めていくにつれ、戦争や革命という凶暴な力により、人の運命はこうも容易く歪められてしまうものなのだという厳しく冷酷な現実をようやく受け止められるようになってから、陸一心の身の上に同情し、一刻も早く労働改造所から脱することができることを願うばかりだった。
暗闇の中を出口があるのかさえわからないまま、養父に対する恩義を支えにして、必死にもがき続ける姿は痛ましい限りだったが、最後の最後で徐々に一筋の光明が見えてきて第二巻が楽しみになった。
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業界に携わるものとして読んでおけと言われて読み始めている。残虐な状況が目に浮かぶ…これが史実にそっめ描かれているのだから余計に震える。
日本人はよく平和ボケしていると言われるが、山崎豊子の戦争三部作は必読と痛感(あとの2作は「二つの祖国」と「不毛地帯」
続きが楽しみ
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あっという間に第一巻完読。過酷な情景が目に浮かぶ。
わずかな時代、出生地の違いでこんなに悲惨な目に遭う運命。
今日も世界中でこう言った理不尽な偏見、人種差別がどこかで起こっているのだろうか。
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社会人になって久しぶりに読んだ山崎作品。残酷な話から前を向く話への起承転結がすばらしい。悪者を偏って悪者に描く嫌いはあるものの、丹念な取材と構築力はよむものを唸らせる。
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81/100
秒で吸い込まれる
理不尽さ、そしてやるせなさのもと少しの希望や幸せを見いだして生きることへの執着が伝わってくる
何がいいって日本人を美化せずに中国人と日本人の関係性を忠実に書いてくれるからこそしっかりと作品に向き合うことができる
中国行く前に読み始めたからドキドキしながら旅行スタートした笑
陸先生まじいい人
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中国を侵略した日本は満洲国を建設するにあたり日本から開拓団を募集して100万人以上の移民を派遣したのだが、終戦時には多くの移民を取り残して関東軍は無責任にも帰国してしまうのだ。その撤収にあたり関東軍は敗戦の2ヶ月も前から司令部を日本に近い朝鮮半島付近に移し、橋を爆破して破壊したというのだから驚きだ。
しかも数十万人の規模で残された戦争孤児たちを救出する動きは日中国交回復するまでは全く起こっていないのだから呆れてしまう。ドイツ人は東ドイツに残された棄民を5年以内に全て救出したというのだから、日本人はどうなんだろうと思ってしまう。考えてみれば、インパール作戦や太平洋の離島で飢餓死した多くの日本兵の遺骨さえほとんど収拾していないのは周知の事実だ。モンゴルやシベリアにも多くの日本人の遺骨が散逸したままになっている。
この作品は山崎豊子の著作の中でも日本人として必読の書であると思った。
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『不毛地帯』に続く山崎せんせの大作にチャレンジ!『不毛地帯』でのシベリア抑留シーンもえぐかったのですが、今回舞台の中国ではあの産業革命に次ぐ、画期的な大改革と謳われる文化大うんこ革命真っ只中、そして噂の収容所シーンもやっぱりえぐかったですね。私なら耐えられずに〇〇してます。
主人公である中国残留孤児のルー・イーシンくん、モデルとなる方がいらっしゃるとの事ですが、当時現地での日本人への扱い方は地獄であったようで、あらためて戦争は憎しみしか生まないと、戦後80年の今、熟読するべき小説ではないでしょうか。
そう言えば昨日家族で盛り上がった例のユーチューバー『バッパー翔太』氏。新疆ウイグル自治区取材後音信不通となり、2ヶ月後無事帰国しましたと動画をアップするも、どうみても中国なんですがね・・・・^^;右目の青タンの後もうっすら確認され、そして目も死んでおりました。いかがお過ごしでしょうか。
翔太くんもまずこの作品を熟読していたらそこに行かなかったのではと、中国の怖さもあらためて感じる秋の夕暮れでございます。早く日本に帰られるといいね。
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生き別れになった松本耕次と陆一心。
本書では、陆一心が中心に描かれている。日本人としてのアイデンティティが確立されていない一方で、周りからは日本人として差別を受ける。
この自己認識と社会的アイデンティティの齟齬がどれほど彼を苦しめたのか。
彼のアイデンティティはどこへ向かうのか?
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読んでいて辛いけれど、北京にいる今この空気を吸いながら読んでおきたい。中国の近代史を学ぶ一つの手段でもあると思っている。
一心がどうなっていくのかとても気になる。
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私がルーイーシンならこんな生きることに頑張れるのかなってなった。最後、義父からの手紙がルーイーシンの元に届いた時、込み上げるものがあり泣けた。中国の名前が分かりづらいことがあった。
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山崎豊子先生の戦争シリーズ。
不毛地帯は、日本とソ連。二つの祖国は日本とアメリカ。本作は日本と中国が舞台。
毎回そうだが、本作でも主人公の置かれた境遇はかなり過酷なもの。
冤罪で労改送りになり、謂れのないリンチや暴力、過酷な労働はシベリア拘留を彷彿とさせる。
一巻では、戦争孤児の主人公が小学校教師の父に拾われて養子となり、大学進学、就職、労改送りになったところまでが描かれている。
歴史背景は、日本の敗戦、中国において共産党が国民党に勝利し、中華人民共和国を建国。
毛沢東の大躍進政策、失敗、そして文化大革命までの話。
この後、中国と日本を取り巻く環境は大きく変わるが、そこに主人公がどう関わってくるのか楽しみである。
そして、生き別れになった妹と再会することができるのかも気になるところ。
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第二次世界大戦直後に中国で家族と生き別れになった日本人孤児の壮絶な人生。背景には日本人が中国で行ってきた悪行があることは明確であるが、あまりにもひどい仕打ちに読んでいて辛くなる。果たして生き別れた妹との再会は叶うのか。
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何十年に渡る1人の男の人生を描いているから、いろいろなことが次々と起こり、シーンも次々と変わり、小説としての面白さがある。
これだけ中国人として生きてきても、生まれた国の日本に惹かれていく主人公や中国残留孤児の方々の描写が興味深かったなぁ。
無心になって読み進めた一冊。
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日本人・松本勝男。幼少期に満州の日本開拓村へ家族とともに移住する。
1945年8月9日、ソ連軍の満洲への進軍により、祖父と母を失い、妹・あつ子とは生き別れとなり、戦争孤児となる。
さまよっていた勝男を救ったのが、小学校教師・陸徳志。勝男は徳志と妻の淑琴の子、陸一心として育てられる。
文化大革命時に、北京鋼鉄公司で技術者として働いていた一心は、自己の出自の故に、造反派の労働者から糾弾され、冤罪の上、労働改造所に収容される。
小日本鬼子という出自。
中国人として、懸命に生きようとする一心に過酷な運命を与える…
学校での暴力、文化大革命のリンチ、労働改造所での強制労働…
過酷すぎる…
これでもか、これでもかと、一心に襲いかかる。
過酷な仕打ちな負けることなく懸命に生きる一心。
一心の冤罪を晴らそうと懸命に訴える父・徳志。
そこまでできるのか、という、徳志の一心への想い。
一心の命を救い、徳志に一心の居場所を知らせた、看護婦・江月梅。
陰ながら、一心を助けようと動く、親友・袁力本が。
従兄弟・秀蘭が。
一心のために…
懸命に生きる一心…
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読んでいる途中、
気持ち悪くなり吐いた。
それだけ、リアリティがあり、
「門が開くまで」
がしんどかった。
中国という国を知りたくて読んだほんだけど、
よけいわからなくなった。
Posted by ブクログ
1991年第39回菊池寛賞受賞作。「不毛地帯」「二つの祖国」と共に著者の戦争三部作と呼ばれている。本書は全4巻の1巻目。
中国で日本人戦争孤児となった陸一心(ルー・イーシン)が主人公。働いていた鋼鉄工場からスパイの容疑で労働改造所に送られ使役の日々を送る。中国では毛沢東政権下の文化大革命の嵐が吹き荒れていた。
本書では、自分がなぜ戦争孤児となったのか、そんな自分を救ってくれて大学まで送ってくれた養父・陸徳志(ルー・トウチ)の温情、容疑をかけられ使役の日々をいかに耐えてきたかを中心に歴史的背景と共に描かれている。
Posted by ブクログ
ぐいぐい引きこまれる すごいドラマだった
すごい取材と執念が伝わってくる
中国人として育った日本人が、40才になって本当の父親と巡り会える
戦争での中国残留孤児が主人公だ
著者は正式に中国共産党中央委員会の許可を得て、中国国内で3年間の取材の後、1987年から連載を始めたものだ
満州のソ連国境近くでの開拓団の農家の息子として7才の時に終戦を迎える
奇跡的にも生き残ったが為に想像を絶する凄惨な日々を送ることになる
周恩来首相と田中角栄総理との会談で日中国交回復が果たされるものの、中国人民感情は日本を信用していない
国交回復後、上海に最新鋭の製鉄所を日本製鐵が受注する
この建設現場で主人公と本当の父親が対峙する
中国側と日本側の立場に分かれて
父親だと判明するのは数年を経てから偶然だった
家族を引き裂いた戦争があり、犠牲になった孤児がいて、日本に帰れた日本人もいる
著者も1,000人もの方々の取材をしたというが、凄まじい執念の取材だったろうと思う
読者でもライフステージや経験などの違いで涙を流す場面は異なるとは思うが、生々しい人の生き様に触れて誰もが感動するとは思う
そして、日本人として気が付かなかった中国から見た日本、日本人像、反感を持つ訳が伝わってくる
逆に中国の方には、日本人が中国のこと中国人のこと、中国の政治体制に対する不信感がどういうものなのかも理解してもらえるのではないだろうか
主人公は日本に帰ることは選ばなかった
戦争被害孤児である主人公は中国の大地で育まれた自分を、大地の子として表現した
等身大の表現ではあるが、読み終わるとしばし呆然としてしまった
気持ちとしては、巡り会えた父親と日本で暮らして欲しかった