【感想・ネタバレ】大地の子(三)のレビュー

あらすじ

「あつ子、すまなかった、探し出すのが遅過ぎた」──陸一心こと松本勝男は、三十六年ぶりにめぐりあった妹・あつ子に泣いて詫びた。妹は張玉花という名で、寒村での過酷な労働の果てに、重い病いの床にあった。その夫は子どものような知能で、義母は病む張玉花を休まず畑で働かせようとする強欲な女。その頃、兄妹の実父・松本耕次は、生き別れた子どもたちの消息をつかめぬまま、奇しくも陸一心のたずさわる製鉄所建設に参加し、中国で苦労を重ねていた。

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ

第3巻は、一心が共産党員として道を切り開いていく一方で、周囲の人々の人生がゆっくりと崩れていく対比がとても印象的でした。特に、一心の妹が不当に扱われる場面は胸が痛く、読んでいてつらいシーンが多かったです。また、登場人物同士の激しい口論が続くことで、当時の中国社会の空気感や価値観の違いがより強く伝わってきました。こうした文化の差異をリアルに描き出すのは、やはり山崎豊子作品ならではだと思います。

重苦しい展開もありますが、その中で一心がどう成長し、物語がどこへ向かうのか――次の第4巻がますます楽しみです。

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2025年12月04日

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一心を取り巻く人間関係と、製鉄所建設の話とが入り混じり物語が進むにつれ引き込まれていく。
国策としての開拓団、そして国が起こした戦争の被害者となった多くの孤児達の話は読むだけでも胸が苦しくなる。
一巻の一心の時も辛かったけど、妹の話になるとさらに辛い。引き取られた養父母によっても境遇は大きく異なる。
今、こうして小説として読んでいるけれど、たくさんの人が同じ思いをしていた歴史があったことを思うと辛すぎる。

製鉄所建設の話も、これだけ考えの異なる国同士で一つのことを行うのは大変だろうと思わざるをえない。おそらく今日に至っても変わってないのだろう。

一心と妹がこの先どうなるのか、日本の親に会うことができるのか、次巻が楽しみ。

実際読者は一心が松本と会っていることはわかっていて、知らぬは本人達だけという状況になっているのが、山崎豊子さんの上手いなと思うとところ。

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2025年10月03日

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戦争が引き裂いだ兄妹の絆と国策に翻弄される主人公ら残留孤児の物語に胸が締め付けられる。たとえそれが一方からは負の歴史であったとしても、歴史を知ることは必要であり、そのためにも意義のある小説を読んでいると感じている。

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2025年02月16日

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改めて戦争が残した残虐な歴史を感じさせられる。
陸一心とその家族がどのような結末を迎えるのか次巻が楽しみ。

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2024年08月11日

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涙、涙。事実に基づく、色々な取材から、丁寧に何十年とかけて作られた作品と巻末にあったが、リアルさや感動が他の小説と違う。

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2023年11月22日

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ネタバレ

宝華製鉄所の建設に精を出す中で、ついに妹の消息をつかみ三十数年振りの再会を果たしたものの、養母にトンヤンシーとして馬車馬のようにこき使わらてきたために体がボロボロになっており、陸一心の様々な図らいも虚しく、息を引きとった時には無情さを痛感した。実父との運命の再会を果たしたものの、またも日本人という出自により一波乱巻き起こす要因になってしまうことに、むずがゆさを感じた。
宝華製鉄所の建設で仕事をともにするうちに、丹青の陸一心に対する差別的感情が薄れてきて徐々に慕うようになっていく様は、ストーリー的には予測できたが、3巻におけるヒロイン的な役割を果たしていて、ロマンス要素として物語をより充実させてくれた。

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2022年05月06日

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圧倒的な取材量に基づいた叙事詩的な大河作品
日本人の立場としては中国に対して嫌気がさすシーンも多く、ムカムカとすることも多かったが、それよりも戦争孤児の描写のリアリティが凄い

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2022年03月13日

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あつ子をはじめとした残留孤児の人生ってなんだったのか。日本政府は戦争責任として真っ先に解決に取り組まなくてはならないし、世界中の誰一人取り残してはならないという人権を尊重するために中国政府も尽力しなくてはならない。こんな事が戦後の昭和時代に起こっており、ある意味明治、江戸時代に遡って後退していた時代だ。これと似たようなケースが今でも世界中で起こっていて私たちは目を背けているのだろう。

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2021年10月22日

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親子と気づかないままでいる2人が歯がゆい。どうやって再会が果たされるのか気になる。
中国の歴史、社会、そこから生まれる文化、人間性を知る上で、とても勉強になる。

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2016年11月23日

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父親が満州の実状を知る場面、兄の妹と再会する場面、涙がこぼれそうになった。この辺は大筋はドラマと変わりないが、妹の環境は更に深刻であった。
政治的な問題も色々あり読み応えあった。

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2016年01月25日

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中国共産党の権力抗争に翻弄される製鉄所の建設、と、あたかも経済小説の様相を呈してきた第3巻。
一方で、妹の消息がわかりその最期の場面で、ついにめぐり合う父と子。いよいよ佳境へと展開。

第1巻のレビューで残留孤児と書いてしまったが、著者は「残留という言葉には、意思があり」、彼らに残留の意思はなかったのだから、「戦争犠牲孤児というのが正しい」と言っているそうだ。言葉は正しく使いたい、訂正しよう。

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2015年09月01日

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 中国の脅威的な経済発展の礎となるのが日本の経済援助と技術指導なのであるが、中国との取引には多くの煮湯を飲まされている日本企業の姿がよく描けている。たぶん中国人にしてみれば、これだけ祖国を侵略した悪人日本人に対してはどんなことをやっても当然なのだという意識があるのだろうと思う。そして、もともと中華思想に凝り固まった国なので、日本人を利用することは屁とも思わない国民性もあるのだと思う。現在では、鉄鋼どころか電化製品も情報機器も多くの分野で日本は中国に及びもつかない状況に追い込まれているのだ。
 国際競争というのは、生き馬の目を抜くような競争なのだという現実を知らなければならないのだが、いつかこんなことではなく、親切にされたことを忘れないような世界になるといいですね。

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2025年09月29日

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ネタバレ

1.2.3と読んでいますがだんだん話が理解できて読み進めるペースが上がります、
まだ3まできても、こんなに顔を合わせてる松本父とルーさんが親子だと気付かないのが、2人が会うたびハラハラしてしまいます。
とはいえ、あつこと再会ができ、その再会をきっかけに犬の名前や母の名前が思い出せたこと、次の父探しのきっかけになったようで良かったです。
何よりこれが事実に基づく話だということに戦争の歴史と惨さを感じます。

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2024年11月07日

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ネタバレ

日中合作の製鉄所建設に携わる主人公。
3巻では、中国の政変で事業が一時中止にまで追い込まれる経緯、中国の杜撰な管理体制、首都北京と農村の格差などが丁寧に描かれている。

本作では、ようやく主人公と妹が再会を果たすが、妹の運命は予想していたより過酷なものだった。一巻で、貧しい女性が法の合間を掻い潜って売春をしているエピソードがあったから、てっきり妹の伏線かと予想していたが、妹が歩んだ人生はむしろそれよりも過酷であった。

やっと巡り会えた2人だが、あまりの運命の違いから妹は主人公の負担になりつつある。
ようやく入党を果たしたのに、妹のことが原因でとんでもない問題になるのではないかと予想。

そして、とっくに父と再会できているのにお互いにその状態に気付けていないのは、読んでいてとても焦ったい。
せめて妹が亡くなる前に父と再会して欲しいと願う。

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2024年03月08日

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ネタバレ

陸一心はようやく妹との再会を果たすが精神的にも身体的にもやつれ果てたあつ子の姿は読んでいてつらいものがある。日本人でありながら、中国語でしか通じ合えない兄弟。なかなか父子であることに気づかない二人。あつ子は父と巡り合うことができるのか。最終章に続く。

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2023年06月09日

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日本人の戦争孤児・松本勝男こと陸一心。
日本人という出自故に、過酷な運命を辿ってきた。

日中プロジェクト『宝華製鉄』のメンバーとして、日本の地を踏む。

しなのふじ…
長野…
少しずつ記憶が…

政争に巻き込まれ、『宝華製鉄』建設プロジェクトは中止に…

夏国峰にババをひかせたという、鄧平化、恐るべし。その後、あっさり再開とは…

松本耕次は、『宝華製鉄』建設プロジェクトの上海事務所長として、多忙な日々を送りながら、残留孤児となった勝男とあつ子の行方を探していた。

巡回医療を続ける妻・江月梅から張玉花というあつ子に年齢が近い、残留孤児がいることを知り、張玉花に会いに行く陸一心…

そこには過労で病に倒れた張玉花が…

もう少し早ければ…

同じように探されることもなく、日本人として、日本に戻れなかった人はどれだけいたんだろう。

満洲開拓団とはなんだったのだろうか⁇

何の罪もない弱い人たちを置き去りにするなんて…

残留孤児の中には、あつ子のように極貧の生活で家族にも会えず、日本にも戻れないまま、中国で亡くなっていった人はどれだけいたのだろうか。

しかし、なんでも金、金という中国人には言葉がない…

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2022年10月17日

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3/4が終わり、いよいよクライマックスへ!

高炉建設計画の話になると、日中の民族性の違いがかなり露わになっているなと感じた。中国駐在の日本メンバーは郷に従うの大変そう笑

丹青の株がここに来て上がってきた。
元夫を父の権力により左遷させるなど勝手なところもあるけれど、仕事への熱量は人一倍。最終巻、一心が仕事で壁にぶつかった時のキーマンか。その壁を丹青の夫が作りそうだが笑

鄧平化政権指導。高炉の完成はいかに、一心の日本との関わりなどまだまだ見逃せない。

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2020年08月10日

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陸一心の生き別れた妹が見つかった。
貧しい農民の家に売られ、人間とは思えぬような扱いを受け、幼い頃から体がボロボロになるまで働かされており、今や病に侵されて生死の狭間にいた。
そんな妹の姿に衝撃を受けるも、どうすることも出来ない。
そんな中、新たな事実を突きつけられる一心。
また、日本人であるが故に付きまとう疑惑の目。
まだまだ一心は辛い人生から逃れられない。

様々な事情で肉親を探す戦争孤児たち。
しかし、それさえも出来ない貧しい者も多い中、出会えたことは奇跡ともいえる。
そんな肉親探しの苦労も多く垣間見える。

2019.4.19

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2019年04月20日

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やっと妹と会えた。。。
次から次へと色々なドラマが巻き起こり過ぎて、ハラハラドキドキ。

4巻へ、、、

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2017年10月22日

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外から見た情報だけでの国単位の抽象化は、無意味な闘争を生む。
詳細を経て、抽象化をし、初めて正しい議論が可能となる。

(以下抜粋)
○われわれ中国を侵略した侵略主義者と、
 日本人民を分けて考えています、
 日本人民は侵略戦争の犠牲者であり、
 残量虎児はさらにおおきな偽善者であります(P.82)

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2017年05月04日

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相変わらず中国が、がしがしやってくる。メインにあるのは残留孤児問題なんだろうけど、その話がかすんでくるくらいの中国のぶっ飛びっぷりがすごい。しかも鉄鋼の話を熱く語るし。ビジネスエンターテイメントなのか。

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2014年05月27日

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ネタバレ

陸一心はついに妹のあつ子・張玉花と再会する。父の松本耕次もすぐ目の前で同じ仕事に関わっているというのに、なんという運命。
製鉄所建設の話が長くてちょっと読み疲れてたけど、妹の手がかりが出てきたところから気になってどんどん読み進んだ。

元恋人の趙丹青夫婦の動きも気になる。松本氏から見たことで少し丹青の印象が変わったかも。「高慢で派手好み」との噂はあるが「行動力のある仕事熱心な女性である」と。
その後の一心との会話の中でもそういった件は出てくる。
さてあと一巻。

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2014年03月17日

Posted by ブクログ

ネタバレ

妹の人生が悲しい。
これはビジネス書ではないかと思える。
山崎先生、あまりにスケールが大きくて、
先生の本は自分が元気な時ではいと読めません。
本に自分のエネルギーを吸われてしまいそうだからです。

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2022年07月18日

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本作では松本耕次、陸一心それぞれが肉親探しを行いついにあつ子との再会を果たす。
次巻が最終巻、山崎豊子さんらしい印象的な結末を期待。

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2024年04月07日

Posted by ブクログ

 全4巻の第3巻目。
 本巻は文革後の政争、宝華製鉄の建設中止、中国で離ればなれになった陸一心(日本名:松本勝男)と妹あつ子との再会と、目まぐるしく展開が移り行く激動の流れになっている。
 中国側の隠蔽体質と強欲さが浮き彫りになっている印象を受ける。また、いつの時代もそうだが、政治の影響を受けて苦労する一般人の姿も浮き彫りになっている。民族性や政争など、現代にも通じる内容であり、考えさせられる。

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2023年01月13日

Posted by ブクログ

中国残留孤児を主人公に中国の戦後、共産党社会の有様を描いた長編小説。日中友好の証として計画された製鉄所建設プロジェクトとともに、主人公の人生は一つの転機を迎え、そして"大地の子"として決断を下す。

筆者の綿密な取材に基づき描き出された物語は、重厚かつディテールもしっかりしている
主人公の養父の気高さには感動するが、それ以外の筆者が描く中国の姿は正直好きになれなかった。大元は日本の戦争のためとはいえ、作中主人公は散々苦杯をなめ、また生き別れた妹の末路はあまりに哀れ。技術協力も結局は同床異夢だったのだろう。

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2022年05月18日

Posted by ブクログ

あらすじ
太平洋戦争の敗戦によって、満州で残留孤児となった主人公・陸一心(中国名)が、中国人養父母への愛情と日本の実父との愛憎に揺れながらも、文化大革命の荒波を越え、日中共同の製鉄プラント事業を完成させるまでの物語。
感想
これが山崎豊子かって感じがした。

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2021年12月09日

Posted by ブクログ

政治に翻弄される製鉄所建設。技術者としてはたまらんな
そして妹とようやく再会できる一心
しかし、日本の国としての戦後処理は酷い

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2020年01月12日

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「あつ子、すまなかった、探し出すのが遅過ぎた」-陸一心こと松本勝男は、三十六年ぶりにめぐりあった妹・あつ子に泣いて詫びた。妹は張玉花と名のり、寒村で過労の果てに病いの床にあった。兄妹の実父・松本耕次は、子供らの消息をつかみえぬまま、奇しくも陸一心とともに日中合作の「宝華製鉄」建設に参加していた。

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2018年06月10日

Posted by ブクログ

戦争が引き起こした悲劇、四巻でどう展開するか、すぐ読みたくなってしまう。
中国の国家としての行いは、今も変わらず、納得いかない、最近ではベトナムの反中、戦争にでもなったら、日本は相当の被害が間接的にあるでしょう。

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2014年06月01日

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