山崎豊子のレビュー一覧
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日本航空をモデルとした労使間の争い。企業に都合の悪い組合活動をするものへの懲罰・見せしめ的人事、大企業が一個人に対して倫理観を無視しここまで牙をむくのかと戦慄する。詳細は異なるとされるが実際に内規をこえ10年の海外赴任を強制された社員がモデルとなる。パキスタンのカラチ、イランのテヘラン、ケニアのナイロビ。アラブの商人は「砂漠の人」一期一会で仕事をするため誠意は皆無。
正義感が強く芯の通った主人公 恩地がひどい仕打ちを受けていくのは見ていて辛いものがあるが、へこたれずに前を向いて突き進む姿は半沢直樹を見ているようである。
御巣鷹山の事故を機に物語は新章に入る。社外から招いた会長職に会社の再建を託 -
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山崎豊子作品、未完の遺作。
いつものことながら、膨大な取材と勉強の爪痕を感じられる骨太の作品です。
本作は、海上自衛隊の潜水艦と遊漁船の衝突事故と海難審判を中心に物語が進みますが、山崎先生が最も描きたかったのは、次作で描くはずだった主人公の父親の話。真珠湾攻撃の緒戦で捕虜第一号となり波乱の人生を送ったモデルが、主人公の父親でした。
続きを読みたかった。
多くの艦船が沈められ、多くの犠牲者が眠る太平洋の地を、二度と戦争の場にしてはいけない、という信念をもつ父と息子の100年物語。未完のは残念ですが、本作及び、山崎先生の後書や新潮社プロジェクト、秘書の方の解説は是非読んでいただきたいと思う内容 -
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なんて悲しく、そして気高い生涯なんでしょう‥。美貌と、才能と、大地主の長女としてのあふれるほどの富を持ちながら、突如 早逝されたと記され、歌壇から消息を絶った歌人・小室みやじ。しかし彼女は生きていたのです。その謎をゆっくりと紐解くように、彼女に54年間付き添った老婢のよしが語り始めます。
大正時代の美しい 尊敬語、謙譲語で語られる文章は、現代の私たちには 読みづらいと感じるかもしれませんが、それこそがミステリアスで残酷な運命をたどった 小室みやじをよく表現していると思います。
このお話にはモデルがいると噂され、ネットでもこの人では?と名指されていて、あとがきでは作者はきっぱりと否定していま -
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以下、背表紙の文言。
ついに「その日」はおとずれた。航空史上最大のジャンボ機墜落事故 犠牲者520名
遺族係となった恩地が直面する想像を絶する悲劇
今回の内容は読んでいて、すこしキツかった。損壊遺体の描写が多く、ホラー映画を見ている感じがした。
墜落直後に捜索にあたる人達が目にする御巣鷹山に広がる、おびただしい数の損壊遺体の数々。はげしく死臭漂う現場。
バラバラに成った遺体の一部を少しでも多く集めようと、たくさんの棺を開ける遺族。一度では気がすまず、何度も遺体収容所を訪れる遺族。
堂本社長は遺族の家を訪ねるが、罵倒され、水をかけられたり、墓前で土下座をさせられたりする。
1・2巻に -
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ネタバレ日中合作の製鉄所建設に携わる主人公。
3巻では、中国の政変で事業が一時中止にまで追い込まれる経緯、中国の杜撰な管理体制、首都北京と農村の格差などが丁寧に描かれている。
本作では、ようやく主人公と妹が再会を果たすが、妹の運命は予想していたより過酷なものだった。一巻で、貧しい女性が法の合間を掻い潜って売春をしているエピソードがあったから、てっきり妹の伏線かと予想していたが、妹が歩んだ人生はむしろそれよりも過酷であった。
やっと巡り会えた2人だが、あまりの運命の違いから妹は主人公の負担になりつつある。
ようやく入党を果たしたのに、妹のことが原因でとんでもない問題になるのではないかと予想。
そし