山崎豊子のレビュー一覧
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明治時代たくさんの日本人が国外へ渡ったことは知っていた。もちろん、第二次世界大戦が起こったことも知っている。でも、戦争の中で移民たちがどのような扱いを受けたのかなんて想像したこともなかった。山崎豊子先生は、いつだって私の浅はかさを突きつけてくる。
日系二世は正真正銘アメリカ国民なのに、戦時中は捕虜として収容所に入れられたらしい(ちなみに同じ同盟下にあったドイツ・イタリア人はこのような扱いは受けなかった)。その収容所の様子は、想像するだに不快感がこみ上げる。さらには日系二世に残酷な問いが投げかけられる。
ー命令されれば米陸軍兵士として戦闘任務につくか
ー日本の天皇に対する忠誠や服従を拒否するか
日本で教育を受けた日系一世とアメリカで教育を受けた日系二世からなる家族がバラバラになることは、当然の成り行きである。天羽家の一人一人が下した決断の先に一体どのような運命が待っているのか。 -
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経済界・金融界、そして万俵家のドロドロとした関係を精緻にかつドラマティックに描いており、改めてとんでもない作家だと圧倒された。
上巻冒頭の華やかな万俵家の食事の風景が、最後にはもの寂しい風景に変わっており、この華麗なる一族が終焉を迎えたことを深く印象付ける。
銀行家としての野心や名声のために、家族や周囲の人間を意のままに操ろうとし、時に突き放し陥れ、そして失い、それでもなお自らの方針を覆さない万俵大介の姿は病的でもあり、恐ろしかった。自らの野心を達成するためにあらゆる手段を講じてきた万俵大介だったが、今後彼の野望が崩壊されていくことがラストで示唆され、痛快な読後感があった。
ドラマ(観ていないが)ではキムタクが鉄平を演じていたそうだが、キムタクに鉄平感はあまりないように感じた。もう少しキムタクが歳を取ったら、むしろ大介役がハマるのでは。 -
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ネタバレ山崎豊子未完の遺作。
自衛隊の潜水艦くにしおと一般の漁船の衝突事故を中心に、関係者一人一人の思惑や自衛隊に対する世間の風当たりの強さが多角的に描かれていて面白かった。特に審判では漁船の船長に批判的な見方をするサキや、自衛隊に一太刀浴びせようとする田坂弁護士や、堂々と弁明する筧艦長に不信感を持つ頼子や、自信や自主性がなく弁護士をチラチラ見る安藤船長や、いろんな意見や思いがあることが描かれていた。
実直な主人公花巻朔太郎とフルーティストの小沢頼子との恋が淡く進んでいくのもすてきだった。頼子の行動力はすごい。儚げに見えるのに傍聴に行ったり、朔太郎に真実を確かめる電話をかけたり、コンサート後に呼び出したり、芯が強くてギャップがあってよき。
本当は真珠湾攻撃での捕虜第一号だった、花巻朔太郎の父花巻和成が抱えている心の闇、戦争の闇と自衛隊がメインテーマだったようだけれど、その序章の第一部で終わってしまったというのは残念。ただ自衛隊が違憲だとか、戦前回帰だとか、何も知らないで印象論で自衛隊や防衛大を煙たがりがちだけど、実際自衛隊が今日も日本を守っているとか、自衛隊についてもっと理解した上でないと自衛隊の是非を論ずることはできないと思った。 -
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圧倒的としか言いようがない読後感、、、。
万俵家自体が愛人の相子まで含めた大所帯なのにもかかわらず、万俵家を取り巻く海千山千の怪物達の全てが無駄なく、物語のプロットを崩すことなく描かれている。
上巻、中巻のあからさまな伏線がなかなか回収されないことに疑問を覚えていたが下巻でその全てが漏れなく回収されていて、この筆力たるや、、。
自らの子が命を捧げた会社とついには我が子の命そのものさえも生贄に野望の実現にこぎつけた万俵大介が鉄平が血を分けた実子であることを知ったあのシーンの衝撃は全てを読み終わった後でもずっしりとのしかかり続けている。
こんな小説読んだ後で社会派小説書こうとか思う人いるのかな、、? -
Posted by ブクログ
【感想】
中巻を読み終えて・・・・
徐々に鉄平と大介の対立が深まっていき、また鉄平に不運の事態が次々と訪れる。
父子の対立には、鉄平の出生に関する疑惑があるようで、読んでいくうちに大介の鉄平に対する態度が本当に冷たくなっていくのが分かる。
また、本物語で特にイイ味を出しているのが美馬ですね。
大介の懐刀でありながらも、どこか悪だくみをしている様子がありありと見て取れた。
鉄平の高炉建設の説明を聞く箇所がありましたが、「大介は不気味なほど無表情に、美馬はプラモデルでも見るような無感動な顔付で、鉄平の説明を聞いていた」といった風に、大介と美馬の態度は読んでいて本当に戦慄が走りました・・・・
下巻でどのようにこの物語が終結するのか、ワクワクしますね。
【あらすじ】
阪神特殊鋼の専務万俵鉄平は、米国企業からの増注契約をキャンセルされて危機に陥る。
旧友である大同銀行の三雲頭取が多額の融資を了承してくれるが、その矢先、熱風炉が爆発するという事故が出来──。
一方、万俵家の次女二子は、総理の縁戚と見合いをしながらも、鉄平の部下である一之瀬に惹かれていく。
万俵家に同居する大介の愛人・高須相子が企む華麗な閨閥づくりの行方は……。
【メモ】
p323
「窮地に立っている子会社に、親会社の阪神銀行としてあまりに冷た過ぎる…」
「そうでしょうか?銀行家たる者は、それでいいのじゃないでしょうか。僕だって、その程度にしか、お貸ししないかも知れませんよ」
はっとするような冷たさで云った。それは今日の夕方、父が自分に向かって投げつけた冷たさと酷似していた。
鉄平の脳裡に、太平スーパーを冷酷極まりないやり方で潰し、流通部門を持っていない万俵商事に吸収してしまった銀平のやり方が思い浮かび、銀平が老獪冷徹な銀行家の父と重なった。
「お前は、いつも銀行は嫌だと云っているが、どうしてどうして、見事なものだよ」
鉄平は、自分と弟の間にある大きな距離を感じ、グラスをテーブルに置いて立ち上がった。
p523
「あなたって人は、流産で子どもを亡くしても、全然平気でいられるのね」
詰るように言うと、
「最初から子供はいらない、堕した方がいいと言っていた僕だからねえ」
銀平は無感動に答えた。
「まあ、なんて酷いことを言うの。私が流産したのもあなたのせいよ」
「君が流産したのが、どうして僕のせいになるんだい?勝手に養生しなかっただけのことだろう。迷惑だよ、そんな言い方は」
p592
鉄平はこの一年あまり、全力を傾け、今一息もいうところに迫った高炉建設現場を一つ一つ愛おしむような熱っぽさで説明した。
しかし石橋からの高炉建設現場は豆粒ほどにしか見えず、大介は不気味なほど無表情に、美馬はプラモデルでも見るような無感動な顔付で、鉄平の説明を聞いていた。 -
購入済み
本当に物事を知らないということは、幸せでもあり、不幸でもある。 日本人としてこの時代に生まれたことは、自らの意思ではないが、日本人として先人がしてきたことに対する検証と、反省と、また、それらを参考として歴史に学ぼうとする姿勢を持ち、それらを真摯に受け止めることは日本人としての責務ではないだろうか。
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Posted by ブクログ
【感想】
結論から申し上げますと、やっぱり山崎豊子は凄まじく面白い!!
この一言に尽きます(笑)
本作者の「不毛地帯」や「沈まぬ太陽」など他作品も共通して言えること。
小説の域を軽く超えている業界・企業・社会の緻密さが描かれている点。
また、人間関係の感情であったり打算であったりなどの生々しさ。
書き物でここまでリアルに表現することが出来るのは、山崎豊子の辣腕あってこそなのでしょう!!
山崎豊子の作品は読むのにかなり体力を要しますが、「白い巨塔」など、彼女の他の作品も今後読んでいきたいな~
さて、「華麗なる一族 上巻」のレビューについて。
タイトル通り、銀行創業者の一族の浮世離れした華々しさや晴れやかな様子が描かれているが、中々どうして、タイトルとは違って一族1人1人の人間臭さや泥臭さ、、、
いや、表現がやや違う。
ドロドロとした人間模様や、人の持つ残忍さ・冷酷さも事細かに描かれている。
この点に関して、もはや全然華麗ではない(笑)
作中、銀平の妻である万樹子の台詞で、
「ご立派で、お上品なのは表面ばかりで、中身は下劣そのもの、まんまと高須相子の口車にのせられたわ!」
という一節があった。
個人的に、この台詞が本作を一番端的に表しているな~と読んでいて感心しました。
物語は、父である大介や長男・鉄平、次男・銀平、妻・寧子、大介の妾である相子など、章によって物語の主人公が変わり、視点や価値観も変わっていく。
それぞれの主観や思惑をもって物語が進んでいき、「華麗なる一族」の陰の部分が段々と暴かれていく様は見事としか言いようがない。
この本の見所は、「華麗なる一族」の、ある種低俗な「人間臭さ」が紐解かれていくところなのかも・・・
ただ、銀行の仕組みやら慣習、業界ルールや事情についてもかなり事細かに書かれてはいるが、その点は読んでいて理解が追い付けなかった・・・
時代背景が昭和中期とやや古く、お金の価値も現代とやや異なるのも難読になる要素の1つなのかも。
まぁ、読んでいてベラボウに面白いです!!!
上・中・下巻となかなか長編だが、続きがかなり楽しみな作品。
【あらすじ】
業界ランク第10位の阪神銀行頭取、万俵大介は、都市銀行再編の動きを前にして、上位銀行への吸収合併を阻止するため必死である。
長女一子の夫である大蔵省主計局次長を通じ、上位銀行の経営内容を極秘裏に入手、小が大を喰う企みを画策するが、その裏で、阪神特殊鋼の専務である長男鉄平からの融資依頼をなぜか冷たく拒否する。
不気味で巨大な権力機構〈銀行〉を徹底的に取材した力作。
【メモ】
p446
「鉄平さん、お父さまに何ということをおっしゃるの」
相子が窘めるように云った。
途端、鉄平の精悍な眼がぎょろりと相子に向いた。
「君は黙ってろ。親子が争っている時、口を出せるのは母親だけだ」
p447
「世間では品行方正で、冷厳な頭取として通り、一歩家庭へ入れば妻妾同居の生活を営んでいるお父さんは、世間を騙している偽善者ですよ!そういうお父さんの生活が、銀平を妙にニヒルな性格にしたんでしょう!」
心の中にどろどろと堆積していた怒りをぶちまけるように言い、相子の方を見、
「君もそろそろ自分自身の将来を考えるべきじゃないか」
と決めつけた。
「私にはまだ、私が育て教育してきた二子さんと三子さんの結婚問題が残っておりますわ。それに私はお父さまをお愛ししております。ある意味ではあなたのお母様以上に」
静かな声であったが、そこには何者にも動じない強靭さがあった。
p448
「銀平、お前もこの際、何か言うことはないのか!」
「兄さん、お父さんと争うなんて無駄なことですよ。企業家としての識見、財力、社会的地位。すべての点で何一つ、僕たちはお父さんにかなうものがない。勝てっこありませんよ」
p531
「何が今日はフランス語、明日は英語で晩餐ですか!ご立派で、お上品なのは表面ばかりで、中身は下劣そのもの、まんまと高須相子の口車にのせられたわ!」