山崎豊子のレビュー一覧
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経済界・金融界、そして万俵家のドロドロとした関係を精緻にかつドラマティックに描いており、改めてとんでもない作家だと圧倒された。
上巻冒頭の華やかな万俵家の食事の風景が、最後にはもの寂しい風景に変わっており、この華麗なる一族が終焉を迎えたことを深く印象付ける。
銀行家としての野心や名声のために、家族や周囲の人間を意のままに操ろうとし、時に突き放し陥れ、そして失い、それでもなお自らの方針を覆さない万俵大介の姿は病的でもあり、恐ろしかった。自らの野心を達成するためにあらゆる手段を講じてきた万俵大介だったが、今後彼の野望が崩壊されていくことがラストで示唆され、痛快な読後感があった。
ドラマ(観ていないが)ではキムタクが鉄平を演じていたそうだが、キムタクに鉄平感はあまりないように感じた。もう少しキムタクが歳を取ったら、むしろ大介役がハマるのでは。 -
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ネタバレ山崎豊子未完の遺作。
自衛隊の潜水艦くにしおと一般の漁船の衝突事故を中心に、関係者一人一人の思惑や自衛隊に対する世間の風当たりの強さが多角的に描かれていて面白かった。特に審判では漁船の船長に批判的な見方をするサキや、自衛隊に一太刀浴びせようとする田坂弁護士や、堂々と弁明する筧艦長に不信感を持つ頼子や、自信や自主性がなく弁護士をチラチラ見る安藤船長や、いろんな意見や思いがあることが描かれていた。
実直な主人公花巻朔太郎とフルーティストの小沢頼子との恋が淡く進んでいくのもすてきだった。頼子の行動力はすごい。儚げに見えるのに傍聴に行ったり、朔太郎に真実を確かめる電話をかけたり、コンサート後に呼び出したり、芯が強くてギャップがあってよき。
本当は真珠湾攻撃での捕虜第一号だった、花巻朔太郎の父花巻和成が抱えている心の闇、戦争の闇と自衛隊がメインテーマだったようだけれど、その序章の第一部で終わってしまったというのは残念。ただ自衛隊が違憲だとか、戦前回帰だとか、何も知らないで印象論で自衛隊や防衛大を煙たがりがちだけど、実際自衛隊が今日も日本を守っているとか、自衛隊についてもっと理解した上でないと自衛隊の是非を論ずることはできないと思った。 -
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圧倒的としか言いようがない読後感、、、。
万俵家自体が愛人の相子まで含めた大所帯なのにもかかわらず、万俵家を取り巻く海千山千の怪物達の全てが無駄なく、物語のプロットを崩すことなく描かれている。
上巻、中巻のあからさまな伏線がなかなか回収されないことに疑問を覚えていたが下巻でその全てが漏れなく回収されていて、この筆力たるや、、。
自らの子が命を捧げた会社とついには我が子の命そのものさえも生贄に野望の実現にこぎつけた万俵大介が鉄平が血を分けた実子であることを知ったあのシーンの衝撃は全てを読み終わった後でもずっしりとのしかかり続けている。
こんな小説読んだ後で社会派小説書こうとか思う人いるのかな、、? -
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【感想】
上中下3部作の下巻を読み終えましたが、かなり壮絶な終わり方でした。
ちょっと前にドラマで「半沢直樹」を観ていて、池井戸潤特有のスカっとするような勧善懲悪の終わり方を本作品にも期待していたのですが・・・
そこは山崎豊子、容赦がありませんね。残念ながらかなり胸糞悪い終わり方となっていました・・・
この一族、全然華麗じゃねえよ!!!!笑
読んでいて特に、下巻で凋落っぷりを感じたのは、やはり相子に関するエピソードでしょう。
上巻・中巻では思うがままに万俵家を采配し、栄華を極めるような相子でしたが、下巻の途中からは万樹子の里帰りや、次女・二子の縁談がうまくいかないなど自身の影響力の低下が露わになり、最後は大介から破局の申し出をされ取り乱してしまう始末。
読者としてはざまあ見やがれ!と思いましたが、よくよく考えられると大介に弄ばれた一人の不幸な女性だと思うと、哀れでなりませんでした。
また、万俵大介も、下巻になって影響力に衰えを見せ始めた内の一人だったかと思います。
あれだけ憎んでいた鉄平が自死を遂げてしまい、その時になって初めて鉄平と自分が血のつながった父子だと理解するなんて、なんて滑稽なのかなと読んでいて思いました。
そして、万俵自身が色々な事を犠牲にしてようやく成し遂げた都銀同士の合併でしたが、それすらも近い将来により大きな銀行に食われてしまう事が確定事項としてあるなんて・・・・
作中では描かれていませんが、近い将来にこの「華麗なる一族」が凋落する事を喚起させる描写に、戦慄が走りました。
などなど、かなりドロドロして胸糞悪い終わり方をした物語でしたが、唯一の救いだったのは、鉄平の死後に心情の変化があった万俵家の子ども達でしょう。
二子は結局お見合いは破談となって自身が思い合った男性と縁を結ぶことが出来ました。
ニヒルで斜に構えた考え方しかできなかった次男・銀平も、鉄平の死によって心の氷が融和するような描写がありました。
鉄平は犠牲となりましたが、その命と引き換えに、万俵家の子どもたちに新たな幸福が訪れる事を、切に願っています。
【あらすじ】
万俵大介は、大同銀行の専務と結託して、鉄平の阪神特殊鋼を倒産へと追いやり、それをも手段に、上位の大同銀行の吸収をはかる。
鉄平は、三雲頭取を出し抜いた専務と父親の関係を知るに及び、丹波篠山で猟銃自殺をとげる。
帝国ホテルで挙行された新銀行披露パーティの舞台裏では、新たな銀行再編成がはじまっていた。
聖域〈銀行〉にうずまく果てしない欲望を暴く熾烈な人間ドラマ。
【メモ】
p56
「では、ご機嫌よう。皆さまにはあなたからおよろしく」
と言い、万樹子は玄関を出て行った。
その後ろ姿を見送りながら、相子は、どうせ自分の婚前の秘密を明かされることを恐れて、万俵家の三台並んだベッドのことも言えず、舞い戻って来るに違いないとたかをくくっていたが、初めて自分の指図が通らなかった口惜しさが相子の心を錐揉んだ。
p156
こうして一対一で向かい合うと、一種の威圧感を持って映る。
万俵はこの時、自分が都市銀行でただ一人のオーナー頭取のは云いながら、たかだか第十位の地銀的都市銀行の頭取にしか過ぎないことに、かすかな劣等感を覚えた。
(中略)
総理夫人の予定に合わせて、二度も正式の見合いの日取りを変更し、京都の嵯峨の「吉兆」であれほど大層にした見合いであるにもかかわらず、総理には全く伝わっていないのか。
万俵は自尊心を傷つけられて、視線を総理の背後へ移した。
(中略)
万俵は、視線を佐橋総理へ向けた。
今日の本当の目的は、総理夫人の甥の細川一也との婚約を有難って報告に来、田舎者扱いされるためではない。
p278
「いまとなっては、お目にかかる必要はないと思います。あなたと私との間はもう終わっているのです。あとは法廷で争うだけです」
万俵の耳に法廷という言葉が強い響きを持って残った。
(中略)
万一そのようなことになれば、阪神銀行の信用と同時に、万俵家の家名を汚し、来春にひかえている二子の結婚にまで響き、ここまで完璧に積み上げて来た自分の野心が一挙に打ち砕かれてしまう。
今は何よりも、鉄平に告訴を取り下げさせることであった。
p314
「お父さんも、今度ばかりは、やり過ぎですよ」
「なにがだ?」
「鉄平兄さんのことですよ。会社を潰しておいて、その上、管財人が帝国製鉄の常務ではひどすぎますよ」
(中略)
「兄さんに対するお父さんの態度は少なくともそんなものじゃありませんね。しかし、どのような大きな意図のもとでも、息子の会社を平然と潰すお父さんと、だからと云ってそれを告訴する兄さんも、どちらもおかしいですよ。僕には解りませんねぇ」
p501
三雲は、しばし万俵の顔を凝視し、
「万俵さん、孟子の教えに『天下ヲ得ルニハ、一不義ヲ成サズ、一無辜ヲ殺サズ』という言葉がありますねぇ」
静かな淡々とした語調で言った。
天下を得るには、一つの不義もなさず、一人の罪なき者も殺してはならぬという意であった。
自ら不倫、不義の私生活を営み、罪なき者、鉄平を死に追いやってしまった万俵としては、その言葉がぐさりと鋭く胸に突き刺さった。
p521
「あなたって怖ろしい人ね。ご自分の企業的野心を満たすためには、親子の絆のみならず、男女の絆も、ご用済みとなれば平然と切っておしまいになるのね」
相子は許し難いように言い、目の前の封筒を万俵に押し返した。
「別れない!意地でも別れて差し上げない!」
万俵は瞬きもせず、相子を凝視し、
「妻でもなく、まして子供もない仲で、意地でも別れないなどというのはおかしいじゃないかねぇ。相子らしくない取り乱し方だ」
ぷつんと断ち切るように言った。
p527
「金融再編成の火蓋を切るために、ともかく都市銀行同士の大型合併が必要だったからだ。
(中略)
今日発足した東洋銀行の合併後の体質改善を図り、名実ともにワールドバンクたる銀行をつくる。
そのためには東洋銀行を上位4行の一つと再合併させることだ。」
永田大臣の声が室内に低く籠り、美馬は驚愕のあまり言葉も出なかった。
(中略)
その一瞬の引きつれるように歪んだ笑いが、まさか舅である自分を裏切る戦慄だとは、万俵は気づかなかった。
万俵は、3年先に再合併される運命に置かれつつあることも知らず、会場を埋めた来賓たちの乾杯を受け、激励の握手をさらに受け続けていた。 -
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【感想】
中巻を読み終えて・・・・
徐々に鉄平と大介の対立が深まっていき、また鉄平に不運の事態が次々と訪れる。
父子の対立には、鉄平の出生に関する疑惑があるようで、読んでいくうちに大介の鉄平に対する態度が本当に冷たくなっていくのが分かる。
また、本物語で特にイイ味を出しているのが美馬ですね。
大介の懐刀でありながらも、どこか悪だくみをしている様子がありありと見て取れた。
鉄平の高炉建設の説明を聞く箇所がありましたが、「大介は不気味なほど無表情に、美馬はプラモデルでも見るような無感動な顔付で、鉄平の説明を聞いていた」といった風に、大介と美馬の態度は読んでいて本当に戦慄が走りました・・・・
下巻でどのようにこの物語が終結するのか、ワクワクしますね。
【あらすじ】
阪神特殊鋼の専務万俵鉄平は、米国企業からの増注契約をキャンセルされて危機に陥る。
旧友である大同銀行の三雲頭取が多額の融資を了承してくれるが、その矢先、熱風炉が爆発するという事故が出来──。
一方、万俵家の次女二子は、総理の縁戚と見合いをしながらも、鉄平の部下である一之瀬に惹かれていく。
万俵家に同居する大介の愛人・高須相子が企む華麗な閨閥づくりの行方は……。
【メモ】
p323
「窮地に立っている子会社に、親会社の阪神銀行としてあまりに冷た過ぎる…」
「そうでしょうか?銀行家たる者は、それでいいのじゃないでしょうか。僕だって、その程度にしか、お貸ししないかも知れませんよ」
はっとするような冷たさで云った。それは今日の夕方、父が自分に向かって投げつけた冷たさと酷似していた。
鉄平の脳裡に、太平スーパーを冷酷極まりないやり方で潰し、流通部門を持っていない万俵商事に吸収してしまった銀平のやり方が思い浮かび、銀平が老獪冷徹な銀行家の父と重なった。
「お前は、いつも銀行は嫌だと云っているが、どうしてどうして、見事なものだよ」
鉄平は、自分と弟の間にある大きな距離を感じ、グラスをテーブルに置いて立ち上がった。
p523
「あなたって人は、流産で子どもを亡くしても、全然平気でいられるのね」
詰るように言うと、
「最初から子供はいらない、堕した方がいいと言っていた僕だからねえ」
銀平は無感動に答えた。
「まあ、なんて酷いことを言うの。私が流産したのもあなたのせいよ」
「君が流産したのが、どうして僕のせいになるんだい?勝手に養生しなかっただけのことだろう。迷惑だよ、そんな言い方は」
p592
鉄平はこの一年あまり、全力を傾け、今一息もいうところに迫った高炉建設現場を一つ一つ愛おしむような熱っぽさで説明した。
しかし石橋からの高炉建設現場は豆粒ほどにしか見えず、大介は不気味なほど無表情に、美馬はプラモデルでも見るような無感動な顔付で、鉄平の説明を聞いていた。 -
購入済み
本当に物事を知らないということは、幸せでもあり、不幸でもある。 日本人としてこの時代に生まれたことは、自らの意思ではないが、日本人として先人がしてきたことに対する検証と、反省と、また、それらを参考として歴史に学ぼうとする姿勢を持ち、それらを真摯に受け止めることは日本人としての責務ではないだろうか。
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【感想】
結論から申し上げますと、やっぱり山崎豊子は凄まじく面白い!!
この一言に尽きます(笑)
本作者の「不毛地帯」や「沈まぬ太陽」など他作品も共通して言えること。
小説の域を軽く超えている業界・企業・社会の緻密さが描かれている点。
また、人間関係の感情であったり打算であったりなどの生々しさ。
書き物でここまでリアルに表現することが出来るのは、山崎豊子の辣腕あってこそなのでしょう!!
山崎豊子の作品は読むのにかなり体力を要しますが、「白い巨塔」など、彼女の他の作品も今後読んでいきたいな~
さて、「華麗なる一族 上巻」のレビューについて。
タイトル通り、銀行創業者の一族の浮世離れした華々しさや晴れやかな様子が描かれているが、中々どうして、タイトルとは違って一族1人1人の人間臭さや泥臭さ、、、
いや、表現がやや違う。
ドロドロとした人間模様や、人の持つ残忍さ・冷酷さも事細かに描かれている。
この点に関して、もはや全然華麗ではない(笑)
作中、銀平の妻である万樹子の台詞で、
「ご立派で、お上品なのは表面ばかりで、中身は下劣そのもの、まんまと高須相子の口車にのせられたわ!」
という一節があった。
個人的に、この台詞が本作を一番端的に表しているな~と読んでいて感心しました。
物語は、父である大介や長男・鉄平、次男・銀平、妻・寧子、大介の妾である相子など、章によって物語の主人公が変わり、視点や価値観も変わっていく。
それぞれの主観や思惑をもって物語が進んでいき、「華麗なる一族」の陰の部分が段々と暴かれていく様は見事としか言いようがない。
この本の見所は、「華麗なる一族」の、ある種低俗な「人間臭さ」が紐解かれていくところなのかも・・・
ただ、銀行の仕組みやら慣習、業界ルールや事情についてもかなり事細かに書かれてはいるが、その点は読んでいて理解が追い付けなかった・・・
時代背景が昭和中期とやや古く、お金の価値も現代とやや異なるのも難読になる要素の1つなのかも。
まぁ、読んでいてベラボウに面白いです!!!
上・中・下巻となかなか長編だが、続きがかなり楽しみな作品。
【あらすじ】
業界ランク第10位の阪神銀行頭取、万俵大介は、都市銀行再編の動きを前にして、上位銀行への吸収合併を阻止するため必死である。
長女一子の夫である大蔵省主計局次長を通じ、上位銀行の経営内容を極秘裏に入手、小が大を喰う企みを画策するが、その裏で、阪神特殊鋼の専務である長男鉄平からの融資依頼をなぜか冷たく拒否する。
不気味で巨大な権力機構〈銀行〉を徹底的に取材した力作。
【メモ】
p446
「鉄平さん、お父さまに何ということをおっしゃるの」
相子が窘めるように云った。
途端、鉄平の精悍な眼がぎょろりと相子に向いた。
「君は黙ってろ。親子が争っている時、口を出せるのは母親だけだ」
p447
「世間では品行方正で、冷厳な頭取として通り、一歩家庭へ入れば妻妾同居の生活を営んでいるお父さんは、世間を騙している偽善者ですよ!そういうお父さんの生活が、銀平を妙にニヒルな性格にしたんでしょう!」
心の中にどろどろと堆積していた怒りをぶちまけるように言い、相子の方を見、
「君もそろそろ自分自身の将来を考えるべきじゃないか」
と決めつけた。
「私にはまだ、私が育て教育してきた二子さんと三子さんの結婚問題が残っておりますわ。それに私はお父さまをお愛ししております。ある意味ではあなたのお母様以上に」
静かな声であったが、そこには何者にも動じない強靭さがあった。
p448
「銀平、お前もこの際、何か言うことはないのか!」
「兄さん、お父さんと争うなんて無駄なことですよ。企業家としての識見、財力、社会的地位。すべての点で何一つ、僕たちはお父さんにかなうものがない。勝てっこありませんよ」
p531
「何が今日はフランス語、明日は英語で晩餐ですか!ご立派で、お上品なのは表面ばかりで、中身は下劣そのもの、まんまと高須相子の口車にのせられたわ!」